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フードマイレージとは?日本が世界1位の理由と今日からできる食の選択

フードマイレージとは?日本が世界1位の理由と私たちにできること

スーパーで手に取る食材には、産地のラベルが貼ってあります。アメリカ産の牛肉、ブラジル産の大豆、オーストラリア産の小麦——それぞれが1万キロ前後の距離を船で運ばれてきた食料です。この「食料の輸送距離×輸送量」が引き起こす環境負荷を数値化した指標が「フードマイレージ」であり、日本はその数値で長年にわたって世界1位を記録しています。

食料自給率38%(カロリーベース・2023年度)という先進国最低水準の数字は、単なる食料安全保障の問題にとどまりません。輸入食料が増えるほどフードマイレージは膨らみ、CO2排出量も増え続けます。この記事では、フードマイレージの仕組みと日本が抱える構造的な問題を整理したうえで、毎日の買い物・食卓ですぐ始められる行動を具体的に紹介します。

フードマイレージとは何か|仕組みと計算方法

フードマイレージとは、食料の輸送量(トン)と輸送距離(キロメートル)を掛け合わせて算出する環境負荷の指標です。単位は「t・km(トン・キロメートル)」で表され、数値が大きいほど食料輸送が環境に与える負荷が大きいことを意味します。

計算式はシンプルです。

フードマイレージ = 食料の輸送量(t)× 輸送距離(km)

たとえば、アメリカから5トンのトウモロコシを約10,000km先の日本へ輸入する場合は「5t × 10,000km = 50,000 t・km」です。一方、埼玉の農家から同じ5トンを100km先の東京へ運ぶ場合は「5t × 100km = 500 t・km」となり、輸入品の100分の1です。農林水産省の試算では、埼玉県で豆腐5,000丁を作る際、地元産大豆を使えばアメリカ産大豆と比べてフードマイレージを約6,000分の1に、CO2排出量を約400分の1に圧縮できるとされています。

フードマイレージが生まれた背景

この概念の起源は1990年代のイギリスにあります。1994年、消費者運動家のティム・ラング氏が「Food Miles(フードマイル)」として提唱したのが始まりです。食料輸入の拡大に伴う環境負荷を可視化し、消費者が地元産食料を選ぶことを促す社会運動として広まりました。イギリスのスーパーが航空輸送された食品に飛行機マークを表示する取り組みも、この流れの中で生まれました。

日本への導入は2001年です。農林水産省農林水産政策研究所が独自の計算方法を確立し、国際比較が可能なデータを公表しました。英語の「Mileage」を取り込んだ「フードマイレージ」という言葉は、食育や地産地消の普及を目指した政策的な文脈でも活用されてきました。

日本が世界1位になる3つの理由

農林水産省農林水産政策研究所の試算(2001年)によると、日本の年間フードマイレージは約9,000億t・kmで、韓国・アメリカの約3倍、イギリス・ドイツの約4倍、フランスの約9倍という数値を記録しました。政府はその後2010年・2016年にも試算を更新しており、絶対値はわずかに減少したものの、世界最高水準という位置づけは変わっていません。なぜここまで突出した数値になるのか、構造的な理由は3つに整理できます。

①食料自給率の低さ

最大の要因は食料自給率の低さです。日本のカロリーベース食料自給率は38%前後(農林水産省、2023年度概算値)で、先進国の中でも最低水準が続いています。国内で消費するカロリーの約6割を海外からの輸入に頼っている計算です。

対照的に、フランスは120%超、アメリカ・カナダ・オーストラリアは100%を超えており、自国内で生産した食料を中心に消費しています。自給率が高い国では食料の平均輸送距離が短くなるため、必然的にフードマイレージも小さくなります。

特に深刻なのが穀物の輸入依存です。小麦・大豆・トウモロコシの3品目だけで合計約2,430万トンが輸入に頼っており(農林水産省)、その主要輸入先はアメリカ・ブラジル・オーストラリアといった遠隔地です。これらの基幹食料の長距離輸送が、日本のフードマイレージを大幅に押し上げています。

②島国という地理的条件

日本が四方を海に囲まれた島国であることも、フードマイレージを高くする構造的な要因です。食料の輸入は船舶か航空機に限られ、陸続きの国のように隣国から短距離で調達することができません。

ヨーロッパ諸国は陸路による近距離の食料貿易が活発です。ドイツはフランスやオランダから、アメリカはカナダやメキシコから食料を調達しており、輸送距離は数百キロにとどまるケースが多くあります。一方、日本の主要輸入相手国はアメリカ(約8,700km)、ブラジル(約18,000km)、オーストラリア(約7,800km)といった具合で、物理的に長距離輸送を避けられない構造になっています。

③調達先の分散

食料安全保障の観点から、日本は一国への依存を避けて輸入先を世界各地に分散させています。これ自体はリスク管理として合理的な判断ですが、多数の遠隔地から少量ずつ調達するほど平均輸送距離が長くなり、フードマイレージは増加します。安定供給と環境負荷削減が構造的なトレードオフ関係にある点は、日本の食料政策が抱える根本的な課題のひとつです。

フードマイレージとCO2排出量|数字で見る環境への影響

フードマイレージの高さは、温室効果ガスの排出量に直結します。農林水産省の試算によると、日本の食料輸入に伴うCO2排出量は年間約1,690万トンです。これは国内食料輸送によるCO2排出量(年間約900万トン)の約1.87倍に相当し、輸入食料が国内輸送の2倍近い環境負荷をもたらしていることを示しています。

国民一人当たりに換算すると年間約130kgのCO2排出量です。この数字を身近なスケールで表すと、夏の冷房設定温度を27℃から28℃に上げた場合の削減効果(CO2換算)の12年分に相当するとされています。毎日の食卓の選択が、省エネ家電の使い方より大きな環境負荷につながっている事実は、食と環境の関係を考えるうえで重要な視点です。

輸送手段による環境負荷の違い

輸送手段によってCO2排出量は大きく異なります。一般に、航空機輸送は船舶輸送と比べてCO2排出量が格段に多く、同量の貨物を輸送した場合の環境負荷は船舶の50〜100倍以上になるとされます。トラック輸送はその中間に位置します。

日本では輸入食料の大部分は船便で運ばれていますが、いちご・アスパラガス・生花など生鮮度が求められる品目の一部は航空輸送に依存しています。旬の時期に旬の産地から購入する習慣が、航空輸送への依存を下げることにつながります。国連のIPCCは、航空セクターのCO2排出量が2050年には現在の2〜5倍に達すると予測しており、食品の航空輸送を見直す動きは世界的に加速しています。

地産地消・フードシステム改革の最新動向 2024〜2025

フードマイレージへの関心の高まりを受けて、行政・企業・市民が連携した取り組みが加速しています。2024年以降に注目された動きをいくつか紹介します。

農林水産省「みどりの食料システム戦略」と地産地消推進

農林水産省は2021年に策定した「みどりの食料システム戦略」のもと、2030年までに有機農業の取り組み面積を全農地の25%(100万ヘクタール)に拡大する目標を掲げています。同戦略は食料輸送の効率化・地産地消の推進も柱のひとつとしており、フードマイレージ削減への政策的な後押しとなっています。また農林水産省は「地産地消等推進検討会」を通じて、学校給食・病院・企業食堂での地元食材利用率向上を継続的に推進しています。

スコープ3対応とサプライチェーンの脱炭素化

食品メーカー・小売業界では、温室効果ガス排出量の「スコープ3(サプライチェーン全体の間接排出)」の開示・削減が急速に求められるようになっています。農産物の輸送距離はスコープ3排出量に直結するため、フードマイレージの削減が企業のサステナビリティ戦略の核心部分になりつつあります。2024年以降、東京証券取引所プライム市場上場企業を中心にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく情報開示が本格化しており、調達先の見直しや国産原料への切り替えを検討する動きが広がっています。

フードテックと国産代替タンパクの台頭

輸入依存度が高い大豆・小麦の代替として、国内産プラントベースフードや昆虫食・藻類食品の開発が進んでいます。農林水産省は2023年に「フードテック官民協議会」を設置し、代替タンパクの生産拡大を支援しています。国産原料への置き換えが実現すれば、輸送距離の短縮というフードマイレージ削減効果と、大豆・トウモロコシの輸入削減による食料安全保障の強化が同時に達成されます。

フードマイレージを減らすために個人ができること

政策や企業の動向を待つだけでなく、買い物・食事の習慣を少し変えることで個人レベルでも着実にフードマイレージを下げることができます。以下に、日常生活に取り入れやすい具体的なアプローチを整理します。

産地表示を確認する習慣

野菜・果物・肉・魚の産地表示を確認し、できるだけ近い産地のものを選ぶことが基本です。「国産」と「地元産」では輸送距離がさらに異なるため、地域名が明記された食材を選ぶとより効果的です。スーパーの野菜コーナーでは、隣接する都道府県産の表示を探す癖をつけるだけでも行動は変わります。

旬の食材を選ぶ

旬の食材は国産・地元産として流通する確率が高く、航空輸送への依存も低くなります。春の新玉ねぎ・タケノコ、夏のトマト・キュウリ、秋のサツマイモ・キノコ類、冬の白菜・大根といった旬の野菜を選ぶことは、フードマイレージ削減と栄養価の確保を同時に実現します。農林水産省も「旬産旬消」の概念を食育の柱として推奨しています。

直売所・農産物マルシェを活用する

道の駅、農産物直売所、地域のファーマーズマーケットは、生産者と消費者の距離が物理的にも心理的にも近い購買の場です。生産者の顔が見える環境は食の信頼性を高めるだけでなく、流通ルートが短い分だけフードマイレージは劇的に小さくなります。最近はSNSで発信する農家も増えており、産地直送の野菜セットを定期購入するサービス(CSA:地域支援型農業)も選択肢のひとつです。

食品ロスを減らす

フードマイレージは「輸送した食料の量」に比例します。つまり、食べ残しや廃棄が出れば、その分のフードマイレージは完全に無駄になります。農林水産省・環境省によると、日本の食品ロスは2022年度で約472万トン(事業系+家庭系)に達しており、まだ食べられる食料が毎日大量に捨てられています。買いすぎず、使い切る料理の工夫を取り入れることは、フードマイレージ問題と食品ロス問題を同時に解決するアプローチです。

食品ロス削減の具体的な取り組みについては、以下の記事でさらに詳しく解説しています。

学校・職場での働きかけ

個人の選択に加えて、学校給食や社員食堂を通じた集団的な変化も大きな効果をもたらします。学校給食で地元野菜の比率を高める取り組みは、子どもたちへの食育という観点でも価値があります。自治体によっては地元農家と学校のマッチング事業を展開しており、家庭での食材選びに影響を与えるきっかけになることも報告されています。

フードマイレージとSDGs|持続可能な食のシステムを考える

フードマイレージを削減する取り組みは、SDGsの複数のゴールと直接つながっています。

  • SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」:食料の生産から輸送・消費までのライフサイクル全体で環境負荷を下げること
  • SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」:食料輸送に伴うCO2排出削減は直接的な気候変動対策
  • SDGs目標2「飢餓をゼロに」:食料自給率の向上は国内農業の持続可能性を支え、長期的な食料安全保障に貢献

特に目標12との関係は深く、消費者が産地を意識して購入するという行動変容そのものが「持続可能な消費」の実践です。フードマイレージは環境問題を食卓という身近な場所に引き寄せ、SDGsを「自分ごと」として考えるきっかけになります。

持続可能な消費と生産のあり方については、こちらの記事も参考になります。

フードマイレージが問いかけること|食と地球のつながり

フードマイレージという数字は、食料の背後にある「見えない距離」と「見えない排出」を私たちに示します。日本が世界1位の数値を持ち続けているのは、単に輸入が多いからではありません。島国という地理的条件、歴史的に積み重なった低い自給率、そして安定供給を最優先してきた食料政策の結果です。

一方で、この問題を「個人の責任論」に矮小化することも正確ではありません。食料の調達構造は国家・企業・農業政策が深く絡み合っており、個人の選択だけでは変えられない部分が大きい。それでも、産地表示を確認する、旬の野菜を選ぶ、直売所に足を運ぶといった小さな行動が積み重なれば、市場へのシグナルになります。食の需要側の変化が、サプライチェーン全体のあり方を少しずつ動かしていきます。

エシカル消費の視点からフードマイレージをとらえ直すと、「何を買うか」は単なる家計の問題ではなく、自分の食行動が地球環境と生産者の生活をどう形作るかへの投票行為でもあります。

エシカル消費の考え方をより深く知りたい方はこちら。

まとめ|フードマイレージを減らす食の選択

フードマイレージは「食料の輸送量×輸送距離」で求められる環境指標であり、日本は総量・一人当たりともに長年世界1位を記録しています。背景には食料自給率の低さ(約38%)、島国という地理的条件、世界各地への分散調達という3つの構造的な要因があります。食料輸入に伴うCO2排出量は年間約1,690万トンにのぼり、国内食料輸送の約1.87倍という大きな環境負荷を生み出しています。

  • フードマイレージ = 輸送量(t)× 輸送距離(km)。数値が大きいほど環境負荷が大きい
  • 日本のフードマイレージは韓国・アメリカの約3倍、フランスの約9倍という世界最高水準
  • 食料自給率38%・島国という地理条件・分散調達の3要因が数値を押し上げている
  • 食料輸入に伴うCO2排出量は年間約1,690万トン(国内輸送の約1.87倍)
  • 産地表示の確認・旬の食材選び・直売所の活用・食品ロス削減が今日からできる行動
  • SDGs目標12・13・2と直接つながる「食のサステナビリティ」の核心テーマ

今日の夕食の食材を選ぶとき、まず産地ラベルを一度だけ確認してみてください。それが、食と地球のつながりを意識する最初の一歩になります。

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