日本発の核融合スタートアップが建設地を決定|Helix HARUKA、2027年通電試験へ
post_id: 19567
original_date: 2026年3月14日
url: https://mirasus.jp/?p=19567
カテゴリースラッグ: environment
公開日: 2026年3月14日
関連SDGs: 目標7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)、目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)、目標13(気候変動に具体的な対策を)
「核融合で電気を作る」という夢が、岐阜県の国立研究所の一角で、少しずつ現実に近づいています。日本発のスタートアップが独自技術による実証装置の建設地を正式に発表し、2027年の通電試験に向けた製造・建設がすでに動き始めています。
建設地が決定|NIFS敷地内でPhase 1が始動
核融合エネルギー開発スタートアップのHelical Fusion(本社:東京都中央区、代表:田口昂哉)は2026年3月13日、最終実証装置「Helix HARUKA」の2段階中の1段階目にあたるマグネット実証フェーズ(Phase 1)を実施する建設地を、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所(NIFS)の敷地内にあるHF共同研究グループ専用スペースとすることを公表しました。2027年の通電試験に向けて、すでに日本各地のものづくり企業と連携し、製造・建設に着手しています。
Phase 1では、三次元らせん構造の高温超伝導(HTS)コイルを組み立て、マグネットとしての性能などを実証する通電試験を行います。マグネットは、磁場閉じ込め式核融合炉において、自動車におけるエンジンのように装置全体の性能・信頼性・コストを決定づける基幹部品です。
建設地となるNIFSは岐阜県土岐市に位置しています。
NIFSは、大型プラズマ実験装置「大型ヘリカル装置(LHD)」において、約54分間にわたるプラズマの維持や1億度を超えるプラズマ温度の達成など、ヘリカル型核融合研究を牽引する公的研究機関です。Helical Fusionは2021年にNIFSにおける研究成果を活用するかたちでスピンアウト・創業し、2024年からは高温超伝導マグネットやブランケット兼ダイバータシステムなどの共同研究も進めています。
ヘリカル方式とは|日本独自の核融合技術
核融合とは、太陽と同じ原理で水素などの軽い原子核を融合させ、膨大なエネルギーを取り出す技術です。燃料となる水素の同位体は海水から取り出せるとされ、燃料資源としては事実上枯渇しないと考えられています。また、運転中に暴走的な反応が進まない仕組みであることから、次世代のクリーンエネルギーとして世界的に開発競争が激化しています。
Helical Fusionはヘリカル・ステラレータ方式を採用する世界唯一の企業であり、60年以上にわたって国立機関・国立大学で蓄積されてきた知見を継承しています。
ヘリカル方式は、らせん状に曲げたコイルを用いて強力な磁場のかごを作る日本独自の方式で、プラズマの閉じ込めと定常運転に強みがあるとされています。
直近の技術実績として、
Helical Fusionは2025年10月27日、核融合炉のコア部品である高温超伝導(HTS)コイルの重要な性能試験を完了したと発表しました。この成果を受けて、統合実証装置「Helix HARUKA」の製造・建設に着手しています。
試験では、NIFSの大口径高磁場試験設備を用いて、15K(−258℃)・7テスラの外部磁場下で40kAの安定した超伝導電流を流すことに成功しています。
Helix HAGRUKAから発電初号機へ|ヘリックス計画の全体像
Phase 2(統合実証フェーズ)では、高温超伝導マグネットやブランケット兼ダイバータを含む主要要素技術の統合実証を通じて、発電初号機「Helix KANATA」への技術的見通しを確保することを目指します。定常運転の確立に向けた高温プラズマの長時間維持などに取り組む段階です(発電は行いません)。
ヘリックス計画のもとで同社は、HTSマグネットと統合ブランケット兼ダイバータシステムという2つの主要技術の性能試験を2020年代末までに完了し、2030年代にHelix HAGRUKAによる完全システム統合を経て、発電パイロットプラント「Helix KANATA」での定常発電を開始することを計画しています。
パイロット炉の発電容量は50〜100MWe規模を想定しており、2040年ごろの運転開始を目指しているとされています。
世界の核融合開発競争|国際プロジェクトと民間の動き
核融合の実用化に向けた挑戦は世界規模で広がっています。日本・EU・米国・韓国・中国・ロシア・インドの7極が参加する国際熱核融合実験炉(ITER)は、フランス南部で建設が進んでいます。
ITERは2024年7月に発表した新スケジュールにおいて、重水素を用いたプラズマ運転の開始を2035年、重水素・三重水素を用いた本格的な核融合運転を2039年と設定しています。
民間企業の動きも活発です。
世界約50のプロジェクトの中でHelical Fusionは商業化に必要な3要件すべてを既存技術で満たすことを目指す数少ない企業の一つです。米国ではMITのスピンアウトであるCommonwealth Fusion Systems(CFS)が2030年代初頭にグリッド規模の核融合発電所の建設を計画しています。
Helical Fusionの開発は、文部科学省(MEXT)の下で核融合エネルギーに特化した初の国家助成制度であるSBIR Phase 3プログラムの支援を受けています。
産学官が連携した日本独自の取り組みとして、国際的な注目を集めています。
核融合が拓く未来と、今私たちにできること
核融合が実用化されれば、昼夜や天候に左右されずに大規模な電力を安定供給できる可能性があります。ただし、発電所レベルでの本格稼働は早くても2030〜40年代以降と見られており、それまでの間は再生可能エネルギーの拡大や省エネの徹底、多様なエネルギー手段の組み合わせが不可欠です。
今すぐ取れる行動として、核融合をはじめとするクリーンエネルギーの動向を追い続けること、そして日常の電力消費を見直すことが、長期的なエネルギー転換を支える一歩になります。Helical Fusionの公式サイトやプレスリリースをフォローしておくと、技術の進捗をいち早くキャッチできます。
日本発の核融合スタートアップ、建設地を決定|2027年通電試験へ
【学べるポイント】
✅ Helical FusionがNIFS敷地内でHelix HARUKA Phase 1の建設を開始
✅ ヘリカル方式は定常運転に強い日本独自の核融合技術
