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ENVIRONMENT

ブルーエコノミーとは 日本の海洋政策と企業の取り組みから学ぶ

Photo by Bogdan Glisik on Unsplash

「ブルーエコノミー」という言葉を見て、海の環境保護の話だと思う方も、逆に海運や漁業といった産業の話だと思う方もいるはずです。実はそのどちらも正解であり、どちらか一方だけでは説明しきれないところにこの言葉の分かりにくさがあります。四方を海に囲まれた日本にとって、この考え方は特別遠い話ではありません。この記事では、定義の確認はほどほどにとどめ、日本の政策や企業の動き、そして消費者として今日から関われる選択肢まで、具体的に見ていきます。

この記事で学べること

  • ブルーエコノミーという言葉が指す範囲と、環境保護との違い
  • 日本政府が海洋政策の中でどう位置づけているか
  • 海運・エネルギー・漁業の各分野で企業がどう動いているか
  • ブルーカーボンやJブルークレジットの仕組みの概要
  • 消費者として今日から試せる具体的な行動

ブルーエコノミーとは何か 環境保護との違いを整理する

「結局、環境にやさしい海洋事業をまとめて呼んでいるだけでは」と思う方もいるかもしれません。この誤解はよくあるのですが、実際には少しニュアンスが異なります。世界銀行などの国際機関は、海洋資源を持続的に活用しながら経済成長や雇用を生み出し、同時に海の生態系の健全性を損なわないようにするという考え方として、この言葉を位置づけているとされます。つまり「守るだけ」でも「使うだけ」でもなく、両立を目指す枠組みという点が核になります。

海運、漁業・養殖業、洋上風力などの海洋エネルギー、海洋観光、海底資源、そして海洋バイオテクノロジーまで、対象となる産業は幅広いとされています。どれか一つの技術や規制を指す言葉ではなく、海に関わる経済活動全体を見直す視点だと捉えると分かりやすくなります。

なぜ日本にとって無関係ではないのか

「海外の大きな海洋国の話で、島国の日本にはあまり関係ないのでは」と感じる方もいるでしょう。しかし日本は領海と排他的経済水域を合わせた面積が国土面積の何倍にもなる、世界有数の海洋国のひとつです。漁業・養殖業はもちろん、造船、海運、港湾、さらに近年は洋上風力発電の適地としても、海は日本経済にとって切り離せない基盤になっています。海に囲まれているからこそ、海の資源をどう使い、どう残すかという判断が、暮らしの近いところにまで影響してくるといえます。

日本政府の海洋政策とブルーエコノミーの位置づけ

「政府が音頭を取っているような施策はあるのだろうか」と疑問に思う方に向けて、まず押さえておきたいのが海洋政策の枠組みです。日本では2007年に成立した海洋基本法に基づき、政府が数年ごとに海洋基本計画を策定し、海洋に関する施策の方向性を示してきました。この計画の中で、海洋資源の持続的な利用と経済活性化を両立させる方針が、繰り返し盛り込まれてきたとされています。

海洋基本計画が示す方向性

海洋基本計画では、海上の安全保障や海洋調査といった従来からの項目に加えて、洋上風力発電の拡大や海洋プラスチックごみ対策、漁業の成長産業化といったテーマが並んで扱われる傾向にあります。「安全保障の話と環境の話がなぜ同じ計画に入っているのか」と違和感を持つ方もいるかもしれませんが、これは海という一つの空間を巡る施策を横断的に整理する必要があるためだと考えられます。縦割りになりがちな海洋関連の施策を一つの計画にまとめることで、産業振興と環境保全を対立させずに議論する土台を作ろうとしていると見ることができます。

洋上風力発電という新しい柱

海洋政策の中でも、この数年で存在感を増しているのが洋上風力発電です。周囲を海に囲まれた日本では、遠浅の海域が少ないという制約がある一方で、浮体式の技術開発を含めて導入を進める方針が政府によって示されてきました。「風力発電と聞くと陸上のイメージが強い」という方も多いと思いますが、海上は騒音や景観への配慮という点で陸上よりも制約が少ない場合があり、地域の漁業関係者との調整を前提としながら適地の選定が進められているとされています。エネルギー政策と海洋政策が交差する分野として、今後の動向を注視する価値があります。

企業が動かすブルーエコノミー 複数の分野から見える方向性

「政府の計画は分かったが、実際に動いているのは企業ではないか」という指摘はもっともです。ここでは分野ごとに、企業がどのような方向を向いているのかを整理してみます。

海運・エネルギー分野の動き

大手海運会社は、船舶から排出される温室効果ガスの削減に向けて、LNGやメタノールといった代替燃料を使う船の導入や、アンモニア燃料船の実証といった取り組みを進めていると発表しています。海運業界は国際海事機関(IMO)による排出規制の強化も踏まえ、燃料転換と省エネ運航の両輪で対応を進めている段階にあるとされます。こうした動きは目立ちにくいものの、私たちが日常的に使う輸入品の多くが海上輸送に依存していることを考えると、暮らしと無関係とは言えません。

漁業・養殖業のサステナブル化

漁業の分野では、水産資源の減少という課題に対応するため、資源管理を伴う漁業や、環境負荷を抑えた養殖技術への切り替えを進める産地が増えているとされています。MSC(海洋管理協議会)やASC(水産養殖管理協議会)といった国際的な認証制度に対応する水産物が、スーパーの店頭でも少しずつ見られるようになってきました。筆者自身、フェアトレード商品を選ぶ延長で水産物売り場を見るようになってから、こうした認証マークが以前より目に入りやすくなったと感じています。ただし、認証が付いているからといって、すべての課題が解決しているわけではない点には注意が必要です。認証はあくまで一定の基準を満たした証明であり、万能の保証ではないと理解しておくと過度な期待を避けられます。

ブルーカーボンとJブルークレジット 日本発の仕組み

「カーボンクレジットは知っているが、ブルーカーボンは何が違うのか」という疑問もよく聞かれます。カーボンクレジット全般が森林や省エネ設備など幅広い分野を対象にするのに対し、ブルーカーボンは海藻やアマモといった海洋生態系が吸収・貯留する炭素を指す概念です。海草藻場や干潟、マングローブ林が二酸化炭素の吸収源として国際的に評価され始めたことを受けて、日本国内でもこの仕組みを取り入れる動きが出てきたとされています。

Jブルークレジットの仕組み

日本では、ジャパンブルーエコノミー技術研究組合が運営する認証制度を通じて、地域の藻場再生や干潟保全といった取り組みが生み出す炭素吸収量をクレジット化し、企業が購入できるようにする仕組みが整えられてきました。地方自治体や漁業協同組合が主体となって藻場を再生し、そこで生まれたクレジットを企業が購入することで、地域の活動資金と企業の環境対応の両方につながる構図になっています。「地域の小さな取り組みが企業の脱炭素目標とどうつながるのか」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、クレジットという共通の物差しを介することで、規模の異なる主体同士が協力できる仕組みになっていると理解すると腑に落ちやすくなります。

消費者として今日からできる選択

ここまで政策や企業の話が中心でしたが、「結局、自分には何ができるのか」という疑問が一番気になるところではないでしょうか。ブルーエコノミーは国や企業だけの話ではなく、日々の買い物の延長線上にもつながっています。

まず試しやすいのが、水産物を選ぶときにMSCやASCといった認証マークの有無を一度確認してみることです。すべての商品にすぐ切り替える必要はありませんが、いつも選んでいる商品の隣に認証付きの選択肢がないか、次に買い物へ行ったときに一度だけ確認してみてください。それだけでも、水産資源の持続性という視点を意識するきっかけになります。認証の有無を知ったうえでどちらを選ぶかは、価格や好みとのバランスも含めて、無理のない範囲で決めれば十分です。

まとめ

ブルーエコノミーは、海を守ることと海の資源を経済活動に活かすことを対立させず、両立を目指す考え方として捉えると理解しやすくなります。日本は海洋基本計画という枠組みのもとで、洋上風力発電や漁業の資源管理、ブルーカーボンといった複数のテーマを横断的に進めようとしているとされ、企業の側でも海運の燃料転換や水産物の認証取得といった具体的な動きが見られます。

一つひとつの施策や企業の取り組みを見ていくと、遠い政策論に思えたブルーエコノミーが、輸入品の物流や食卓に並ぶ魚といった身近な暮らしとつながっていることが見えてきます。すべてを一度に理解する必要はなく、気になった分野から少しずつ知っていくという向き合い方で十分だと考えます。

  • ブルーエコノミーは海の保全と経済活動の両立を目指す考え方
  • 日本は海洋基本計画のもとで洋上風力やブルーカーボンを推進しているとされる
  • 海運・漁業分野では燃料転換や認証取得といった企業の動きが見られる
  • Jブルークレジットは地域の藻場再生と企業の脱炭素対応をつなぐ仕組み
  • 消費者はMSC・ASCなどの認証マークを確認することから関わり始められる

参考文献

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