「安いから」「流行っているから」という理由で服を選ぶとき、その服がどこで、誰によって、どのような環境のもとで作られたかを考える機会は、なかなかありません。ファッション産業は世界の温室効果ガス排出量の約8〜10%を占めるとされ、航空と海運を合わせた規模に匹敵すると国連環境計画(UNEP)が指摘しています。この現実と向き合いながら、環境・人・社会への影響を減らそうとする動きが「エシカルファッション」です。この記事では、エシカルファッションの意味・背景から、国内外の注目ブランド14選、選び方のポイントまでをまとめました。
- エシカルファッションとは何か
- ファッション産業が抱える環境・社会問題
- エシカルファッションを選ぶ3つの視点
- 国内外の注目エシカルファッションブランド14選
- BRING|古着回収で服を循環させる
- PRISTINE|オーガニックコットンと日本の職人技
- tennen|ゴミにならず土に還る服
- MAITO|草木染めと伝統職人の技
- SOLIT!|多様なニーズに応える完全受注型ファッション
- rrrrrrr(ナインアール)|製造工程を”見える”服づくり
- シサム工房|フェアトレードで途上国の自立を支援
- PAKA|アンデスの先住民とアルパカ素材をつなぐ
- ecuvo,|野菜で染める永久定番ウェア
- 兆(きざし)|フェアトレード×京黒染めのMade with Japan
- patagonia|環境活動に継続的に関わるアウトドアブランド
- EQUALAND|生産者の署名が入る「信用タグ」
- BOODY|オーガニックバンブーで地球に優しい肌着
- Root|130年の職人技が生む長く使える鞄
- 消費者として今日からできる行動
- エシカルファッションとSDGs|関わる複数のゴール
- まとめ|次の1着から選ぶ基準を変えてみる
エシカルファッションとは何か
「エシカル(ethical)」は「倫理的な」を意味する英語で、エシカルファッションとは環境・人・社会への影響を考慮したファッションの選択・生産・消費のあり方を指します。
具体的には次のような要素が含まれます。
- 原材料の調達段階での環境負荷の低減(オーガニック素材・リサイクル素材の使用など)
- 生産工程での労働環境・賃金・人権の保護
- 輸送・販売・廃棄にいたるサプライチェーン全体の透明性確保
- 過剰生産・大量廃棄を生まない受注生産・少量生産モデルの採用
エシカルファッションはSDGs目標12「つくる責任、つかう責任」と深く関わり、消費者と生産者の双方が意識を変えることで実現していくものです。消費者としてできる行動には、リサイクル素材を使った商品を選ぶ、長く大切に着る、修理して使い続ける、児童労働に関与しないブランドを選ぶといったことが挙げられます。
ファッション産業が抱える環境・社会問題
エシカルファッションを理解するには、ファッション産業の現状を知ることが欠かせません。
膨大な温室効果ガスと水消費
UNEPの報告によれば、ファッション産業は世界の温室効果ガス排出量の約8〜10%を排出しているとされます。また、綿花1kgを栽培するのに必要な水は約1万リットルにのぼるとも言われており、農業用水の大量消費も深刻な課題です。さらに、洗濯のたびに合成繊維からマイクロプラスチックが流出し、海洋汚染の一因となっていることも各種研究で報告されています。
ファストファッションが生む廃棄問題
年に数十シーズンとも揶揄されるファストファッションの生産サイクルは、大量廃棄を生む構造と切り離せません。日本でも、1年間に家庭から捨てられる衣服は約50万トン(環境省推計)にのぼるとされています。廃棄衣料の多くは焼却・埋め立てに向かい、再資源化される割合はまだ低い水準にとどまっています。
サプライチェーンの人権問題
低価格を実現するために、製造を担う途上国の労働者が低賃金・長時間労働・劣悪な環境で働かされる事例が国際労働機関(ILO)などから継続的に報告されています。児童労働や強制労働のリスクも、衣料品サプライチェーンの中に潜在します。こうした問題を「知っている」だけでなく、購買行動を通じて変えようとする消費者が増えている背景に、エシカルファッションへの関心の高まりがあります。
エシカルファッションを選ぶ3つの視点
ブランドを選ぶときに見るべき視点を3つに整理できます。
素材と製造工程の透明性
使用している素材の産地・認証(GOTS認証・フェアトレード認証・OCS認証など)が明示されているか、製造工場の情報が公開されているかは、エシカル度を測る重要な指標です。「オーガニック」「サステナブル」という言葉が使われていても、認証の有無や根拠を確認することが大切です。根拠のない環境訴求はグリーンウォッシングにあたる可能性があるため、第三者機関の認証ラベルを一つの判断基準にしてください。
労働環境への配慮
生産に関わる人々に適正な賃金が支払われているか、安全な職場環境が保障されているかも重要な判断軸です。フェアトレード認証を取得しているブランドや、製造工程の情報をSNSで積極的に発信しているブランドは、比較的透明性が高いと言えます。
耐久性と長く使えるデザイン
廃棄を減らすには、そもそも長く使える服を選ぶことが最も直接的な行動です。流行を追わないベーシックなデザイン、修理対応や部品交換が可能なつくり、高い耐久性を持つ素材——これらを備えたブランドはエシカルの観点から評価できます。
国内外の注目エシカルファッションブランド14選
環境問題への関心の高まりから、エシカルファッションを展開するブランドが国内外で増えています。素材・生産・廃棄のそれぞれの段階でアプローチは異なるため、共感できるコンセプトを持つブランドが見つかるはずです。
BRING|古着回収で服を循環させる
BRING(ブリング)は、回収した古着からポリエステルを原料レベルで再生し、再び衣服へと循環させる「サーキュラーエコノミー」を実装するブランドです。ポリエステルを使わないのではなく、サステナブルな素材として蘇らせるアプローチが独自の強みで、各地の提携店舗で古着回収も受け付けており、消費者が循環の輪に参加しやすい仕組みをつくっています。
PRISTINE|オーガニックコットンと日本の職人技
PRISTINE(プリスティン)は、オーガニックコットン本来の色合いを活かし、染色をしない製品づくりを行うブランドです。「長く使えること」を最優先に置き、Made in Japanにこだわった生産を続けています。化学染料を使わないことで製造工程での化学物質排出を抑え、肌への優しさと環境配慮を両立しています。
tennen|ゴミにならず土に還る服
tennen(てんねん)のコンセプトは「ゴミにならず、100%土に還る服であること」です。生地・ボタン・ネーム・縫い糸にいたるまで天然素材のみを使用しており、使い終わった後に自然に還ることを前提とした設計は、廃棄問題へのひとつの回答と言えます。Made in Japanへのこだわりも持ち、関わるすべての人がハッピーでいられる服づくりを大切にしています。
MAITO|草木染めと伝統職人の技
MAITO(マイト)は、草木染めと日本各地の職人技術を融合させたブランドです。植物由来の染料だけを使い、ベーシックでシンプルなデザインの服・生活雑貨を展開しています。「素晴らしい作り手の技術を残したい」という思いが、ものづくりの根幹にあり、全国各地の職人のもとへ訪れることから服づくりがはじまります。直営店での草木染めワークショップも好評です。
SOLIT!|多様なニーズに応える完全受注型ファッション
SOLIT!(ソリット)は、1,600パターン以上の組み合わせから自分の体型や好みに合わせてカスタマイズできる完全受注型ファッションブランドです。「必要なものを、必要な人に、必要な分だけ」というコンセプトのもと、過剰生産ゼロを目指しています。障がいのある方や体型的にシーズンアイテムが合いにくい方にも対応した設計で、インクルーシブなファッションの形を示しています。
rrrrrrr(ナインアール)|製造工程を”見える”服づくり
rrrrrrr(ナインアール)は、佐賀県の縫製工場で生産を行い、オープンキッチンのように製造工程を公開する透明性の高いブランドです。使用済みペットボトルをリサイクルした生地を積極的に活用し、生産数の適正管理によって過剰在庫を出さない姿勢を一貫させています。SNSでのサステナブルな情報発信にも積極的です。
シサム工房|フェアトレードで途上国の自立を支援
1999年に京都で創業したシサム工房は、インド・フィリピン・ネパールなどのパートナーとフェアトレードを通じた自立支援に取り組むブランドです。商品の購入が直接、生産者の生活改善につながる仕組みを長年にわたって維持してきました。流行を追わないリラックス感のあるデザインで、長く着られる服を提案しています。
PAKA|アンデスの先住民とアルパカ素材をつなぐ
PAKA(パカ)は、ペルー産アルパカ素材を使ったファッションを展開し、アンデス山脈の先住民コミュニティの生計を支えるブランドです。アルパカの毛は天然色が豊富で油分が少なく、染色・加工に必要な水やエネルギー・化学物質を大幅に抑えられる素材とされています。受注生産を採用し、過剰製造を防ぐ循環型のモデルを実践しています。
ecuvo,|野菜で染める永久定番ウェア
ecuvo,(エクボ)は、香川県東かがわ市の老舗メーカーが手がけるサステナブルブランドです。廃棄予定の野菜に含まれる成分を染料として活用するアップサイクルの試みで、フードロス問題にも同時に向き合っています。永久定番のシンプルなデザインにこだわり、流行に左右されずに何十年も着続けられる服を提案しています。
兆(きざし)|フェアトレード×京黒染めのMade with Japan
兆(きざし)は、認証済みインド産オーガニックコットンを使い、色落ちしにくい「京黒染め」と水使用量の少ないインクジェットプリントを組み合わせたブランドです。インドの劣悪な労働環境の改善を目指しながら、日本の伝統技術を活かした「Made with Japan」のものづくりを続けています。元ヴィジュアル系バンドのギタリストがデザイナーを務めるという異色の背景も持ちます。
patagonia|環境活動に継続的に関わるアウトドアブランド
patagonia(パタゴニア)は1957年創業のアウトドアブランドで、1996年以降は全衣料品のコットンをオーガニックコットンに切り替えています。製品の耐久性を極限まで高めることで廃棄を減らし、国内2拠点のリペアセンターで年間約2万件の修理を行っています。売上の一定割合を環境活動団体に寄付する仕組みも長年継続しており、ブランドとして環境運動に関わる姿勢が一貫しています。
EQUALAND|生産者の署名が入る「信用タグ」
EQUALAND(イコーランド)は、綿花の生産者からデザイナーまでの自筆署名を印刷した「信用タグ」を全製品に付けるブランドです。天然素材を使った快適な服を「必要なだけ持ち、丁寧に長く楽しむ」スローファッションの価値を提供しています。サプライチェーンのすべての関係者に技術への敬意を払うという姿勢が、タグという形で可視化されているのが特徴的です。
BOODY|オーガニックバンブーで地球に優しい肌着
BOODY(ブーディー)はオーストラリア発のエコウェアブランドで、農薬・化学肥料不使用のオーガニックバンブー(竹)から作られた肌着・ソックスを中心に展開しています。竹は成長が速く、広大な農地を必要としないため、コットンに比べて環境負荷が低い素材とされています。包装資材にもプラスチックを使わず、再生紙を使用するなど、製品以外の領域でも配慮を徹底しています。
Root|130年の職人技が生む長く使える鞄
Root(ルート)は130年以上の歴史を持つ日本製鞄ブランドで、廃棄予定の玉ねぎの皮から抽出した染料で染めた鞄など、アップサイクルの発想を取り入れた製品が特徴です。「シンプルで良質な素材の鞄を永く使ってほしい」という職人の思想のもと、ナイロン・綿・和紙・革など多様な素材を扱い、耐久性の高い鞄づくりを続けています。
消費者として今日からできる行動
エシカルファッションは「高いブランドを買うこと」ではありません。日常の購買行動の中で小さな選択を積み重ねることが、変化の出発点になります。
買う前に「本当に必要か」と立ち止まる
衝動買いを避けるだけで、不要な廃棄は大きく減ります。「クローゼットにある服と合わせられるか」「1年後も着ているか」を問い直すことが最初のステップです。
素材と認証ラベルを確認する
GOTS(Global Organic Textile Standard)、フェアトレード認証、ブルーサイン認証などのラベルは、環境・労働基準が第三者機関によって確認されていることを示します。購入前にラベルを確認する習慣をつけることで、根拠のない「環境に優しい」という訴求に惑わされにくくなります。
修理・ケアで服の寿命を延ばす
洗濯ネットを使う、陰干しする、小さなほつれをすぐに直すといった日常のケアは、服の寿命を大幅に延ばします。ブランドのリペアサービスや地域のリフォーム店を活用することも、廃棄を減らす有効な選択肢です。
手放すときもエシカルに
着なくなった服を捨てる前に、フリマアプリやリユースショップへの出品、ブランドの古着回収プログラム(BRINGなど)への参加を検討してください。「誰かにとっての価値」がまだある状態で循環させることが、廃棄ゼロへの着実な一歩です。
エシカルファッションとSDGs|関わる複数のゴール
エシカルファッションへの取り組みは、複数のSDGsゴールと連動しています。
- ゴール8「働きがいも経済成長も」:途上国の生産者への公正な賃金・安全な労働環境の確保
- ゴール12「つくる責任、つかう責任」:サステナブルな生産・消費パターンへの転換
- ゴール13「気候変動に具体的な対策を」:製造工程のCO₂削減・素材由来の排出抑制
- ゴール14「海の豊かさを守ろう」:マイクロプラスチック流出の削減
特にゴール12の「つかう責任」は消費者一人ひとりが担えるアクションであり、その積み重ねがサプライチェーン全体を動かす力になります。フェアトレードとエシカル消費の考え方をより深く理解したい方は、こちらの記事も参考にしてください。
まとめ|次の1着から選ぶ基準を変えてみる
エシカルファッションは、今すぐすべての服を買い替えることを求めるものではありません。次の1着を選ぶときに「誰が、どこで、どのように作ったか」を少し気にしてみる——その小さな変化が、ファッション産業全体を変えていく力の源泉になります。
この記事で紹介した14のブランドに共通するのは、「長く使えること」と「作る人・環境への敬意」です。これらを選ぶ基準として持つだけで、購買行動は確実に変わります。
- ファッション産業は世界のCO₂排出量の約8〜10%を占めるとされ、廃棄・水消費・マイクロプラスチックも深刻な課題とされている
- エシカルファッションとは、環境・人・社会への影響を考慮した生産・消費のあり方を指す
- ブランドを選ぶポイントは「素材と認証の透明性」「労働環境への配慮」「耐久性・長く使えるデザイン」の3つ
- 国内外14のブランドが、素材・生産工程・廃棄まで多角的にエシカルな服づくりを実践している
- 消費者の行動として「買う前に立ち止まる」「認証ラベルを確認する」「修理・ケアで延命する」「手放すときも循環を意識する」が実践しやすい
まずは次の買い物のとき、ラベルをひとつ確認してみてください。


