「持続可能な社会」という言葉をよく耳にしますが、そのような社会を作るためには、どのような教育が必要なのでしょうか。その答えの一つが「ESD」です。環境問題や貧困、人権など、世界が抱える課題に向き合い、行動できる人を育てるための教育的な考え方です。この記事では、ESDの意味や重要性、具体的な事例を、わかりやすく解説します。
ESDとは
ESDは、Education for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されています。
ESDとは、地球に存在する人間を含めた命ある生物が、遠い未来までその営みを続けていくために、環境・貧困・人権・平和・開発といった課題を自らの問題として捉え、一人ひとりが自分にできることを考え、実践していくこと(think globally, act locally)を身につけ、課題解決につながる価値観や行動を生み出し、持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。
つまり、知識を学ぶだけではなく、実際に行動を変えることが大切なのです。
ESDが生まれた背景
ESDは、2002年の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で我が国が提唱した考え方であり、同年の第57回国連総会で採択された国際枠組み「国連持続可能な開発のための教育の10年」(2005-2014年)に基づき、ユネスコを主導機関として国際的に取り組まれてきました。
つまり、ESDは日本からの提案に基づいて始まった国際的な教育運動なのです。
その後の展開として、2019年11月の第40回ユネスコ総会で「持続可能な開発のための教育:SDGs実現に向けて(ESD for 2030)」が採択され、同年12月の第74回国連総会で承認されました。
これにより、2020年から2030年にかけてSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて、ESDはより一層重要な役割を担うようになりました。
ESDが育てる能力
ESDの教育現場では、単に知識を詰め込むのではなく、実践的な能力を育成することに重点が置かれています。
持続可能な社会づくりのための課題解決に必要な「批判的に考える力」「未来像を予測して計画を立てる力」「多面的・総合的に考える力」「コミュニケーションを行う力」「他者と協力する力」「つながりを尊重する態度」「進んで参加する態度」を身につけさせます。
こうした力を養うことで、一人ひとりが自分の役割を見つけ、社会や環境の問題に主体的に取り組むことができるようになります。
ESDとSDGsの関係
ESDは、SDGsの目標4「すべての人に包摂的かつ公正な質の高い教育を確保し、生涯教育の機会を促進する」のターゲット4.7に位置付けられました。
しかし、それだけではありません。
ESDは、SDGsの17全ての目標の実現に寄与するものであることが第74回国連総会において確認されています。
つまり、ESDは気候変動対策や貧困削減など、あらゆるSDGsの目標達成を支える重要な基礎なのです。
日本での取り組み
日本では、ESDの推進が積極的に進められています。
ユネスコスクールとは、ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念を実現するため、平和や国際的な連携を実践する学校のことです。日本では文部科学省とユネスコにより、ユネスコスクールがESDの推進拠点として位置づけられています。
学校現場では、環境学習や国際交流、地域課題への取り組みなど、様々な形でESDが実践されています。
私たちにできること
ESDは学校だけの活動ではありません。私たち大人も、身近な課題に気づき、行動することがESDの実践につながります。例えば、環境問題について学びながら実際に行動する、地域の課題に関心を持ち参加するなど、「think globally, act locally」という姿勢が大切です。また、子どもたちに対して、一緒に課題を考え、解決に向けて行動する大人の姿勢を示すことも、重要なESDの実践となります。
ESDの考え方が広がることで、持続可能な社会づくりの担い手が増え、世界全体での課題解決が加速していくでしょう。

