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ENVIRONMENT

環境影響評価(EIA)とは?目的と手続きをわかりやすく解説

環境影響評価(EIA)とは?目的と手続きをわかりやすく解説

私たちの暮らしを便利にする道路やダム、発電所などの大規模な開発事業。しかし、これらの事業が環境に与える影響を事前に予測し、適切な対策を立てなければ、自然破壊や生活環境の悪化を招いてしまいます。そこで重要な役割を果たすのが「環境影響評価(EIA)」です。

環境影響評価は、開発事業が環境にどのような影響を及ぼすかを科学的に調査・予測し、その結果を公表して、環境保全のための対策を検討する制度です。日本では1997年に環境影響評価法が制定され、一定規模以上の開発事業に対して実施が義務付けられています。

この記事では、環境影響評価の基本的な仕組みから具体的な手続き、そして私たちの生活との関わりまで、分かりやすく解説します。


環境影響評価(EIA)とは何か

環境影響評価(EIA)とは何か

環境影響評価は、英語でEnvironmental Impact Assessmentと呼ばれ、その頭文字を取ってEIAと略されます。日本では「環境アセスメント」という呼び方も一般的です。これは、大規模な開発事業を行う前に、その事業が環境にどのような影響を与えるかを事前に調査し、評価する制度のことを指します。

環境影響評価の定義

環境影響評価とは、道路やダム、発電所、空港などの大規模な開発事業を実施する前に、その事業が大気、水質、土壌、動植物、景観などの環境にどのような影響を及ぼすかを科学的に調査・予測・評価することです。

具体的には、事業者(開発を行う企業や行政機関)が環境への影響を詳しく調べ、その結果を「環境影響評価書」という報告書にまとめます。この報告書は一般に公開され、地域住民や専門家、行政機関などが意見を述べる機会が設けられます。

評価の結果、環境への悪影響が予測される場合には、事業計画の変更や環境保全のための対策が検討されます。例えば、希少な動植物の生息地が失われる恐れがあれば、工事区域を変更したり、代わりの生息地を整備したりするなどの措置が取られます。

なぜ環境影響評価が必要なのか

環境影響評価が必要とされる理由は、大きく分けて三つあります。

一つ目は、環境破壊を未然に防ぐためです。開発事業が始まってから環境への悪影響が明らかになっても、工事を中止したり元の状態に戻したりすることは非常に困難です。事前に影響を予測し対策を講じることで、取り返しのつかない環境破壊を防ぐことができます。

二つ目は、より良い事業計画を作るためです。環境への影響を詳しく調査する過程で、当初の計画では気づかなかった問題点が見つかることがあります。これにより、事業者は計画を見直し、環境と開発の両立を図ることができます。

三つ目は、透明性と住民参加を確保するためです。環境影響評価の手続きでは、調査結果が公開され、地域住民が意見を述べる機会が保証されています。これにより、事業に対する住民の理解が深まり、民主的な意思決定が可能になります。実際に、住民の意見によって事業計画が修正されたり、より効果的な環境保全策が追加されたりした事例も数多くあります。


環境影響評価の対象となる事業

環境影響評価の対象となる事業

環境影響評価法では、環境に大きな影響を与える可能性のある事業を対象として定めています。すべての開発事業が対象になるわけではなく、一定の規模以上の事業に限られています。

法律で定められた対象事業

環境影響評価法では、対象となる事業を「第一種事業」と「第二種事業」の二つに分類しています。

第一種事業は、必ず環境影響評価の実施が義務付けられる規模の大きな事業です。例えば、高速道路であれば4車線以上で長さ10キロメートル以上のもの、ダムであれば貯水面積100ヘクタール以上のものなどが該当します。

第二種事業は、第一種事業より規模は小さいものの、環境への影響が大きいと判断される場合に環境影響評価の実施が求められる事業です。個別の事業ごとに、国や都道府県が環境影響評価の必要性を判断します。例えば、高速道路なら長さ7.5キロメートル以上10キロメートル未満のものが該当します。

また、都道府県や市町村が独自に条例を定めて、国の法律の対象にならない規模の事業についても環境影響評価を求めている地域もあります。これにより、地域の実情に応じたきめ細かな環境保全が図られています。

道路や施設建設など具体例

環境影響評価の対象となる事業は、全部で13種類に分類されています。

道路事業では、高速道路や一般国道などが対象です。私たちの生活に身近な例として、新しい高速道路のインターチェンジ建設や、バイパス道路の整備などが挙げられます。

河川事業では、ダムや堰の建設、河川の大規模な改修工事などが対象となります。洪水対策や水資源確保のためのダム建設は、下流域の環境や生態系に大きな影響を与える可能性があるため、慎重な評価が必要です。

鉄道事業では、新幹線や地下鉄などの新設・大規模改良が該当します。例えば、リニア中央新幹線の建設では、トンネル工事による地下水への影響や、残土処理の問題などが環境影響評価で検討されました。

発電所事業では、火力発電所、原子力発電所、風力発電所、地熱発電所などが対象です。特に大規模な風力発電所では、騒音や鳥類への影響、景観への影響などが評価されます。

その他にも、空港、廃棄物最終処分場、埋立・干拓事業、土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業、新都市基盤整備事業、流通業務団地造成事業などが対象となっています。

環境影響評価の手続きの流れ

環境影響評価の手続きの流れ

環境影響評価は、事業の計画段階から工事完了後まで、複数の段階を経て実施されます。各段階で住民や専門家の意見を聞きながら進められる透明性の高い制度です。

計画段階から実施後まで

環境影響評価の手続きは、大きく分けて五つの段階があります。

第一段階は「計画段階配慮書」の作成です。これは事業の構想段階で、複数の事業案を比較検討し、環境への影響が最も少ない案を選ぶための検討を行います。この段階で、そもそも事業を実施すべきかどうか、実施する場合はどの場所が適切かといった基本的な方針が決められます。

第二段階は「方法書」の作成です。どのような項目について、どのような方法で環境調査を行うかを決めます。例えば、大気汚染の調査であれば測定地点や測定期間、動植物調査であれば調査対象種や調査時期などを具体的に定めます。

第三段階は「準備書」の作成です。方法書に基づいて実際に環境調査を行い、その結果を分析・評価します。事業による環境への影響を予測し、必要な環境保全措置を検討します。この準備書が環境影響評価の中心的な文書となります。

第四段階は「評価書」の作成です。準備書に対して寄せられた意見を踏まえて内容を修正し、最終的な環境影響評価書として確定させます。この評価書に基づいて、事業者は環境保全対策を実施します。

第五段階は「事後調査」です。工事中や事業開始後に、評価書で予測した通りの環境状態が保たれているかを確認します。予測と実際の状況に大きな差がある場合は、追加の対策を講じます。

これらの手続きには通常3年から4年程度かかります。大規模な事業では、さらに長期間を要することもあります。

住民参加と意見反映の仕組み

環境影響評価の大きな特徴の一つが、住民が意見を述べる機会が複数回設けられていることです。

まず、計画段階配慮書、方法書、準備書の各段階で、書類が公開され、誰でも閲覧できるようになります。最近では、インターネット上でも公開されることが多く、自宅からでも内容を確認できます。

書類の公開期間中には、地域住民や関心のある人々が意見書を提出することができます。意見書には決まった形式はなく、環境への懸念や調査方法への提案、保全対策の要望など、自由に意見を書くことができます。

提出された意見に対して、事業者は一つ一つ検討し、見解を示す義務があります。合理的な意見については、事業計画の修正や追加調査の実施など、具体的な対応が取られます。

また、準備書の段階では「公聴会」が開催されることもあります。公聴会では、住民が直接意見を述べ、事業者と対話する機会が設けられます。専門的な知識がなくても、日常生活での経験や地域の実情に基づいた意見は貴重な情報源となります。

さらに、都道府県知事や市町村長も意見を述べることができ、地方自治体の立場から環境保全の観点での意見が提出されます。環境大臣も必要に応じて意見を述べ、国全体の環境政策との整合性が図られます。

実際に、住民意見によって工事ルートが変更されたり、希少動物の保護対策が強化されたり、騒音対策が追加されたりした事例は数多くあります。住民参加は、より良い環境保全につながる重要な仕組みなのです。


環境影響評価で調査される項目

環境影響評価で調査される項目

環境影響評価では、自然環境から生活環境まで、幅広い項目について詳細な調査が行われます。事業の種類や地域の特性に応じて、適切な項目が選ばれます。

大気・水質・生態系などの環境要素

環境影響評価で調査される項目は、「環境要素」として体系的に整理されています。

大気環境に関する項目では、大気質、騒音、振動、悪臭などが調査されます。例えば道路建設では、自動車の排気ガスによる大気汚染や、交通量増加による騒音・振動の影響が予測されます。工事中の建設機械による騒音や粉じんの影響も評価対象です。

水環境に関する項目では、水質、水底の底質、地下水、水資源などが調査されます。ダム建設では、ダム湖の水質や下流域の河川流量への影響が詳しく調べられます。トンネル工事では、地下水の流れが変化し、井戸水が枯れる可能性なども検討されます。

土壌・地盤に関する項目では、土壌汚染、地盤沈下などが調査されます。埋立事業では、工事による地盤への影響や、汚染土壌の拡散防止対策が重要になります。

動植物・生態系に関する項目は、環境影響評価の中でも特に重視される分野です。事業予定地やその周辺に生息する動物、生育する植物を詳しく調査し、希少種の有無や重要な生息地・生育地があるかを確認します。鳥類、哺乳類、両生類、爬虫類、魚類、昆虫類、植物など、幅広い生物群が対象となります。

調査では、四季を通じた現地調査が行われます。例えば、鳥類なら繁殖期、渡りの時期、越冬期など、季節によって異なる鳥が確認されるため、1年を通じた調査が必要です。夜行性の動物については、夜間調査も実施されます。

生態系全体への影響も評価されます。食物連鎖の頂点に立つ猛禽類への影響、湿地や森林といった生態系のまとまりへの影響などが、総合的に検討されます。

景観についても調査が行われます。事業によって地域の景観がどのように変化するか、フォトモンタージュという写真合成技術を使って視覚的に示されることもあります。

生活環境への影響

環境影響評価では、自然環境だけでなく、人々の生活環境への影響も重要な調査項目です。

日照阻害は、高層建築物によって周辺の住宅や学校などに日影ができる影響を調べます。特に冬至の日照時間が基準となり、一定時間以上の日照が確保されるよう配慮されます。

電波障害も、高層建築物や風力発電の風車によってテレビやラジオの受信に障害が出ないか調査されます。最近では、携帯電話の電波への影響も考慮されます。

風環境は、高層ビルの建設によって周辺の風の流れが変わり、強風が発生しないか評価されます。特に駅前や商業施設など、人が多く集まる場所では重要な項目です。

廃棄物・残土については、工事で発生する建設残土や廃棄物の量を予測し、適切な処理・処分方法を検討します。大規模な土木工事では膨大な量の残土が発生するため、その運搬ルートや処分場所も含めて計画されます。

温室効果ガスの排出量も、近年重視される項目です。事業の実施や施設の運用によって排出される二酸化炭素の量を予測し、削減対策を検討します。カーボンニュートラルの実現に向けて、今後ますます重要になる項目といえます。

人と自然との触れ合い活動の場も評価対象です。公園、海岸、登山道、キャンプ場など、人々が自然に親しむ場所が事業によって失われたり、アクセスが困難になったりしないか調査されます。代替施設の整備なども検討されます。

これらの項目は、事業の種類や地域の状況に応じて選定されます。すべての項目を必ず調査するわけではなく、影響が想定される項目に絞って、効率的かつ効果的な評価が行われます。

環境影響評価の効果と課題

環境影響評価の効果と課題

環境影響評価は、日本の環境保全において重要な役割を果たしてきました。一方で、制度の運用にはいくつかの課題も指摘されています。

環境保全に果たす役割

環境影響評価制度は、これまで多くの成果を上げてきました。

最も大きな効果は、開発事業による環境破壊を未然に防いできたことです。調査の過程で希少な動植物の生息地が発見され、工事ルートが変更された事例は数多くあります。例えば、道路建設において絶滅危惧種の生息地を避けるようルートを変更したり、トンネル工事で地下水への影響を最小限に抑えるため工法を変更したりした実績があります。

また、事業者の環境配慮意識が向上したことも重要な成果です。環境影響評価を行うことで、事業者は計画段階から環境への影響を考慮するようになり、より環境に優しい事業計画を立てるようになりました。

住民参加の機会が制度化されたことで、地域の環境問題に対する住民の関心も高まりました。意見書の提出や公聴会への参加を通じて、地域住民が開発事業に主体的に関わり、地域の環境を守る動きにつながっています。

さらに、環境に関する科学的知見が蓄積されたことも見逃せません。多くの事業で環境調査が行われることで、各地域の環境データが集まり、今後の環境保全施策に活用されています。事後調査のデータは、環境予測手法の精度向上にも役立っています。

今後の課題と展望

一方で、環境影響評価制度にはいくつかの課題も指摘されています。

一つ目は、手続きに要する期間の長さです。現在の制度では、環境影響評価の手続きだけで3年から4年かかることもあり、事業の迅速な実施を妨げているという意見があります。ただし、環境保全の質を下げずに手続きを効率化することは容易ではなく、慎重な検討が必要です。

二つ目は、対象事業の範囲の問題です。現在の法律では、一定規模以上の事業しか対象になりませんが、小規模でも累積的に環境に大きな影響を与える事業もあります。また、新しいタイプの事業、例えば大規模な太陽光発電施設などへの対応も課題となっています。

三つ目は、事後調査の充実です。現在も事後調査は行われていますが、より長期的な環境監視が必要との指摘があります。事業開始から何年も経ってから環境への影響が顕在化することもあり、継続的なモニタリング体制の強化が求められています。

四つ目は、気候変動への対応です。温室効果ガスの評価は行われるようになりましたが、事業自体が気候変動の影響を受けるリスク、例えば豪雨や海面上昇への対応も、今後より重視される必要があります。

五つ目は、生物多様性の保全です。近年、世界的に生物多様性の損失が深刻化しており、個別の種だけでなく、生態系全体のネットワークや遺伝的多様性も含めた総合的な評価が求められています。

これらの課題に対応するため、環境影響評価法は定期的に見直しが行われています。社会の変化や環境問題の変化に応じて、制度を進化させていくことが重要です。

また、国際的な動向も注目されています。戦略的環境アセスメントと呼ばれる、より上位の計画段階での環境評価や、国境を越える環境影響への対応など、グローバルな視点での制度改善も進められています。


まとめ:持続可能な開発のために

まとめ:持続可能な開発のために

環境影響評価は、開発と環境保全の両立を図るための重要な制度です。大規模な開発事業が環境に与える影響を事前に予測し、適切な対策を講じることで、私たちの豊かな自然環境を次世代に引き継ぐことができます。

この制度の特徴は、科学的な調査に基づいて客観的に環境への影響を評価する点、そして住民が意見を述べる機会が保証されている点にあります。専門家だけでなく、地域に暮らす人々の声が反映されることで、より実効性のある環境保全が実現されます。

環境影響評価は、単に環境を守るだけの制度ではありません。より良い事業計画を作り、地域社会との合意形成を図り、持続可能な社会を実現するための重要なプロセスなのです。

私たち一人ひとりも、地域で行われる開発事業の環境影響評価に関心を持ち、必要に応じて意見を述べることで、環境保全に貢献することができます。環境影響評価書は公開されており、誰でも閲覧できます。身近な開発計画がある場合は、ぜひ関心を持って見守り、より良い環境づくりに参加してみてください。

持続可能な開発目標(SDGs)が世界共通の目標となった今、環境と開発の調和はますます重要になっています。環境影響評価制度は、そのための重要なツールとして、今後も発展を続けていくでしょう。


参照元

・環境省「環境影響評価情報支援ネットワーク」 https://www.env.go.jp/policy/assess/

・環境省「環境影響評価法の概要」 https://www.env.go.jp/policy/assess/1-1guide/1.html

・環境省「環境アセスメント制度のあらまし」 https://www.env.go.jp/policy/assess/pamph/pamph.html

・国土交通省「環境影響評価について」 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

・環境省「環境影響評価法に基づく基本的事項」 https://www.env.go.jp/policy/assess/2-1law/kihon_jiko.html

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