公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
ENVIRONMENT

日本の水資源問題|現状・3つの課題と今日から始める節水行動

Photo by Andrej Lišakov on Unsplash

「日本は水が豊かな国」というイメージを持っている方は多いと思います。私自身、大学で環境政策を学ぶ前はそう思っていました。ところが国土交通省や環境省の資料を読み込むうちに、この認識が表面的なものでしかなかったことに気づかされました。降水量は多いのに水不足が起きる、そのギャップの理由を知ることが、日本の水問題を考える第一歩です。

この記事では、日本の水資源が抱える3つの構造的な課題を整理し、自治体・企業の具体的な取り組みと、読者がすぐに実践できる行動を紹介します。定義の解説にとどまらず、「では自分に何ができるか」まで踏み込むことを意識して書きました。

「水大国」なのになぜ足りない?日本の水資源の実態

日本の年間降水量は約1,700mm(国土交通省「日本の水資源の現況」より)で、世界平均のおよそ2倍に達します。一見すると恵まれた環境ですが、人口一人当たりの水資源量に換算すると約3,400㎥/年にとどまり、これは世界平均(約7,100㎥/年)の半分以下です。国土が狭く急峻な地形のため、降った雨が短時間で海へ流れ出てしまい、蓄えられる量が限られるからです。

さらに日本は食料や工業製品の輸入を通じて、海外の水資源を大量に間接的に消費しています。農産物・食料品の生産に使われる水を推計した「バーチャルウォーター(仮想水)」の概念でみると、日本は年間約800億㎥(〔要確認〕環境省推計)を輸入していることになります。国内の降水量だけで語れない構造が、日本の水問題の根本にあります。

降水量は多くても「使える水」は少ない理由

環境政策の授業で教わったことで印象に残っているのが、「降水量と利用可能な水量は別物」という話でした。日本の地形は山がちで川が短く傾斜が急なため、降雨から海への流出が非常に速い。貯水・取水できる割合は限られ、渇水期に地下水や貯水池に頼る地域が多くあります。2023年の夏には四国や北九州の一部で取水制限が実施されるなど、降水量が多い年でも局地的な水不足は繰り返されています。

日本の水資源が抱える3つの構造的課題

資料を読み込んで見えてきたのは、「水が足りない」という単純な問題ではなく、複数の要因が絡み合っていることでした。大きく3つに整理できます。

課題1|老朽化する水道インフラ

日本の水道管の総延長は約74万km(〔要確認〕国土交通省)に上ります。そのうち耐用年数(40年)を超えた管路の割合は2022年度時点で約20%に達しており、国土交通省はこの比率が今後急速に増加すると予測しています。老朽管の破裂による漏水は水量の損失だけでなく、断水や道路陥没という形で市民生活を直撃します。人口減少による水道料金収入の減少が更新費用の確保を難しくしており、地方自治体ほどこの問題が深刻です。

実際、地方に住む友人からは「水道料金が年々上がっているのに水圧が安定しない」という声を聞いたことがあります。インフラの老朽化は都市部の問題ではなく、地方ほど先に影響が現れる問題です。

課題2|気候変動による降水パターンの変化

近年の気候変動は、日本の降水パターンを大きく変えています。環境省「気候変動適応情報プラットフォーム」によれば、日本では大雨の頻度は増える一方、無降水日数も増加傾向にあります。つまり「降るときに一気に降り、降らない期間が長くなる」という極端化が進んでいます。この変化は、ダムや貯水池の設計前提を崩し、水の安定供給を難しくします。

研究を続ける中で気づいたのは、気候変動の影響が農業用水にも波及していることです。用水路の水位が予測しにくくなると、田植え時期の水管理に支障が出ます。「水不足」と「洪水」が同じ地域で数週間おきに起きるという現実が、日本各地でみられるようになっています。

課題3|バーチャルウォーター問題と食料自給率

日本の食料自給率(カロリーベース)は2023年度に38%(農林水産省発表)と低水準にとどまっています。食料を輸入するということは、その生産に使われた水も海外から「輸入」していることを意味します。環境省の試算によれば、日本が輸入する食料を国内生産するには800億㎥規模の水が必要になるとされており、この量は利根川の年間流量の数十倍に相当します〔要確認〕。海外の乾燥地帯の水資源に依存した食料消費は、現地の水不足を悪化させるリスクも孕んでいます。

自治体・企業が動き出している|日本国内の先進事例

課題の深刻さを知りながら、取り組みが何も進んでいないかというと、そうではありません。各地で実践的な対策が動き始めています。

北九州市|水道技術の国際展開と漏水管理

北九州市は1970年代から深刻な水不足を経験し、徹底した漏水対策と節水技術を蓄積してきました。現在の有収率(配った水のうち実際に料金徴収できる割合)は約92%を維持しており、これは世界トップクラスの水準です。同市はJICAとも連携して、アジア・アフリカ各国へ水道技術を移転する活動を続けており、国内の課題解決で培った知見を国際貢献に結びつけています。

大手企業によるウォーターニュートラルの取り組み

製造業を中心に、工場用水の循環利用や雨水再利用に取り組む企業が増えています。サントリーホールディングスは「水育」プログラムを通じた流域保全と、仕込み水と同量以上を自然に還元する「ウォーターポジティブ」目標を掲げています(同社公式サイト参照)。また味の素グループやキリンホールディングスも水リスク評価ツール(WRIのAqueductなど)を活用し、工場ごとに水使用量の削減目標を設定しています。単に節水するだけでなく、水の地域循環に貢献するという方向性が企業のスタンダードになりつつあります。

農業分野でのスマート水管理

農林水産省が推進する「スマート農業」の一環として、センサーを活用した水田水位の自動管理システムの導入が進んでいます。従来は農家が早朝に水路を確認して回る作業が必要でしたが、IoTセンサーによって水位と給排水をリモートで制御できるようになりました。農業用水は日本の全水使用量の約60%を占めることから(〔要確認〕国土交通省)、この分野の効率化は水資源問題に対して特に大きな効果が期待されています。

「知っていたけど行動できていない」を解消するために

水問題について勉強するうちに気づいたことがあります。多くの人が「大切だとはわかっている」と言いながら、日常の行動は変わっていない、というパターンです。私自身も、知識が増えるほど「どこから手をつければいいかわからなくなる」という経験をしました。

情報量を増やすより、まず1つだけ動くことが突破口になります。節水シャワーヘッドの導入、食器洗い時の「溜め洗い」習慣、食料の産地を意識した買い物。どれも小さな行動ですが、継続することで実感値が変わります。

今日からできる1アクション|節水シャワーヘッドを試してみる

水問題に取り組む入口として、最初に試してみてほしいのが節水シャワーヘッドへの交換です。一般的なシャワーヘッドの流量は毎分10〜12Lですが、節水タイプは毎分6〜8L程度に抑えられます。水量が少なくなると体感温度が下がりやすいという懸念もありますが、近年は気泡や高圧ミストで体感を損なわずに節水できる製品も増えています。初期費用は3,000〜1万円程度のものが多く、水道代と光熱費(給湯コスト)の削減で1〜2年での回収が見込めます。まず1週間だけ試してみて、使用感を確かめるところから始めると続けやすいです。

まとめ|「水が豊かな国」の神話を問い直す

日本の水資源問題は、「水が足りない」という単純な話ではありません。降水量と利用可能量のギャップ、老朽化するインフラ、気候変動による極端化、そしてバーチャルウォーターを通じた海外依存という複合的な課題が絡み合っています。

  • 日本の一人当たり水資源量は世界平均の半分以下で、「水大国」は表面的なイメージにすぎない
  • 水道インフラの老朽化・気候変動・バーチャルウォーター依存という3つの課題が同時進行している
  • 北九州市や大手企業の取り組みが示すように、技術と意識の両面からの対策がすでに動き出している
  • 節水シャワーヘッドへの交換など、今日から始められる行動が水問題への参加の入口になる

水の問題は遠い開発途上国の話でも、行政だけが解決すべき話でもありません。蛇口の向こうにある仕組みを少し想像してみることが、第一歩です。

参考文献

  • 国土交通省「日本の水資源の現況」(令和5年版・https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/mizukokudo_mizsei_tk2_000021.html)
  • 環境省「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」水資源・渇水リスク関連資料(https://adaptation-platform.nies.go.jp/)
  • 農林水産省「令和5年度 食料・農業・農村白書」食料自給率関連ページ(https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r5/)

この記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。(執筆メンバー: https://mirasus.jp/members/ )

RELATED

PAGE TOP