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ENVIRONMENT

気候関連リスクとは?企業が知るべき種類と対策をわかりやすく解説

気候関連リスクとは?企業が知るべき種類と対策をわかりやすく解説

近年、台風や洪水などの自然災害が頻発し、企業活動に大きな影響を与えています。また、脱炭素社会への移行により、これまでとは異なる新しいリスクも生まれています。これらを総称して「気候関連リスク」と呼び、現代の企業経営において避けて通れない重要な課題となっています。

この記事で学べるポイント

  • 気候関連リスクの基本的な定義とTCFDとの関係
  • 移行リスクと物理的リスクの違いと具体的な影響
  • 企業が取り組むべき対策と情報開示の重要性

気候関連リスクとは何か

気候関連リスクとは何か

気候関連リスクとは、地球温暖化や気候変動によって企業が直面する様々な危険や損失の可能性を指します。従来のビジネスリスクとは異なり、気候変動という地球規模の環境変化が原因となって発生するため、全世界の企業が同時に影響を受ける特徴があります。

このリスクが注目されるようになった背景には、気候変動の深刻化があります。産業革命以降、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出により地球の平均気温は上昇し続けており、その結果として異常気象の頻発や海面上昇などの現象が起きています。これらの変化は、企業の事業活動や財務状況に直接的・間接的な影響を与えるようになったのです。

気候関連リスクの基本的な定義

気候関連リスクは、単純に「天災による被害」だけではありません。むしろ、社会全体が環境問題に対応しようとする過程で生まれる様々な変化も含まれます。例えば、政府が炭素税を導入すれば、温室効果ガスを多く排出する企業の経営コストは上昇します。また、消費者が環境に優しい商品を選ぶようになれば、従来の商品を作っている企業は売上減少のリスクに直面します。

このように、気候関連リスクは物理的な被害だけでなく、社会の価値観や制度の変化によって生じる経済的な影響も含む、包括的な概念なのです。

TCFDとの関係性

気候関連リスクの概念を体系化したのが、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)という国際的な組織です。TCFDは2015年にG20の要請により設立され、2017年に企業が気候関連リスクをどのように把握し、開示すべきかについての提言を発表しました。

TCFDの提言では、企業に対して「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標・目標」の4つの領域について、気候関連の情報開示を求めています。これにより、投資家や金融機関が企業の気候関連リスクを適切に評価できるようになり、より持続可能な投資判断が可能となります。現在、世界中で4,000を超える企業・機関がTCFD提言に賛同しており、日本は賛同企業数が世界第1位となっています。

気候関連リスクの2つの種類

気候関連リスクの2つの種類

TCFDでは、気候関連リスクを発生原因と影響の特徴に基づいて、「移行リスク」と「物理的リスク」の2つに大きく分類しています。この分類により、企業は異なる性質を持つリスクに対してそれぞれ適切な対策を立てることができます。

移行リスク(4つの分類)

移行リスクとは、現在の高炭素社会から低炭素社会への移行過程で発生するリスクです。社会全体が環境問題への対応を進める中で、企業が変化に適応できない場合に生じる損失を指します。

移行リスクはさらに4つの種類に分類されます。

政策・法規制リスクは、政府による環境関連の新しい法律や制度によって生じるリスクです。炭素税の導入、排出量取引制度の開始、環境規制の強化などが該当します。例えば、炭素税が導入されれば、製造過程で多くのCO2を排出する企業は税負担が増加し、利益が圧迫されます。

技術リスクは、環境技術の急速な発展により、従来の技術が陳腐化するリスクです。電気自動車の普及により内燃機関の需要が減少したり、再生可能エネルギーの普及により火力発電の需要が減少したりする例があります。

市場リスクは、消費者や投資家の環境意識の高まりにより、市場の需要構造が変化するリスクです。環境に配慮した商品への需要が高まる一方で、環境負荷の高い商品の需要は減少します。

評判リスクは、企業の環境への取り組み不足により、ブランドイメージが悪化するリスクです。SNSの普及により、企業の環境対応に関する情報は瞬時に世界中に拡散されるため、評判リスクの影響は以前よりも大きくなっています。

物理的リスク(急性・慢性リスク)

物理的リスクとは、気候変動によって実際に発生する自然現象による直接的な被害リスクです。工場や店舗の損壊、サプライチェーンの寸断、従業員の安全確保など、目に見える形で企業活動に影響を与えます。

物理的リスクは発生パターンによって、急性リスクと慢性リスクに分けられます。

急性リスクは、台風、洪水、干ばつ、山火事などの突発的な異常気象による被害です。例えば、大型台風により工場が浸水すれば、生産停止による売上減少や設備復旧費用が発生します。また、サプライヤーの工場が被災すれば、部品調達が困難になり、自社の生産活動にも影響が及びます。

慢性リスクは、気温上昇、海面上昇、降水パターンの変化など、長期間にわたって徐々に進行する気候変化による影響です。例えば、気温上昇により農作物の収穫量が減少すれば、食品メーカーは原材料コストの上昇に直面します。また、海面上昇により沿岸部の工場や店舗が使用できなくなるリスクもあります。

これらのリスクは相互に関連し合っており、一つのリスクが他のリスクを引き起こすケースも少なくありません。企業は移行リスクと物理的リスクの両方を総合的に評価し、バランスの取れた対策を講じることが重要です。

企業への具体的な影響と事例

企業への具体的な影響と事例

気候関連リスクが企業に与える影響は、業界や事業内容によって大きく異なります。製造業では生産拠点の被災リスクが高く、金融業では投融資先の気候リスクが自社の損失に直結します。また、小売業では消費者の環境意識の変化が売上に直接影響するなど、各業界固有のリスクパターンが存在します。

重要なのは、これらのリスクが単独で発生するのではなく、複数のリスクが連鎖的に影響を与えることです。例えば、異常気象による原材料の不足(物理的リスク)が価格上昇を招き、同時に環境規制の強化(移行リスク)により代替材料への転換を迫られるといったケースが考えられます。

業界別の影響パターン

製造業では、工場や生産設備への物理的被害が最も深刻な問題となります。自動車業界では、電気自動車への移行により内燃機関関連の技術や設備が座礁資産となるリスクがあります。座礁資産とは、社会の変化により経済価値を失う資産のことで、移行リスクの典型例です。

エネルギー業界は気候関連リスクの影響を最も強く受ける業界の一つです。石油・石炭企業は、脱炭素政策により主力事業の需要減少に直面します。一方で、再生可能エネルギー企業にとっては大きな事業機会となります。

金融業界では、投融資先企業の気候リスクが自社のリスクとなります。気候変動により経営が悪化した企業への融資は回収困難となり、損失が発生します。また、ESG投資への関心の高まりにより、環境に配慮した投資商品の需要が急拡大しています。

農業・食品業界は、気温上昇や降水パターンの変化により農作物の収穫量や品質が直接影響を受けます。原材料の調達コストが上昇し、場合によっては調達自体が困難になる可能性があります。

小売・消費財業界では、消費者の環境意識の高まりにより、環境配慮型商品への需要シフトが加速しています。プラスチック削減、リサイクル材料の使用、地産地消の推進など、事業モデルの転換が求められています。

実際の企業事例

具体的な企業事例を見ると、気候関連リスクへの対応方法の多様性が理解できます。

アサヒグループホールディングスは、気温が4℃上昇した場合のシナリオ分析を実施し、主原料であるトウモロコシの価格が2050年に約59%上昇する可能性があることを公表しました。この分析結果を受けて、原材料の調達先多様化や代替原料の研究開発を進めています。

ENEOS株式会社は、石油精製事業を主力とする企業として、エネルギー転換による事業環境の変化に対応するため、2040年度のカーボンニュートラル実現を目標に掲げています。再生可能エネルギー事業の拡大や水素・合成燃料などの新エネルギー事業への投資を積極的に進めています。

三菱UFJフィナンシャル・グループは、融資ポートフォリオの気候リスク評価を実施し、移行リスクについては2050年まで、物理的リスクについては2100年までのシナリオ分析を行っています。特に石炭火力発電への融資残高を2030年度までに50%削減する目標を設定し、段階的な脱炭素化を進めています。

気候関連リスクへの対策と管理方法

気候関連リスクへの対策と管理方法

気候関連リスクは長期間にわたって不確実性の高い影響をもたらすため、従来のリスク管理手法では対応が困難です。そこで重要となるのが、複数の将来シナリオを想定したリスク評価と、継続的な見直しを前提とした適応的な管理手法です。

企業がまず取り組むべきは、自社事業における気候関連リスクの特定と評価です。その上で、リスクの大きさや発生時期に応じて優先順位を付け、段階的な対策を実施していくことが効果的です。

シナリオ分析の重要性

シナリオ分析は、気候関連リスク管理の核となる手法です。気候変動の影響は数十年という長期間にわたり、かつ不確実性が高いため、単一の予測に基づく計画では適切な対応ができません。そこで、温度上昇の程度や政策対応の違いによる複数のシナリオを設定し、それぞれの場合における事業への影響を分析します。

TCFDでは、産業革命以前と比較して気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオを中心に、複数のシナリオでの分析を推奨しています。一般的には、1.5℃シナリオ、2℃シナリオ、4℃シナリオの3つのシナリオが用いられます。

1.5℃シナリオでは急激な脱炭素化が進むため移行リスクが高くなりますが、物理的リスクは比較的抑制されます。一方、4℃シナリオでは脱炭素化が進まないため移行リスクは低いものの、深刻な物理的リスクに直面します。

シナリオ分析の実施により、企業は将来の不確実性を踏まえた戦略策定が可能となります。また、投資家に対して企業の気候変動への対応力(レジリエンス)を示すことができ、資金調達や企業価値向上にも寄与します。

リスク管理の基本的な進め方

効果的な気候関連リスク管理には、体系的なアプローチが必要です。

まずリスクの特定では、自社の事業活動全体を対象に、気候関連リスクの洗い出しを行います。直接的な影響だけでなく、サプライチェーンを通じた間接的な影響も考慮することが重要です。

次にリスクの評価では、特定したリスクについて発生確率と影響度を定量的・定性的に評価します。シナリオ分析を活用し、異なる条件下でのリスクの変化も把握します。

リスク対応策の策定では、リスクの大きさに応じて、回避、軽減、移転、受容のいずれかの対応方針を決定します。重要なのは、短期的な対処療法ではなく、事業モデルの変革も視野に入れた中長期的な対策を検討することです。

モニタリングと見直しでは、定期的にリスク評価を更新し、対策の有効性を検証します。気候科学の進歩や政策動向の変化に応じて、シナリオや対策を適宜見直すことが必要です。

最後にガバナンス体制の整備では、取締役会レベルでの気候関連リスクの監督体制を構築し、全社的な取り組みとして推進します。専門性を持った人材の確保や、部門横断的な協力体制の構築も重要な要素です。

情報開示の重要性と今後の展望

情報開示の重要性と今後の展望

気候関連リスクへの対応において、情報開示は単なる報告義務ではなく、企業価値向上のための戦略的な取り組みとなっています。透明性の高い開示により、投資家や取引先からの信頼を獲得し、持続可能な事業運営への取り組み姿勢を示すことができます。

開示を通じて企業は、自社の気候関連リスクへの理解度や対応力を外部に伝えることができます。これにより、環境意識の高い投資家からの資金調達が有利になったり、サプライチェーンパートナーとしての選択確率が高まったりする効果が期待できます。

開示が求められる理由

気候関連リスクの開示が重要視される背景には、金融システムの安定性確保があります。気候変動は全世界の企業に影響を与える可能性があり、その影響が適切に把握されなければ、金融市場全体の不安定化を招く恐れがあります。

投資家の視点では、気候関連リスクの情報は投資判断における重要な材料となります。ESG投資の拡大により、環境への配慮が投資収益に直結する時代となっており、企業の気候対応力は投資魅力度を左右する要因となっています。実際に、TCFD開示を行う企業への投資額は年々増加しており、開示企業と非開示企業の間で資金調達コストに差が生じるケースも報告されています。

規制面では、各国政府が気候関連開示の法制化を進めています。欧州連合では企業持続可能性報告指令により、一定規模以上の企業に対してTCFDに準拠した開示が義務化されています。日本においても、東京証券取引所のプライム市場上場企業に対してTCFD開示が実質的に求められるようになりました。

企業経営の観点では、開示プロセス自体が気候関連リスクの理解を深める機会となります。リスク評価やシナリオ分析の実施により、従来見えていなかった事業リスクや機会を発見し、経営戦略の改善につなげることができます。

今後の動向と企業への影響

気候関連リスクを取り巻く環境は急速に変化しており、企業にはより高度で包括的な対応が求められるようになります。

国際的な動向として、TCFD提言の内容を発展させたISSB(国際サステナビリティ基準審議会)による新たな開示基準の策定が進んでいます。この基準では、より詳細な定量的開示や、スコープ3排出量の開示強化が求められる見込みです。

技術面では、人工知能やビッグデータ解析の活用により、より精緻なリスク評価が可能となっています。衛星データを用いた物理的リスクの予測精度向上や、サプライチェーン全体のリスク可視化技術の発展により、企業はより効果的なリスク管理を実現できるようになります。

金融面では、気候関連リスクが信用格付けや融資条件により直接的に反映されるようになります。また、グリーンボンドやサステナビリティ・リンク・ローンなど、環境配慮型の金融商品の拡充により、積極的な気候対応が企業の資金調達に有利に働く傾向が強まります。

サプライチェーンにおいては、大企業が取引先に対してもTCFD開示や排出量削減を求める動きが拡大しています。これにより、中小企業においても気候関連リスクへの対応が競争力維持の必須条件となりつつあります。

まとめ

まとめ

気候関連リスクは、現代企業が直面する最も重要な経営課題の一つです。移行リスクと物理的リスクという2つの側面から企業活動に影響を与え、その対応如何が企業の将来性を左右します。

重要なのは、気候関連リスクを単なる脅威としてではなく、新たなビジネス機会創出のきっかけとして捉えることです。適切なリスク評価とシナリオ分析に基づく戦略的な対応により、企業は持続可能な成長を実現できます。

TCFDフレームワークに沿った情報開示は、リスク管理の透明性向上だけでなく、投資家や取引先との信頼関係構築にも寄与します。今後は開示の義務化が進む中で、早期の対応が競争優位性の確保につながるでしょう。

気候変動という全人類共通の課題に対して、企業が果たすべき役割はますます重要になっています。気候関連リスクへの真摯な取り組みは、企業の社会的責任を果たすとともに、長期的な企業価値向上を実現する道筋となるのです。

参照元
・環境省 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD) https://www.env.go.jp/policy/tcfd.html

・経済産業省 気候変動に関連した情報開示の動向(TCFD) https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/disclosure.html

・気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)TCFDとは https://adaptation-platform.nies.go.jp/private_sector/tcfd/about.html

・TCFDコンソーシアム TCFDとは https://tcfd-consortium.jp/about

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