「もったいない」という言葉を持つ日本が、いま改めて「循環」を経済の柱に据えようとしています。2025年2月に閣議決定された資源有効利用促進法の改正案が国会で審議され、リユース市場は拡大を続けています。サーキュラーエコノミー(循環経済)は「環境のための取り組み」から「産業競争力の源泉」へと、その位置づけが変わりつつあります。
「3R」を超えて|なぜ今、循環経済なのか
これまで日本では、廃棄物を減らし資源を繰り返し使う考え方として「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」が広く浸透してきました。しかし、「3R」は主に廃棄物対策・環境対策として企業や消費者に行動変容を促してきたのに対し、サーキュラーエコノミーでは「3R」の考え方に加えて、経済成長という「経済的目標」と、経済安全保障や持続可能性、人々の幸福といった「社会的目標」を同時に実現することが意図されています。
背景には資源をめぐる深刻な課題があります。
鉱物資源の埋蔵量に対して2050年までの需要が大幅超過の見込みであり、天然資源の採取と加工は温室効果ガス排出の55%超、生物多様性損失と水ストレスの90%超の要因とされています(UNEP国際資源パネル)。
日本は国内資源に乏しく多くのものを輸入に頼らざるを得ないため、資源制約・リスクが常につきまといます。また、資源循環の取り組みを進めることで、製造業・貨物の運輸・工業プロセス・製品の使用・廃棄物等の部門由来に相当する日本の温室効果ガス排出量(全体の36%)の削減に貢献できると推計されており、CO2削減やGX(グリーントランスフォーメーション)推進にも貢献できると考えられています。
法制度が動いた|資源有効利用促進法の改正とは
こうした課題を受け、日本の法整備が具体的に進んでいます。
2025年2月25日、資源循環政策の根幹をなす資源有効利用促進法の改正案が閣議決定されました。
経済産業省による改正の概要では、主に4つの柱が示されています。特定製品への再生資源の使用義務化(大規模メーカーによる計画策定と定期報告を含む)、環境配慮設計の促進(解体しやすい設計や長寿命化など優れた設計を認定する制度)、GXに必要な素材の再生利用加速(廃棄物処理法の特例措置を含む)、そしてシェアリングモデルなどサーキュラーエコノミーに関連する商流の新たなカテゴリーの創設です。
また、令和6年12月27日に循環経済に関する関係閣僚会議で決定された「循環経済への移行加速化パッケージ」では、廃棄物等を資源として有効に活用し付加価値を生み出すことで、気候変動や生物多様性の保全といった環境面の課題に加え、地方創生や質の高い暮らしの実現、産業競争力の強化、経済安全保障の確保にも貢献するという方針が示されています。
さらに、2026年度までにバリューチェーンの循環性指標や環境負荷削減推計手法の策定が予定されており、企業の循環性情報開示スキームの開発も進められているとされています。
リユース市場が急成長|消費者行動が変わっている
法整備が進む一方、消費者の行動にも変化が生まれています。
環境省の調査によると、2024年には44.1%の市民が中古品を購入したとされています。
日本のリユース市場はこの10年間で大幅に拡大しているとされており、2030年に向けてさらなる成長が見込まれています。
こうしたリユース経済の台頭を受け、環境省は中古品取引に関するルール整備を進めているとされており、リユース市場のガイドライン策定に向けた動きが続いています。
欧州の法制化と国際競争|日本企業に問われる対応
グローバルに目を向けると、サーキュラーエコノミーの法制化は一段と加速しています。
EU における再生材市場確立に向けた法整備が進んでおり、こうした外部環境の変化は、サーキュラーエコノミーを事業や国家戦略と統合させる好機でもあるという見方があります。
EUの規制が具体的なビジネスリスクになりつつある現実もあります。
欧州では、バッテリー製造に対してコバルト・リチウム・ニッケル等の再生材の最低使用比率が義務付けられる見通しとされており、詳細な数値・時期については今後の政令・省令の動向とあわせて確認が必要です。
日本の製造業にとっても他人事ではない動きです。
国内市場についても、政府は循環経済関連ビジネスの市場規模を2030年までに80兆円に拡大するという目標を掲げています。
製品設計の段階から変わっていく必要があることは、国際的にも認識が広がっています。
UNEPの国際資源パネルは、廃棄物の適切な処理だけでなく、包装廃棄物の発生抑制・製品の長寿命化・リユース・リサイクルを前提とした設計に、より強い重点を置くべきだと指摘しています。
私たちにできること|循環経済は「参加する経済」
サーキュラーエコノミーへの移行は、政策や企業の努力だけでは完成しません。
デザイナー・メーカー・消費者・リサイクル事業者のそれぞれが行動を変えなければ、循環経済の実現はできないとも指摘されています。
中古品を購入する・リペアして使い続ける・シェアリングサービスを活用するといった日常的な選択の一つひとつが、資源が循環する経済の担い手になることを意味します。国民の多くがすでに何らかの形でリユースを実践しているという調査結果は、消費者が変化の主役になりつつあることを示しています。
「作って・使って・捨てる」という一方通行の経済から、「作って・使い続ける・また使う」という循環の経済へ。日本が得意とする「もったいない」の精神が、いま法制度・企業戦略・市場の三位一体で形になろうとしています。

