2019年に一般社団法人Voice Up JapanのICU支部として活動をスタート。今年2023年に独立し、現在はMap the Betterと新たな団体名のもと、ジェンダー問題を含む多様な社会問題に対して様々な角度から精力的に活動を行っています。
団体の使命は、全ての属性の人が自由に「今」と「未来」を描ける社会を目指すこと。ICU(国際基督教大学)の大学生としての立場から、あらゆる社会問題に取り組むMap the Betterの活動について、同団体共同代表で国際基督教大学2年の山口さんに、MIRASUS編集部がお話を聞きました。
「Map the Better」設立の経緯
―団体の設立年、設立目的、立ち上げの経緯を教えてください。
もともとは一般社団法人Voice Up Japanの ICU支部として2019年に設立し、活動していました。Voice Up Japanの組織改革を機に2023年に独立し、Map the Better に改名しました。
全ての属性の人が自由に「今」と「未来」を描ける社会を作ることを目指し、大学生の立場で多様な社会問題に取り組んでいます。
―団体名の由来を教えてください。
誰もが自由な社会への道しるべを描く事を目指してこの名前にしました。ロゴも、そんな思いを込めてコンパスをモチーフにしました。
―団体のビジョン・ミッションを教えてください。
団体のビジョンは「全ての属性の人が自由な「今」と「未来」を描ける社会」で、ミッションは「継続的な働きかけと対話を通して公平な社会作りへの入口となる」です。
団体と独立する際、メンバーがこれからの活動でどのようなことを大切にしたいかを話し合いました。その中で、どのメンバーにも共通していたのが「すべての人が過ごしやすい社会を作ること」「より多くの人に社会問題に対する意識を持ってもらい、最終的には私たちが活動しなくても、社会のすべての人が『より良い社会づくり』を主体的にできること」という思いでした。そこから、このビジョン・ミッションが生まれました。
具体的な活動内容
―現在の主な活動を教えてください。
私たちはジェンダー問題をはじめとする多様な社会問題に取り組んでいます。SNS(特にInstagram)で社会問題に関する記事を投稿しており、対面またはオンラインでのイベントを開催しています。
最近では、対面で70人が参加するイベントを行いました。さらに、ICU(国際基督教大学)内でのアンケート調査なども実施しています。
過去の取り組みとしては、HPVワクチンに関する署名を約15,000通集め、厚生労働省に提出したことや、ICUの関連機関と監修のもと「性的同意ハンドブック」を制作し、全学生に配布しました。また、入学時の性的同意に関するオリエンテーションを義務化することも実現しました。
―対面イベントの内容について教えてください。
今年の9月に、早稲田大学の教授やフェミニズムについてInstagramで投稿している方、性暴力を受けた人を支援する団体や会社を立ち上げた方、ハフポスト日本の編集長などを招き、「アクティビズムを考え直す(Rethink Activism)」というテーマのもと、社会問題に対する取り組みについて話を聞くイベントを開催しました。このイベントは大学生だけでなく社会人もご参加いただきました。
参加者の皆さんからは、大変良い感想をもらえまして、フィードバックに基づき、今後もテーマを変えながら継続していく予定です。
―他にも何か面白い取り組みがあれば教えてください。
いろいろなテーマを扱い、考えるきっかけを増やしたいという考えが私たちMap the Betterの活動の根底にあります。
今稼働中のプロジェクトで、生理非当事者が生理について知り、考え、話し合う、という機会を広げるためのイベントを学内で月一で開催しています。
以前、Voice Up Japan時のイベントですが、ヒップホップとフェミニズムを再考する機会がありました。ヒップホップが好きな人たちの中で、男性中心的な世界観や女性蔑視的な表現と自分たちの信念との矛盾をどのように解消すべきかを考えました。
私たちは、様々な社会問題や身の回りのモヤモヤを再考し、参加者に考えるきっかけを提供し、少しでも何か感じ取ってもらうことを目指しています。
―現在のメンバー数と組織構成を教えてください。
現在の所属メンバーは35名です。団体運営のためのチーム(マネジメント、PR、ボンディング、リクルート)と、3つのプロジェクト(HPVワクチンプロジェクト、LGBTQ+プロジェクト「1/13」、生理プロジェクト「生理メジャー」)が常時動いています。このほかに、イベント開催時にはイベント運営チームもあります。
―団体に加入するのはどんな入会理由が多いですか?
ジェンダー問題に対するアクションを起こしたい、社会問題について話し合えるコミュニティが欲しいという考えを持って入ってくる学生が多いです。
団体活動の特徴とは?
―他団体と違う何かユニークな特徴があれば教えてください。
リベラルアーツカレッジであるICUの学生だからこそ、メンバーの興味関心が特定分野に限定されておらず、様々な視点から社会問題に取り組めることが、Map the Betterの特徴の一つと考えています。
―活動を行う中でのやりがいを教えてください。
私たちはSNSでの発信やイベント開催を通じて、社会問題に関する新しい知見や問題意識を伝えています。誰かがこれらの情報を受け取って、意識の変化を感じたり、新たな気づきを得てくれた瞬間には大きな達成感を感じます。
また、私たちの活動が実際に、大学内のコミュニティなどで変化を生み出していることを目の当たりにするのも嬉しい出来事の一つです。たとえば、ICU学内でのアンケート調査やイベントが、先ほど挙げたオリエンテーションの義務化など、具体的な変化を引き起こしたとき、私たちの努力が実を結んでいると実感できます。
―反対に大変なことを教えてください。
もちろん活動には大変な面もあります。特に、学業や他の活動との両立は容易ではありません。時間管理や優先順位の設定が求められ、しばしば難しい判断を迫られます。また、モチベーションの維持やメンバーの管理、団体の運営も簡単ではありません。
特に、多くの異なる意見や性格を持つメンバーをまとめ、一つの目標に向かって進むことは、大きな挑戦です。しかし、これらの困難を乗り越え、目標に向かって進む過程で私たちはさらに成長し、より強固なチームを築くことができると思っています。
―団体に入ってからの学びや気づきなどがあれば教えてください。
私がこの団体に関わったきっかけは、高校生の時に留学経験を通して社会課題に興味を持ったことでした。しかし、それについて話せる人が当時の自分の周りにいなくて、悶々としていました。
そんな中、このMap the Betterを知り、実際に声を上げることへの憧れを感じました。
団体に参加し、実際にイベントを開催し、意見を提供する側になることができたのは、私にとって非常に大きな経験でした。この経験がなければ、高校生の時に感じていたもやもやから脱出できなかったと思います。
―最後に、今後の活動方針について教えてください。
今後の活動方針としては、まず現在ICUの学内で月1回行っている生理にまつわるイベントを開催し続けることです。そして、さらに大学外の様々な機会で広義での社会課題を再考するようなイベントを開催し続けていくことを計画しています。
また、大小異なる規模でも開催し、私たちに合ったイベントの形を模索していきたいと考えています。様々な問題意識や関心を持つメンバーがいるので、それぞれの視点を活かしたプロジェクトを発展させていくことがMap the Betterとしての目標です。
―今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。
▼ 今回活動をご紹介した「Map the Better」のページはこちら
Instagram:https://www.instagram.com/mapthebetter_icu