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ENVIRONMENT

食品ロス464万トンとプラスチック条約の行方|2026年、変化の現在地を読む

食品ロス・プラスチック削減、日本と世界で同時加速|2026年に注目すべき最新動向

年間464万トン——これが2023年度、日本国内で捨てられた「本来食べられた食品」の量です。一方、世界で1年間に生産されるプラスチックのうちリサイクルされるのは1割にも届かない。数字だけを見れば、閉塞感を覚える人もいるかもしれません。しかし2025年から2026年にかけて、食品ロスとプラスチック汚染の両分野で、政策・法制度・企業行動が同時に動き始めています。何が変わったのか、どこが変わっていないのか。現在地を整理します。

食品ロス|第2次基本方針が閣議決定、目標が「60%削減」へ引き上がった

2025年3月25日、食品ロス削減推進法に基づく「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針(第2次)」が閣議決定されました。令和7年度から令和11年度(2029年度)までの5年間を対象とする、国の食品ロス政策の新たな基本設計です。

最大の変更点は、事業系食品ロスの削減目標の引き上げです。従来の方針では「2030年度までに2000年度比で半減(50%削減)」とされていた目標が、第2次方針では「2030年度までに2000年度比で60%削減」へと強化されました。家庭系については引き続き「2030年度までに半減、早期達成を目指す」としています。環境省は関係省庁・自治体・事業者と連携し、削減に向けた施策を加速させています。

2023年度の実績|464万トン、減少傾向は続くが目標まで遠い

環境省が公表した令和5年度(2023年度)の推計値によると、食品ロス発生量は約464万トン(家庭系約233万トン・事業系約231万トン)でした。令和4年度の472万トンから8万トンの削減となり、減少傾向が続いています。

ただし、2000年度比で60%削減というゴールは依然として高いハードルです。日本人1人あたりに換算すると年間37キログラム相当の食品が廃棄されている計算で、毎日お茶碗1杯分のご飯を捨てているイメージに近い。データは改善傾向を示していますが、それだけで楽観できる状況にはありません。

事業者への新たな開示義務と賞味期限表示の見直し

政府は関連省令の改正も並行して進めています。食品関連事業者に対して、納品期限の緩和、フードバンクへの未利用食品の提供、賞味期限表示の「年月日」から「年月」への簡略化などを努力義務として課す方向で整備が進んでいます。また、未利用食品の提供量を有価証券報告書や統合報告書で開示することを求める調整が進んでおり、企業の食品ロス削減活動が投資家から見える形になりつつあります。

消費者向けには、消費者庁が「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」を公表し、外食での食べ残しを持ち帰る「mottECO(モッテコ)」の普及を後押しする制度が整備されています。また「食品期限表示の設定のためのガイドライン」が食品表示基準Q&A別添として公表され、不必要な廃棄につながりがちだった期限設定の見直しも始まっています。

プラスチック条約|国際交渉はどこまで進んだか

プラスチック汚染をめぐる国際交渉は、2022年から国連の政府間交渉委員会(INC)が設置されて以来、段階的に進んでいます。この条約は、プラスチックの製造・使用・廃棄にわたるライフサイクル全体を対象に規制を設けることを目指すものです。単なるリサイクル促進にとどまらず、生産量の根本的な削減まで視野に入れた、これまでにない包括的な枠組みを目指しています。

2024年11月、韓国・釜山でのINC-5(INC-5.1)では最終合意に至らず、交渉は継続される形となりました。現在も条約案の最終調整が続いており、合意の行方は世界のプラスチック削減の方向性を左右するだけに、引き続き注目が必要な局面です。

「生産削減」か「廃棄物管理」か|交渉の対立軸

交渉で最も議論が割れているのは、条約の重点を「プラスチック生産そのものの削減」に置くか、「廃棄物管理とリサイクルの強化」に置くかという点です。EU・アジア主要国・南米諸国などで構成される「高志向連合(High Ambition Coalition)」は、生産量の数値目標を盛り込む厳格な条約を求めています。一方で産油国や一部の国々は、生産規制よりも廃棄物の管理改善を優先する立場をとっています。

この対立は、プラスチック問題の本質を「どこで切るか」という問いに行き着きます。使い終わった後のリサイクルを強化するだけでは根本解決にならないという声は、科学的にも広く共有されています。条約が最終的にどの形に落ち着くかによって、2030年代以降の世界のプラスチック生産・消費の構造が大きく変わります。

EUが先行|包装規則(PPWR)が2026年から段階的に動き出す

国際条約の交渉が長期化する中、EUは独自の規制で先を行っています。「PPWR(包装・包装廃棄物規則)」は、EU域内で流通するすべての包装材にリサイクル可能性の義務付けを導入するものです。2026年から段階的適用が始まり、具体的にはリユース可能な包装材の比率目標、不必要な包装の制限、再生プラスチックの使用率目標などが定められます。

また、SUP(使い捨てプラスチック)指令に基づく規制強化も段階的に進んでいます。ペットボトルへの再生プラスチック使用義務などは、EU域内で販売・流通する製品の設計要件に直結し、EU向けに輸出する日本企業にとっても対応が求められる現実の課題です。日本国内の基準とは異なる要件が増えるほど、対応コストと準備期間の確保が問われてきます。

世界のリサイクル率はまだ1割以下|「使わない」が最善策

プラスチックのリサイクル技術は進歩していますが、現実の数字は厳しい状態が続いています。世界で1年間に生産されるプラスチックのうちリサイクルされるのは1割にも満たず、残りの大半は石油資源から新たに製造されています。使い終わったプラスチックの多くは焼却または埋め立てに回され、一部は海や河川に流出して生態系や人体に影響を与え続けています。

こうした現状から、環境負荷の観点で最も効果が大きいのは「リサイクルより使わないこと」だという指摘が広く共有されるようになっています。廃棄段階での対応よりも、製造・購入の段階で「そもそもプラスチックを選ばない」判断の積み重ねが、より根本的な解決につながります。リサイクルはあくまで最終手段であり、前段の「リデュース(削減)」「リユース(再使用)」が優先される考え方——3Rの中の順序が改めて重要になっています。

3Rの基本的な考え方とプラスチック削減への具体的な活かし方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

国内企業の動き|包装・外食・小売で変化が広がる

政策の動きと並行して、企業レベルでの取り組みも具体的に進んでいます。

外食チェーンの使い捨てプラスチック削減

すかいらーくグループは、店舗でのプラスチック製ストローを廃止して紙製ストローへ切り替えるとともに、テイクアウトや宅配用のカトラリーを植物由来・紙素材などへ順次移行しています。同様の動きは外食産業全体で広がっており、2022年4月施行のプラスチック資源循環促進法(プラ新法)が後押しになっています。プラ新法はスプーン・フォーク・ストローなどの使い捨てプラスチック製品について、事業者に対して削減・代替・有料化のいずれかの対応を求めています。

食品小売の包装最適化とコスト削減の両立

食品小売の分野では、包装材の設計を見直し、プラスチック使用量の削減とコスト低減を同時に実現する事例が出てきています。使う素材を減らし、再生素材の比率を高めることは、サプライチェーン全体の資材コストにも影響します。「環境対応」を義務として捉えるのではなく、コスト構造の改善と一体で設計する企業が増えている点は、取り組みの持続性という意味で重要な変化です。

食品ロス削減についても同様で、廃棄コストの削減、値引き販売による機会ロスの回収、フードバンク寄付に伴う広報効果など、事業上のメリットと結びつけて取り組む企業が増えています。「もったいない」を美徳として訴えるだけでなく、経済合理性のある行動として位置づけることで、取り組みの継続性が高まります。

余った食品を捨てずに届けるフードバンクの仕組みや活用方法は、こちらの記事でくわしく紹介しています。

日常でできること|「買い方」「選び方」「捨て方」を小さく変える

政策と企業の動きが加速するなかで、日常の選択が積み重なる意味は変わっていません。規模は小さくても、一人ひとりの行動は市場と政策のシグナルになります。以下に、すぐ試せる具体的な行動をまとめます。

食品ロスを減らす3つの行動

買い物前に冷蔵庫の中身を確認し、本当に必要な量だけを買う。それだけで、多くの家庭で発生しがちな「買ったまま忘れていた食品の廃棄」を防げます。

スーパーで商品を選ぶ際には「てまえどり」——棚の手前にある、賞味期限の近い商品を優先して選ぶ——を意識することで、店舗側の廃棄量の削減につながります。農林水産省・消費者庁も推奨する行動です。

外食で食べ残しが出た場合は、mottECO(モッテコ)に対応している飲食店で持ち帰りを活用する。食べられる食品を廃棄せず、一方で食中毒リスクへの自己管理も必要なため、消費者庁のガイドラインを参考にしてください。

プラスチックを減らす3つの選択

マイボトルとマイバッグを日常的に携帯する。使い捨て飲料容器と買い物袋の消費量を個人レベルで大幅に下げられる、最も手軽な行動です。

商品を選ぶ際に、再生プラスチックや紙パッケージを使った製品を意識して選ぶ。すべての商品で代替が用意されているわけではありませんが、選択できる場面では選ぶことが、企業側の設計変更を促すシグナルになります。

購入前に「本当に必要か」と一度立ち止まる。使い捨て製品を使わない選択が、リサイクルよりも環境負荷を低く抑えられることが多い。習慣的な消費を見直す小さな問いが、積み重なると大きな変化になります。

ごみを出さない買い物の実践方法については、こちらの記事も参考にしてみてください。

まとめ|2026年は「政策の年」から「行動の年」へ

食品ロス削減の第2次基本方針の閣議決定、国際プラスチック条約の交渉継続、EUのPPWR段階適用開始——2025年から2026年にかけて動いた政策の枠組みは、今後の5年間の行動を規定するものです。しかし政策が正しい方向を示したとしても、実際に数字が変わるかどうかは、企業と消費者が実際に何を選ぶかにかかっています。

今押さえておきたいポイントを整理します。

  • 食品ロスは2023年度に464万トン。減少傾向は続くが、2030年・60%削減目標に向けてペースアップが必要
  • 第2次基本方針(2025年閣議決定)で事業系の削減目標が50%→60%に引き上げられ、企業の開示義務化も検討中
  • 国際プラスチック条約は交渉継続中。「生産削減」か「廃棄物管理重視」かの対立が続いており、合意の中身が世界を変える
  • EUのPPWRが2026年から段階適用。EU市場と関わる日本企業には包装設計の見直しが求められる
  • 世界のプラスチックリサイクル率は1割未満。「使わない(リデュース)」の優先が科学的にも支持されている
  • 日常の行動(てまえどり・mottECO・マイボトル)は、市場と政策への小さなシグナルになる

まず今日の買い物で、冷蔵庫の在庫を確認してから出かけることを試してみてください。

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