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「安くなった」だけじゃない|地政学・AI需要・政策転換が再エネの「次の局面」を問う

「安くなった」だけじゃない|地政学・AI需要・政策転換が再エネの「次の局面」を問う

太陽光や風力発電のコストは、かつて想像もできなかった水準まで下がりました。それでも2026年、再生可能エネルギーをめぐる世界の議論は「コストが安い」という話だけでは収まらなくなっています。米国の政策転換、AIデータセンターによる電力需要の急増、そして地政学リスクの高まり——。複合的な変化のなかで、日本もあらたなエネルギー戦略の策定を迫られています。

コストは下がり続けている、しかし…

世界では新規再エネプロジェクトの90%以上が、化石燃料による発電よりもコストが安く、新たな再エネ発電量は電力需要の増加分を上回る水準に達しているとされています。
2024年には世界の太陽光発電の新規設備容量が約597GWと過去最高を記録し(SolarPower Europe調べ)、再エネ全体の拡大トレンドが続いています。ただし2026年は市場構造の変化もあり、成長が一時的に鈍化する可能性も指摘されています。
それでも再エネの経済合理性は高く、その経済性が高いことが、地政学的な不安定さからセクターを守る緩衝材になっているという見方があります。

一方で、コストが安くなったからこそ顕在化した新たな課題も生まれています。
ヨーロッパでは再エネ普及率の高まりや原子力・石炭など他電源の柔軟性の低さを背景に、マイナス電力価格が発生する頻度が増えており、クリーンエネルギー発電の収益を圧迫するという問題が起きているとされています。

米国の「政策転換」が世界に与える波紋

再エネの成長に強い影が差しているのが、米国の政策変化です。
米国政府の再エネをめぐる緊張関係が業界の先行きへの懸念を生んでおり、政策転換によって将来の再エネ容量の見通しが縮小するという指摘があります。
またDNV(ノルウェーのエネルギー調査機関)は、米国における排出削減の達成時期が遅れると推計しているという見方があります。

ただし、米国内での再エネ導入がゼロになるわけではありません。
政策の流れがクリーンエネルギーから遠ざかっているとされる米国においても、引き続き相当規模の風力・太陽光・蓄電池の導入が行われると予測されています。

AIデータセンターが「新たな需要の主役」に

見落とせないのが、AIブームがエネルギー需要に与える影響です。
AIデータセンターやEV普及による電力需要の加速が、風力・太陽光・蓄電池のさらなる導入を後押しするとみられています。
AIブームが電力需要の意思決定者に仮想発電所(VPP)を本格的に検討させる契機になっており、計画中のデータセンターが電気料金の上昇圧力となる一方、ガス火力の迅速な建設は設備不足によって困難な状況にあるといいます。
日本でも、大規模データセンターの整備が進むにつれ、安定した再エネ電力をどう確保するかが経営・政策の双方で重要な課題になりつつあります。

「地政学リスク」が再エネの意味を変えた

かつて再エネは主に「環境対策」として語られていましたが、いまやエネルギー安全保障の観点から位置づけが大きく変わっています。
世界の政治情勢が変化するなか、再エネは成長を続けると同時に、地政学的な重要性を増しています。軍事的緊張、サプライチェーンの混乱、貿易摩擦のなかで、各国は自国のエネルギー政策をエネルギー自立の観点から再構築しているとされています。
欧州連合はREPowerEUプランを起点に、特にロシア産ガスへの依存を減らすため再エネを積極的に推進してきました。スペインのように化石燃料の国内生産をほとんど持たない国は、再エネ導入を安全保障上の問題として捉えています。

中国については、太陽光パネルで世界の新規設置容量の約55%(SolarPower Europe、2024年実績)を占める規模で導入を進めており、再エネ技術の低コスト供給国として世界市場での影響力を持ち続けています。

日本の針路|第7次エネルギー基本計画が問うもの

日本はこうした潮流をどう受け止めているでしょうか。
2025年2月に閣議決定された「第7次エネルギー基本計画」では、脱炭素電源として再エネを主力電源と位置づけ、最大限の導入を進める方針が盛り込まれています。

また、洋上風力については、2040年までに3,000万kW〜4,500万kWの案件形成という目標を国が掲げている
一方で、三菱商事は資材価格の高騰などにより建設費が入札時の想定の2倍以上に膨らんだとして、秋田県・千葉県の3海域で計画していた着床式洋上風力発電事業から撤退すると発表しています。
目標と現実のギャップを埋める制度設計や、コスト管理の見直しが急務であることが改めて浮き彫りになっています。

再エネをめぐる問いは「環境」を超えた

脱炭素に向けた世界経済の転換は多くの課題に直面しており、2026年初頭の状況は気候重視の投資家や企業が望むような好転をもたらしてはいないという見方があります。

しかしながら、再エネのコスト低下という大きなトレンドは揺らいでいません。問われているのは、技術的・経済的な成熟を遂げつつある再エネをいかに「地政学」「AI需要」「系統安定性」といった複合的な課題と組み合わせてシステムとして機能させるか、という点です。

急速な電化の進展により、インフラや柔軟性などの「支援的イノベーション」に対する巨大な需要が生まれており、再エネ技術を新たなエネルギーシステムとして統合し、電化を効率的に支えることが最大の課題だという指摘があります。

私たちひとりひとりにできることは、日常のエネルギー選択を意識することから始まります。電力プランを再エネ由来に切り替えたり、企業を選ぶ際にエネルギー政策を確認したりする行動が、需要側から再エネの拡大を後押しする力になります。地政学もAI需要も複雑な話ですが、「使う電力をどこから選ぶか」という問いは、私たちの日常に確かに存在しています。

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