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ゼロエミッションビルとは?ZEBの仕組みとメリットをわかりやすく解説

地球温暖化対策として注目されるゼロエミッションビル(ZEB)。建物で使うエネルギーを大幅に削減し、太陽光発電などでエネルギーを作り出すことで、年間のエネルギー収支をゼロにする革新的な建築物です。政府も2030年までの普及を目指しており、光熱費削減や快適性向上など多くのメリットが期待されています。

この記事で学べるポイント

  • ゼロエミッションビルの基本的な仕組みと省エネ・創エネの関係
  • ZEB Orientedから『ZEB』まで4段階の具体的な基準と削減率
  • 光熱費削減・快適性向上・不動産価値向上の3つの主要メリット

ゼロエミッションビル(ZEB)とは何か?基本的な仕組みを解説

ゼロエミッションビル(ZEB)とは何か?基本的な仕組みを解説ゼロエミッションビル(ZEB)とは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略称で、「ゼブ」と呼ばれます。快適な室内環境を保ちながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建築物のことです。

従来の建物は、照明・空調・給湯・エレベーターなどで大量のエネルギーを消費していました。ZEBでは、このエネルギー消費を根本的に見直し、環境負荷を大幅に軽減することを目的としています。

「省エネ」と「創エネ」の組み合わせでエネルギー収支をゼロに

ZEBの実現には、2つの重要な要素があります。まず「省エネ」では、高性能な断熱材や効率的な設備を導入して、建物が使うエネルギーを大幅に削減します。次に「創エネ」では、太陽光発電や太陽熱利用などの再生可能エネルギーでエネルギーを生み出します。

例えば、従来のオフィスビルが年間1,000万円の電気代を使っていた場合、省エネ技術で500万円まで削減し、太陽光発電で500万円分のエネルギーを作れば、実質的な光熱費はゼロになります。これがZEBの基本的な考え方です。

一次エネルギー消費量の考え方

ZEBの評価では「一次エネルギー消費量」という指標を使います。一次エネルギーとは、石油・天然ガス・石炭・水力・太陽光など、自然から直接得られるエネルギーのことです。

建物で実際に使う電気やガスは二次エネルギーと呼ばれ、一次エネルギーを加工して作られています。ZEBでは、この一次エネルギー換算で年間の収支を計算し、正味ゼロを目指します。計算対象は空調設備、換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機の5つの設備が基本となります。

ゼロエミッションビルの4つの段階と具体的な基準

ゼロエミッションビルの4つの段階と具体的な基準ZEBには、省エネと創エネの達成状況に応じて4つの段階が定義されています。これらは「ZEBシリーズ」と呼ばれ、それぞれ異なる基準を満たす必要があります。最も基本的なZEB Orientedから、最高レベルの『ZEB』まで、段階的に取り組むことができます。

各段階の基準は、基準となる建物と比較してどれだけエネルギー消費量を削減できたかで決まります。省エネ技術だけで削減する部分と、創エネ技術を加えた総合的な削減率の両方が評価されます。

ZEB Oriented(30〜40%削減)

ZEB Orientedは、ZEBシリーズの入門段階に位置します。省エネ技術により、基準となる建物に比べて30〜40%以上のエネルギー削減を達成した建物が該当します。この段階では創エネ設備の導入は必須ではありません。

ただし、単純に設備のグレードを下げて削減するのではなく、高性能な断熱材や効率的な空調システムなど、将来的にさらなる省エネにつながる技術の導入が求められます。新築建物に限定されており、延べ面積10,000平方メートル以上の大規模建築物が対象となります。

ZEB Ready(50%以上削減)

ZEB Readyは、省エネ技術により50%以上のエネルギー削減を達成した建物です。ZEB Orientedよりも高い省エネ性能が求められ、多くの場合、建物の外皮性能(断熱・遮熱性能)と設備性能の両方を大幅に向上させる必要があります。

この段階でも創エネ設備は必須ではありませんが、将来的に太陽光発電などを追加することで、上位のNearlyZEBや『ZEB』への移行が可能になります。多くの建物がまずこのZEB Readyを目標として取り組んでいます。

Nearly ZEB(75%以上削減)

Nearly ZEBは、省エネで50%以上削減した上で、創エネを組み合わせて合計75%以上のエネルギー削減を達成した建物です。この段階から太陽光発電などの創エネ設備の導入が本格的に必要になります。

例えば、省エネで60%削減し、太陽光発電で20%分のエネルギーを創出すれば、合計80%の削減となりNearly ZEBの基準を満たします。実用的なレベルでの脱炭素建築として、多くの企業が目標とする段階です。

『ZEB』(100%以上削減)

『ZEB』は最高レベルの段階で、省エネと創エネを合わせて100%以上のエネルギー削減を達成した建物です。年間を通してエネルギー収支がゼロ以下となり、余剰エネルギーが発生する場合もあります。

この段階では、建物自体が小さな発電所のような役割を果たし、地域のエネルギー供給にも貢献できます。技術的な難易度は高いものの、カーボンニュートラル社会実現の象徴的な建築物として注目されています。

ゼロエミッションビル化で実現できる4つのメリット

ゼロエミッションビル化で実現できる4つのメリットZEBを導入することで得られるメリットは、単なる環境対策にとどまりません。光熱費の削減、働く人の快適性向上、資産価値の向上、災害時の事業継続性強化など、経営面でも大きな効果が期待できます。これらのメリットは、初期投資を回収するための重要な要素となっています。

特に近年は、ESG投資の拡大や企業の脱炭素経営への注目が高まっており、ZEBは企業価値向上の重要な手段として位置づけられています。

光熱費の大幅削減効果

ZEBの最も分かりやすいメリットは、光熱費の大幅削減です。省エネ技術により建物のエネルギー消費量を50%以上削減し、さらに創エネ設備でエネルギーを生み出すことで、光熱費を実質ゼロにすることも可能です。

具体例として、延べ面積10,000平方メートルの標準的なオフィスビルでは、年間約2,000万円程度の光熱費がかかります。ZEB Ready(50%削減)を達成すれば年間1,000万円、『ZEB』を実現すれば光熱費をほぼゼロにできます。電力料金の上昇が続く中、この削減効果は年々大きくなっています。

また、光熱費削減により、建物オーナーは安定した収益を確保でき、テナントは運営コストを抑制できるため、双方にとってメリットがあります。

快適性・知的生産性の向上

ZEBでは省エネを追求する過程で、建物の断熱性能や空調システムの性能が大幅に向上します。これにより、室内温度のムラが少なくなり、快適で安定した室内環境を実現できます。

高性能な断熱材や窓ガラスの採用により、外気温の影響を受けにくくなり、夏は涼しく冬は暖かい環境を少ないエネルギーで維持できます。また、自然光を効果的に取り入れる設計や、個人の好みに合わせた空調・照明制御により、働く人の満足度向上にもつながります。

研究によると、快適な室内環境は従業員の集中力や創造性を高め、知的生産性の向上をもたらすことが分かっています。これは企業にとって、人件費効率の向上という間接的な経済効果をもたらします。

不動産価値の向上と事業継続性

環境性能の高い建物は、不動産市場でも高く評価される傾向があります。CASBEE(建築環境総合性能評価システム)やBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)などの認証制度において、ZEBは高い評価を獲得しやすくなります。

実際に、東京都内の調査では、環境認証を取得したオフィスビルは、一般的なビルと比較して賃料が高く設定される傾向が確認されています。また、入居企業にとっても、環境配慮型ビルへの入居は、ESG経営の取り組みとして対外的なアピール効果があります。

さらに、ZEBには太陽光発電などの創エネ設備が導入されているため、災害による停電時でも最低限の電力供給が可能です。これにより、事業継続性(BCP)の向上にも寄与し、企業のリスク管理強化につながります。

ゼロエミッションビルを実現するために必要な技術

ゼロエミッションビルを実現するために必要な技術ZEBの実現には、「まず省エネありき」の考え方が重要です。建物が使うエネルギーを可能な限り削減してから、不足分を創エネで補うという順序で技術を導入します。省エネ技術は「パッシブ技術」と「アクティブ技術」に分類され、それぞれが重要な役割を果たします。

技術選択では、初期投資額と省エネ効果のバランス、維持管理の容易さ、建物用途との適合性などを総合的に判断する必要があります。

パッシブ技術(建物外皮の高性能化)

パッシブ技術は、建物自体の性能を高めることで、設備に頼らずにエネルギー消費を削減する技術です。最も基本的で効果の高い対策として、建物外皮(壁・屋根・窓)の断熱・遮熱性能の向上があります。

高性能断熱材の使用により、夏の暑さや冬の寒さが室内に伝わりにくくなり、空調負荷を大幅に削減できます。また、Low-E複層ガラスなどの高性能窓を採用することで、熱の出入りを抑制しながら自然光を効果的に取り入れることが可能です。

その他にも、建物の配置や形状を工夫した日射制御、自然風を活用した自然換気システム、昼光利用による照明負荷削減などがあります。これらの技術は、機械設備に比べてメンテナンスが少なく、長期的な省エネ効果が期待できます。

アクティブ技術(高効率設備システム)

アクティブ技術は、空調・照明・給湯などの機械設備の効率を高める技術です。空調分野では、高効率ヒートポンプ、全熱交換器、VAV(可変風量)システムなどの導入により、大幅な省エネが可能です。

照明分野では、LED照明の採用に加えて、人感センサーや明るさセンサーと連動した自動調光システムの導入が効果的です。これにより、必要な場所に必要な分だけの照明を提供し、無駄なエネルギー消費を削減できます。

また、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)の導入により、建物全体のエネルギー使用状況を見える化し、最適な運用制御を行うことができます。これらの技術は、建物の用途や使用パターンに応じて細かく調整できる点が特徴です。

創エネ技術(再生可能エネルギー)

省エネ技術で削減しきれないエネルギーを補うのが創エネ技術です。最も一般的なのは太陽光発電システムで、屋上や壁面への設置により、日中の電力需要をカバーできます。

太陽熱利用システムは、給湯や空調用の熱源として活用でき、特に病院やホテルなど給湯需要の大きい建物で効果を発揮します。地中熱利用システムは、年間を通して安定した地中温度を利用した効率的な空調システムとして注目されています。

創エネ設備の選択では、建物の立地条件、屋根面積、用途特性などを考慮する必要があります。また、余剰電力の売電や、蓄電池システムとの組み合わせにより、エネルギーの有効活用を図ることも重要です。

ゼロエミッションビルの普及状況と政府の取り組み

ゼロエミッションビルの普及状況と政府の取り組み日本政府は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、ZEBの普及を重要な政策課題として位置づけています。第4次エネルギー基本計画では、「2020年までに新築公共建築物等で、2030年までに新築建築物の平均でZEBの実現を目指す」という明確な政策目標が掲げられています。

現在、環境省、経済産業省、国土交通省が連携して、ZEBの定義策定、技術開発支援、普及促進策を展開しています。特に、補助金制度や認証制度の整備により、民間での導入を積極的に支援しています。

政府目標と支援制度

政府は、ZEB化を促進するために複数の補助事業を実施しています。環境省の「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」では、新築・既存建築物のZEB化に対して建設費の一部を補助しています。

経済産業省では「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)実証事業」により、先進的なZEB技術の実証と普及を支援しています。これらの補助制度では、ZEBのレベルに応じて補助率が設定されており、『ZEB』で最大補助率、ZEB Orientedで最小補助率となっています。

また、建築物省エネ法の改正により、大規模建築物への省エネ基準適合義務が強化され、ZEB化への誘導措置も拡充されています。地方自治体レベルでも独自の支援制度を設ける動きが広がっており、普及環境の整備が進んでいます。

ZEBプランナー・リーディングオーナー制度

ZEBの実現には高度な専門知識が必要なため、政府は「ZEBプランナー制度」を創設しました。これは、ZEB実現に向けた技術支援を行う建設会社や設計事務所を登録・公表する制度で、現在100社以上が登録されています。

ZEBプランナーは、省エネ技術や創エネ技術に関する豊富な経験を持ち、建物オーナーに対してZEB化の提案から設計・施工までワンストップでサポートします。補助金申請においても、ZEBプランナーの関与が要件とされている場合が多く、制度の信頼性確保に寄与しています。

一方、「ZEBリーディング・オーナー制度」は、自社施設でZEBを実現した企業や、ZEB化の具体的計画を持つ企業を登録する制度です。これらの企業の取り組みを公表することで、ZEBの実例を広く周知し、普及拡大につなげています。

ゼロエミッションビル化の課題と今後の展望

ゼロエミッションビル化の課題と今後の展望ZEBの普及が進む一方で、導入コストの高さや技術者不足などの課題も明らかになっています。特に、中小規模の建物や既存建築物でのZEB化は技術的・経済的なハードルが高く、普及拡大のボトルネックとなっています。

しかし、技術進歩による機器コストの低下、補助制度の充実、社会全体の脱炭素意識の高まりにより、ZEBを取り巻く環境は着実に改善しています。

導入コストと投資回収の課題

ZEB化に必要な高性能断熱材、高効率設備、太陽光発電システムなどの初期投資は、一般的な建築物と比較して1.2〜1.5倍程度高くなる傾向があります。特に『ZEB』レベルを目指す場合、大容量の太陽光発電設備が必要となり、初期コストがさらに上昇します。

投資回収期間は、建物規模や用途、電力料金などにより変動しますが、一般的に15〜20年程度とされています。ただし、光熱費削減効果に加えて、補助金活用、税制優遇、不動産価値向上効果を含めて計算すると、実質的な回収期間は短縮されます。

今後は、機器の量産効果による価格低下、施工技術の標準化によるコスト削減、ファイナンス手法の多様化などにより、経済性の改善が期待されています。

2030年に向けた普及拡大の見通し

2030年の政府目標達成に向けて、ZEBの普及ペースは加速する見込みです。現在、新築建築物に占めるZEBの割合は数パーセント程度ですが、政策支援の強化と市場環境の改善により、急速な拡大が予想されています。

特に、大規模建築物では技術的・経済的な実現性が高く、先行して普及が進むと考えられます。また、既存建築物の改修によるZEB化も、長寿命化とセットで取り組まれることで、市場拡大が期待されています。

技術面では、AI・IoTを活用したエネルギー管理システムの高度化、新素材による建材性能の向上、蓄電池技術の進歩などにより、ZEBの実現がより容易になると予測されています。社会全体の脱炭素化とともに、ZEBは建築業界の新しいスタンダードとして定着していくでしょう。

参照元
・環境省 ZEB PORTAL – ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ゼブ)ポータル https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/

・環境省 ZEBの定義 https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html

・経済産業省 省エネポータルサイト ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル) https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/support/index02.html

・環境省 ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)について https://www.env.go.jp/earth/ondanka/zeb.html

・環境省 ZEB化のメリット https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/03.html

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