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ENVIRONMENT

地域資源循環モデルとは?地域を元気にする仕組みと、日本各地の実践例

地域資源循環モデルとは、太陽光や森林、農産物、生ごみといった地域にある資源を、地域の中で使い回しながら、環境と経済の両方を良くしていく考え方です。電気やガソリン、食料や肥料を地域の外から買い続けると、そのお金は地域に残りません。資源を地域内で回せば、お金も仕事も地域に残りやすくなります。

秋は、収穫物や落ち葉のように「資源」が目に見えやすい季節です。畑の残さや落ち葉が堆肥になり、翌年の作物になる流れは、このモデルをいちばん身近に感じられる例の一つです。この記事では、定義をおさえたうえで、鳥取県西部、鹿児島県大崎町、埼玉県小川町の実践を見ていきます。続けて、うまくいくかどうかを分ける条件と、読者が自分の地域で確かめられることを整理します。

この記事で学べること

  • 地域資源循環モデルの基本と、環境省の「地域循環共生圏」との関係
  • エネルギー代金などが地域の外へ流れ出ている状況の見方
  • 鳥取県西部・大崎町・小川町の取り組みと、成否を分けたポイント
  • 脱炭素先行地域や地域新電力など、いま使える制度の現状
  • 誤解されやすい点と、自分の地域で最初に確認できること

地域資源循環モデルの基本|資源・お金・エネルギーを地域でぐるりと回す

地域資源循環モデルは、地域にある自然資源、農林水産物、廃棄物、人材、文化を活かし、域内で循環させる仕組みの総称です。電気を地域で作って地域で使う、生ごみを堆肥にして地域の畑に戻す、といった取り組みが典型です。

国の政策では、この考え方は「地域循環共生圏」という言葉で語られます。2018年に閣議決定された第五次環境基本計画で打ち出され、2024年5月閣議決定の第六次環境基本計画では、ウェルビーイング(高い生活の質)を実現する「新たな成長」を実践する場と位置づけられています。環境省は、地域資源を活かして環境・社会・経済の課題を同時に解く事業を「ローカルSDGs」事業と呼び、それを生み続ける地域づくりを後押ししています。

ここで押さえておきたいのは、地域資源循環モデルが「地域の自給自足」を求めているわけではないことです。環境省の説明では、各地域が得意な資源を活かして自立し、そのうえで地域同士が支え合うネットワークを作る「自立・分散型社会」が目標とされています。山間部の木質バイオマスと都市部の需要を結ぶように、地域の外とのつながりも設計の一部です。

なぜ地域のお金の流出が問われるのか

エネルギー代金は地域の外へ出ていきやすい

環境省の令和元年版環境白書は、2013年時点で9割を超える自治体で地域のエネルギー収支が赤字になり、地域外へ資金が流出していると説明しています。化石燃料や電力を域外の事業者から買う構造が続く限り、支払ったお金は地域内の商店や雇用に回りにくくなります。

発電所や燃料の供給元が遠くにある多くの地域では、これは特別な話ではなく、ごく普通の状態です。だからこそ、地域で発電する、省エネで使う量を減らす、地元の事業者から買うといった選択が、地域経済の話として語られるようになっています。

自分の地域の数字は「地域経済循環分析」で見られる

環境省は、地域の所得が「生産・分配・支出」のどこで増え、どこから漏れているかを見える化する地域経済循環分析を、「地域経済の健康診断」と位置づけて提供しています。支出面ではエネルギー代金の流出入なども確認でき、市区町村単位で他の自治体と比べられます。

この分析で大切なのは、流出額の大小だけで判断しないことです。産業構造が違えば、同じ地域でも課題は変わります。まず自分の地域がどの項目で外に出ているのかを知ることが、取り組みの優先順位を決める出発点になります。

国の目標でも位置づけが強まっている

環境省の施策評価資料では、地域循環共生圏の考え方に沿った具体的な取り組みを行う基礎自治体数が指標になっており、令和12年度の目標は300自治体とされています。同じ資料には、令和5年度までの目標を大幅に超えたため、令和6年度以降の目標値を見直す旨の記載もあります。

環境省の地域循環共生圏ポータルでは、令和8年度の「地域循環共生圏づくり支援体制構築事業」の参加団体が2026年4月に決まり、実施計画書も公開されています。支援策は継続して動いている状況です。

日本の実践例|エネルギー・ごみ・農業で回す

鳥取県西部|地域新電力でお金の流出を抑える

鳥取県の米子市と境港市では、地元企業と自治体が出資する地域新電力「ローカルエナジー」が2015年12月に事業を始めました。地域の再エネ発電事業者から電力を買い、域内とその周辺に供給する仕組みです。

国土交通省の資料によると、事業開始前の2015年に鳥取県西部地域では約1,460億円の所得が流出していたと試算されています。同社の事業開始から約1年半後の2018年時点では、域外からの電力の純購入が減ったことで、流出が抑えられたとされています。数字はあくまで試算ですが、エネルギーの調達先を変えると地域の収支が変わる、という筋道がよく分かる例です。

鹿児島県大崎町|生ごみまで資源に変える分別

大崎町には焼却施設がなく、埋立処分場の残りの年数が逼迫したことが取り組みの出発点でした。そこで住民が27品目(町の最新資料では28品目)に分別し、生ごみや草木などの有機物は堆肥化しています。愛媛県の資料は、この仕組みで80%を超える資源化と埋立ごみの減量に成功したと紹介しています。

町の広報によると、令和3年度の環境省調査では全国平均が約20%に対し、大崎町は81.6%でした。同じ資料では、国立環境研究所との共同研究で、焼却処理をする自治体と比べて1人あたりの温室効果ガス排出量が38.5%少ないと報告されています。

この仕組みは地域の外にも広がっています。JICAの事業として、2022年1月からインドネシアのバリ州で「大崎システム」の技術移転プロジェクトが始まりました。地域発のしくみが、地域間、さらに国際的な連携へつながった例です。

埼玉県小川町|有機農業とバイオガスで畑に戻す

小川町は、「有機農業」という言葉が生まれた1971年ごろから有機農業に取り組んできた地域です。町内の団地の生ごみをバイオガスと堆肥にする施設が稼働し、牛や鶏のふん、太陽光なども組み合わせてエネルギーを自給する取り組みが進んできました。

町の資料では、バイオガス施設の採算を左右する条件として、液肥を捨てずに畑で使うことと、原料の収集と液肥の配送の距離を短くすることが挙げられています。ここに、地域で回すことの意味がよく表れています。距離が近いほど運搬コストが下がり、循環が経済的に成り立ちやすくなるのです。

制度の追い風|脱炭素先行地域と地域新電力の現状

脱炭素先行地域は100か所の目標を超えた

環境省の「脱炭素先行地域」は、2050年のカーボンニュートラルを待たずに、2030年度までに地域の電力消費に伴うCO2排出を実質ゼロにする取り組みを選ぶ制度です。2025年度までに少なくとも100か所を選ぶ目標でした。環境省のページによると、全7回の選定で、令和8年2月13日時点の累計は102提案(45道府県133市町村)に達し、目標を達成して募集は終了しています。

選ばれた地域は、再エネの導入、省エネ、地域の事業者の参画などをセットで進めます。今後は、選ばれた地域が2030年度までに計画を実行できるかが焦点になります。

地域新電力は広がったが、経営は市場に左右される

京都大学の研究資料は、2022年度に供給実績のある地域新電力が95社、販売電力量が合計で76.8億kWhだったと紹介しています。全電気事業者に占める割合は0.93%です。小規模な自治体ほど、事業利益を地域へ還元することや地域経済の循環を主な目的にしているという分析もあります。

一方で、2021年1月の卸電力市場価格の高騰は、地域新電力の販売や経営に大きな影響を与えたとされています。地域新電力は、作れば自動的にうまくいく仕組みではありません。調達先の分散や需給管理の力が必要になります。

誤解されやすい3つのポイント

全部を地域内で完結させる話ではない

「地域資源循環」と聞くと、すべてを地域内でまかなう閉じた経済を想像しがちです。しかし先に見たとおり、国の整理は「自立」と「支え合い」の両方を含みます。エネルギーも食料も、条件の違う地域同士が補い合うほうが現実的な場面は多くあります。

再エネを入れれば地域が潤うわけではない

発電設備を地域に置いても、事業者が域外の企業で、収益がすべて外に出ていくなら、地域に残るお金は限られます。誰が出資し、誰が運営し、収益をどう還元するのかという設計が、環境面の効果と同じくらい重要です。

他地域の成功をそのまま真似ても動かない

大崎町の分別は、焼却施設がなく埋立地が逼迫していたという切実な事情から始まりました。小川町も、長年の有機農業という土台がありました。どの事例も、その地域の資源と課題に合わせて作られています。手順だけを写すのではなく、自分の地域に何があり、どこで困っているのかから考えることが前提になります。

読者が自分の地域でできること|まず確かめたい4つ

地域資源循環は、自治体や事業者だけのものではありません。住民として確かめられることがあります。

  1. お住まいの市区町村の地域経済循環分析を見て、エネルギー代金の流出入を確認する
  2. 自治体のごみ分別と堆肥化・資源化のルールを読み、生ごみや草木の扱いを把握する
  3. 自分の電力契約が地域新電力や地元の再エネ事業者から選べるか調べる
  4. 自治体の環境・脱炭素に関する計画を読み、意見募集(パブリックコメント)に参加する

どれも、特別な準備なしに始められます。電気の契約を変える場合は、料金だけでなく、電源の内訳や収益の還元先も確認してください。「地域の」という名前だけで選ぶと、期待した効果が得られないことがあります。

まとめ

地域資源循環モデルは、地域の資源とお金をできるだけ地域の中で回し、環境と経済を同時に良くしていく考え方です。国の政策では地域循環共生圏として位置づけられ、第六次環境基本計画でも実践の場として重視されています。背景には、多くの自治体でエネルギー代金などが地域の外へ流出している現実があります。

鳥取県西部の地域新電力、大崎町の分別、小川町の有機農業とバイオガスは、いずれも地域の事情から出発し、収益の還元先や距離の近さといった条件を整えて成り立っています。脱炭素先行地域の選定は100か所の目標を超えましたが、地域新電力の経営が市場価格に左右されたように、仕組みを作ることと続けることは別の課題です。

住民としては、自分の地域のお金とごみとエネルギーがどこへ流れているかを知ることが最初の一歩になります。まず1つだけ、お住まいの市区町村の地域経済循環分析か、自治体のごみ分別ルールを開いてみてください。

  • 地域資源循環モデルは、資源とお金を地域で回しつつ、地域同士の支え合いも含む考え方です
  • 2013年時点で9割超の自治体がエネルギー収支の赤字で、資金が地域外へ流出していると環境省は整理しています
  • 鳥取県西部、大崎町、小川町は、地域の事情に合わせた設計で循環を成り立たせています
  • 脱炭素先行地域は102提案に達しましたが、地域新電力は市場価格の変動に左右されます
  • 最初の一歩は、自分の地域の流出額とごみ分別ルールを確認することです

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
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