女性活躍推進法の改正は、2026年4月1日にすでに施行されています。常時雇用する労働者が101人以上の企業には、「男女間賃金差異」と「女性管理職比率」を公表する義務が生じました。10月1日には、同じ改正法のうちハラスメント対策に関する部分も動き始めています。この記事では、2026年10月時点で確認できる情報をもとに、改正内容を整理します。そのうえで、公表された数字の読み方、働く人が自分の勤め先で確かめられること、職場が公表の先に求められることをたどります。
2026年4月に施行された改正のポイント
2025年6月11日に公布された改正法のうち、女性活躍推進法に関わる部分の中心は情報公表の強化です。改正前から制度の骨格は変わっていませんが、義務の対象と公表する項目が大きく広がりました。ここでは、対象の広がり、公表項目と時期、そのほかの変更点の順に確認します。
公表義務の対象が101人以上に広がった
従来、男女間賃金差異の公表が義務だったのは、常時雇用する労働者が301人以上の企業でした。改正によって、この義務は101人以上の企業に広がっています。
女性管理職比率の公表は、101人以上のすべての企業に新たに義務づけられました。301人以上の企業にとっても、これまでは選択して公表する項目の一つだった数字が、必ず出す項目に変わったことになります。100人以下の企業は、引き続き努力義務の対象にとどまります。
公表する項目の数と、公表の時期
公表する項目の数は、企業の規模によって異なります。労働政策研究・研修機構(JIL)が掲載した厚生労働省担当者の解説によると、次のとおりです。
- 301人以上の企業は、男女間賃金差異と女性管理職比率に加え、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」から各1項目以上を選び、合計4項目以上を公表します。
- 101〜300人の企業は、男女間賃金差異と女性管理職比率に加え、上記2区分のいずれかから1項目以上を選び、合計3項目以上を公表します。
最初の公表は、改正法の施行後に最初に終了する事業年度の実績が対象です。その事業年度の次の事業年度が始まってから、おおむね3か月以内に公表する必要があります。
解説では、事業年度が2026年4月末に終わる企業は、2026年7月末ごろまでに公表する例が示されています。この考え方に当てはめると、3月決算の企業の場合、最初に対象となるのは2027年3月期の実績です。公表の目安は2027年6月末ごろになります。
有効期限の延長と、女性の健康支援という新しい視点
女性活躍推進法は時限の法律で、有効期限は2026年3月末までとされていました。今回の改正で、期限は2036年3月31日までの10年間に延長されています。
もう一つの変更点が、女性の健康支援です。法の基本原則に、女性活躍の推進は女性の健康上の特性に留意して行われるべきことが明記されました。事業主行動計画の策定指針でも、職場における女性の健康上の特性に係る取組が行われることが望ましいとされています。
認定制度にも動きがありました。女性の健康支援に関する基準を加えた「えるぼしプラス」と呼ばれる新しい認定区分が設けられ、申請は2026年4月1日から可能になっています。
10月1日に始まったもう一つの改正|カスハラと就活セクハラ
2025年の改正法は、女性活躍推進法だけを変えたものではありません。労働施策総合推進法と男女雇用機会均等法も同時に改正されています。こちらは4月ではなく、2026年10月1日に施行されました。
厚生労働省の労働局の案内では、この日から、カスタマーハラスメント防止措置と、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が、事業主の義務になったとされています。それぞれの具体的な措置は、指針として告示されています。カスハラ対策は「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)です。就活セクハラ対策は「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(同第52号)です。
この二つは、女性活躍と無関係の話ではありません。就活セクハラは、採用の入り口で性別による不利益や恐怖を経験した人が、そもそも職業生活に入れなくなる問題です。カスハラは、接客や対面の仕事で働く人に被害が集中しやすく、そうした仕事には女性が多く就いています。働き続けられる環境を整えなければ、管理職比率を上げようとしても、その手前で人材が離れてしまいます。
制度どうしのつながりも設けられています。労働局の案内によると、プラチナえるぼしの認定要件に、求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置の内容を公表することが加わりました。採用段階の取り組みが、女性活躍の優良企業を示す認定の評価にも反映される形です。
数字で見る現在地|賃金差異・管理職比率・ジェンダーギャップ指数
公表義務が広がった背景には、日本の女性の働き方をめぐる数字があります。ここでは、国の統計から三つの指標を見ておきます。
賃金の男女差は縮まっているが、まだ大きい
厚生労働省の令和7年(2025年)賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の月額賃金は、男性が37万3,400円、女性が28万5,900円でした。男性を100としたときの女性は76.6で、前年から0.8ポイント上昇し、比較できる1976年以降で差は最も小さくなっています。
差が縮まっていることは確かです。ただ、女性の月額賃金が男性の約4分の3にとどまる状況は続いています。厚生労働省は、女性は男性に比べて課長級以上の管理職に就く割合が低いことなどを、主な要因として分析しています。
管理職に占める女性の割合は、役職が上がるほど低い
厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査(2025年10月1日現在)では、管理職に占める女性の割合は、係長相当職で20.9%、課長相当職で13.2%、部長相当職で9.2%でした。結果は2026年7月31日に公表されています。
前年度と比べると、課長相当職は12.3%から、部長相当職は8.7%から上昇しています。係長相当職は21.1%からわずかに下がりました。どの役職でも、上に行くほど女性の割合が小さくなる構造は変わっていません。
国際比較では、117位にとどまっている
世界経済フォーラムが2026年9月16日に公表したジェンダーギャップ指数で、日本は145カ国中117位でした。前年は148カ国中118位で、指数は0.670です。nippon.comの報道では、教育と健康の達成度が高い一方、経済と政治の分野で女性が力を発揮する機会が限られていることが背景として挙げられています。
順位だけを見ると1つ上がっただけですが、調査対象の国数が前年と異なるため、単純な比較はできません。順位の上下に一喜一憂するより、経済分野の中身である賃金差と管理職比率に目を向けるほうが、職場の課題に近づけます。
公表された数字の読み方|誤解されやすい3つの点
公表義務が始まると、各社の数字が並ぶようになります。ただ、男女間賃金差異は、読み方を誤ると見当違いの結論に行き着く数字です。見るときに押さえたい点を三つ挙げます。
賃金差異は「同じ仕事で女性が低く払われている」ことを示すものではない
男女間賃金差異は、男性労働者の平均賃金と女性労働者の平均賃金を比べた数字です。同じ職務、同じ等級の人どうしの賃金を比べているわけではありません。
差が生まれる主な理由は、役職や等級の違い、勤続年数の違い、雇用形態の違いです。女性の管理職が少なければ、それだけで平均は離れます。厚生労働省の公表事例でも、高い職務グレードに就いている男性の割合が高いことを要因として説明し、同等の職務グレードでは男女で賃金差が生じない人事制度であることを併記する書き方が紹介されています。
だからといって、差が大きい企業を「差別をしている」と決めつけることも、差が大きくても「構造の問題だから仕方がない」と済ませることも適切ではありません。差の背景にある構造を読み取ることが出発点です。
全労働者・正規・パートを分けて見る
公表では、全労働者、正規雇用労働者、パート・有期雇用労働者という区分ごとに数字を示すのが基本です。全労働者の数字だけを見ると、女性にパートが多い企業ほど差が大きく出ます。正規雇用どうしの差が小さくても、全体の差が大きければ、雇用形態による偏りが背景にあると読めます。
逆に、正規雇用の差が大きければ、等級や評価の仕組みを疑う根拠になります。三つの区分を並べて見ることで、問題がどこにあるかの見当がつきます。
女性管理職比率とセットで見て、説明欄を読む
賃金差異と女性管理職比率は、必ずセットで読みます。管理職比率が低く、賃金差異が大きい企業は、昇進の段階で女性が少なくなっている可能性が高いからです。
公表の場には「説明欄」があります。厚生労働省は、数字だけでなく背景を説明するために、この説明欄を活用することが重要だとしています。要因を自分の言葉で書いている企業と、数字だけを置いている企業とでは、課題への向き合い方が違うと考えられます。
マーサー ジャパンの2026年の分析では、男女賃金差異を登録した21,102社の正規雇用の平均は、男性を100として女性76.4でした。前年の75.5から差は縮まっています。国の統計の76.6とほぼ同じ水準で、別々の方法で見ても、ほぼ同じ位置にいることがわかります。一方で、要因を把握していた企業は3,268社にとどまりました。数字を出す段階から、原因を説明できる段階へ進めている企業は、まだ一部です。
自分の勤め先・志望先の公表情報を確認する方法
公表義務は、働く人や就職を考える人が企業を知るための手がかりになります。ただ、どこを見て、どう判断するかがわからなければ、使えません。ここでは確認の手順と、公表が見つからないときの考え方を整理します。
確認する場所と順番
次の順に見ていくと、短い時間で全体像がつかめます。
- 厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」で、企業名を検索します。
- 見つからなければ、企業の採用ページ、サステナビリティページ、統合報告書など、自社サイトの公表ページを探します。
- 男女間賃金差異は、全労働者・正規雇用・パート有期の三つの区分すべてが載っているかを確認します。
- 女性管理職比率とあわせて、説明欄や行動計画に要因と目標が書かれているかを読みます。
数字の良し悪しよりも先に、「欄が埋まっているか」「説明があるか」を見るのがこつです。情報を出す姿勢は、数字そのものと同じくらい、その企業の風土を表します。
公表が見つからないときは、時期の問題かもしれない
先に述べたとおり、最初の公表は、施行後に最初に終わる事業年度の実績をもとに、次の事業年度が始まってからおおむね3か月以内に行います。3月決算の企業なら、初回の公表の目安は2027年6月末ごろです。2026年10月の今、まだ新しい数字が見当たらなくても、すぐに義務違反とは言えません。
また、101人以上の企業の中には、すでに義務化前から自主的に公表している企業もあります。公表が見つからないときは、「いつ公表する予定か」を、採用担当や人事窓口に尋ねることもできます。聞き方を丁寧にすれば、質問そのものが失礼にあたることはありません。
就職・転職を考える人の使い方
志望先を比べるときは、賃金差異や管理職比率の数字だけで優劣をつけないほうが安全です。業種によって、女性の入社比率や平均勤続年数が大きく違うからです。同じ業界の企業どうしで、数字の推移と説明の中身を見比べると、違いが見えてきます。
さらに、今年10月から求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が義務になりました。採用に関わる相談窓口や、面接・インターンシップでの対応方針を公開しているかどうかも、志望先の姿勢を知る材料になります。
企業に求められる次の一歩|公表の「その先」
公表は、取り組みの出発点にすぎません。数字を出したあと、何をするかによって、職場の実態は変わります。企業が向き合うべきことを三つに分けて見ていきます。
数字の要因を分析し、目標と計画につなげる
厚生労働省の資料でも、数字だけでなく背景を説明することが求められています。要因の分析は、賃金差異を「役職の違い」「勤続年数の違い」「雇用形態の違い」といった要素に分けるところから始まります。どこに差の大部分があるかがわかれば、手を打つべき場所が決まります。
地方でも支援の動きがあります。労働新聞の報道によると、愛知県は2026年4月に、新たに公表義務の対象となった101〜300人の企業向けに、取組みガイドを出しました。賃金差異の要因分析の方法や、分析結果を是正に活かしている県内企業の事例を、担当者へのインタビュー形式で紹介する内容です。人事部門の人手が限られる中小規模の企業にとって、同じ規模の企業の工夫を知ることは、取り組みを始める助けになります。
女性だけに働きかけない
管理職比率を上げることだけを目標にすると、女性に負担が偏る危険があります。昇進の打診を断る理由が、育児や介護の負担にあるなら、本人の意欲を問う前に、働き方そのものを見直す必要があります。男性の育児休業取得や、長時間労働の抑制といった、全員に関わる制度が土台になります。
厚生労働省の令和7年度雇用均等基本調査では、男性の育児休業取得率が過去最高の50.9%になったと報じられています。数字が上がっていても、取得期間が短いままでは、育児の負担が女性に残ることがあります。取得率だけでなく、中身を点検する視点が欠かせません。
健康支援は「女性だけの福利厚生」にしない
今回の改正で新しく加わった女性の健康支援は、取り組み方を間違えると、かえって職場の分断を招くことがあります。JILの解説では、健康に関する情報はプライバシーの保護が特に求められること、女性に限らず労働者全体を対象にした取り組みも有効であることが示されています。
月経や更年期、不妊治療など、健康にまつわる悩みは、人によって程度も事情も違います。制度を整える際は、利用する人が特別な目で見られない仕組みにすることが前提です。休暇制度、研修、担当者の選任といった「えるぼしプラス」の基準は、そのための具体的な手がかりになります。
まとめ
2026年4月に施行された女性活躍推進法の改正で、101人以上の企業は、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務になりました。10月1日には、カスタマーハラスメントと就活セクハラの防止措置も義務になり、採用から就業までの環境整備が一つの流れとして動き出しています。法の有効期限も、2036年3月末まで延長されました。
公表された数字は、読み方を誤らなければ、働く人にとっても企業にとっても大切な手がかりです。賃金差異は、同じ仕事での賃金の差を示すものではなく、役職や雇用形態の偏りを映す数字です。管理職比率とセットで読み、説明欄に要因と目標が書かれているかを見ることが、数字を生かす第一歩になります。
日本の賃金の男女差は、国の統計で76.6まで縮まりましたが、課長相当職の女性は13.2%にとどまります。ジェンダーギャップ指数も145カ国中117位です。制度が整っても、職場の実態が変わるには時間がかかります。まず1つ、自分の勤め先か志望先の名前を、女性の活躍推進企業データベースで検索してみてください。
- 2026年4月1日から、101人以上の企業は男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務になった
- 公表は事業年度終了後おおむね3か月以内で、初回は施行後に最初に終わる事業年度の実績が対象
- 2026年10月1日から、カスタマーハラスメントと就活セクハラの防止措置が義務になった
- 賃金差異は役職や雇用形態の偏りを映す数字で、管理職比率や説明欄とあわせて読む
- 企業は公表のあとに、要因の分析、目標の設定、全員が使える制度づくりへ進むことが求められる
参考文献
- 厚生労働省 愛知労働局「ハラスメント対策・女性活躍推進法の改正について」(2026年)
- 労働政策研究・研修機構「解説 改正女性活躍推進法(令和8年4月施行)の概要・ポイント」(2026年)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(2026年)
- 厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査」(2026年)
- nippon.com「ジェンダーギャップ指数117位」(2026年)
- マーサー ジャパン「Gender Pay Gap Analysis 2026」(2026年)
- 労働新聞「男女間賃金差異 情報公表へ取組みガイド 101~300人企業対象に 愛知県」(2026年)

