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絶滅危惧種とは?原因から保護対策まで分かりやすく解説|最新データと日本の現状

絶滅危惧種とは?原因から保護対策まで分かりやすく解説

絶滅危惧種とは、絶滅のおそれが高いと科学的な基準で評価された野生生物のことです。国際自然保護連合(IUCN)や環境省が「レッドリスト」という一覧にまとめ、危険度ごとに分類しています。2026年7月に更新されたIUCNレッドリストでは、評価済みの175,909種のうち49,505種が絶滅の危機にあるとされました。日本の環境省レッドリストでも、2026年3月末時点で絶滅危惧種は合計3,587種に上ります。この記事では、数字の正しい読み方、増える原因、回復した種の事例、日本の保護制度、そして私たちにできる行動を順に見ていきます。

この記事で学べること

  • 世界と日本の絶滅危惧種の最新の数字と、誤解されやすい読み方
  • IUCNと環境省のレッドリストのカテゴリーの違い
  • 絶滅危惧種が増える主な原因と、日本で起きている具体例
  • タンチョウやトキなど、保護によって状況が改善した種の事例
  • 種の保存法・外来種対策・自然共生サイトなど、日本の保護制度

絶滅危惧種は何種いる?世界と日本の最新データ

数字は更新のたびに変わるため、まず最新の公式発表を押さえておきましょう。ここでは世界の数字、日本の数字、そして読むときの注意点の順に整理します。

世界の数字(IUCNレッドリスト)

IUCNは2026年7月9日、レッドリストの更新を公表しました。掲載されているのは175,909種で、そのうち絶滅の危機にある種は49,505種です。2025年10月の更新時点では、掲載172,620種のうち絶滅危惧種は48,646種でした。

2つの時点の数字を比べると絶滅危惧種は増えて見えます。ただし、この増加には、評価が進んで新たに加わった種も含まれます。「この9か月で状況が悪化した種がこれだけ増えた」とは読めません。

日本の数字(環境省レッドリスト)

環境省は、2025年3月に植物・菌類、2026年3月に鳥類と爬虫類・両生類の「第5次レッドリスト」を公表しました。植物・菌類は2,952種が掲載され、うち2,063種が絶滅危惧種です。鳥類は170種のうち108種、爬虫類・両生類は138種のうち96種が絶滅危惧種と評価されました。

これらを反映した2026年3月末時点の絶滅危惧種の総数は3,587種です。残りの分類群は2026年度以降、評価が終わったものから順に公表される予定のため、この数字は途中経過にあたります。

数字を読むときの3つの注意点

1つ目は、約28%という割合の意味です。これは、地球上のすべての生物の28%が危機にあるという意味ではなく、これまでに評価された種の中での割合です。評価されていない種のほうが多いため、全体像は分かっていません。

2つ目は、数が減ったからといって状況が良くなったとは限らないことです。日本の植物・菌類は、絶滅危惧種が前回より207種減りました。しかし環境省は、その主な理由に評価基準の変更、個体数の回復や新たな分布の発見、再発見された種の存在を挙げています。保全の成果だけで減ったわけではありません。

3つ目は、別の指標との混同です。WWFの「生きている地球レポート2024」は、1970年から2020年の間に野生生物の個体群の規模が平均で73%減少したと報告しています。これは「個体群の大きさの変化の平均」であり、73%の種が絶滅危惧種という意味ではありません。この指数の算出方法には、科学者の間で議論もあります。

IUCNと環境省のレッドリスト、カテゴリーの違い

ニュースで「絶滅危惧種に指定された」と聞くと、法律で守られる種になったと思いがちです。実際にはレッドリストは、まず科学的に危険度を評価した一覧です。

IUCNのレッドリストは、危険度の高い順に次のように分かれています。このうち上の3つが、一般に絶滅危惧種と呼ばれます。

  • 深刻な危機(CR)は、ごく近い将来に野生で絶滅する危険性が極めて高い種です
  • 危機(EN)は、近い将来に野生で絶滅する危険性が高い種です
  • 危急(VU)は、絶滅の危険性が増大している種です

環境省のレッドリストでは、これに対応するカテゴリーが「絶滅危惧IA類」「絶滅危惧IB類」「絶滅危惧II類」です。その手前に「準絶滅危惧」があり、条件が変われば絶滅危惧種に移るおそれのある種が入ります。

環境省は第5次レッドリストの作成にあたり、全分類群で統一した評価ができるよう「レッドリスト作成の手引」を整えました。絶滅のおそれの基準を、より具体的に定めたものです。今回の見直しで数字が動いた背景には、この基準の整理もあります。

もうひとつ押さえておきたいのは、レッドリストへの掲載そのものには、捕獲を禁じるような直接の法的効果がないことです。環境省は、保護の優先度が特に高い種について、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種への指定を検討するとしています。リスト入りは、保護の入り口にあたる情報です。

絶滅危惧種が増える主な原因

原因は1つではなく、重なり合って作用します。IUCNの最近の発表と、環境省の第5次レッドリストから見える具体例を紹介します。

生息地の減少と劣化

IUCNは2025年10月、鳥類の個体数減少で最も多い原因は生息地の消失と劣化だと発表しました。主な要因は農地の拡大と集約化、そして森林の伐採です。

日本でも、環境省は鳥類の絶滅危惧種が増えた理由として、開発による生息環境の悪化を挙げています。宅地や道路だけでなく、干潟や草地といった身近な環境の変化も影響します。

気候変動と海の変化

IUCNは2025年10月の更新で、ズキンアザラシを危急から危機に引き上げました。ヒゲアザラシとタテゴトアザラシも、軽度懸念から準絶滅危惧に移っています。北極域で海氷が減っていることが主な背景です。

2026年7月の更新では、海底の熱水噴出域にすむ固有の貝類が取り上げられました。確認されている201種のうち125種(62%)が、深海底の鉱物採掘によって絶滅のおそれがあるとされています。気候変動に限らず、新しい資源開発が未知の生態系に及ぶことも、リスクの1つです。

外来種による捕食と競合

人が持ち込んだ外来種は、在来の生きものにとって脅威になります。環境省は、鳥類の絶滅危惧種が増えた理由に、外来種による捕食も挙げています。

日本では特定外来生物が2026年3月時点で162件指定されています。ヒアリは2025年度に36件が確認され、年間の件数として過去最多でした。2017年からの累計は171件、20都道府県にわたります。

乱獲と違法取引

ペット、装飾品、食用、薬の原料などを目的にした捕獲や取引も、種を追い詰めてきました。この問題に対応する国際的な枠組みが、1973年に採択されたワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)です。国際的な取引を規制する条約で、日本も種の保存法で国内の流通を管理しています。

人が自然に手を入れなくなることの影響

意外に思われるかもしれませんが、人の関わりが減ることも危機の原因になります。日本の生物多様性国家戦略は、開発などの人間活動に加えて、自然に対する働きかけが縮小することを危機の1つに位置づけています。草刈りや水田の管理で保たれてきた草地や湿地が、手入れされなくなって変化し、そこにすむ生きものが減るという構図です。

絶滅危惧種の増減は、生物多様性全体の傾向を映しています。全体像を先に押さえたい方は、あわせて読むと整理しやすくなります。

絶滅危惧種が減ると、暮らしの何が変わるのか

種の絶滅は、その生きものがいなくなるだけでは終わりません。食べる・食べられるの関係や、植物の受粉、種子の運搬のつながりが、一部欠けるだけで変わることがあります。

その影響は、食料、水の浄化、気候の安定、自然災害の緩和といった、自然から受けている恩恵に及びます。こうした恩恵は「生態系サービス」と呼ばれ、企業の情報開示でも重視される考え方になっています。

私たちの食卓や身の回りにある素材は、多くが野生の生きものや、その遺伝的な多様性に支えられています。野生の近縁種が失われると、病気や気候の変化に強い品種を育てる手がかりも失われます。

絶滅は元に戻せません。だからこそ、危機が表面化する前に手を打つ予防の考え方が重要になります。

回復した種に学ぶ|保護は成果を出している

悪いニュースが目立ちますが、保護の成果が数字に表れた例もあります。何が効いたのかを知ると、対策の方向性が見えてきます。

日本で回復した種

環境省が2026年3月に公表した第5次レッドリストでは、タンチョウが絶滅危惧II類から準絶滅危惧へ引き下げられ、絶滅危惧種から外れました。1952年に33羽まで減ったタンチョウは、2025年1月の調査で1,927羽が確認されています。

トキは絶滅危惧IA類から絶滅危惧IB類へ引き下げられました。2024年末時点で、佐渡の野生下に576羽と推定されています。奄美大島などにすむアマミヤマシギも、外来の捕食者を根絶する取り組みなどで個体数が緩やかに回復し、絶滅危惧種から外れました。

世界で回復した種

IUCNは2025年10月、アオウミガメを危機から軽度懸念へ引き下げました。世界の個体数は、1970年代から約28%増えたとされています。

2026年7月には、オーストラリアのフクロアリクイ(ナンバット)が危機から準絶滅危惧に改善しました。1970年代後半に約300頭まで減りましたが、現在は2,000〜3,000頭です。ただし、元の分布域の0.04%にしか残っておらず、野生化したネコやキツネの脅威は続いています。

新たに危機に入る種もある

一方で、新たに危機に入った種もあります。ハマシギは、第5次レッドリストで初めて絶滅危惧II類と評価されました。2000年から2017年にかけて個体数が約40%減少した可能性があるとされています。

アカモズ(亜種)は絶滅危惧IB類から絶滅危惧IA類に、ニホンイシガメは準絶滅危惧から絶滅危惧II類に移りました。両生類で絶滅危惧種が増えたのは、分類学の研究で種が細分化され、1種あたりの危険度が相対的に高まったことも一因です。回復する種と悪化する種が同時に存在するのが、現在の状況です。

日本の保護制度|種・外来種・場所の3つの面から

日本の対策は、守る対象によって制度が分かれています。種そのものを守る制度、脅威を取り除く制度、生息の場を守る制度の3つに整理できます。

種を守る種の保存法

種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)では、特に保護が必要な種を国内希少野生動植物種に指定します。2026年3月時点で458種が指定されています。指定された種は、捕獲や譲渡が原則として禁止されます。

環境省の令和8年版環境白書によると、生息地等保護区は10か所が指定されています。個体数を増やすための保護増殖事業は、58の事業で79種が対象です。

脅威を取り除く外来種対策

外来生物法は、特定外来生物の飼育・栽培・保管・運搬・輸入・野外への放出を、原則として禁止しています。先ほど触れたアマミヤマシギの回復は、外来の捕食者対策が成果につながった例です。

場所を守る自然共生サイトと30by30

2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30」の目標に向けて、環境省は民間や自治体が守っている場所を「自然共生サイト」として認定しています。制度開始から2026年6月末までに、610か所が認定されました。

認定された区域のうち、保護地域と重なる部分を除いたものは、国際データベースにOECM(保護地域以外で生物多様性保全に貢献する地域)として登録されます。登録面積は合計で64.6千haです。この仕組みは、2025年度に施行された法律で法制化されました。

企業の敷地や里山、水田なども対象になるため、保全の担い手が広がっています。この流れは「ネイチャーポジティブ」という考え方とつながっています。

私たちにできること|今日から選べる3つの行動

制度は大切ですが、日常の選択も無関係ではありません。難しいことを一度に始める必要はなく、できるものから選べば十分です。

外来種を持ち込まない・捨てない・広げない

環境省が掲げる外来種対策の基本は、「入れない・捨てない・拡げない」の3原則です。飼えなくなったペットや、庭で増えすぎた園芸植物を、野外に放してはいけません。

飼育を考えるときは、その種が特定外来生物に当たらないか、飼育に許可が必要かを先に確認しましょう。珍しい生きものを購入する前には、正規の流通経路かどうかも確認が必要です。

買い物で原産や認証を確かめる

木材、紙、水産物、パーム油などの原料は、生息地の消失と結びつくことがあります。FSCやMSCのような第三者認証のラベルは、確認の手がかりになります。

ただし、ラベルがあれば安心とは言い切れません。何を認証しているのか(森林管理か、漁業か、流通か)を確認し、企業の公開情報とあわせて見るのが確実です。根拠のない「自然に優しい」という表現には、注意してください。

身近な生きものの情報を知る

環境省のレッドリスト掲載種は、環境省の「いきものログ」で検索できます。都道府県や市区町村が独自に作るレッドリストもあり、愛知県のように2025年版を公表している自治体もあります。

秋は、干潟にシギ・チドリ類が渡ってくる季節です。ハマシギのように、身近な鳥が絶滅危惧種になる時代です。お住まいの地域のリストを一度開いて、どんな生きものが危機にあるのかを知るところから始めてみてください。

まとめ

絶滅危惧種とは、レッドリストの基準で絶滅のおそれが高いと評価された野生生物のことです。2026年7月のIUCNレッドリストでは、評価済みの175,909種のうち49,505種が絶滅危惧種で、日本でも3,587種に上ります。ただしこれは評価済みの種の中での割合で、数が増減した理由は、実態の変化と評価方法の変化を分けて読む必要があります。

原因は、生息地の消失、気候変動、外来種、乱獲、自然への働きかけの縮小など、複数が重なっています。一方で、タンチョウやアオウミガメのように、保護によって状況が改善した種もあります。

制度の面では、種の保存法、外来種対策、自然共生サイトといった複数の仕組みが動いています。個人にできることは、外来種を持ち込まないこと、買い物で原料の背景を確かめること、地域の生きものを知ることです。まず1つだけ試すなら、お住まいの地域のレッドリストを開いてみてください。

  • 絶滅危惧種の約28%という割合は、評価された種の中での数字で、全生物の割合ではありません
  • レッドリストは科学的な評価の一覧で、掲載自体に直接の法的効果はありません
  • 原因は生息地の消失・気候変動・外来種・乱獲などが重なっており、日本ではタンチョウやアマミヤマシギのように回復した種もあります
  • 種の保存法・外来種対策・自然共生サイトが、種・脅威・場所をそれぞれ守っています
  • 外来種の3原則、認証ラベルの確認、地域のレッドリストの閲覧が、今日からできる行動です

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
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