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脱炭素ロードマップとは?目標や取り組み内容をわかりやすく解説

脱炭素ロードマップとは?目標や取り組み内容をわかりやすく解説

近年、地球温暖化対策として「脱炭素」への取り組みが世界中で加速しています。日本でも2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、国と地方自治体が協力した具体的な計画が策定されました。それが「脱炭素ロードマップ」です。この計画では、温室効果ガスの削減目標だけでなく、地域の課題解決や経済活性化も同時に目指しています。脱炭素ロードマップがどのような内容で、私たちの暮らしにどう関わってくるのかを詳しく見ていきましょう。

この記事で学べるポイント

  • 脱炭素ロードマップの基本的な仕組みと目的
  • 地域脱炭素先行地域の具体的な取り組み内容
  • ロードマップが地域社会に与える環境・経済効果

脱炭素ロードマップとは何か

脱炭素ロードマップとは何か

脱炭素ロードマップとは、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するための具体的な行程表です。単なる環境対策ではなく、地域の経済発展や住民の生活の質向上も同時に目指す総合的な計画として位置づけられています。

脱炭素ロードマップの定義

脱炭素ロードマップは、温室効果ガス削減に向けた中長期的な戦略を時系列で示した計画書です。特に重要なのは、2030年までの具体的な取り組みを明確にしている点です。日本では、2030年度に温室効果ガスを2013年度比で46%削減するという中間目標が設定されており、ロードマップはこの目標達成のための道筋を詳細に描いています。

ロードマップには、再生可能エネルギーの導入拡大、省エネルギー対策の推進、脱炭素技術の開発・普及など、多岐にわたる施策が盛り込まれています。また、地域ごとの特性を活かした取り組みも重視されており、農山漁村、離島、都市部など、それぞれの地域に適した脱炭素化の方法が示されています。

策定された背景と目的

脱炭素ロードマップが策定された背景には、気候変動による深刻な影響があります。近年、日本でも猛暑や豪雨災害が頻発しており、温室効果ガスの削減は待ったなしの課題となっています。2020年10月、菅前総理大臣が「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことを受けて、その実現に向けた具体的な計画として策定されました。

ロードマップの目的は、単に温室効果ガスを削減することだけではありません。地域が抱える人口減少や高齢化、産業の衰退といった課題を、脱炭素化の取り組みと合わせて解決することを目指しています。例えば、太陽光発電事業が地域に新たな雇用を生み出したり、省エネ住宅の普及が住民の光熱費負担を軽減したりするといった効果が期待されています。

日本の地域脱炭素ロードマップの概要

日本の地域脱炭素ロードマップの概要

日本政府が2021年6月に決定した「地域脱炭素ロードマップ」は、地域が主役となって脱炭素社会を実現するための包括的な計画です。このロードマップは、全国の自治体が連携して取り組むことで、「実行の脱炭素ドミノ」を起こし、2050年を待たずに多くの地域で脱炭素を達成することを目標としています。

2つのステップで進む計画

地域脱炭素ロードマップは、段階的に進む2つのステップで構成されています。第1ステップは2030年までの期間で、全国に少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」を創出することを目標としています。これらの先行地域では、地域特性を活かした先進的な脱炭素化の取り組みが実施され、成功事例として他の地域のモデルとなります。

第2ステップは2030年から2050年までの期間で、先行地域で培われたノウハウや技術を全国に展開していきます。このように、まず成功事例を作り、それを横に広げていく「ドミノ効果」を狙った戦略となっています。政府は、この取り組みに対して人材、情報、資金の面から積極的な支援を行うとしています。

脱炭素先行地域づくり

脱炭素先行地域とは、2030年度までに民生部門(家庭や事業所)の電力消費に伴う二酸化炭素排出を実質ゼロにする地域のことです。これらの地域では、再生可能エネルギーの大幅な導入や省エネルギー対策の徹底により、脱炭素化を先行して実現します。

先行地域の選定は、地方自治体からの提案に基づいて行われています。2025年5月時点で、全国40道府県115市町村の88提案が選定されており、農山漁村から都市部まで多様な地域が含まれています。これらの地域では、地域の資源を活用した再生可能エネルギーの導入や、地域内でのエネルギーの地産地消といった取り組みが進められています。

脱炭素ロードマップの具体的な取り組み内容

脱炭素ロードマップの具体的な取り組み内容

脱炭素ロードマップでは、全国の自治体が取り組むべき具体的な施策が明確に示されています。これらの取り組みは、地域の特性に応じて柔軟に組み合わせることができ、地域課題の解決と脱炭素化を同時に実現することを目指しています。

重点対策の8つの分野

地域脱炭素ロードマップでは、脱炭素化の基盤となる「重点対策」として8つの分野が設定されています。まず、屋根置きなど自家消費型の太陽光発電の普及があります。これは、家庭や事業所の屋根に太陽光パネルを設置し、発電した電力をその場で使用することで、電気代の削減と脱炭素化を同時に実現する取り組みです。

次に、地域共生・地域裨益型再生可能エネルギーの立地が挙げられます。これは、大規模な太陽光発電所や風力発電所を建設する際に、地域住民の理解を得ながら、売電収益の一部を地域に還元する仕組みです。また、公共施設などの業務ビルにおける徹底した省エネ対策と、建物の更新時にはZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化を誘導することも重要な取り組みとされています。

住宅分野では、新築住宅・建築物の省エネ基準への適合義務化や、既存住宅の断熱性能向上が推進されています。さらに、ゼロカーボン・ドライブとして電気自動車や燃料電池自動車の普及、資源循環の高度化に向けたプラスチック資源循環の推進、食品ロス削減やコンポストの利用拡大、分散型エネルギーシステムの構築なども含まれています。

実行の脱炭素ドミノとは

「実行の脱炭素ドミノ」とは、脱炭素の取り組みが成功した地域から他の地域へと波及していく現象を表現した言葉です。まず、意欲と実現可能性が高い地域で脱炭素化の成功事例を作り、その成果やノウハウを他の地域に伝搬させることで、全国的な脱炭素化を加速させる戦略です。

このドミノ効果を実現するために、政府は脱炭素先行地域に対して重点的な支援を行っています。財政支援だけでなく、技術的な助言や人材派遣、情報提供なども含まれます。また、先行地域での取り組み成果は、他の自治体が参考にできるよう積極的に情報発信されています。これにより、各地域が独自に試行錯誤する必要がなく、効率的に脱炭素化を進めることができます。

自治体の脱炭素ロードマップ事例

自治体の脱炭素ロードマップ事例

全国の自治体では、地域の特性を活かした独自の脱炭素ロードマップが策定されています。これらの事例を見ることで、脱炭素化がどのように地域の実情に合わせて展開されているかを理解することができます。

徳島県の取り組み

徳島県は、2021年度から2030年度までの10年間を推進期間とする「徳島県版・脱炭素ロードマップ」を策定しました。このロードマップでは、2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で50%削減し、自然エネルギーによる電力自給率を50%以上にするという具体的な数値目標を設定しています。

徳島県の特徴的な取り組みとして、豊富な森林資源を活用した木質バイオマス発電の推進があります。県内の間伐材や製材残材を燃料として活用することで、林業の活性化と脱炭素化を同時に実現しています。また、小水力発電の普及にも力を入れており、山間部の豊富な水資源を活用した地域密着型のエネルギー供給システムを構築しています。さらに、プラスチックごみの削減や食品ロス対策といった循環型社会の形成にも積極的に取り組んでおり、環境先進県としての地位を確立しています。

長野県松本市の事例

長野県松本市は、乗鞍高原地域が脱炭素先行地域として選定され、2030年度までに地域内の電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指しています。標高1,500メートルの高原という立地を活かし、太陽光発電と小水力発電を組み合わせたエネルギーシステムを構築しています。

松本市の取り組みで注目されるのは、観光業と脱炭素化を結びつけた戦略です。乗鞍高原は年間約100万人の観光客が訪れる山岳リゾート地ですが、この観光資源を活用して脱炭素化を進めています。例えば、宿泊施設での再生可能エネルギー導入により、「環境に優しい宿」としてのブランド価値を高めています。また、電気自動車のシェアリングサービスを観光客向けに提供することで、観光と脱炭素化の両立を図っています。このように、地域の主要産業である観光業を脱炭素化の推進力として活用している点が特徴的です。

脱炭素ロードマップが地域に与える効果

脱炭素ロードマップが地域に与える効果

脱炭素ロードマップの実施は、温室効果ガスの削減だけでなく、地域社会全体に多面的な効果をもたらします。環境面での効果はもちろん、経済活性化や住民の生活の質向上など、地域にとって大きなメリットが期待されています。

環境面での効果

脱炭素ロードマップの最も直接的な効果は、温室効果ガス排出量の大幅な削減です。再生可能エネルギーの導入により、化石燃料への依存度が下がり、二酸化炭素排出量が着実に減少しています。また、省エネルギー対策の推進により、エネルギー消費量そのものの削減も進んでいます。

さらに、大気汚染物質の削減効果も見逃せません。石炭や石油などの化石燃料の使用が減ることで、大気中の有害物質が減少し、地域の空気環境が改善されます。これは住民の健康増進にも直結する重要な効果です。加えて、森林保全や生物多様性の保護といった副次的な環境効果も期待されており、総合的な環境改善が実現されています。

経済・社会面でのメリット

脱炭素ロードマップは、地域経済の活性化にも大きく貢献しています。再生可能エネルギー事業の立ち上げにより、建設業や電気工事業などに新たな需要が生まれています。また、地域資源を活用したエネルギー供給により、これまで域外に流出していたエネルギー代金を地域内で循環させることができるようになりました。

雇用創出効果も顕著に現れています。太陽光発電の設置・保守管理、バイオマス発電の燃料調達、省エネ住宅の建設・改修など、様々な分野で新しい仕事が生まれています。特に、若年層の地元定着や、他地域からの移住促進にもつながっており、人口減少対策としても効果を発揮しています。住民にとっては、電気代やガソリン代の削減により家計負担が軽減される一方、災害時のエネルギー自給能力向上により、安心・安全な暮らしが実現されています。

脱炭素ロードマップの今後の課題と展望

脱炭素ロードマップの今後の課題と展望

脱炭素ロードマップは着実に成果を上げていますが、2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、まだ多くの課題が残されています。技術的な課題としては、再生可能エネルギーの出力変動を調整する蓄電技術の普及や、水素エネルギーなどの新技術の実用化が挙げられます。

制度面では、脱炭素化に向けた法規制の整備や、炭素税などの経済的手法の導入が検討されています。また、地域間の取り組み格差を解消するため、国による支援策の充実も重要な課題です。特に、財政力の乏しい自治体でも脱炭素化に取り組めるよう、技術面・資金面での支援体制の強化が求められています。

一方で、国民意識の変化により脱炭素化への理解が深まっており、企業の環境経営への取り組みも加速しています。デジタル技術の活用による効率化や、国際的な脱炭素技術の共有なども進んでおり、今後の展開に期待が高まっています。2030年の中間目標達成に向けて、官民一体となった取り組みがさらに重要になってくるでしょう。

脱炭素ロードマップは、単なる環境対策を超えて、持続可能な地域社会の実現を目指す総合的な戦略です。地域の特性を活かしながら、環境・経済・社会の三方良しを実現する取り組みとして、今後もその重要性は高まり続けるでしょう。私たち一人ひとりが、身近なところから脱炭素化に貢献していくことが、この大きな目標の実現につながっていきます。

参照元
・環境省 脱炭素ポータル https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/road-to-carbon-neutral/

・環境省 脱炭素地域づくり支援サイト https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/chiiki-datsutanso/

・環境省 脱炭素先行地域 https://policies.env.go.jp/policy/roadmap/preceding-region/

・内閣官房 国・地方脱炭素実現会議 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/

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