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ENVIRONMENT

ごみを電気に変える技術の「いま」|廃棄物発電・バイオマス発電が迎える転換点

Photo by Carl Wang on Unsplash

家庭や企業から毎日出るごみは、燃やして減らすだけでなく、電気をつくる資源にもなっています。ごみを焼却するときの熱で発電する「廃棄物発電」と、木くずや家畜ふんなどの生物由来資源を燃料にする「バイオマス発電」は、どちらも廃棄物処理と電力の確保を一度に進める技術です。

この分野は2026年度から政策の方向が変わりました。輸入燃料に頼る大型のバイオマス発電が、FIT/FIP(固定価格買取制度/フィード・イン・プレミアム制度)の新規支援から外れたのです。ごみを電気に変える技術の「いま」を、日本の施設数と発電量、制度変更の中身、CO2回収の実証、地域の実践例から見ていきます。

この記事で学べること

  • 日本のごみ焼却施設のうち、どのくらいが発電しているか
  • 2026年度のFIT/FIP見直しで、変わること・変わらないこと
  • 2026年10月に始まった、ごみ焼却のCO2回収実証の内容
  • 「バイオマスはカーボンニュートラル」など、誤解されやすい3つの点
  • 発電の前にできる、ごみを減らす行動

廃棄物発電とバイオマス発電のしくみ

「ごみ発電」と「バイオマス発電」は混同されやすい言葉です。まず、どこが同じでどこが違うのかを整理します。ここを押さえると、後半の制度の話が読みやすくなります。

廃棄物発電はごみ焼却の熱を使う

廃棄物発電は、清掃工場でごみを燃やしたときの熱でボイラーの水を蒸気にし、その蒸気でタービンを回して発電する方法です。もともとは、ごみを安全に処理する設備にたまたま付いた発電設備でした。そのため、建設費や維持管理費の多くは、自治体のごみ処理費でまかなわれます。

売電収入だけで事業を成り立たせなければならないバイオマス専焼の発電所とは、お金の仕組みがまったく違います。この違いが、後で見る政策の分かれ目につながります。

バイオマス発電は燃料の種類で方式が変わる

バイオマスとは、木くず、間伐材、家畜ふん尿、食品残渣など、動植物に由来する資源の総称です。発電の方式は、大きく次の3つに分かれます。

  • 直接燃焼(木材などをボイラーで燃やして蒸気を作る)
  • ガス化(高温で可燃性ガスを作り、ガスタービンなどで発電する)
  • メタン発酵(家畜ふん尿や生ごみ、下水汚泥を微生物で分解し、出たメタンガスで発電する)

燃料が木質なのか、ごみなのか、ふん尿なのかによって、集め方も採算の取り方も変わります。ひとまとめに語れない理由はここにあります。

日本の廃棄物発電の現在地

次に、日本のごみ発電の規模を、環境省の統計で確認します。

焼却施設の約4割が発電している

環境省が2025年3月に公表した令和5年度(2023年度)の調査によると、全国のごみ焼却施設は1,004施設で、うち発電設備をもつのは411施設(40.9%)でした。総発電能力は2,230MW、年間の発電電力量は10,254GWhで、約262万世帯分の年間電力使用量に相当するとされています。

令和2年度の調査では、発電設備をもつ施設は387施設(36.6%)、発電電力量は10,153GWhでした。3年のあいだに発電する施設の割合は少しずつ上がっています。一方で、約6割の焼却施設は、熱を電気にしていません。

課題は発電の「効率」にある

数が増えても、効率が低ければ、燃やした熱の多くが捨てられます。同じ調査では、発電設備をもつ411施設のうち、発電効率が10%以上の施設は323施設でした。20%以上の施設は58施設にとどまっています。

つまり、日本の廃棄物発電は「発電している施設を増やす」段階から、「いまある施設の効率を上げる」段階へ移りつつあります。熱を地域の温水プールや病院、工場に供給して使い切る方法も、その一つです。

2026年度の制度変更|輸入バイオマスは新規支援の対象外に

2026年度は、バイオマス発電にとって制度上の大きな節目です。変わる範囲と変わらない範囲を分けて見ます。

何が対象外になったのか

経済産業省の資料などによると、2026年度から、FIT/FIP制度の新規支援の対象外となるのは次の2つです。

  • 一般木質等のバイオマス発電のうち、出力1万kW以上のもの
  • 液体燃料(パーム油など)を使うバイオマス発電(全規模)

この2区分は、輸入燃料への依存が大きい点が共通しています。燃料の価格高騰や円安のため、2022年以降は入札件数が0件の状態が続いていたと報告されています。経産省の算定委員会でも、輸入燃料に頼る大規模な発電は、他の再エネに比べて自立が難しいと議論されました。

すでに認定された発電所はどうなるのか

今回の見直しは新規の支援に関するものです。すでにFIT/FIPの認定を受けた発電所の買取期間(20年間)が、制度変更によってただちに終わるわけではありません。「輸入バイオマス発電は終わった」と受け取ると、実態とずれます。

地域の資源を使う発電は引き続き支援の対象

一方で、国内の間伐材などの未利用木材、メタン発酵、廃棄物を燃料とする区分は、今回の対象外区分には含まれていません。政策の重点は、遠くから運んだ燃料から、地域で出る資源へと移っています。

背景にある環境面の指摘

輸入木質バイオマスについては、環境NGOなどから、燃やした木材の多くが排熱として捨てられていること、輸送を含めたCO2排出の評価が難しいことなどが指摘されてきました。また、発電コストの大半が燃料費のため、電気料金に上乗せされる賦課金が海外に流れる構造も、見直しの背景として語られています。

「燃やして発電」の次へ|品川で始まったCO2回収の実証

ごみ焼却には、もう一つ大きな課題があります。焼却すればCO2が出るという点です。この課題に取り組む実証が、2026年10月に始まりました。

2026年10月5日に完成した実証施設

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の発表によると、2026年10月5日、東京都の品川清掃工場の敷地内で、カナデビア株式会社が建設した小規模な廃棄物焼却の実証施設の竣工式が行われました。東京二十三区清掃一部事務組合、環境省、NEDOの関係者も出席しています。

実証は2026年10月から始まります。グリーンイノベーション基金事業の一環で、2030年度までに技術の社会実装をめざすとされています。なお、この施設は小規模な実証用で、実際の清掃工場の規模ではありません。

排ガスのCO2を濃くして回収しやすくする

この技術の特徴は、ごみを空気ではなく酸素で燃やし、排ガスを循環させる点にあります。排ガス中のCO2の濃度が高まるため、分離して回収しやすくなります。90%以上の分離回収をめざす技術として開発が進められています。

ごみ焼却は、バイオマス由来の炭素を多く含みます。そのCO2を回収して利用・貯留できれば、排出を減らすだけでなく、大気中のCO2を減らす方向にもつながり得ます。ただし、実用化までにはコストや回収後の使い道といった課題が残るため、実証の結果を見守る段階です。

地域の資源で回す|真庭の例と、廃棄物発電に期待される役割

輸入に頼らない発電の例として、よく挙がるのが岡山県真庭市です。

製材所と山をつないだ真庭バイオマス発電所

真庭バイオマス発電所は、2015年4月に運転を始めた出力1万kWの発電所です。燃料は、地域の山に残される間伐材などの未利用材や、製材工場の端材を中心に、年間で約11万トン規模の木質資源が使われているとされています。

ポイントは、燃料を買い取る仕組みを通じて、山の持ち主や林業にお金が還流することです。発電所が地域の木材の流れの中に組み込まれています。同市では、発電所の近くにCLT(直交集成板)の工場もあり、木材を使う産業が連なっています。

FIT期間後の受け皿としての廃棄物発電

FIT期間が終われば、買取価格に支えられてきた木質バイオマス発電所の多くは、事業継続が難しくなると考えられます。そこで、地域の未利用材の流通を保つ受け皿として、すでにある公共インフラの一般廃棄物発電施設の活用が、選択肢の一つとして検討されています。

廃棄物発電は、処理費でコストをまかなえるため、売電収入だけで成り立たせるバイオマス専焼より事業を続けやすいと考えられます。ごみ焼却の熱電を、地域の木材利用や熱供給と組み合わせる設計が、これからの論点になりそうです。

誤解されやすい3つのポイント

ごみを電気に変える話題には、誤解が混ざりやすい点がいくつかあります。

「電気になるなら、ごみは減らさなくていい」ではない

日本の法律は、ごみ対策の優先順位を、発生抑制、再使用、再生利用、熱回収(発電を含む)、適正処分の順としています。発電は熱を回収するという意味で大切ですが、そもそもごみを出さないことより優先されるわけではありません。

発電のために一定量のごみが必要になれば、減量の努力と矛盾する懸念もあります。そのため、ごみの減量と発電は、順番を守って両立させる必要があります。

「バイオマスなら必ずカーボンニュートラル」とは限らない

植物は成長するときにCO2を吸収するため、バイオマスの燃焼は、条件が整えばカーボンニュートラルとみなされます。ただし、燃料が遠くから運ばれる場合は輸送のCO2が加わります。森林の再生に時間がかかる場合は、排出と吸収の間にずれも生まれます。

ごみ発電も同様で、ごみには紙や生ごみのような生物由来のものと、プラスチックのような化石由来のものが混ざっています。全部が再生可能エネルギーというわけではありません。

「廃棄物発電もバイオマス発電も同じ制度」ではない

廃棄物発電は処理費で支えられ、バイオマス専焼発電は売電収入やFIT/FIPで支えられるという違いがあります。2026年度の見直しが主に影響するのは、後者の中の輸入燃料型です。ニュースを見るときは、どの区分の話なのかを確かめると、混乱しにくくなります。

私たちにできること|発電の前に、ごみを減らす

10月は3R推進月間とされています。電気を生む前に、まずごみそのものを減らす行動が、いちばん確実な環境貢献です。

家庭でできる3つの行動

  • 生ごみの水を切る、食べ残しを減らす(焼却時の熱効率にも影響します)
  • プラスチックと紙を、お住まいの自治体の分別ルールどおりに出す
  • 詰め替え用品やリユース品を選び、使い捨てを減らす

環境省の統計では、令和5年度の1人1日あたりのごみ排出量は851gでした。身近な行動の積み重ねが、この数字を動かします。

あわせて、お住まいの自治体の清掃工場が発電しているか、見学を受け付けているかを調べてみるのも一つの方法です。実際の設備を見ると、分別のルールが、燃やしやすさや安全な運転に結びついていることがよく分かります。

ごみ問題の基本や3Rの実践は、次の記事でも紹介しています。

まとめ

ごみを電気に変える技術は、全国の焼却施設の約4割ですでに使われています。年間の発電量は約262万世帯分に相当しますが、発電効率にはまだ伸びしろがあります。2026年度からは、輸入燃料に頼る大型のバイオマス発電がFIT/FIPの新規支援の対象外になり、政策の重点は地域の資源に移りました。

一方で、2026年10月には品川清掃工場の敷地で、ごみ焼却のCO2を回収する実証が始まりました。「燃やして発電する」から「CO2も扱う」へと、技術の目標が広がっています。ただし、発電は、ごみを出さない、再使用する、再生利用するという優先順位の後に位置づけられるものです。

ごみの出し方を見直すことが、発電を支える土台にもなります。社会全体で資源をどう回すかという大きな見取り図は、次の記事で確認できます。

  • 日本のごみ焼却施設1,004のうち411施設(40.9%)が発電しており、年間約262万世帯分の電力量に相当する(令和5年度)
  • 2026年度から、1万kW以上の一般木質等と液体燃料のバイオマス発電が、FIT/FIPの新規支援の対象外になった
  • 2026年10月、品川清掃工場の敷地でごみ焼却のCO2回収に向けた実証が始まり、2030年度までの社会実装がめざされている
  • 発電は、ごみの発生抑制や再使用、再生利用のあとに位置づく手段である
  • まず1つだけ、今日の食べ残しや使い捨てを減らすことから始められる

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
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