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ENVIRONMENT

ヒートアイランド緩和策とは?対策の種類と効果を解説

ヒートアイランド緩和策とは?対策の種類と効果を解説

夏になると、都市部では郊外よりも気温が高くなり、夜になっても気温が下がりにくい状態が続きます。この現象は「ヒートアイランド現象」と呼ばれ、東京では過去100年間で平均気温が約3℃も上昇しています。この上昇幅は、日本全体の平均気温上昇(約1.5℃)の2倍にあたり、都市特有の深刻な環境問題となっています。

ヒートアイランド現象を和らげるための取り組みが「ヒートアイランド緩和策」です。国や自治体、企業、そして私たち一人ひとりが実践できるさまざまな対策があります。この記事では、ヒートアイランド現象の仕組みから具体的な緩和策まで、分かりやすく解説します。

ヒートアイランド現象とは何か

ヒートアイランド現象とは何か

ヒートアイランド現象とは、都市の中心部の気温が周辺の郊外に比べて島のように高くなる現象です。気温の分布を地図上に表すと、都市部が高温の島のような形になることから、この名前が付けられました。特に夜間になっても気温が下がりにくく、熱帯夜が増加する原因となっています。

都市部で気温が高くなる仕組み

都市部で気温が高くなる主な原因は3つあります。第一に、アスファルトやコンクリートなどの人工物が熱を蓄えやすいことです。これらの素材は、森林や草地に比べて日中の太陽熱を吸収しやすく、夜になっても熱を放出し続けます。

第二に、エアコンや自動車などから排出される人工的な熱の増加です。東京23区では、気温上昇に影響を与える熱の約5割が人工排熱によるものと推計されています。特に建物のエアコンからの排熱は、その半分近くを占める大きな要因です。

第三に、高層ビルが密集することで風通しが悪くなり、熱がこもりやすくなることです。さらに、ビルによって空が見える割合が減ると、夜間の放射冷却が妨げられ、熱が逃げにくくなります。

地球温暖化との違い

ヒートアイランド現象と地球温暖化は、しばしば混同されますが、異なる現象です。地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加により、地球全体の気温が上昇する現象です。一方、ヒートアイランド現象は、都市化による局地的な気温上昇であり、影響範囲は主に都市部とその周辺に限られます。

ただし、両者は無関係ではありません。地球温暖化による気温上昇に、ヒートアイランド現象による上昇が加わることで、都市部の温暖化はより深刻になっています。実際に、東京や名古屋などの大都市では、この100年間で2.2~3.0℃の気温上昇が観測されており、地球温暖化の影響だけでは説明できない急激な上昇となっています。

ヒートアイランド緩和策が必要な理由

ヒートアイランド緩和策が必要な理由

ヒートアイランド現象は、私たちの健康や日常生活に深刻な影響を及ぼしています。そのため、国や自治体は「ヒートアイランド対策大綱」を策定し、さまざまな緩和策を推進しています。ここでは、なぜ緩和策が必要なのか、その理由を具体的に見ていきます。

健康への影響

最も深刻な影響は、熱中症のリスク増加です。気温が30℃を超えると熱中症による死亡者が増え始め、気温が高くなるほど死亡率は急激に上昇します。特に湿度も考慮した暑さ指数が28℃を超えると、健康への危険性が高まります。

また、熱帯夜の増加による睡眠障害も問題です。東京では、1931~1940年の熱帯夜は年平均7日でしたが、2001~2010年には約30日と4倍以上に増加しました。日中の最低気温が26℃以上になると、3割以上の人が夜中に目が覚めてしまうという調査結果もあります。睡眠不足は、日中の活動能力の低下や健康悪化につながります。

さらに、高温化により蚊などの感染症を媒介する生物の生息域が広がり、デング熱やマラリアなどの感染症拡大のリスクも懸念されています。

生活環境への影響

ヒートアイランド現象は、大気汚染の悪化も引き起こします。夏場は気温上昇により、光化学オキシダント(光化学スモッグの原因物質)の発生が促進されます。また、冬場には地表付近に汚染物質が滞留する「ダストドーム」という現象が発生し、空気の質が悪化します。

さらに、冷房需要の増加によるエネルギー消費の拡大も深刻です。気温が高くなればなるほど、より多くの電力を使ってエアコンを稼働させる必要があり、それがさらなる人工排熱と温室効果ガスの排出につながるという悪循環が生まれています。

人工排熱を減らす対策

人工排熱を減らす対策

人工排熱の低減は、ヒートアイランド緩和策の中でも特に重要な取り組みです。東京23区では、気温上昇に影響を与える熱の約5割が人工排熱によるものとされています。エアコンや自動車、工場などから排出される熱を減らすことで、都市部の気温上昇を抑えることができます。

省エネ機器の導入

建物から排出される熱を減らすには、省エネルギー性能に優れた機器の導入が効果的です。特にエアコンの室外機から排出される熱は大きな影響を持つため、高効率のエアコンへの切り替えや、室外機から発生する熱を抑制する技術の活用が推進されています。

また、LED照明や省エネ家電への切り替えも有効です。これらの機器は消費電力が少ないだけでなく、発熱量も少ないため、建物内部の温度上昇を抑え、結果として冷房負荷を軽減します。自動車についても、電気自動車やハイブリッド車など、排熱の少ない次世代自動車の普及が進められています。

建物の断熱性能向上

建物の断熱性能を高めることも、人工排熱を減らす重要な対策です。壁や屋根、窓の断熱性能を向上させることで、室内の冷気が外に逃げにくくなり、冷房に必要なエネルギーを削減できます。その結果、エアコンからの排熱も減少します。

特に効果的なのが、遮熱性能を持つ窓ガラスや遮熱フィルムの使用です。窓から入る太陽の熱を遮ることで、室内温度の上昇を防ぎ、冷房負荷を大幅に軽減できます。国土交通省では、これらの断熱・遮熱対策を含む省エネ建築物の普及を推進しています。

地表面を改善する対策

地表面を改善する対策

地表面被覆の改善は、都市の熱環境を根本的に変える対策です。アスファルトやコンクリートで覆われた地表を、緑地や水分を保持できる素材に変えることで、蓄熱を抑え、蒸発による冷却効果を得ることができます。

緑化の推進

屋上緑化や壁面緑化は、建物の表面温度を下げる効果的な手段です。植物は蒸散作用により周囲の熱を吸収し、気温を下げる働きがあります。また、植物によって日光が遮られることで、建物自体の蓄熱も抑えられ、室内の冷房負荷を軽減できます。

国土交通省では、緑化地域制度や緑化施設整備計画認定制度を活用した緑化を推進しています。これらの制度により、一定規模以上の建築物には緑化が義務付けられたり、緑化に取り組む建築主に対して支援が行われたりしています。

公園や街路樹などの緑地整備も重要です。緑地は単に気温を下げるだけでなく、都市に風の通り道を作り、熱がこもりにくい環境を形成します。水と緑のネットワークを創出することで、より広範囲での冷却効果が期待できます。

保水性舗装・遮熱性舗装

道路の舗装を工夫することも、地表面改善の重要な対策です。保水性舗装は、雨水などを吸収して蓄えておける機能を持つ舗装です。蓄えられた水分が晴れた日に蒸発する際、アスファルトの熱を奪うため、路面温度と周辺の気温を下げる効果があります。仕組みは打ち水と同じで、自然の力を活用した持続的な冷却方法です。

遮熱性舗装は、太陽光を反射する特殊な塗料や素材を使った舗装です。通常のアスファルトに比べて熱の吸収を抑えられるため、路面温度の上昇を防ぎます。これらの舗装技術は、歩道や車道、駐車場などさまざまな場所で導入が進められています。

また、下水再生水を利用した路面散水も、地表面の温度を下げる有効な手段として活用されています。

都市の形を工夫する対策

都市の形を工夫する対策

都市形態の改善は、長期的な視点で都市の熱環境を変えていく対策です。建物の配置や高さ、道路の構造などを工夫することで、風の流れを良くし、熱がこもりにくい都市空間を作り出すことができます。

風の通り道の確保

都市を流れる風を活用することは、ヒートアイランド緩和に大きな効果があります。国土交通省が策定した「ヒートアイランド現象緩和に向けた都市づくりガイドライン」では、「風の道」を活用した都市づくりの考え方が示されています。

具体的には、海や川から吹く冷涼な風が都市部に入りやすいよう、建物の配置を工夫したり、緑地や水辺を風の通り道に沿って配置したりします。東京では、東京湾からの風が重要な役割を果たしているため、高層ビルを密集させず、風が通り抜けられる空間を確保することが求められています。

また、都市の低炭素化の促進に関する法律に基づき、都市機能の集約化と公共交通機関の利用促進を組み合わせた低炭素まちづくりも推進されています。これにより、自動車からの排熱削減にもつながります。

水辺空間の活用

河川や池、噴水などの水辺空間は、蒸発による冷却効果をもたらします。水面からの蒸発は周囲の熱を奪うため、水辺周辺の気温を下げる働きがあります。また、水面は太陽光を反射するため、アスファルトやコンクリートに比べて熱を蓄えにくい特性があります。

国土交通省では、下水再生水の利用を促進し、水と緑のネットワークを創出する取り組みを進めています。河川の親水空間整備や、公園内への人工池の設置などにより、都市における水辺空間を増やすことで、ヒートアイランド現象の緩和を図っています。

私たちにできる身近な緩和策

私たちにできる身近な緩和策

ヒートアイランド緩和策は、国や自治体だけでなく、私たち一人ひとりの取り組みも重要です。日常生活の中で実践できる対策は、すぐに始められるうえ、積み重なれば大きな効果を生み出します。

打ち水の活用

打ち水は、江戸時代から続く伝統的な暑さ対策です。水をまくことで、水分が蒸発する際の気化熱により、周囲の温度を下げることができます。環境省や国土交通省では、ヒートアイランド問題への意識を高めるため、「打ち水大作戦」を官民協調で全国展開しています。

打ち水を行う際は、タイミングに注意が必要です。真夏日の日中に行うと、湿度が上がって体感温度が高くなる可能性があるため、明け方や夕方の実施が推奨されています。また、水道水ではなく、お風呂の残り湯や雨水を利用することで、水資源の有効活用にもつながります。

暮らし方の工夫

日常生活での省エネ行動も、人工排熱を減らす重要な対策です。無駄な電気を使わない、冷房の設定温度を適切にする、使わない部屋の電気を消すなど、一人ひとりの小さな心がけが、都市全体の排熱削減につながります。

クールビズや日傘の活用も効果的です。環境省の調査によると、通常の服装からクールビズ(上着なし)への変更で約11%、日傘の使用で約20%の熱ストレス軽減効果が確認されています。これらは自分自身の熱中症予防にもなり、同時にエアコンの使用を抑えることで排熱削減にも貢献します。

また、窓に遮熱フィルムを貼ったり、すだれやグリーンカーテンを設置したりすることで、室内温度の上昇を抑えられます。自宅のベランダや庭で植物を育てることも、小規模ながら緑化の一環として効果があります。


ヒートアイランド現象は、長年にわたる都市化の結果として生じた複合的な環境問題です。そのため、緩和策も多岐にわたり、長期的な取り組みが必要です。人工排熱の低減、地表面被覆の改善、都市形態の改善、そして私たち一人ひとりのライフスタイルの見直しが組み合わさることで、より涼しく快適な都市環境を実現できます。

国や自治体による大規模な対策と、個人でできる身近な取り組みの両方が重要です。まずは打ち水や省エネなど、すぐに始められることから実践してみることで、ヒートアイランド現象の緩和に貢献できます。


参照元

・国土交通省 ヒートアイランド対策 https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_mn_000016.html

・国土交通省 ヒートアイランド現象緩和に向けた都市づくりガイドライン https://www.mlit.go.jp/common/001023246.pdf

・環境省 ヒートアイランド対策(熱中症関連情報を含む) https://www.env.go.jp/air/life/heat_island/index.html

・環境省 環境技術実証事業 ヒートアイランド対策技術分野(空冷室外機から発生する顕熱抑制技術) https://www.env.go.jp/policy/etv/field/f12/index.html

・国立環境研究所 環境展望台 ヒートアイランド対策技術 https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=18

・東京都環境局 ヒートアイランド対策に関するガイドライン、資料等 https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/heat_island/regulation

・埼玉県 暑さ対策・ヒートアイランド対策 https://www.pref.saitama.lg.jp/a0502/onheat/index.html

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