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ENVIRONMENT

再エネの系統接続はなぜ止まる?出力制御の仕組みと家庭でできる対策

Photo by Mirco Colosi on Unsplash

太陽光や風力の発電所は増えているのに、「系統に接続できない」「発電しても止められる」というニュースを見かけます。再エネの系統接続とは、発電所を送電線や変電所につなぎ、電気を流せる状態にする手続きと工事のことです。ここで問題になるのは発電設備の数ではなく、電気を運ぶ送電網の空きです。この記事では、接続が「止まる」2つの意味、出力制御の最新の動き、系統用蓄電池の申込急増、国の対策を整理します。そのうえで、家庭でできる対策を紹介します。

この記事で学べること

  • 「接続待ち」と「出力制御」の違いと、それぞれが起きる理由
  • 出力制御が九州から全国へ広がった経緯と、直近の傾向
  • ノンファーム型接続や系統用蓄電池など、新しい動きの意味
  • 家庭の太陽光やエコキュートで、昼の電気を使いこなす具体策
目次

「止まる」には2つの意味がある|接続待ちと出力制御

「再エネが止まる」という言葉は、実は別々の2つの現象をまとめて指しています。どちらの話かを分けて考えると、ニュースの意味がつかみやすくなります。

接続待ちは「送電線の空き容量」の問題

1つ目は、これから発電所を建てる段階で起きる接続待ちです。日本の送電網はもともと、大規模な火力・水力発電所を前提に設計されてきました。出力が天候で変わり、設置場所も分散する太陽光や風力が増えると、既存の送電線に空き容量が足りない地点が出てきます。空きがなければ、工事を待つか、後述する条件付きの接続を受け入れるかを選ぶことになります。

出力制御は「すでにある発電所」を一時的に止める措置

2つ目は、すでに稼働している発電所の出力を一時的に下げる出力制御です。出力制御には、大きく2つの理由があります。1つは、電気が使われる量より発電量が多くなりすぎる「需給バランス制約」です。もう1つは、送電設備の上限を超えないようにする「送電容量制約」です。

止める順番にはルールがある

出力制御は無作為に行われるわけではなく、「優先給電ルール」に沿って進みます。オムロン ソーシアルソリューションズの整理では、順番はおおむね次のとおりです。まず火力発電を絞り、揚水や蓄電池を活用します。次に連系線で他の地域へ送り、その後にバイオマス、太陽光・風力の順で制御します。水力・原子力・地熱のような長期固定電源は最後です。再エネが真っ先に止められるのではなく、他の手段を使い切ったあとの措置という位置づけです。

数字で見る出力制御|九州から全国へ広がった7年

出力制御は一部の地域だけの話ではなくなりました。実施エリアの広がりと量の推移を、公開資料で確認します。

2018年の九州から、2023年には東京以外の全エリアへ

本土で最初に出力制御が行われたのは、2018年10月13日〜14日の九州エリアです。その後は次のように広がりました。

  • 2022年4月に東北・中国・四国
  • 2022年5月に北海道
  • 2023年1月に沖縄
  • 2023年4月に中部・北陸
  • 2023年6月に関西

九州の2022年度の例では、最小需要が718万kWだったのに対し、再エネの導入量は1,216万kWで、最小需要の約1.7倍でした。需要の底にあたる春や秋の晴れた日の昼間は、発電が需要を上回りやすいことが分かります。

全国の出力制御量は約6億kWhから約18億kWhへ

全国の出力制御量は、2022年度に約6億kWhでした。2023年度は約18億kWhへ増えたとされています。2023年度のエリア別の出力制御率は、オムロンが資源エネルギー庁の資料をもとにまとめた表で、九州8.3%、中国3.6%、四国1.8%、東北0.82%、東京0%です。九州で8.3%ということは、残りの9割強は発電した電気が使われているという見方もできます。

直近も「増減しながら高止まり」の傾向

資源エネルギー庁が2025年9月以降に示した資料では、2025年の春は天候などの影響で全国の出力制御量が前年度より増える傾向でした。2025年の秋は前年度と同程度で、2025年度の冬は好天の影響で例年より増えたと報告されています。また、2025年6月時点では、東京エリアでは再エネの出力制御は実施されていませんでした。年ごとの増減は天候に大きく左右されますが、出力制御がすっかり過去のものになった様子はありません。

今まさに迎えている秋は、冷暖房の需要が小さく、日射のある日中に電気が余りやすい季節です。九州電力も、出力制御は春と秋の昼間に多く発生すると説明しています。

再エネ導入全体の流れと日本の課題は、次の記事も参考になります。

新しい順番待ち|系統用蓄電池の申込が急増している

出力制御の対策として期待される蓄電池にも、系統接続の渋滞が起きています。

契約申込は約2,400万kW、前年の約3.9倍

資源エネルギー庁の2025年12月の資料によると、2025年9月末時点の系統用蓄電池の契約申込みは、沖縄を除く全国で約2,400万kWでした。前年同月末の約3.9倍です。同じ時期、太陽光は約1.1倍、風力はほぼ横ばいで、蓄電池の伸びが突出しています。

申込と実際の接続には大きな開き

一方、実際に系統へつながった系統用蓄電池は、自然エネルギー財団の資料で2026年3月時点に約0.84GW(約84万kW)とされています。時点は異なりますが、申込の量と比べると桁がひとつ違います。経済産業省は、接続検討のすべてが接続に至るわけではなく、補助金や入札の締切前に申込が集中していると説明しています。

規律強化とは「本気度の確認」

順番待ちが膨らむと、事業化の見込みが十分でない申込が先に枠を取ってしまい、実際に事業を進めたい人が接続できなくなります。このため、申込時に概算工事費負担金の5%を保証金として預ける仕組みの見直しなど、系統アクセス手続きの規律強化が議論されています。九州エリアでは、事業者あたりの接続検討数に上限を設ける案も示されています。蓄電池は出力制御を減らす有力な手段ですが、つなぐまでの手続きの整理が追いついていない段階といえます。

国の対策|既存の送電線を使い倒す発想へ

送電線を新しく引くには時間がかかるため、国はまず今ある線の使い方を見直しています。

日本版コネクト&マネージの3つの柱

資源エネルギー庁が打ち出した「日本版コネクト&マネージ」は、新しい線を引く前に既存の線を最大限に活用する考え方です。柱は「想定潮流の合理化」「N-1電制」「ノンファーム型接続」の3つの運用見直しです。

ノンファーム型接続は「混雑時は止まる」と引き換えに接続できる

ノンファーム型接続は、空き容量がない系統でも、混雑時の出力制御を受け入れることを条件に新規接続を認める仕組みです。基幹系統では2021年1月から全国で展開され、ローカル系統では2023年4月に受付が始まりました。東京電力パワーグリッドは、混雑が見込まれるローカル系統で2024年4月からノンファーム一律制御を運用しています。2026年4月からは、再給電方式による出力制御の順序に基づく運用に切り替えたと案内しています。

つまり、接続できることと、いつでも全量を発電できることは別です。ノンファーム型接続は、接続の機会を広げる一方で、どれだけ止まるかは地域や時期によって差が出る仕組みです。

プッシュ型の系統整備で長期の渋滞解消を狙う

もう1つの流れが、送電網そのものの増強です。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、申込を待ってから増強する従来型ではなく、将来の再エネ大量導入を見込んで広域的に系統を整備するプッシュ型の計画を進めています。地域間をつなぐ連系線の増強のように、時間のかかる工事を前倒しで進める発想です。発電所の建設は数年で完了しても、送電線の増強は用地確保や工事を含めて10年前後かかることもあるとされ、この時間差が「発電は増えるのに出力制御も増える」という矛盾して見える状況を生んでいます。

よくある誤解|出力制御が増えるなら再エネは意味がない?

出力制御のニュースから、誤った結論を引き出してしまうことがあります。ここでは、誤解されやすい3つの点を整理します。

「発電した電気が捨てられている=再エネは無駄」とは限らない

出力制御率が8%台の九州でも、発電した電気の9割以上は使われています。制御の大半は、需要が小さい春や秋の昼間の数時間に集中します。ただし、制御される分は燃料費がかからない電気を使い切れていない損失であり、減らす努力が必要なのも事実です。「全部無駄」でも「問題なし」でもなく、集中する時間帯をどう減らすかが論点になっています。

「蓄電池さえあれば解決する」わけではない

蓄電池は、昼に余った電気をためて夜に使うために有効です。しかし、前の章で見たとおり、系統用蓄電池自体が接続待ちの渋滞に巻き込まれています。蓄電池と、需要を昼に動かす取り組みと、送電網の増強を組み合わせて進める必要があります。

「家庭は関係ない」わけでもない

出力制御は発電事業者と電力会社の問題に見えますが、昼間の需要をつくる側には家庭も含まれます。これを「上げDR」(需要を増やす方向の調整)といい、環境省や電力会社が実証を進めています。

日本の再エネの位置づけや種類については、次の記事も参考になります。

家庭でできる対策|昼に使う・昼にためる

家庭の行動で系統全体を変えられるわけではありません。それでも、昼間の電気を上手に使う工夫は、出力制御を減らす方向に働きます。

自宅の太陽光は「昼に使う」を基本にする

太陽光発電のある家庭では、洗濯乾燥機や食洗機、掃除機などを、日射の多い昼間に動かすのが基本です。固定価格買取制度(FIT)が終わった家庭では、売るより自分で使うほうが得になる場面も増えます。タイマー予約を使えば、外出中にも昼の電気を使えます。

エコキュートの沸き上げを昼に移す

夜間に沸き上げる一般的なエコキュートに対し、日射量予報と連動して昼間に沸き上げる製品が登場しています。パナソニックは2024年10月26日に「おひさまエコキュート」Yシリーズを発売し、給湯にかかる年間の買電量を約7%削減できるとしています(メーカー公表値)。

九州電力は、エコキュートの沸き上げ時間を遠隔でシフトする家庭向けの実証への協力者を募集しています。条件には、家庭向け料金プランの契約や、蓄電池・V2Hなどの設備がないことが含まれます。夜間料金が割安なプランを契約している場合、昼に沸き上げると電気代が上がる可能性もあります。料金プランの条件は、導入前に必ず確認してください。

EVや蓄電池は「いつ充電するか」が鍵

電気自動車(EV)や家庭用蓄電池は、昼間に充電して夜に使う形に設定するだけで、昼の余剰電力の受け皿になります。電力会社のデマンドレスポンスのプログラムに参加すれば、系統の混雑緩和にも間接的に協力できます。

電力会社・国の実証も動き出している

九州電力送配電は、配電系統につながる家庭用電気温水器と系統用蓄電池を対象に、2026年4月からデマンドレスポンスの実証を始めたと発表しています。九州電力は、環境省の「令和8年度昼の再エネ余剰電力需要創出モデル実証」を2026年10月1日から始めるとしています。家庭が参加できる枠はまだ限られますが、昼の需要づくりが政策の主題になっていることは確かです。

太陽光を導入する前に確認したい3つのこと

これから自宅や事業所に太陽光を導入する人は、見積もりの金額だけでなく、系統の条件も確認しておくと収益の見通しを立てやすくなります。

地域の空き容量や混雑の見通しを見る

一般送配電事業者は、系統の空き容量や混雑の見通しを公開しています。自分の地域がどの程度混んでいるかを知るだけでも、導入計画の現実味が変わります。

ノンファーム型接続や出力制御の対象条件を確認する

設備の容量や接続時期、契約の種類によって、出力制御の対象になるかどうかや、制御されたときの扱いは異なります。販売店や電力会社に、制御の条件と補償の有無を事前に聞いておきましょう。

自家消費を前提に容量と設備を決める

売電中心の計画は、出力制御の影響を受けやすくなります。自家消費で使い切れる容量を目安にし、蓄電池やエコキュートを組み合わせると、制御されても影響が小さくなります。

まとめ

再エネの系統接続が「止まる」とは、これから接続したくても送電線に空きがない接続待ちと、すでに稼働している発電所が一時的に止められる出力制御という、2つの異なる現象を指しています。出力制御は2018年の九州から広がり、全国の制御量は2022年度の約6億kWhから2023年度の約18億kWhへ増えました。その後も天候に左右されながら、高い水準が続いています。

対策は、ノンファーム型接続のように既存の送電線を使い倒す運用の工夫、プッシュ型の系統整備、系統用蓄電池の導入など、複数の手段が並行して進んでいます。ただし、蓄電池も接続待ちが起きていて、「これさえあれば解決」という手段はありません。

家庭にできる行動は、昼の電気を使う習慣づくりや、エコキュート・EV・蓄電池の使う時間帯の見直しです。大きな変化ではなくても、昼間の需要を増やす方向への一歩です。まず、自分の地域の電力会社が公開している系統情報のページを、一度のぞいてみてください。

  • 「接続待ち」は送電線の空き容量の問題、「出力制御」は稼働中の発電所を一時的に止める措置
  • 出力制御は2018年の九州から広がり、全国の制御量は2022年度の約6億kWhから2023年度の約18億kWhへ増えた
  • ノンファーム型接続などで接続の機会は広がったが、混雑時の出力制御を受け入れる条件が付く
  • 系統用蓄電池は申込が急増している一方、接続済みの量はまだ小さく、手続きの規律強化が進む
  • 家庭では、昼に電気を使う・昼に沸き上げる・昼に充電するという時間のシフトが現実的な対策

参考文献

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