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企業・団体事例

生産地を守り、喫茶文化をつなぐ。キーコーヒーが描くコーヒーの未来とサステナビリティ

取材に応じたキーコーヒーの枡井様と髙木様

1920年創業のキーコーヒー株式会社(以下、キーコーヒー)は、海外の農園事業からコーヒーの販売・製造、カフェの開業支援を手がける会社です。インドネシア・トラジャ地方では半世紀以上にわたって現地のコーヒー生産者とともに歩み、国内では『18歳。コーヒーを』などの取り組みを通じて若い世代へ喫茶文化を伝えています。コーヒー業界が直面しているコーヒーの2050年問題と喫茶文化の継承にどのように向き合っているのか、MIRASUS編集部がお話を聞きました。

<プロフィール>
キーコーヒー株式会社
経営企画部 兼 サステナビリティ推進室 主任 枡井 友香 様(左)
秘書広報部 広報チーム 係長 髙木 良輔 様(右)

特別な活動ではなく、事業活動の延長線上にあるサステナビリティ

──会社としてサステナビリティをどのように位置づけているのか教えてください。

枡井 友香様(以下、枡井様):当社のサステナビリティは、事業活動そのものに根ざしています。インドネシア・トラジャ地方で行う農園事業では、現地の生産者へ栽培技術の指導から生活改善のインフラ整備まで多面的な支援を重ね、ともに歩んできた歴史があります。こうした事業活動の延長として、2030年のありたい姿に「珈琲とKISSAのサステナブルカンパニー」を掲げています。コーヒーや喫茶文化を未来に継承するために生産を守ることと、コーヒーの魅力を発信することの2軸で進めているところです。

サステナビリティの考え方について話す枡井様と髙木様

髙木 良輔様(以下、髙木様):生産地での活動はもちろん、消費国での活動も重要です。当社には日本の喫茶文化を培ってきた歩みがありますから、その文化の継承にも力を入れています。

──キーコーヒーは、持続可能な社会の実現のために、サステナビリティ基本方針と、これから向き合う課題として「地球温暖化への対応」「環境負荷の低減」など5つの重要項目を公表しています。これらの基本方針と重要項目は、どのような経緯で定められたのでしょうか。

枡井様:サステナビリティ基本方針は2021年11月に制定しました。当時は、上場企業の企業統治の指針であるコーポレートガバナンス・コードの改定など、外部環境が変化していた時期です。すでに取り組んでいる事業活動の中に、サステナビリティに通じる活動も多いのではないかという話になり、まず事業活動の棚卸しから始めました。重要項目の特定も同時期です。原料調達から販売までのバリューチェーン全体でリスクと機会を洗い出し、当時は経営企画部の担当として重要項目の候補案をまとめ、経営陣と議論を重ねて絞り込みました。

──サステナビリティ推進室とコーヒーの未来部という2つの組織について教えてください。

枡井様:サステナビリティ推進室が正式に部署として設置されたのは2023年4月で、それ以前は経営企画部の一担当として活動していました。少人数ですが、幅広い領域を担当しています。生産地での取り組みを実際に担うのは、サステナビリティ推進室より1年早い2022年4月に創設されたコーヒーの未来部です。同部の部長は社長が務めており、調達部門や商品開発部門など全社横断でさまざまな部署から選抜された約10名の社員で構成されています。

髙木様:コーヒーの未来部の活動は当社だけにとどまらず、行政機関や世界的なコーヒーの研究機関などとも協力しながら行っています。近年の活動の一例が、環境省から受託したエチオピアの小規模コーヒー生産者を支援する取り組みです。2024年度に、同部のスタッフが数回にわたり現地を訪問し、気候変動が生産地に与える影響をヒヤリングしたうえで、その解決策を提案するセミナーを実施しました。

コーヒーの未来部の取り組みについて話す髙木様

──コーヒーの生産地に影響を及ぼすコーヒーの2050年問題に対して、どのような危機感を持ち、何に取り組んでいるのでしょうか。

枡井様:持続可能なコーヒー生産を目指すうえで、日本の老舗コーヒーメーカーとして率先して取り組むべき課題であると認識しています。コーヒーの2050年問題が2015年にミラノ万博で提唱されたことを受け、翌年に業界でもいち早く、世界的なコーヒーの研究機関であるWorld Coffee Research(ワールド・コーヒー・リサーチ)との協業を始めました。

髙木様:地球の平均気温が上がると、コーヒー栽培環境にも大きな影響を与えます。コーヒーの2050年問題では、豊かなコーヒーの味わいを有し、世界のコーヒー生産量の約6割を占めるアラビカ種コーヒーの栽培適地が、2050年までに半減してしまうと言われています。当社は、2017年からWorld Coffee Researchが行う気候変動に適応する品種の開発につながる栽培試験に参画。インドネシア・トラジャ地方の直営農園の一部のエリアで、同試験を行っています。

18歳を大人の入口に、若い世代へ喫茶文化の魅力を

──喫茶文化継承のプロジェクト『18歳。コーヒーを』にも取り組んでおられます。同プロジェクトを始めた経緯を教えてください。

髙木様:喫茶文化の継承というテーマの一つとして、若年層にコーヒーを飲む文化を伝えたいという思いがあります。本プロジェクトは、若年層の中でも「18歳」という年代にターゲットを絞り、中長期的にコーヒーの魅力を発信するものです。2022年から成人年齢が18歳に引き下げられましたが、成人式は20歳を対象にすることが多く、18歳で成人になったことを意識する機会は限られています。18歳から80代を対象としたあるアンケートの調査結果では、18〜20歳の新成人は7割以上が「18歳は大人だ」と答えた一方で、全体では半数近くが「18歳は大人だと思わない」と答えています。新成人と社会全体とで、受け止め方にずれがあるのです。

『18歳。コーヒーを』について話す髙木様

そこで当社は『18歳。コーヒーを』をキャッチフレーズに、新成人に向けてコーヒーの魅力を伝え、社会に対して「18歳=成人」であることを提唱していこうと考えました。「お酒は20歳から」と同じように、「18歳になったら、大人になったらコーヒーを飲む」というのが、数年後の日本で当たり前の文化になればいいなと思っています。

本プロジェクトの取り組みの一つとして、2026年3月に港区の高校を卒業する約1,000人の新成人へ、当社のコーヒー『KEY DOORS+ JET BREW』を寄贈しました。成人を迎えたことと高校卒業をお祝いし、コーヒーとともに大人として新たな一歩を踏み出してほしいという思いを込めています。

──高校や大学など、学生と接する場での反応や、具体的な取り組みを教えてください。

髙木様:反応は高校生と大学生で異なりますが、コーヒーがどうやってできているのか、生産地がどのような課題を抱えているのかを知っている人はまだ少ないと感じます。

大学のコーヒーサークルとの取り組みとして、学生達の「文化祭でコーヒーを販売したい」「一杯のコーヒーの価値を適切に伝えたい」という思いに応え、当社のセミナールームで、コーヒーの基本的な知識やコーヒーの生産地をテーマにした講義を実施。さらには、自分たちでコーヒーの焙煎もしていただき、一杯のコーヒーの価値を体感してもらう機会を作りました。

──若い世代のコーヒーとの関わり方について、どのように感じていますか。

髙木様:若い世代では、嗜好品の選択肢が広がっていると感じます。今の学生達の中には、気持ちの切り替えなどのシーンでエナジードリンクを選択している方も多いのではないでしょうか。コーヒーは飲み慣れていない方からすると苦いもの、大人が飲むものという印象を持たれがちです。そこで高校などに出向いて行うセミナーでは、正しい抽出の仕方や飲み方に加え、一杯のコーヒーがどのようにできているのかや生産国による味わいの違いなどを交え、コーヒーが単なる苦い飲み物ではないことを伝えています。ハンドドリップで淹れたあとに、コーヒーグラウンズ(抽出後のコーヒー粉)で消臭剤を作る内容を組み合わせることもあり、一杯を味わうだけでなく、その先の使い道まで体験してもらうことで、より多様なコーヒーの知識や魅力に触れてほしいと思っています。

──代々木ゼミナールとの『受験生応援キャンペーン』は、どのような狙いで始めたのでしょうか。

髙木様:近年はSNSの発展もあり、若年層にコーヒーの魅力を伝えるためには多角的な情報発信が必要です。当社が若い世代に行った調査では、コーヒーを飲む場面として「勉強中など集中したいとき」を挙げる方が多く、学生達が勉強するシーンにコーヒーを届けたいと考えました。本キャンペーンでは、代々木ゼミナール様が2027年に創立70周年を迎えられるのを記念し、同校に在籍する受験生へ季節に合わせたコーヒーを寄贈しています。勉強とコーヒーの親和性を訴求することで、コーヒーを飲むきっかけを創出していきたいと思っています。

社員一人ひとりに広げる工夫と、レポートが伝えるトラジャでの歩み

──社内にサステナビリティを浸透させるために、どのような工夫をされていますか。

枡井様:成果をお示しするのは難しい面もありますが、まずは、各本部・部署の方針や施策、ならびに個人の行動計画の基となる全社の「重点指針」に「サステナビリティを実現する」という項目を設けています。組織として、個人として、業務を通じてサステナビリティを実現するために何ができるのかを考え、目標に落とし込むことで、社員一人ひとりがサステナビリティの推進に取り組んでいます。社内向けのeラーニング教材も制作し、人財開発の担当部署と連携した人権研修のコンテンツを従業員へ配信しました。

髙木様:全国の営業の現場からも当社の活動を話してほしいという思いがあります。啓発活動の一環として、コーヒーグラウンズを混ぜ込んだノートを製作し全従業員に配布しています。ノートが手元にあることで、営業先でサステナビリティの話を切り出すきっかけになります。

社内への浸透の工夫について話す枡井様と髙木様

──サステナビリティレポート2026年版(2026年9月29日公表)の注目ポイントを教えてください。

髙木様:毎年、特集のページを組んでいます。2026年版では、インドネシアでの農園事業「トラジャ事業」の一端に触れることができる、当社独自の社員向け研修「トラジャ研修」を紹介しています。

キーコーヒー サステナビリティレポート2026の表紙と目次

トラジャ事業が始まったのは1973年です。戦後荒れ果てた農園の再開発、生産者への栽培指導、現地のインフラ整備などを経て、直営「パダマラン」農園を開墾。1978年に、同農園や周辺農家とともに栽培したコーヒーを『トアルコ トラジャ』というブランドで、日本で発売しました。当社のフラッグシップブランドだからこそ、『トアルコ トラジャ』の歴史や品質の高さ、生産地との繋がりなどを、社員一人ひとりが自分の言葉で語れるようにしたいと考えています。トラジャ研修では、産地に行く前に事前研修でブランド価値や事業の歴史を改めて学びます。そのうえで現地を訪れ、コーヒー生産の一連の工程を体験します。

本特集では、研修内容のほかに、生産地との繋がりや研修に込められた思い、実際に研修に参加した社員の声などを紹介しています。ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。

キーコーヒー サステナビリティレポート2026の特集「情熱の源流へ。」とトラジャ研修レポートのページ

『キーコーヒー サステナビリティレポート 2026』URL:https://www.keycoffee.co.jp/sustainability/report/
画像出典:キーコーヒー株式会社 ニュースリリース(2026年9月29日)URL:https://www.keycoffee.co.jp/news/detail/news_260929

──最後に、2030年のありたい姿やコーヒーの未来に込めた思いを教えてください。

枡井様:コーヒーの2050年問題によって、日々当たり前に飲んでいるおいしいコーヒーが、将来は飲めなくなる可能性があります。今の子ども達や、さらに先の世代にも、今と同じようにおいしいコーヒーを楽しんでもらいたい。それが当社の思いです。

コーヒーの未来への思いを話す枡井様と髙木様

コーヒーは人々が栽培するもので、コーヒーが生産される土地ごとに文化があります。気候変動で生産地が減ることで、生産量の減少と品質の低下だけでなく、そこで暮らす人々の生活にも影響が及びます。当社は、これからも生産地やそこでコーヒーを栽培する生産者と向き合いながら、持続可能なコーヒー生産の実現を目指すとともに、これまで100年以上にわたって培ってきた喫茶文化の魅力を、新たな世代へ発信しつづけることで、コーヒーの未来を守る活動に取り組み続けたいです。

──今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。

▼ キーコーヒー株式会社のページはこちら
ホームページ:https://www.keycoffee.co.jp/
サステナビリティ:https://www.keycoffee.co.jp/sustainability/

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