インドといえば、IT大国というイメージがありますが、今や経済大国へと進化しつつあります。
サービス業や製造業など、G20諸国の中でも高度な成長を続けているほどです。
その一方で、こうした経済成長を背景とした、大気汚染が深刻化しています。
特に、インドの首都デリーにおける大気汚染はとどまるところを知りません。
こちらの記事では、インドの大気汚染を引き起こす経済成長と政府が行う環境政策について解説していきます。
インドの大気汚染問題とは
インドの大気汚染は、経済発展だけではなく、インド特有の事情が原因となっています。
経済発展を含めた原因について、細かく解説していきましょう。
工場からのガスやほこり
IT分野での成長を遂げたインド政府は、産業の拡大を目指しています。
打ち出された構想は「Made in India」と称し、ここ近年の間に工場は建設ラッシュとなりました。
こうした重工業分野の進歩は、インドの地方にくらす労働者の雇用を促し、インド国内の産業レベルをあげたため、大きな成果が出たといえます。
しかし、工場を建設するにあたっては、多量のほこりが排出される点は否めません。
加えて、工場稼働に伴うガスは深刻な大気汚染の原因として、問題になっています。
自動車の排気ガス
経済発展による変化は、自動車にも影響を与えています。
多くの国民が自動車を利用するようになり、工場のガス同様に自動車からの排気ガスも大気汚染の原因です。
特に、インドの主要都市では、大気汚染の多くが自動車の排気ガスによるものだと言われています。
祭事による花火や爆竹
インドの大気汚染は、今に始まったことではありません。
経済発展は大気汚染を加速させましたが、実はインドで開かれる祭事も大気汚染の原因となっています。
それが、10月下旬〜11月中頃に開かれるヒンドゥー教のお祭り「デイワリ」です。
ヒンドゥー教徒にとって最大の祭典であり、インド中で花火や爆竹が使用されます。
大切な祭りではありますが、これらの花火や爆竹も大気汚染の一因です。
また、ディワリが開催される季節は、インド北部の雨季が終わった頃に当たります。
そのため、雨が降らないことに加えて、気温も下がりつつあるため、汚染物質が滞留し、大気汚染に影響を与えているようです。
野焼き
野焼きは、日本でも見られる農作業の一つです。
インドでも、作物の収穫が終わった後、畑を焼いて作物残渣を燃やし尽くします。
最近は、インドの多くの地域で野焼きが禁止となっていますが、習慣として野焼きを行う農家も一部見られるのが現状です。
インドで行われる野焼きは、日本のそれとは比較になりません。
広大なインドでは、実に日本と同じ広さの野焼きが行われており、問題となっています。
インドの大気汚染は経済成長が原因
インドに大気汚染が深刻化している大きな理由が経済成長ですが、インドがこれほどまでに発展し続けているのはなぜでしょうか。
その理由を探っていきます。
カースト制度に関係のないIT分野
インドでは、国民の約80%がヒンドゥー教を信仰しています。
ヒンドゥー教では、カースト制度が根強く残っているのが現状です。
実際、法律では1950年に廃止されている身分制度ですが、非常に歴史が深く、簡単には脱却できるものではありません。
また、カースト制度では、職業は世襲制が基本であり、歴史的に身分が低い国民は、結局貧困に悩まされています。
しかし、IT分野に関してはカースト制度以降に生まれたジャンルであり、才能や環境が整い、努力をすることができれば、貧困から抜け出すチャンスとなりました。
そのため、ITの道を目指す人が増え、産業発展の一端を担っています。
参照元:「変貌するインドのカースト制度」|一般社団法人部落解放・人権研究所
アメリカとの時差による発展
インドは、アメリカとの時差がほぼ12時間です。
世界一の経済大国として名高いアメリカと時差が12時間であることは、実は経済発展に欠かせないリズムと言われています。
例えば、アメリカで日中作業された内容を、20時頃にインドで引き継ぐとどうでしょうか。
インドはちょうど12時間差の朝8時ということになり、結果的に24時間作業ができます。
IT業界において、時間は大変貴重なものです。
一刻一秒を争いながら作業を進めるような業界でもあり、絶妙な時差を持つインドとアメリカの間で共同開発が進められ、結果的にインドは目覚ましい発展を遂げたと言われています。
インド政府が打ち立てた環境対策とは
インド政府では、こうした大気汚染を軽減させるために、環境対策を立てています。
それぞれ政策について紐解いていきましょう。
再生可能エネルギーの導入
インド政府では、再生エネルギーの導入に関して、次のような目標を掲げています。
・2022年までに10万MWの太陽光発電システムを国内に導入する
・2022年までに6万MWの風力発電システムを国内に導入する
・2030年までに国内電力の40%を再生可能エネルギーで補う
こうした再生可能エネルギー導入により、近年の急激な経済発展を原因とする大気汚染の解消が期待されます。
合わせて、深刻化する電力不足も解決するでしょう。
参照元:「拡大目指すインドの再生可能エネルギー」|日本貿易振興機構JETRO
排気ガス規制
インドでは、2020年4月から排気ガス規制を見直し強化しています。
これは、2016年に制定された規制を厳しくしたもので、インド全土における全車種が対象です。
この規制を踏まえて、インド国内にある大手自動車メーカーも、ガソリン車やディーゼル車からの撤退を進めています。
まとめ
日本とは距離のあるインドですが、地球規模で見れば日本にも影響がないとは限りません。
また、日本でも大気汚染が全くないとはいえず、各地で様々な問題が起こっています。
こうした、インドでの環境問題を踏まえながら、私たちが暮らす日本にも目を向けてみましょう。
環境対策を進めていくためには、個人レベルの力も欠かせません。
まずは、興味を持つことが大切です。