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飢餓をゼロ

世界の飢餓人口はどのくらい?SDGsの「飢餓をゼロに」は2030年までに達成できる?

世界の飢餓人口はどのくらい? SDGsの「2030年までに飢餓をゼロに」は達成できる?

飢餓とは、長期間にわたって十分な量の食料を得られず、体を動かし健康を保つために必要なエネルギーが不足し続けている状態を指します。国連食糧農業機関(FAO)などの報告によると、世界では今も7億人を超える人が慢性的な栄養不足に直面していると報告されています。SDGs(持続可能な開発目標)の目標2「飢餓をゼロに」は2030年までの達成を掲げていますが、現状の延長線では目標とのあいだに大きな差が残ると指摘されています。世界の飢餓人口の最新の規模と、日本を含む各地の取り組み、そして私たちにできることを整理します。

この記事で学べること

  • 世界の飢餓人口の最新の規模と地域ごとの偏り
  • SDGsの「2030年までに飢餓をゼロに」が達成できるかどうかの現状評価
  • 飢餓を引き起こす複合的な原因(紛争・気候変動・経済ショック)
  • 「飢餓」と「食料不安」の違いという誤解されやすいポイント
  • 日本の食品ロス削減の取り組みや、私たちが今日からできる行動

世界の飢餓人口はどのくらいか 最新データで見る規模

FAO・WFP・ユニセフなど国連機関が毎年まとめている「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」報告書によると、世界の飢餓人口はコロナ禍を境に大きく積み上がり、その後も高止まりが続いています。2019年時点では約6億人台だった推計が、パンデミックのさなかの2020年には8億人を超える水準まで急増し、その後も2022年から2023年にかけて7億人台前半で推移していると報告されています。これは世界人口のおよそ11人に1人にあたる規模です。

コロナ禍前の水準と比較すると、依然として1億人以上多い人々が飢餓状態にあるとみられ、パンデミックによる打撃から十分に回復しきれていないことがうかがえます。食料価格の高騰や各国の財政余力の低下が、支援の縮小という形で弱い立場の人々に跳ね返っている構図です。

アジアとアフリカに集中する飢餓人口

地域別に見ると、人口規模の大きいアジアに世界の飢餓人口の半数以上が集中していると報告されています。一方で、人口に占める割合でみるとアフリカの深刻さが際立ちます。アフリカでは全人口のおよそ5人に1人が栄養不足の状態にあるとされ、これは世界平均の2倍以上の水準です。紛争や気候変動の影響を受けやすいサハラ以南アフリカでは、他地域に比べて改善のペースが鈍いことが指摘されています。

増加から高止まりへ 変化してきた局面

近年の報告書を比較すると、2020年から2021年にかけての急増局面から、2022年以降はおおむね横ばいという局面に変化してきたことが読み取れます。これは状況が改善したというより、紛争や物価高といった押し下げ要因と、人道支援や農業支援といった押し上げ要因がせめぎ合い、膠着状態にあると理解するほうが実態に近いといえます。

SDGsの「飢餓をゼロに」は2030年までに達成できるのか

SDGsの目標2は、2030年までにあらゆる形態の飢餓を終わらせることを掲げています。しかし現在の進捗ペースのままでは、2030年時点でも数億人規模の人々が慢性的な栄養不足の状態に置かれると推計されており、国連機関自身がこのままでは目標達成が困難であるという見通しを示しています。FAOなどの報告書では、現状のトレンドが続いた場合、2030年になっても世界の半数近くがアフリカに集中する形で、相当数の人々が栄養不足から抜け出せないままになると警鐘が鳴らされています。

目標までの距離が大きいのは、飢餓の削減が食料の絶対量だけの問題ではないためです。輸送網や保管設備、購買力、紛争による分断など、食料が必要な人に届くまでの経路そのものに弱点が積み重なっており、生産量を増やすだけでは解決しない構造になっています。

なぜ目標達成が難しいと判断されているのか

国連の報告書は、2015年のSDGs採択以降、一時は飢餓人口が緩やかに減少していた流れが2014年ごろから頭打ちになり、コロナ禍でさらに悪化したという経緯を指摘しています。達成が難しいと判断される背景には、紛争の長期化や多発、干ばつや洪水の頻発、そして物価高や通貨安による輸入食料へのアクセス悪化という、複数の要因が同時に重なっている現実があります。単一の対策では押し戻せない複合危機であることが、目標達成を遠ざけている最大の理由です。

完全な達成ゼロではなく「前進」をどう測るか

達成が困難だからといって努力が無意味というわけではありません。支援や制度改善によって飢餓人口の増加ペースを抑えられれば、それ自体が目標に近づく前進です。各国政府やNGOの現場では、最終ゴールの数字だけでなく、どれだけ悪化を食い止められたかという視点で進捗を評価する動きも広がっています。

飢餓を引き起こす複合的な原因

飢餓の背景にある要因は一つではなく、互いに絡み合って状況を悪化させています。国連機関の分析では、主に紛争、気候変動、経済的なショックという3つの要因が繰り返し指摘されています。

紛争による食料システムの崩壊

紛争が起きた地域では、農地や灌漑設備が破壊され、物流が寸断されることで、通常の食料生産と流通の仕組みそのものが機能しなくなります。人々は農地を離れて避難を強いられ、人道支援に頼らざるを得なくなりますが、その支援自体も安全な通行路の確保が難しく、必要な量が届きにくいという悪循環が生じます。2024年以降も、紛争の影響を受ける地域で深刻な食料不足が繰り返し報告されています。

気候変動がもたらす干ばつと洪水

干ばつや洪水、熱波といった極端な気象現象は、天水に頼る小規模農家の収穫を直撃します。気候変動の影響でこうした異常気象の頻度や強度が増していると指摘されており、特にサハラ以南アフリカや南アジアの農村部では、一度の自然災害が一年分の収入と食料を同時に失わせる打撃になります。

物価高と経済的なショック

食料やエネルギーの国際価格が上昇すると、自国で穀物を十分に生産できず輸入に依存する国ほど打撃が大きくなります。通貨安が重なればさらに輸入コストが膨らみ、政府の財政余力を圧迫して、国内の食料支援や農業支援に回せる予算が縮小するという連鎖も起きています。

「飢餓」と「食料不安」は何が違うのか

飢餓という言葉を聞くと、多くの人は大規模な飢饉や餓死といった極端な状況を思い浮かべるかもしれません。しかしFAOが報告書で使う「飢餓(栄養不足)」は、体を維持するために必要な最低限のエネルギーを慢性的に摂取できていない状態を指す統計上の定義であり、必ずしも目に見える餓死者が出ている状況だけを意味しません。日々の食事の量がわずかに足りない状態が何年も続くことも、この定義に含まれます。

一方でFAOはより広い概念として「食料不安」も測定しています。食料不安は、栄養不足になるかどうかにかかわらず、安定して十分な量や質の食料を入手できるか不確かな状態を指し、世界全体でみると食料不安を抱える人の数は飢餓人口よりはるかに多いと報告されています。十分な蓄えがなく、収入が少し減っただけで食事の量や質を落とさざるを得ない人々まで含めると、対象は数十億人規模に広がります。

この違いを知ることには実践的な意味があります。「自分の身近には飢餓はない」と感じていても、経済的な事情で食事の質を落とさざるを得ない「隠れた食料不安」は先進国を含めて広く存在します。日本国内でも、子ども食堂やフードバンクを利用する家庭があることは、この食料不安の一つの表れだといえるでしょう。飢餓をゼロにするという目標を遠い国の話として片付けず、身近な食の格差とも地続きの問題として捉える視点が、誤解を防ぐ鍵になります。

日本の食品ロス削減と海外支援の取り組み

日本は海外への人道支援と、国内の食品ロス削減の両面から、飢餓や食料問題に関わっています。

政府とWFPを通じた国際的な食料支援

日本政府は国連世界食糧計画(WFP)をはじめとする国際機関に対して、紛争や自然災害の被災地向けの緊急食料支援のための資金を継続的に拠出しています。外務省やJICAを通じた支援は、難民キャンプでの食料配給や、学校給食支援プログラムなど、現地の実情に応じた形で行われています。

食品ロス削減推進法と企業の取り組み

国内では2019年に食品ロス削減推進法が施行され、家庭や事業者から出る食品ロスを減らす取り組みが制度として位置づけられました。農林水産省の推計では、日本の食品ロス量は近年500万トン前後で推移しているとされ、政府は2030年度までに2000年度比で半減させる目標を掲げています。

企業の取り組みも広がっています。コンビニエンスストアや小売各社は、需要予測の精度を高めて発注量を調整したり、販売期限が近づいた商品を値引きして売り切ったりする取り組みを進めています。食品メーカー各社は、賞味期限の表示を年月表示に簡略化したり、納品期限を緩和したりすることで、まだ食べられる食品が廃棄される機会を減らす工夫を重ねています。

また、認定NPO法人のセカンドハーベスト・ジャパンは、企業や個人から寄付された食品を必要とする人や施設に届けるフードバンク活動を続けています。テーブル・フォー・ツー・インターナショナルは、社員食堂などでの健康的な食事の購入を通じて、売上の一部をアフリカやアジアの学校給食支援につなげる仕組みを運営しています。こうした活動は、国内の食品ロス削減と海外の栄養改善を同時に意識できる取り組みとして、企業の社員食堂や自治体の学校給食でも採用が広がっています。

飢餓が子どもにもたらす長期的な影響

栄養不足は大人にとっても深刻ですが、成長期の子どもにとっては将来にわたる影響がより大きいと報告されています。ユニセフの分析では、発育に必要な栄養を十分に摂れない状態が続くと、身長や体重の伸びが妨げられるだけでなく、脳の発達にも影響が及び、学習能力や将来の就労機会にまで影を落とす可能性があると指摘されています。

隠れ飢餓と免疫力の低下

ビタミンAや鉄分、亜鉛といった微量栄養素が不足する状態は「隠れ飢餓」と呼ばれ、見た目の体格には現れにくいまま子どもの免疫力や集中力を低下させる要因として知られています。栄養状態が悪い子どもは、下痢や肺炎といった本来であれば命に関わらないはずの感染症でも重症化しやすく、途上国における乳幼児の死亡要因の背景に栄養不足が関わっているケースが多いと指摘されています。

最初の1000日が持つ重要性

妊娠期から2歳の誕生日までのおよそ1000日間は、脳と体の発達が最も急速に進む時期であり、この期間の栄養状態が生涯の健康や学力に長く影響すると考えられています。そのため国際機関の飢餓対策では、緊急の食料配布だけでなく、妊産婦や乳幼児を対象にした栄養支援プログラムが優先度の高い分野として位置づけられています。幼少期に損なわれた栄養状態は成長後に完全には取り戻しにくいとされ、早期の介入が重視されている理由はここにあります。

私たちにできること

飢餓という言葉の規模の大きさから、個人にできることは限られていると感じるかもしれません。しかし、日常の選択の積み重ねが支援につながる仕組みは複数存在します。

まず挙げられるのが、WFPやユニセフ、認定NPO法人といった団体への寄付です。少額からの継続的な寄付でも、緊急食料支援や学校給食支援、栄養改善プログラムの原資になります。どの団体にどう使われているかを公式サイトの活動報告で確認したうえで選ぶと、納得感を持って続けやすくなります。

次に、フェアトレード認証のついた食品や原料を選ぶという方法もあります。生産者に適正な対価が支払われる仕組みを選ぶことは、慢性的な貧困から抜け出せずにいる農家の収入を安定させ、結果として飢餓のリスクを下げることにつながります。

そして、自分自身の食品ロスを減らすことも、間接的ではありますが無関係ではありません。食べきれる量を買う、冷蔵庫の中身を把握してから買い物をするといった小さな習慣は、世界全体で生産される食料のうち廃棄される割合を下げる動きの一部になります。まずは1つだけ、寄付でも、フェアトレード商品の購入でも、冷蔵庫の中身を確認してから買い物に行くことでも、自分が続けやすいものから試してみてください。

まとめ

世界の飢餓人口は、コロナ禍を境に大きく積み上がった水準から十分には減らせておらず、7億人を超える規模で高止まりが続いていると報告されています。SDGsが掲げる「2030年までに飢餓をゼロに」という目標は、現状の延長線上では達成が難しいと国連機関自身が指摘しており、紛争・気候変動・経済的なショックという複数の要因が同時に重なっていることが背景にあります。

一方で、飢餓と食料不安という言葉の違いを知ることは、この問題を遠い国の話として片付けず、身近な食の格差ともつながる課題として捉え直すきっかけになります。日本国内でも、食品ロス削減の制度や企業の取り組み、フードバンクや学校給食支援の仕組みなど、関われる接点は少なくありません。

数字の大きさに圧倒されるよりも、まず自分が続けられる関わり方を一つ選ぶことが、遠回りのようで確実な一歩になります。

  • 世界の飢餓人口は7億人規模で高止まりし、世界人口のおよそ11人に1人にあたる
  • アフリカでは人口の約5人に1人が栄養不足とされ、世界平均の2倍以上の深刻さ
  • 2030年までの「飢餓ゼロ」達成は、現状のペースでは困難と国連機関が指摘
  • 原因は紛争・気候変動・経済ショックが絡み合う複合要因
  • 日本では食品ロス削減の制度や企業の取り組み、寄付やフェアトレードなど個人の関わり方も多様にある

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事

ICU卒業後、出版社にて女性誌の編集・ライティングに約10年間従事。その後NPOや財団法人で機関誌の編集・執筆を担当するなかで、社会貢献・慈善活動についての知見を深める。米・ペンシルバニアに滞在経験があり、現地の人々の寄付活動の熱心さに感銘を受ける。得意分野は、SDGs、多様性、フィランソロピー。

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