近年、注目を集めている食の考えに「プラントベース」があります。
プラントベースとは、植物由来の原料で作られた食品や食生活のことです。
スーパーやコンビニエンスストアなどでも、プラントベースの食品が陳列されるようになりました。
今回は、プラントベースの概要を解説するとともに、世界中で注目される理由や導入例を詳しく解説します。
プラントベースとは
プラントベースは、「plant(植物)」と「Based(由来)」という言葉で成り立っています。
厳密に定義されているわけではありませんが、植物由来の食品や食生活を表すケースが一般的です。
例えば、本物の肉のように作られた大豆ミートや牛乳の代わりに使われることの多いアーモンドミルクなどが該当します。
ただし、ほとんどが植物由来であっても、一部に魚や肉のエキスが含まれているとプラントベースとはいいません。
プラントベースとヴィーガンの違い
プラントベースとよく似た言葉に、「ヴィーガン」があります。
そもそもヴィーガンは、完全菜食主義者を指す言葉です。
そのため、卵や乳製品を始め、動物由来のものは一切取り入れない食生活を意味します。
また、ヴィーガンを選択する人の多くは、動物愛護や脱動物搾取という観念を持っているのが特徴です。
一方、プラントベースは、基本的に健康志向や環境保護を意識した食生活であり、ヴィーガンとは目的が異なります。
そのため、プラントベースの食生活を取り入れている人の中には、動物性のものを食べるケースも少なくありません。
プラントベースが注目される理由
プラントベースが世界的に注目され始めた要因として、環境に関する問題が挙げられます。
なかでも、「温室効果ガス」「水資源」「食料問題」は、プラントベースに大きく関わる問題といえるでしょう。
続いては、これらの理由に焦点を当てて、プラントベースが注目される理由を解説します。
温室効果ガス
農林水産省によると、日本の温室効果ガスの排出量は12.4億トンとされており、そのうち農林水産分野からは約5,001トンが排出されています。
特に、家畜の排泄物から発生するメタンは、地球温暖化を進める要因のひとつです。
メタンの発生源は家畜に限ったことではありませんが、プラントベースを導入することで家畜の数が減れば、温室効果ガス削減にもつながります。
水資源
畜産では、莫大な量の水が必要です。
例えば、1kgの牛肉を出荷するためには、15,415ℓもの水が必要とされています。
いくら水資源の豊かな日本とはいえ、近年の災害を考えると、いつ水が足らなくなってもおかしくない状況です。
世界に目を向ければ、水資源が無くて困っている国はたくさんあります。
しかし、日本で流通している牛肉の多くは海外から輸入しているものであり、世界でおこる水資源に関する問題も無関係ではありません。
そこで、プラントベースを導入すると、結果的に水資源を守ることにもつながります。
参照元:水を使いすぎる畜産 ウォーターフットプリント|NPO法人アニマルライツセンター
食料問題
国際連合広報センターによると、2050年の世界における人口は97億人になるといわれています。
2015年の段階で75億人だった人口から考えると、実に20億人近く増加するわけであり、食糧が足りなくなることも予想されるでしょう。
また、日照りや洪水といった自然災害をもたらす地球温暖化は、この先ますます厳しくなり、農作物が育ちにくい環境になることも懸念されています。
このまま肉類の供給が増加していけば、飼料となる穀物もますます必要です。
しかし肉類からプラントベースに移行し、タンパク質を植物から取るようになると、食料問題の解決につながります。
参照元:国際連合広報センター
プラントベースの取り組み事例
近年、プラントベースは多くの有名企業で導入されています。
続いては、「IKEA」と「2foods」」の取り組みについて見ていきましょう。
IKEA
北欧家具メーカーであるIKEAが提供するレストランでは、2020年からプラントベースのメニューが始まりました。
また、日本法人イケア・ジャパン株式会社でも世界に倣って、2021年9月3日からプラントベースフードの提供を始めています。
IKEAでは色に限らず、循環型経済と気候変動に関する取り組みを行っており、この度のプラントベースフードもその一環です。
参照元:植物由来のプラントカツカレーやプラントロールキャベツも! 地球にも体にもやさしい イケアにプラントベースフードの新メニューが登場!|IKEA
2foods
ウェルビーイング事業を手がける株式会社TWOのサービスに、健康のためのジャンクフード「2foods」があります。
やみつきになるジャンクフードでありながら、プラントベースのヘルシーさを兼ねあわせた現代に見合った食サービスです。
ジャンクフードといえば、健康とは程遠いイメージがありますが、2foodsではプラントベースに加えて、グルテンフリーや白砂糖不使用など健康を意識した素材が使われています。
2022年10月現在は麻布十番と六本木に店舗展開をしており、気軽にプラントベースを体験してみたい人におすすめのお店といえるでしょう。
参照元:2foods公式HP
プラントベースを生活に導入するポイント
プラントベースは、今日からでも生活に導入できる考え方です。
しかし、ポイントを押さえておかなければ、栄養バランスが偏ったりアレルギーになったりする可能性があります。
続いては、プラントベースを導入する際に気をつけたいポイントを見ていきましょう。
原材料を確認する
プラントベースという考え方が浸透しつつある昨今、スーパーやコンビニで売られている食材にもプラントベースのものが増えてきました。
しかし中には、動物性由来のものが含まれているケースもあるので注意が必要です。
プラントベースという言葉に踊らされることなく、必ずラベルを見て原材料を確認しましょう。
例えば、プラントベースのハンバーグと書かれていても、つなぎに卵が使われている可能性があります。
ベースは大豆が使われているから安心していたら、実は卵が入っていて困ったということも考えられるでしょう。
特にアレルギーを持っている場合は、ラベルデザインだけではなく、細かく確認して見落とさないことが大切です。
栄養の偏りに注意する
動物性の食品にも、私たちの健康に欠かせない成分があります。
例えば、免疫機能に重要な役割を果たすアミノ酸や血液に必要なビタミンB12などは、動物性食品から摂取する栄養素です。
あまりにもプラントベースに偏りすぎると、必要な栄養素が足りなくなる可能性も否めません。
せっかく健康や環境のことを考えてプラントベースを食べても、体調を崩していては本末転倒です。
ヴィーガンでない場合は、プラントベースの食品と動物性食品のバランスを考えて摂取することをおすすめします。
動物性食品が食べられない場合は、サプリを活用して必要な栄養素を補うようにしましょう。
まとめ
プラントフードは、健康面だけでなく環境的にも大きな役目を果たす食の考え方です。
全ての食事をプラントフードにしなくても、一日のうち1食でもプラントフードに変えるだけで、世界の環境問題に貢献していることになるでしょう。
美味しい食事をとりながら、環境問題に貢献できれば、一石二鳥といえます。
とはいえ、プラントフードといえば、「不味そう」「質素」というイメージを持たれることも多いでしょう。
しかし、近年は開発が進み、植物由来とは思えないほどの食品も増えています。
日頃の食事でも、取り入れ方次第で、動物性の食事と変わりなく満足できるメニューが作れるでしょう。
必要な栄養素を補うことを忘れずに、プラントベースも踏まえてバランスのいい食生活を目指すことをおすすめします。