国際女性デーの翌日、あらためて問い直したい数字があります。「148カ国中118位」。世界経済フォーラム(WEF)が2025年6月12日に公表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2025」における日本の順位です。G7諸国の中でいちばん後ろ。しかも、この位置は前年から変わっていません。数字が示すのは「停滞」という現実です。では、なぜ日本はここから動けないのでしょうか。その答えの多くは、「政治」という領域にあります。
日本の低迷を引き起こす「政治参画の壁」
WEFが2025年6月12日に発表したグローバル・ジェンダー・ギャップ報告書では、日本は148カ国中118位という結果でした。
そして
この順位はG7諸国の中で最下位となっています。
指数を構成するのは「経済参加・機会」「教育達成度」「健康・生存」「政治的エンパワーメント」の4分野です。日本は教育や健康の分野では比較的スコアが高い一方、政治分野の遅れが全体の足を引っ張り続けています。
2025年の報告書では、東アジア・太平洋地域の政治参画サブ指数において、50%の水準を超えたのはニュージーランド(約60%)のみで、日本はスコアが10%未満の国々と並んでいます。
国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)の委員を務める秋月弘子亜細亜大教授は、2026年3月8日の国際女性デーを前に行われたインタビューの中で、「政治分野が日本のジェンダー平等を阻害している」と指摘し、ジェンダー平等に向けた専門の国会委員会や省庁の設置を強く求めました。
国連CEDAW「最終見解」が突きつけた勧告
「世界の女性の憲法」とも呼ばれる女性差別撤廃条約は1979年に国連で採択され、日本を含む多くの国が批准しています。CEDAW委員会は各国の進捗を監視し、取り組みが不十分な場合には勧告して是正を促す役割を担っています。2024年秋には日本政府を審査し、勧告を含む「最終見解」を公表しました。
その最終見解が求めたのは、具体的かつ踏み込んだ内容でした。
選択的夫婦別姓の導入に加え、男女の賃金格差の是正、そして配偶者間の性暴力をめぐる問題への対応などが求められました。さらにCEDAW委員会は、政治・行政・司法・企業の幹部における女性代表性の大幅な改善を求めました。
秋月教授は
「日本のジェンダー不平等は構造的であり、人々の意識に深く根付いている。強力な法律と政策で一気に社会を動かさなければならない」
と訴えています。
「118位」に変化なし|停滞の背景にあるもの
M字カーブの緩和など女性活躍が推進されているものの、L字カーブや賃金格差などの問題が残っており、2025年のジェンダーギャップ指数は0.666、148カ国中118位で、政治・経済の面でのギャップの大きさが目立っています。
なぜ政治分野での変化はこれほど遅いのでしょうか。背景には複数の要因が指摘されています。日本の選挙制度では、候補者を立てるかどうかは各政党の判断に委ねられており、法的な強制力をもつクオータ制は導入されていません。2018年に「候補者男女均等法」(政治分野における男女共同参画の推進に関する法律)が制定されましたが、これはあくまで努力義務にとどまっています。
さらに、長時間労働・夜間の政治活動・地方との往復といった「政治家の働き方」そのものが、家庭での役割を多く担う女性にとってのハードルになっているという見方もあります。制度の問題だけでなく、社会構造そのものとの複合的な課題が絡み合っているのです。
世界との差を「見える化」することの意味
2025年のグローバル・ジェンダー・ギャップ報告書では、内閣の女性閣僚数が2人に減少したことが、日本の順位維持(118位)の要因の一つとなりました。
このように、政策決定の場への女性参画の度合いは、指数に直結します。ただし、指数の順位それ自体が目的ではありません。重要なのは、指数を「現実を直視するためのツール」として使い、具体的な政策に結びつけることです。
CEDAW委員会のような国際的な監視機能が日本政府に勧告を出せるのも、条約の批准によって生まれた「国際的な説明責任」があるからです。
秋月教授は「日本人は現実を直視すべきだ」と強調し、ジェンダー平等のために専門に対応する国会の委員会や省庁の設置を強く求めています。
ジェンダー平等は「女性の問題」ではない
注意したいのは、ジェンダー平等の問題を「女性だけの課題」として捉える視点の限界です。意思決定の場に多様な視点が加わることは、社会全体の政策の質を高め、より多くの人々の利益につながるという研究知見は国際的にも蓄積されています。
専門家の多くは、ジェンダー平等は文化的な責任にとどまらず、最も健全で最適化された経済を実現するための不可欠な条件であり、人口の半分が制限された機会しか持てない状況では、持続可能な開発目標の達成も困難になると指摘しています。
政治への女性参画が進めば、育児・介護・医療・防災など、従来「政策の隙間」に落ちやすかった課題が取り上げられやすくなるという視点も重要です。
私たちができること|構造を知り、声をあげる
国際的な勧告や指数の改善を「政府の仕事」と他人事に捉えるだけでは、変化は生まれません。まず私たち一人ひとりにできることとして、選挙時に候補者の政策・構成への関心を高めること、企業や地域コミュニティでのジェンダー視点の取り込みを求めていくことが挙げられます。
「118位」という数字は、日本社会が直面している課題の深さを示しています。しかしそれは同時に、変化の余地がまだこれだけあるという可能性の数字でもあります。国際女性デーの翌日、この現実と向き合うことから、小さな変化は始まるのかもしれません。

