学生団体のプロジェクト支援をしていると、「飲食店でのフードロスをなくしたい」という声を毎年のように耳にします。ところが実際に飲食店へヒアリングに行くと、「わかってはいるけど、なかなか手が回らない」という答えが返ってくることが多い。消費者側も「残すのは悪いとわかっているが、量の調整が難しい」と感じています。双方が問題意識を持ちながら、なぜ変わらないのか——この問いを軸に、レストランをめぐるフードロスの現状と、実際に使える対策を整理してみます。
日本の外食産業で、どれくらいの食品が捨てられているのか
農林水産省と環境省が公表するデータによると、日本全体の食品ロス量は令和4年度(2022年度)に約472万トンと報告されています。これは日本人1人当たり毎日おにぎり約1個分に相当するとされる量です。そのうち事業系(食品製造業・外食産業・食品小売業・食品卸売業の合計)からの発生は約236万トンとされており、外食産業もこの数字の一端を担っています。
外食産業の食品ロスには大きく3つの発生源があります。①お客様の食べ残し、②仕込みすぎによる売れ残り(過剰製造)、③調理過程での規格外廃棄です。このうち「食べ残し」は来店者数や注文内容によって変動が大きく、飲食店側だけでは制御しづらい。一方「過剰製造」は経営判断に直結するため、改善余地が比較的大きい部分とも言えます。
支援してきたプロジェクトのなかで、ある学生チームが居酒屋チェーンのスタッフにインタビューした際、「ランチの仕込み量は経験則で決めているが、雨の日の来客数が読めず、毎週かなりの量を廃棄している」という話を聞きました。属人的な経験則に頼った運営が、ロスを構造的に固定してしまっているケースです。
なぜ飲食店はフードロス削減に踏み出しにくいのか
問題の根は深いと感じています。飲食業界は利益率が薄く、人手不足も慢性的です。フードロス削減の取り組みを始めるには、在庫管理システムの導入、スタッフへの教育、メニュー設計の見直しなど、短期的にはコストと手間がかかります。「やりたいけど余裕がない」というのが偽らざる声でしょう。
加えて、日本の飲食サービスには「豊富に並んでいることが”おもてなし”」という文化的背景があります。バイキング・ビュッフェ形式での大量陳列や、コース料理の品数の多さが集客の売りになっていることもあります。消費者が「見栄えのよさ」に価値を感じる限り、事業者もそこに応えようとしてしまう。需要と供給の両側に、ロスを生みやすい構造があるわけです。
「持ち帰りたい」のに言い出せない問題
食べ残しの持ち帰り(いわゆる「ドギーバッグ」)についても、日本では長らく普及が遅れてきました。「食中毒リスクへの懸念」「持ち帰りを申し出ることへの気まずさ」「容器準備のコスト」——三者三様の障壁が重なっています。消費者庁は2023年3月、「食べ残しの持ち帰りに関するガイドライン」を公表し、衛生管理上の基準と消費者・事業者双方の留意点を示しました。このガイドラインの公表は、持ち帰り文化を後押しする制度的な一歩と言えます。
また農林水産省は「mottECO(もってこ)」という持ち帰り推進ロゴ・サービス名を整備し、参加飲食店を増やす取り組みを進めています。2022年以降、全国の飲食店での導入事例が報告されていますが、まだ一部の飲食店にとどまっているのが現状です。
レストランが実践しているフードロス削減の具体策
前向きに動き出している飲食店には、共通するパターンがあります。施策を大きく3つの方向性に分けて見てみましょう。
①メニュー設計から見直す——少量・ハーフサイズの導入
「食べきれる量を選べる」設計は、食べ残しを根本から減らします。ハーフポーションや小鉢単位でのオーダーを可能にしているレストランでは、「残飯が明らかに減った」という声が聞かれます。価格設定を工夫すれば客単価も維持できます。プロジェクト支援の経験から言うと、この施策は「変化が見えやすい」ため、スタッフのモチベーションにもつながりやすいと感じています。
②需要予測と仕込み量の最適化
POSデータや天気・曜日・近隣イベント情報を組み合わせた需要予測を活用する飲食店が増えています。大手チェーンではAIを活用した仕込み量の自動算出を導入する動きもあります。中小の飲食店でも、過去の売上記録をExcelで管理するだけで「経験則」を「データ」に変えられます。シンプルな記録習慣が、過剰仕込みを減らす出発点になります。
③閉店前の余剰食品をフードシェアリングで活用
株式会社コークッキングが運営する「TABETE(タベテ)」は、閉店前の余剰食品をアプリで購入できるフードシェアリングサービスです。飲食店・惣菜店が当日の売れ残りを定価より低価格で出品し、近くにいる消費者が購入しに行く仕組みです。廃棄ゼロに直結するわけではありませんが、「捨てる前に誰かに届ける」という最後の一手として機能します。こうしたサービスを導入している店舗では、食品廃棄の削減と同時に閉店間際の来店客増加という副次的な効果も報告されています。
お客さんとして飲食店のフードロスに関わるとき——見落としがちな視点
フードロスは「事業者が解決すべき問題」と思いがちですが、消費者側の行動が与える影響も小さくありません。実際に支援プロジェクトでアンケートを取ると、「残してしまった理由」として多く挙がるのが「量が多すぎた」「注文しすぎた」の2点です。
宴会やグループでの食事では、「30・10(さんまる・いちまる)運動」が参考になります。乾杯後の最初の30分と、お開き前の10分を「食べることに集中する時間」にするという取り組みで、長野県松本市が2011年に始め、その後全国に広まりました。国も食べ残し削減の啓発手段として推奨しています。
また、持ち帰りを申し出ることへのためらいも、実は少しずつ薄れてきています。前述の消費者庁ガイドラインもそのひとつですが、「自分が持ち帰りを頼んでみたら、お店の人が笑顔で対応してくれた」という経験がSNSで共有されることで、雰囲気が変わっていく面もあります。「声に出すこと」が文化を変えるきっかけになります。
よく見られる3つの「中途半端な取り組み」パターン
50件以上のプロジェクト支援を通じて気になってきたのが、「フードロス削減を始めたが、続かなかった」という事例の多さです。原因を整理すると、次の3つのパターンが浮かび上がります。
「POPを貼っただけ」で終わる啓発
「食べ残しを減らしましょう」と書いたポスターをレジ横に置くだけでは、行動変容にはつながりにくいとされています。啓発のメッセージが「お願い」にとどまり、具体的な行動の選択肢(ハーフサイズを注文できる、持ち帰り容器を用意している等)が伴わないと、お客さんは「そうは言っても…」と感じるまま帰ります。
数字を測らずに「削減した気になる」
「廃棄が減った感じがする」という感覚は、実際の削減量を裏付けません。廃棄量をグラム単位でも記録する習慣がないと、取り組みの効果が見えず、改善のサイクルが回りません。測定なき改善は長続きしない、というのはフードロスに限らず社会課題全般に言えることです。
スタッフ全員に共有されない
オーナーや店長が意識を持っていても、現場スタッフに「なぜ削減するのか」が伝わっていないケースがあります。この場合、「余った食材を工夫して使い切るメニューを提案する」「持ち帰り希望のお客さんに積極的に声かけする」といった現場の判断が生まれにくくなります。共感を生む社内コミュニケーションが、取り組みの土台になります。
フードロスを「消費者の選択の問題」として捉えるなら、エシカル消費の考え方と重なる部分があります。
今日から試せる1アクション
次に飲食店を訪れたとき、「少なめにできますか?」と一言聞いてみてください。断られることもあるかもしれませんが、そのリクエスト自体が「量を選びたいお客さんがいる」という情報として飲食店に届きます。消費者の声は、メニュー設計を変える一つの動機になります。できれば食べ終わった後に食べ残しが出てしまった場合も、「mottECOの容器はありますか?」と聞いてみるのが次の一歩です。
フードロス削減を「飲食店の課題」と外から見るのではなく、注文する側の選択の中にも変える力がある——そのことを忘れずにいたいと思います。
まとめ|レストランのフードロスを減らすために知っておきたいこと
- 日本の食品ロスのうち外食産業も一定の割合を占めており、食べ残し・過剰製造・調理廃棄の3つが主な発生源とされている
- 消費者庁の「持ち帰りガイドライン(2023年)」や農水省の「mottECO」など、制度・仕組みの整備が進んでいる
- ハーフサイズ導入・需要予測・フードシェアリングの活用が、飲食店の実践的な削減策として注目されている
- 「POPだけ」「感覚だけ」「店長だけ」の取り組みは続きにくく、測定と現場への共有がカギになる
- 消費者として「量を選ぶ・持ち帰りを申し出る」という行動が、飲食店の文化を動かす一歩になる
フードロスについてもう少し広い視点で知りたい方は、食品廃棄と社会格差のつながりを取り上げた記事もあわせてどうぞ。

