公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
ENVIRONMENT

自然エネルギーに取り組む企業の調達手法|日本の現状と、つまずきやすい3つのポイント

Photo by Rodri Caruso on Unsplash

「自然エネルギーを使う企業」と聞くと、屋根に太陽光パネルを載せた工場や、RE100に加盟する大企業を思い浮かべる方が多いかもしれません。ただ、日本の企業が実際に選んでいる道筋はもう少し多様で、自社で発電する、電力会社のメニューを切り替える、証書で環境価値を買う、といった方法を組み合わせるのが一般的です。なお「自然エネルギー」は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスといった「再生可能エネルギー」とほぼ同じ意味で使われます。この記事では、日本の現状、調達手法の違い、取り組みでつまずきやすい点を順に整理します。

環境NGOでキャンペーン設計に携わってきた立場から見ると、企業の再エネの話は「どの手法が正しいか」よりも「自社の状況でどの手法なら続けられるか」で成否が分かれる場面が目立ちます。10月は来年度の予算や電力契約の見直しを考え始める企業も多い時期です。担当者が最初に押さえておきたい視点を中心にまとめます。

この記事で学べること

  • 日本の再エネの現在地と、企業が直面している課題
  • 自家発電・電力契約の切り替え・証書という3つの調達手法の違い
  • 積水ハウスや大和ハウス工業など日本企業の取り組みの方向性
  • 取り組みでつまずきやすい3つのパターンと、今日からできる最初の1歩

日本で自然エネルギーを使う企業の現在地

企業の取り組みを見る前に、土台になる日本全体の状況を確認しておきます。ここを押さえると、なぜ企業の調達が簡単に進まないのかが見えてきます。

国全体の再エネ比率と今後の見通し

資源エネルギー庁の資料によると、2023年度の日本の電源構成のうち再エネは22.9%で、内訳は太陽光が9.8%、水力が7.6%、バイオマスが4.1%などとされています。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度に再エネを4〜5割程度とする見通しが示されました。現状から倍近くに増やす想定です。

RE100に加盟する日本企業が直面する壁

事業で使う電力を100%再エネにすると宣言する国際イニシアチブ「RE100」には、日本に本社を置く企業が90社超加盟していると、運営するThe Climate Groupは伝えています。一方で、同団体によると日本国内でのRE100加盟企業の再エネ調達率は36%にとどまり、世界平均の53%を下回っています。企業が挙げる主な障壁は、コストの高さと、調達できる再エネ電力の量が限られていることの2点です。

つまり、意欲のある企業ほど「買いたくても市場に十分な量がない」という壁にぶつかっています。企業の努力不足という話ではなく、供給側の事情が大きいという点は、読む側も知っておきたいところです。

企業が自然エネルギーを調達する3つの方法

環境省は企業向けに、再エネ電力の調達手法をまとめたガイドを公開しています。そこで示される手法は、大きく次の3つの考え方に整理できます。どれか1つが正解というより、規模や契約状況に応じて組み合わせることになります。

自社の敷地で発電する

工場や倉庫の屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電気を自社で使う方法です。設備を自社で持つ場合のほか、発電事業者が設備を設置して電気を売る「オンサイトPPA」という契約方式もあります。PPAは電力購入契約のことで、初期投資を抑えられる反面、契約期間が長期になる点に注意が必要です。

自社発電は調達の透明性が高い一方、屋根の面積や耐荷重に左右されます。太陽光まわりの技術動向については、次世代の太陽電池として注目されるペロブスカイトを扱った記事も参考になります。

電力会社から再エネ電力を買う

敷地外の発電所でつくられた再エネ電力を、電力小売会社から購入したり、発電事業者と直接契約したりする方法です。後者は「オフサイトコーポレートPPA」と呼ばれ、事前に合意した価格と期間で売買し、電気は一般の送配電網を通じて届きます。

現在の契約メニューを切り替えるだけで始められる場合もあり、設備を持てない賃貸オフィスの企業にとって現実的な入り口になります。ただし、メニューによって「どの発電所の電気か」「環境価値が付いているか」が異なるため、契約前の確認が欠かせません。

証書で環境価値を買う

非化石証書、グリーン電力証書、J-クレジットなど、再エネでつくられた電気の「環境価値」だけを取引する方法です。電気そのものの契約を変えずに始められるため、他の手法に比べて導入のハードルは低いとされます。

一方で、証書の種類によって、発電所の情報が追跡できるか、売上が発電事業者へ届くかといった性質が異なります。RE100のようにルールの厳しい枠組みでは、使える証書に条件が付く場合もあります。

日本企業の事例に見る方向性の違い

個別企業の詳細よりも、方向性の違いに注目すると全体像がつかみやすくなります。

自社の資産を使って再エネを確保するハウスメーカー

積水ハウスは、2020年の報道時点で、自社の住宅に設置された卒FIT(固定価格買取制度の期間が終わった)太陽光の電力を買い取って再エネ100%を目指す戦略を示していました。2021年時点の環境省資料では、同社は2030年までに電力の50%、2040年までに100%の再エネ化を目標に掲げ、大和ハウス工業も2040年に全使用電力を再エネで賄う予定とされています。住宅という自社の事業領域を電源につなげる発想が共通しています。いずれも当時の公表内容なので、最新の達成状況は各社の公式資料で確認してください。

中小企業が参加しやすい枠組み

RE100は大規模な電力消費企業を想定した枠組みですが、日本には中小企業や自治体向けに「再エネ100宣言 RE Action」があります。企業や自治体など、電力使用量の規模を問わず参加できる枠組みです。補助金の加点や認定制度の要件に使われることもあり、新規参加のきっかけになっていると報告されています。

ただし、参加団体数は2024年9月以降は横ばいで、費用負担や経営方針の見直しを理由に脱退する団体が以前より増えているとも報告されています。宣言のしやすさと続けやすさは別の問題だと言えます。

取り組みでつまずきやすい3つのパターン

ここからは、公開されている取り組みの報告や企業の声の傾向をもとに、つまずきやすい点を3つに整理します。統計調査ではなく、あくまで公開情報から見られる傾向です。

証書の中身を確認せずに「100%」と言ってしまう

もっとも注意したいのが、環境価値の中身を確認しないまま「再エネ100%」とうたってしまうケースです。何を、どの範囲で、どの根拠で再エネとしているのかが曖昧だと、グリーンウォッシュと受け取られる恐れがあります。表現は「年間使用電力量の◯%相当を再エネ由来の証書でまかなっている」のように、事実の範囲にとどめるのが安全です。

コストを単年度でしか見ていない

再エネ電力は、契約形態によって単価が高くなる場合があります。一方でPPAのように長期契約で価格を固定できる手法もあり、燃料価格や市場価格の変動の影響を受けにくくなることがあります。単年度の電気料金だけで比べると、判断を誤りやすくなります。

宣言が目的になり、運用が続かない

先ほど触れた脱退の増加は、このパターンを映していると考えられます。宣言そのものはゴールではなく、毎年の調達量の確認、証書の更新、社内への共有といった地味な運用が続いて初めて意味を持ちます。担当者が替わっても回るように、記録の残し方を最初に決めておくことが大切です。

今日から試せる最初の1アクション

最初の1歩は、直近12か月分の電気料金の請求書、または検針票を集めることです。見るのは3点だけで十分です。年間の使用電力量、現在の契約メニュー、そして契約中の電力会社に再エネメニューがあるかどうかです。

使用電力量が分かれば、どの調達手法がどの程度の規模になるかの見当がつきます。契約メニューを確認する際は、電力会社に「環境価値は付いていますか、発電所の情報は開示されますか」と問い合わせてみてください。この2つの質問への回答で、そのメニューの中身がかなり見えてきます。

あわせて、エネルギー全体とSDGs目標7の関係を押さえておくと、社内で再エネの意義を説明するときに役立ちます。

まとめ

日本の再エネ比率は2023年度で22.9%、国は2040年度に4〜5割程度を見込んでいます。RE100に加盟する日本企業は90社超にのぼりますが、国内での調達率は世界平均を下回り、コストと供給量の壁が指摘されています。企業の取り組みは、その制約の中で手法を選び、組み合わせる工夫の積み重ねだと言えます。

調達手法は、自社発電、電力契約の切り替え、証書の3つに大別できます。大切なのは、どれを選ぶかよりも、何をどこまで再エネとしているのかを正確に把握し、続けられる形で運用することです。まずは請求書を手元に集めるところから、1つだけ試してみてください。

  • 日本の再エネ比率は2023年度で22.9%、2040年度に4〜5割程度が国の見通し
  • RE100加盟の日本企業は90社超だが、国内の再エネ調達率は36%で世界平均の53%を下回る
  • 調達手法は自社発電、電力契約の切り替え、証書の3つで、組み合わせて使うのが一般的
  • 「100%」の表現は環境価値の中身を確認してから、事実の範囲で使う
  • 最初の1歩は、直近12か月分の請求書で使用電力量と契約メニューを確認すること

参考文献

RELATED

PAGE TOP