冷蔵庫が壊れた、洗濯機の調子が悪い——そんなとき、店頭やネットで山ほどの選択肢を前にして「結局どれが環境にやさしいのか」がわからなくなった経験はないでしょうか。大型家電は一度選ぶと10年前後は使い続けるものなので、そのときの判断が家庭の電気代にもCO2排出量にも長く影響します。この記事では、統一省エネラベルの読み方から修理・リサイクルまで、次の買い替えで実際に使える視点を整理しました。数字の意味を1つずつ確認しながら、自分の暮らし方に合う基準を見つけていただければと思います。
「サステナな家電」を3つの軸で捉え直す
「サステナブルな家電」と聞くと高価格帯のモデルを思い浮かべる方もいますが、値段の高さがそのまま環境配慮を意味するわけではありません。実際に比較検討する際に役立つのは、稼働時の省エネ性能、長く使い続けられるかどうかの修理可能性、そして使い終えたあとの廃棄・リサイクルへの配慮という3つの軸です。この3つを頭に置いておくと、売り場やECサイトでスペック表を見たときに、どこに注目すればよいかが整理しやすくなります。以下の章では、この軸に沿って具体的な確認ポイントを見ていきます。
統一省エネラベルをどう読むか|星の数だけで判断しない
家電売り場で目にする「統一省エネラベル」は、経済産業省の制度にもとづき、省エネ性能を一目で伝えるために表示されています。ラベルには複数の情報が並んでいますが、なんとなく星の数だけを見て判断している方も多いのではないでしょうか。ここでは代表的な3つの表示項目を分けて確認します。
多段階評価(星マーク)は同カテゴリ内での相対評価
統一省エネラベルには1〜5つの星(一部製品は0.5刻み)で示される多段階評価が表示されます。これは同じ製品カテゴリの中での相対的な省エネ性能を示すものであり、星が多いほど同カテゴリの中で省エネ性能が高いという位置づけです。星5つが絶対的な完璧さを意味するわけではなく、評価基準自体が製品カテゴリごとの技術進化に合わせて見直されることもあるため、型落ちモデルの星3つと最新モデルの星3つでは水準が異なる場合がある点は覚えておきたいところです。
年間の目安電気代は「10年トータル」で比較する
星マークよりも生活実感に近いのが「年間の目安電気代」の数字です。これは一定の条件で使用した場合の1年あたりの電気代目安で、同カテゴリの製品を並べて比較するときに使いやすい指標です。仮に年間電気代が5,000円違う冷蔵庫が2台あるとすると、10年使い続ければその差は5万円に広がります。初期価格が多少高くても、ランニングコストで回収できるケースは珍しくないため、「今日の価格」だけでなく「10年間の総コスト」で見比べる視点を持つと、省エネ性能の高い製品を選ぶ理由がはっきり見えてきます。
省エネ基準達成率とグリーン購入法
ラベルにはもう一つ、「省エネ基準達成率」という数値も表示されています。100%が国の定める省エネ基準ちょうどの達成を意味し、それを上回るほど基準を超える性能ということになります。グリーン購入法(国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律)にもとづく調達でも、この達成率が高い製品が優先される傾向があり、公共機関の判断基準としても使われている数値です。個人の買い替えでも、同じ物差しとして活用できます。
省エネ性能だけでなく、暮らし全体の消費のあり方から製品選びを考えたい方は、エシカル消費の視点をまとめたこちらの記事も参考になります。
「長く使う」という選択肢|修理可能性を確認する
省エネ性能の高い製品への買い替えには意味がありますが、製品をつくるための資源やエネルギーも忘れてはいけない要素です。製造・輸送・廃棄まで含めたライフサイクル全体で考えると、今使っている製品を修理して使い続けることも、有力な選択肢のひとつになります。
補修用部品の保有期間をメーカーサイトで確認する
家電メーカーは、製品の生産終了後も一定期間、補修用部品を保有することが一般的です。この保有期間はメーカーや製品カテゴリによって差があるため、購入前にメーカー公式サイトの案内を確認しておくと、将来の修理対応の見通しが立てやすくなります。購入時に価格やデザインだけでなく、この情報もあわせて調べておく習慣をつけておくと安心です。
「修理する権利」をめぐる世界の動き
EU(欧州連合)では、製品を長く使い続けられるようメーカーに修理対応を義務づける「修理する権利」に関する指令が2024年に成立し、加盟各国での国内法制化が段階的に進められているとされています。日本でも家電の修理しやすさに関する関心は高まっており、こうした国際的な動向は、購入時にメーカーの姿勢を見極める参考材料になります。
修理とリユースを組み合わせて判断する
「修理代が高くて買い替えたほうが安い」と感じる場面は多いものですが、家電リサイクル料金や廃棄の手間まで含めて考えると、修理のほうがトータルで抑えられるケースも少なくありません。小型家電であれば、メーカー公認の修理拠点だけでなく、地域の修理カフェや自治体の修理支援の取り組みを利用できることもあります。環境省が推進する3R(リデュース・リユース・リサイクル)のうち、修理して使い続けるリユースは、廃棄物量を減らす直接的な方法のひとつです。
製品の「中身」を見る|素材とメーカーの情報開示
省エネ性能や修理可能性に加えて、製品そのものの素材や製造プロセスに目を向けると、選択の幅がさらに広がります。ここで手がかりになるのが、メーカーが自社の環境への影響をどれだけ開示しているかという視点です。
大手家電メーカーの多くは、年次のサステナビリティ報告書や環境報告書を公開しており、製造時のCO2削減目標や再生材料の使用率、サプライチェーンにおける人権配慮などを確認できます。情報開示に積極的なメーカーは、品質管理や長期サポートへの姿勢も比較的丁寧な傾向があるとされており、候補製品を絞り込んだあとにメーカーサイトの「サステナビリティ」ページをのぞいてみるという手順が現実的です。一部のメーカーは本体外装に再生プラスチックを採用した製品ラインを展開していますが、再生材の使用だけをもって環境性能が高いと判断するのではなく、省エネ性能や耐久性とあわせて総合的に見ることが大切です。
使い終えたあとの選択|家電リサイクル法と小型家電リサイクル法
サステナな家電選びは、購入時点だけで完結するものではありません。使い終えたあと「どう手放すか」も選択の一部です。
日本では家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)により、エアコン・テレビ・冷蔵庫(冷凍庫)・洗濯機(乾燥機)の4品目について、メーカーや小売業者によるリサイクルが義務づけられています。廃棄する際は、購入した販売店や買い替え先の販売店に引き取りを依頼するか、自治体が指定する引取場所に持ち込むのが基本的な流れです。リサイクル料金は品目・メーカーによって異なりますが、これを「廃棄コスト」ではなく「資源を循環させるための費用」と捉えると、家電選びの最終工程として自然に受け止めやすくなります。
スマートフォンや炊飯器、ドライヤーなどの小型家電は、小型家電リサイクル法(使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律)の対象です。多くの自治体がショッピングモールや公共施設に回収ボックスを設置しており、無料で投入できます。引き出しの奥に眠っている小型家電がないか、この機会に一度確認してみるとよいでしょう。
買い替えか修理か|自分で判断するための3つの問い
ここまでの視点を踏まえたうえで、実際に手元の家電をどうするか迷ったときに使える判断の材料を整理してみます。これは特定の調査結果ではなく、ここまでの基準を組み合わせた考え方の整理です。次の3つの問いに順番に答えてみてください。
- その製品はいつ製造されたか(10年以上前なら、当時の省エネ基準自体が現行より低い可能性が高い)
- 修理費用は本体価格のおおよそ何割か(目安として5割を超えるなら買い替えも検討対象になる)
- 買い替え候補の「年間の目安電気代」は、今の製品よりどれだけ低いか(差額×残りの使用予定年数で比較する)
この3つを順に確認すると、「なんとなく古いから」ではなく、数字にもとづいて買い替えか修理かを選べるようになります。答えが割れる場合は、修理を優先しても数年のうちに省エネ性能の高い製品へ切り替えるという「時間差の選択」も現実的な落としどころです。
よくある3つの誤解と実際のところ
サステナな家電選びをめぐっては、共通して見られる誤解がいくつかあります。ここでは代表的な3つを取り上げます。
誤解1|節電モードにすれば古い機種でも大丈夫
節電モードの使用で消費電力が下がるのは事実ですが、10年以上前の機種と最新機種では、そもそもの基準効率が大きく異なる場合があります。古い冷蔵庫や洗濯機は設計時点での省エネ基準自体が現行より低いため、節電モードを使っても最新機種の通常運転より電力消費が多いケースが起こり得ます。10年以上使っている大型家電は、買い替えの検討対象として一度見直す価値があります。
誤解2|高い製品を買えばサステナになる
価格と省エネ性能はある程度相関しますが、高額であることが必ずしもサステナな選択を意味するわけではありません。多機能モデルは使い方によって消費電力が増えることもありますし、不要な機能を多く搭載することで製造コストや廃棄時の複雑性が増す可能性もあります。自分の使い方に必要な機能を持つ製品を、省エネ性能で選ぶというシンプルな基準のほうが、結果としてサステナな選択につながりやすいといえます。
誤解3|中古家電はサステナではない
中古家電を選ぶことは、製品の寿命を延ばして廃棄物を減らすという点で、サステナな選択の一つといえます。ただし古い中古品は省エネ性能が低い場合があるため、製品の年式と省エネ基準をあわせて確認することが欠かせません。比較的新しい年式の中古品であれば省エネ水準も一定以上のものが多く、選択肢として十分検討できます。
暮らしの中でモノを長く使う工夫や手放し方は、家電に限った話ではありません。日々の買い物や持ち物の見直し方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

今日から試せる1アクション|まずラベルを1枚読んでみる
ここまで読んで「確認することが多い」と感じた方に、ひとつだけお伝えしたいことがあります。次に家電売り場に行ったとき、あるいはメーカーサイトの製品ページを開いたとき、統一省エネラベルを探して「年間の目安電気代」の数字を別の製品と比べてみてください。それだけで十分です。購入するかどうかはそのあとの話で構いません。まず「省エネ性能を比べる習慣」を一度つけておくと、次の買い替えの判断が今よりずっとしやすくなります。
まとめ|サステナな家電選びの4つのポイント
サステナな家電を選ぶうえで押さえておきたいポイントを整理しました。
- 統一省エネラベルの「年間の目安電気代」と「多段階評価(星)」を比べて選ぶ
- 補修用部品の保有期間を確認し、修理して長く使える製品かどうかを見極める
- サステナビリティ情報を開示しているメーカーかどうかをチェックする
- 使い終えたあとは家電リサイクル法・小型家電リサイクル法に沿って適切に手放す
「環境にいい家電を選ばなければ」と身構える必要はありません。まずは統一省エネラベルの「年間の目安電気代」を1枚読んでみる——次の買い替えのとき、それだけ試してみてください。
本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。
参考文献
- 経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能表示制度(統一省エネラベル)」(https://www.enecho.meti.go.jp/)
- 経済産業省「家電リサイクル法」関連情報(https://www.meti.go.jp/)
- 環境省「小型家電リサイクル法」(https://www.env.go.jp/recycle/smallappliance/)


