公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
SOCIETY

9人に1人が貧困の現実|子どもの「学ぶ権利」を守るために社会にできること

9人に1人が貧困の現実|子どもの「学ぶ権利」を守るために社会にできること

「子どもの貧困」は遠い国の話ではありません。日本では今も、9人に1人の子どもが貧困状態に置かれているとされています。経済的な困窮は、食事や住まいだけでなく、学ぶ機会・体験する機会・将来を描く力にまで影響します。この記事では、日本の子どもの貧困と教育格差の現状、そして貧困の「連鎖」を断ち切るために社会・個人・企業ができることを整理します。

日本の子どもの貧困率|数字が示す「見えにくい」現実

厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2022年)によると、日本の子どもの貧困率は11.5%にのぼり、子どもの9人に1人が貧困状態にあるとされています。
一見豊かな社会に見える日本でも、深刻な格差が存在しています。

ただし、この数字の「改善」をそのまま受け取ることには注意が必要です。
相対的貧困率は2018年調査の13.5%から2022年調査(2021年値)の11.5%へと低下しましたが、貧困の「率」が改善する一方で、最も困窮した子どもたちが経験している貧困の「深刻度」は別問題として残っているという指摘があります。
日本における「こどもの貧困」が見えにくいとされる理由は、親や子ども自身に貧困であるという自覚がなかったり、貧困の自覚があっても周囲の目を気にして行政の支援を求めなかったりすることがあるためです。
外見だけでは困難を判断しにくいこの問題は、長年にわたって見過ごされてきた側面があります。

また、家族の構成によっても状況は大きく異なります。
ひとり親世帯の就業率は非常に高い水準にある一方、貧困率は44.5%という矛盾した現実があります。
懸命に働いても貧困から抜け出せない構造的な問題が、そこには存在しています。

「放課後」に生まれる教育格差

こども家庭庁は、子どもの貧困が経済的な困窮にとどまらず、学習面・生活面・心理面など様々な面において子どものその後の人生に影響を及ぼすとしており、貧困の連鎖を断ち切るためには、子育てや貧困の問題を家庭のみの責任とするのではなく、社会全体で解決することが重要だと位置づけています。

教育格差が生まれやすいのは、実は学校の授業時間ではなく「放課後」です。
文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、家庭が自己負担する教育支出のうち約6〜7割が学校外活動費(学習塾や習い事等の費用)となっており、日本では経済格差による教育格差は放課後に生まれやすいとされています。
世帯収入200万円未満の世帯と1,500万円以上の世帯では、学校外教育支出に約3倍もの格差が生じているとされています。
塾・習い事・体験活動——これらへのアクセスの差が、子どもの学力だけでなく、将来の選択肢の幅にも直結します。

四年制大学への進学率を世帯収入別に見ると、世帯収入の多寡で34.6ポイントもの差が生じていたことも分かっています。
さらに深刻なのは、小学6年生の時点ですでに世帯収入による学力格差が存在しており、世帯収入200万円未満の世帯と1,500万円以上の世帯では、全国学力テストの正答率に約20%の開きが生じていた
というデータです(2013年度調査・お茶の水女子大学分析)。格差は大学入試で突然生まれるのではなく、小学生のころから積み上がっていくのです。

貧困は「連鎖」する|次世代への影響

親の経済的貧困は、子どもから学習や体験の機会を奪うことにつながります。こうした教育機会の格差は子どもの学力格差や進学格差を生み、将来的には職業選択にも影響を及ぼし、貧困の世代間連鎖を生むとされています。
日本財団の調査では、経済格差が子どもの教育格差につながり、将来の収入差を生むという連鎖を検証しており、日本では最終学歴や正規雇用かどうかが収入水準に大きく反映されるため、教育格差は生涯収入に多大な影響を与えるとされています。
高卒者の月給は大学・大学院卒の6割程度にとどまり、生涯年収で見ると男性で約8,000万円、女性では約1億円もの差が生じるとも言われています。
子ども時代のわずかな学習機会の差が、数十年にわたる格差に拡大していく——この現実を「自己責任」として片付けることはできません。

政府・NPO・民間による支援の広がり

こうした課題への対応として、政府・地域・民間それぞれの取り組みが進んでいます。

文部科学省は、すべての子どもが家庭の経済状況に左右されることなく安心して育ち、学ぶことができるよう、幼児期から高等教育段階までの切れ目のない教育費の負担軽減に取り組んでいるほか、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置等による教育相談体制の整備等を進めています。

また、政府は2026年度から高校授業料の実質無償化を開始する方針ですが、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、低所得世帯の子どもの「学ぶ権利」を守るためには、授業料以外のコストへの支援拡充や、学校側での教材の現物提供・選択肢の拡大が必要だと主張しています。
授業料だけではなく、学用品・制服・通学費といった「見えにくい教育費」への支援が、引き続き課題となっています。

地域レベルでは、子ども食堂や無料・低価格の学習支援教室が広がっています。
こども家庭庁は、「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」「全国こども食堂支援センター・むすびえ」「全国フードバンク推進協議会」などの団体と連携し、物資や体験を提供したい企業・個人と支援先をつなぐマッチングネットワーク推進協議会を設立し活動しています。

さらに、不登校の増加も教育格差と深く絡み合っています。
2024年度の調査では、小中学校における不登校(年間30日以上欠席)の児童生徒数が過去最多となり、これは12年連続の増加で、10年前と比べて2倍以上の水準となっているとされています。
不登校の背景には経済的困難や家庭環境が絡むケースも多く、NPO法人カタリバは不登校の子どもたちへの訪問型学習支援や居場所づくりを行うほか、2021年から自治体と連携してメタバースを活用したオンラインプログラム「room-K」を運営しています。

SDGsと子どもの貧困|「誰一人取り残さない」を日本でも

SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」は、すべての子どもが公平に良い教育を受けられる社会を目指しています。
内閣府は、貧困の連鎖を断ち切り格差を解消するためには自立を促すことが不可欠であり、そのためには学校教育における知的能力の訓練だけでなく、意欲・自制心・やり抜く力・社会性などの「非認知能力」の発達が大きな影響を与えるとしており、これらの能力を醸成するために就学前教育が有効であることは様々な研究で明らかにされていると述べています。

子どもの貧困は、目標1「貧困をなくそう」・目標10「人や国の不平等をなくそう」とも直結しています。一人ひとりの子どもの現在の生活を守ることは、社会全体の未来への投資でもあります。

私たちにできること

子どもの貧困・教育格差への対応は、政府や専門機関だけの課題ではありません。個人・企業・地域コミュニティが取れるアクションはたくさんあります。

まず、寄付・支援団体への協力です。チャンス・フォー・チルドレン、キッズドア、カタリバなど、子どもの学習支援や居場所づくりに取り組むNPOへの寄付や、ボランティア参加という形で関わることができます。

次に、企業・個人としての物資提供です。こども家庭庁が運営するマッチングネットワーク推進協議会では、学用品・食料品・体験機会を提供したい企業や個人と支援先をつないでいます。「モノを役立てたい」という思いを、直接子どもたちへ届ける仕組みが整いつつあります。

そして、問題を「知る・伝える」ことも重要です。子どもの貧困は「見えにくい」からこそ、社会的認知が遅れてきました。身近な人と話題にする、SNSで情報を共有する、地域の学習支援活動に関心を持つ——こうした小さな行動が、社会全体の意識を変えていきます。「誰一人取り残さない」というSDGsの理念は、遠い国の話ではなく、私たちが暮らすこの社会の中にこそ問いかけられています。

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
MIRASUS

MIRASUS編集部。地球と人に優しい未来をつくるサステナビリティな事例をご紹介。誰にでもわかりやすくSDGsに関する情報は発信していきます。

  1. 世界水の日2026「水とジェンダー」が問いかける、水と平等のつながり

  2. 日本の幸福度、61位に後退|世界幸福度報告2026が示す「豊かさ」と「満足」のギャップ

  3. BHRRC・WBAが日本のNAP改定版に義務化への道筋を要請|人権デューデリジェンスの国際潮流と日本の課題

RELATED

PAGE TOP