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サステナビリティ開示の「本番」が始まる|2026年、日本企業に求められるESG対応の今

サステナビリティ開示の「本番」が始まる|2026年、日本企業に求められるESG対応の今

気候変動対策や人権への配慮、ガバナンスの透明性――。こうした「ESG(環境・社会・ガバナンス)」への取り組みを、企業が数値や文書できちんと示す「サステナビリティ開示」の波が、2026年いよいよ日本にも押し寄せています。ルールが変わり、求められる情報が増え、対応が遅れれば投資家や取引先からの信頼を失いかねない時代に。いま日本企業に何が起きているのか、わかりやすく整理します。

日本版サステナビリティ開示基準、いよいよ義務化へ

気候変動や生物多様性、資源循環、人的資本、人権といったサステナビリティに関わる取り組みが企業の価値に大きく影響するようになり、情報開示を強く求められるようになっています。
こうした背景のもと、日本でも独自の開示ルールの整備が進んできました。

2025年3月5日、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)から、ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」、サステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」、サステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」の3つのガイドラインが発表され、時価総額が高い企業から義務化が進む見通しとなっています。

具体的なスケジュールも明らかになっています。
2025年11月26日、金融庁が「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案を公表しました。東京証券取引所プライム市場上場会社のうち平均時価総額1兆円以上の企業には、SSBJのサステナビリティ開示基準を適用するとされています。改正案のうちサステナビリティ情報に関しては、時価総額が3兆円以上の企業は2027年3月31日以後に終了する事業年度から、3兆円未満1兆円以上の企業は2028年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等への適用が予定されています。

段階的に対象企業は拡大していきます。
2027年3月期から時価総額3兆円以上の企業を対象にSSBJ基準の義務化が開始され、翌2028年3月期には時価総額1兆円以上に拡大されます。さらに2029年3月期には時価総額5,000億円以上への拡大が予定されているとされており、有価証券報告書において財務関連情報と同時に非財務関連情報を開示することが要求される見込みです。

人的資本の開示は2026年からスタート

今回の金融庁改正案では、人的資本についても新たな開示が求められます。企業戦略と関連付けた人材戦略、従業員の給与等の額および内容の決定に関する方針、平均年間給与の対前事業年度増減率の記載が新たに求められることとなりました。これらは2026年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等への適用が予定されています。

つまり、2026年度の有価証券報告書から、人材育成の方針や従業員の処遇に関する情報を「数字で示す」ことが多くの上場企業に求められることになります。これはCSRレポートの一項目ではなく、投資家が重視する財務情報と並ぶ開示として位置づけられています。

「グリーンウォッシュ」への目線が世界で厳しくなっている

開示の義務化が進む一方で、実態を伴わない「見せかけのサステナビリティ」を指す「グリーンウォッシュ」への規制も世界各地で強まっています。

環境関連の訴訟では、特に誤解を招くサステナビリティのコミュニケーションを標的にしたものが増えています。フランスの裁判所は最近、カーボンニュートラルやエネルギー転換に関する公式声明が企業の実際の軌跡や投資戦略を誤って表現した場合にグリーンウォッシュにあたると判断しました。制裁措置には誤解を招く声明の削除、裁判所決定の公表、財務的罰則などが含まれています。
ESGに関する訴訟や規制当局による監視のリスクは、グリーンウォッシュ疑惑の激化も含め、企業にとって引き続き最重要の戦略課題であり続けているという見方があります。
日本の企業もサプライチェーンを通じてこうしたリスクと無縁ではありません。

グリーンウォッシュ関連規制などの、見せかけだけのサステナビリティ推進の否定は、本質的な活動をしている企業からすればポジティブに考えることもできます。
ルールが厳しくなることで、真摯な取り組みをしている企業が正当に評価される環境が整ってきているともいえます。

「反ESG」の風の中でも、本質は変わらない

米国では2025年以降、トランプ政権によるESG政策への逆行が続いています。
トランプ大統領の就任後、多くの銀行が気候アライアンスや関連グループから離脱しました。また、複数の企業や金融機関が批判やバックラッシュから身を守るために、気候目標に関する進捗をあえて公表しない「クライメート・ハッシング(グリーンハッシング)」に転じているという見方があります。

しかし、こうした流れはあくまで特定の政治的文脈と切り離して捉える必要があります。
海外で吹く「反ESG」の風は、そのESGが企業価値につながっているかを問いかけているものです。
脱炭素や人権への配慮を「コスト」として捉えるか、「競争力の源泉」として捉えるかで、企業の長期的な方向性は大きく分かれます。

自然・生物多様性・森林破壊は2025年のESG・サステナビリティアジェンダの中心であり続け、2026年もこの分野を形成し続けるとみられます。2025年には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言の急速な普及とともに、開示への勢いが加速したとされています。

中小企業・非上場企業も「無関係」ではない

「SSBJ基準は大企業の話では?」と思う方もいるかもしれません。しかし、サプライチェーンを通じて中小企業や非上場企業もデータ提供を求められるようになり、Scope3対応の一部として影響を受けることは避けられないという見方もあります。さらに、銀行や投資ファンドなどの金融機関が融資・投資判断にサステナビリティ情報を活用するようになれば、開示対応は企業規模を問わず「事実上の必須条件」となっていく可能性があります。

取引先の大企業から「Scope3排出量のデータを提供してほしい」と求められる場面はすでに増えており、中小企業でも早めに体制を整えることが将来の取引機会を守ることにつながります。

まとめ|「開示」を競争力に変える視点を

2026年は、日本のサステナビリティ開示が「努力義務」から「義務」へと本格的に移行し始める転換点です。人的資本の開示は今年度の有価証券報告書からすでに適用範囲が拡大し、温室効果ガスの開示義務化も数年以内に大企業から順次始まります。

企業は今のうちからESGデータの一元管理体制を整備し、財務情報と統合した開示プロセスを確立することが急務です。外部保証の導入やサプライチェーン全体を巻き込んだデータフローづくりに取り組むことで、単なる規制対応にとどまらず、資本市場での信頼獲得と中長期の競争力強化につなげていくことが求められています。

「何を開示するか」だけでなく、「なぜ取り組むのか」という問いに真剣に向き合う企業が、これからの時代に選ばれていくのではないでしょうか。自社のESG・サステナビリティの現状を棚卸しし、一歩ずつ取り組みを前進させることが、今できる最善の行動です。

  • 記事を書いたライター
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MIRASUS

MIRASUS編集部。地球と人に優しい未来をつくるサステナビリティな事例をご紹介。誰にでもわかりやすくSDGsに関する情報は発信していきます。

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