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アグリフォトボルタイクの日本での現状|営農型太陽光の許可制度と見極めポイント

Photo by Ice Tea on Unsplash

畑の上にパネルが並ぶ風景を見かけたとき、「農地なのに発電所になっているのでは」と感じた経験はないでしょうか。私はエシカル消費の目線で商品を選ぶとき、ラベルの印象より中身を確かめるようにしています。農地とエネルギーの両立をうたう仕組みも、同じ物差しで見ておきたいと考えています。

アグリフォトボルタイク(アグリボルタイクス、農業と太陽光発電の併用を指す呼び名)は、日本では主に「営農型太陽光発電」や「ソーラーシェアリング」と呼ばれています。農地に支柱を立て、上部に太陽光パネルを置き、下で作物を育てながら発電する仕組みです。この記事では、日本での広がり、守るべき制度のルール、そして「本当に農業が続いているか」を見極める視点を、公的資料をもとに整理します。

この記事で学べること

  • 日本の営農型太陽光発電の導入規模と、使われている作物の傾向
  • 一時転用許可の期間や収量の目安など、制度の基本ルール
  • 2026年に示された「望ましい営農型太陽光」の方向性
  • 計画や商品を見かけたときに確かめたい3つの疑問

日本の営農型太陽光発電はどこまで広がっているか

呼び名は複数ありますが、日本の現状は農林水産省の公表データでおおよそ把握できます。ここでは言葉の由来と導入規模の2点から見ていきます。

呼び名の違いと日本での始まり

海外では農業と太陽光の併用を「アグリボルタイクス」や「アグリPV」と呼ぶことが多く、日本では「営農型太陽光発電」が行政上の用語として使われています。「ソーラーシェアリング」という言葉は、CHO技術研究所の長島彬氏が2004年に考案し、太陽光を発電と農業で分け合うという意味を込めて名づけたと紹介されています。作物には光合成が増えなくなる光飽和点があり、強すぎる日差しの一部を発電に回せるという着眼が出発点でした。

つまり「アグリフォトボルタイク」と検索して出てくる日本の話題は、ほぼこの営農型太陽光発電を指します。呼び名が違うだけで、仕組みの核は同じです。

令和5年度末で6,137件という規模

農林水産省のデータを整理した資料によると、令和5年度末時点で営農型太陽光発電の累計は6,137件、下部の農地は1,362haに達しています。同年度の新規許可は791件で、伸びは緩やかになり、期間満了に伴う再許可が新規を上回ったとされています。制度が始まって10年ほどが経ち、「新しく増やす段階」から「続いているかを確かめる段階」へ移りつつあると読めます。

作物の面では、榊やシキミなどの花木、ミョウガのように日陰でも育ちやすい作物が目立つと整理されています。一方で、主食となる米・麦・大豆の取り組みはまだ多くありません。荒廃農地の再生を目的にした案件も累計で600件台あるとされ、使われなくなった農地の活用という側面も確かにあります。

パネルの下で何が育っているかは、その計画の誠実さを映す最初の手がかりになります。

守るべき制度の基本ルール

営農型太陽光は、支柱を立てる部分が農地でなくなるため、農地法に基づく「一時転用許可」が必要です。許可のルールは、農業をやめて発電だけが残る事態を防ぐための歯止めとして作られています。

一時転用許可の期間と収量の目安

許可の期間は、認定農業者などの担い手が自ら所有・賃借する農地を使う場合、遊休農地を再生利用する場合、第2種・第3種農地を使う場合で、営農の適切な継続が見込まれれば10年以内です。それ以外は3年以内とされています。

収量についても目安があります。下部の農地の単収が、同じ年産の同じ市町村の平均的な単収と比べておおむね2割以上減ると、営農が適切に行われていないと判断されます。遊休農地を再生利用する場合は、この判断の対象から除かれます。「パネルがあっても農地としての収穫は8割程度は保つ」という考え方が、制度の骨格です。

2024年の法令化と2026年の「望ましい姿」

2024年4月には、これまで通知で定めていた許可基準が農地法施行規則に位置づけられ、ガイドラインも制定されました。営農が続かない事例を排除し、農業生産と発電を両立する本来の姿に戻す狙いです。

さらに2026年1月の有識者会議では、農林水産省が「望ましい営農型太陽光発電」の最終案を示したと報じられています。遮光率は30%未満を目安とし、食料安全保障の観点から米・麦・大豆の栽培を推奨する内容です。要件の柱は、一般的な農作業が続けられる設備の形状、売電目的ではなく農業者の所得向上を前提にした営農、周辺住民との合意形成と利益還元の3点とされています。自治体が地域の事業の適否を判断するとき、国の指針として使えるようにする方針です。

エネルギー分野の広がりを知りたい方は、太陽光技術の最新動向も参考になります。

ドイツの実証が示した数字をどう読むか

海外の知見としてよく引かれるのが、ドイツのフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(Fraunhofer ISE)の実証です。ボーデン湖畔の約3分の1ヘクタールの圃場で、194キロワットのシステムを使い、2017年の土地利用効率が160%になったと発表されています。2018年のジャガイモの収量をもとにすると、186%まで上がったとされました。

ここでいう土地利用効率は、農業と発電を同じ面積で別々に行った場合と比べた指標です。猛暑だった2018年は、パネルの部分的な日陰が作物の水分ストレスを和らげたため、収量が下がりにくかったと説明されています。

ただし、この数字をそのまま日本に当てはめるのは慎重にしたいところです。作物、気候、パネルの高さや配置、農機の種類が違えば結果は変わります。実証の数字は「条件が合えば両立しうる」という可能性の根拠であり、すべての案件が同じ成果を出す保証ではありません。日本でも、遮光率の目安や収量の確認が制度に組み込まれているのは、この前提があるからだと私は受け止めています。

太陽光や再エネ全般の位置づけを確かめたいときは、クリーンエネルギーの基礎を扱った記事も役に立ちます。

立ち止まって確かめたい3つの疑問

ここからは、公開されている制度や資料の傾向から、見る側が確かめておきたい論点を3つのパターンに整理します。特定の事業者や地域を評価するものではなく、情報に触れたときの判断軸としてお使いください。

下で育つ作物は何で、収量はどう確認されているか

パネルの下が実際に営農の場になっているかは、最も基本的な確認点です。作物名、栽培面積、収量の報告が公開されているか、単収が地域平均と比べてどの程度かが分かると安心できます。許可期間の更新時には営農の実績が見られるため、継続して報告されている案件ほど信頼しやすいと考えられます。

発電が主役になっていないか

売電収入が農業収入を大きく上回る計画は、農業が脇役になりやすい構造です。「農業者の所得向上が前提」という2026年の方向性に照らすと、売電収益が営農や地域にどう使われるかの説明があるかが問われます。農業者本人が事業に関わっているのか、発電事業者が主導しているのかも、見分けるポイントになります。

地域への説明と利益の還元があるか

パネルの設置は景観や水の流れ、日照、農道の利用など、周辺に影響が及びます。説明会の有無、意見への対応、地域に還元される仕組みを確認できるかが大切です。再エネの導入は賛否が割れやすい分野だからこそ、合意形成の過程を見せてくれる計画は信頼の目安になります。

私自身、フェアトレードの商品を選ぶときにも、売り手の説明が具体的かどうかを見ています。営農型太陽光でも、数字や運用を開示している案件は、それだけで誠実さの手がかりになります。

今日から試せる1つのアクション

読者の方に1つだけ提案するなら、農林水産省の営農型太陽光発電のページに載っている取組事例から、自分の住む地域に近い事例を1件読んでみることです。読むときは、下で何を育てているか、収量や所得がどう扱われているか、地域との関わりがどう書かれているかの3点だけをメモします。

事例に書かれている作物がトマトなのか大豆なのか茶なのかで、パネルの高さや間隔の工夫が変わることも見えてきます。通勤や旅行の途中でパネルのある畑を見かけたときに、「下は何を育てているのだろう」と考える習慣がつくだけでも、情報の見え方は変わります。

まず1件、事例を読んでみてください。それだけで、ニュースや計画の言葉を自分の物差しで受け止められるようになります。

まとめ

日本の営農型太陽光発電は、令和5年度末で累計6,137件、1,362haまで広がり、新規の増加は緩やかになる一方で、再許可の段階に入りました。制度では、一時転用許可の期間や、収量が地域平均から2割以上減らないことといった歯止めが設けられています。

2026年には、遮光率30%未満や米・麦・大豆の推奨を含む「望ましい姿」が示され、農業者の所得向上と地域との共生が前提として整理されました。ドイツの実証が示した土地利用効率の高さは可能性の根拠ですが、日本の個別の案件では、作物・収量・地域への説明を自分の目で確かめることが欠かせません。

エネルギーと食料のどちらも手放さない仕組みとして、営農型太陽光を見守っていくうえでの要点は次のとおりです。

  • 日本では累計6,137件・1,362ha(令和5年度末)の導入実績がある
  • 一時転用許可は期間が3年以内か10年以内かで分かれ、収量が地域平均から2割以上減ると営農不十分と判断される
  • 2026年の方向性は遮光率30%未満、米・麦・大豆の推奨、農業者の所得向上と地域との共生
  • 見極めの軸は、下で育つ作物と収量、発電との主従、地域への説明と還元の3つ

参考文献

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