SDGsが注目され、さまざまな分野で目標達成に貢献するための取り組みが行われています。「紙」においても環境に配慮した素材が取り入れらえるようになりました。
今回は、サステナブルな紙素材に注目してジャンルやオススメの銘柄を紹介します。
サステナブルな紙素材とは
サステナブルとは、「持続可能な」という意味があります。 地球環境や社会の課題解決に向け、資源を有効活用し、環境負荷を抑える素材が普及させることがサステナブルな社会が現在求められています。
大豆油やヤシ油などで作られた植物性インキもサステナブルな素材として挙げられるでしょう。最近では米ぬかを使ったライスインキという印刷用のインキも開発され採用が広がっています。
紙素材でも従来廃棄されていた「ゴミ」を活用した製品が多く登場しています。
サステナブルな紙素材のジャンル
サステナブルな紙素材として以下の5つが挙げられます。それぞれの特徴について解説します。
再生紙
再生紙とは、牛乳パックや新聞紙、ダンボールなどの古紙を再利用して作られる紙素材です。
再生紙に配合される古紙パルプは、製品によって配合率が異なります。配合率は「再生紙使用(R)マーク」で表示され、例えば古紙パルプ100%で作られた紙は「R100」です。
以前は官公庁で多く使われていましたが、近年はSDGsの取り組みとして企業でも導入するケースが増えています。
混抄紙
混抄紙(こんしょうし)とは、木材パルプと異素材を混ぜ合わせて作られる紙素材です。
活用される素材は多岐にわたり、例えばジーンズの切れ端やバナナの茎、卵の殻などが挙げられます。いずれも製品を製造する過程で不必要とされる部分であり、従来は廃棄されていました。
混ぜ合わせる素材によって豊かな風合いが表現できるため、リサイクルの観点はもちろんデザインとしても楽しめます。
脱炭素系
脱酸素とは「カーボンニュートラル」ともいわれ、温室効果ガスの排出をなくすことを指します。温暖化が叫ばれる昨今、世界中で実施されている取り組みです。
紙素材の原料の多くは木材パルプであり、その製造工程で排出されるCO2が問題となっています。
2022年3月に経済産業省が発表した「『トランジション・ファイナンス』に関する紙・パルプ分野における技術ロードマップ」では、2019年度における日本のCO2排出量のうち、木材パルプが占める割合は35%でした。
こうした状況を改善させるために各メーカーで研究されているのが脱酸素系紙素材です。例えば、従来はウェットパルプが使われるケースが一般的でしたが、輸送時のCO2排出量削減目的としてドライパルプを使用した紙素材を作る企業もあります。
出典:経済産業省|「『トランジション・ファイナンス』に関する紙・パルプ分野における技術ロードマップ」
植物由来の機能紙(ボタニカルペーパー)
ボタニカルペーパーは、単なる混抄紙ではなく、植物の特性を紙の機能に取り入れて作られた新しいタイプの紙素材です。植物の特性を使ったことから、ボタニカルペーパーと呼ばれることもあります。
欧米では、この分野の開発が早くから進んでおり、例えばじゃがいもの成分を紙の表面にコーティングすることで、独特の質感や手触りを実現した製品が開発されています。
日本においても、お米を使った日本の伝統的な糊や紙への利用に着目した研究により、機能性を持たせた「kome-kami」という紙が開発されるなど、植物由来の機能紙の開発事例が増えてきています。
FSC認証紙
森林保全を目的として作られる紙素材を「FSC認証紙」といいます。「FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)によって認証され、ロゴマークが表示されている点が特徴です。FSC認証を取得するには審査を通過しなければなりません。
また、再生紙とは異なり古紙ではなく、FSC認証紙は新たに伐採された木材のみが原料です。適切に管理された森から得られた木材であり、FSC認証紙を選ぶことは、結果的に地球環境保護の貢献につながります。
参照:FSC® Japan
サステナブルな紙素材のおすすめ銘柄
サステナブルな素材は、さまざまなメーカーからリリースされています。続いては、おすすめの銘柄を紹介します。
kome-kami(ボタニカルペーパー)
「kome-kami」は、お米を使ったボタニカルペーパーです。明治23年創業の老舗紙屋である株式会社ペーパルのSDGs推進プロジェクトとして開発されました。
同プロジェクトでは、食品ロス削減と子どもの貧困問題に関する取り組みに重点を置いており、「kome-kami」に使われるお米は食用にはならなかったものです。
さらに、FSC認証を受けたパルプを使用しています。ただ、混ぜただけではなく、お米の力を引き出し機能性を持たせることで、化学薬品の代替原料として活用。環境負荷低減とCO2削減を実現しています。サステナブルな紙素材として徹底したこだわりがあります。
また、お米自体が持つ特性を引き出し優しい風合いに仕上げている点も特徴です。「kome-kami」にはナチュラル色と浮世絵ホワイトの2種類があり、ナチュラル色はお米の温かみが感じられる色合いを表現しています。
一方、浮世絵ホワイトは、江戸時代の浮世絵を鮮やかにするために紙にお米を塗った文化を現代風にアレンジした紙です。表面には表面にお米がコーティングされており、白さと印刷面が独特で微かなきらめきが感じられることが魅力です。
小豆殻CoC(混抄紙)
小豆殻CoCは、特殊紙の企画・製造を手がけるリンテック株式会社の製品です。従来廃棄されていた小豆の殻を活用した神素材で、印刷では表現しづらい柔らかな小豆色の紙色を実現しています。また、細かく破砕された殻が模様となり、落ち着きのある和のイメージを演出している点も魅力です。
デニムペーパー (混抄紙)
デニムペーパーは、木材パルプとデニムの端材を混ぜ合わせて作られる紙素材です。複数の企業が製造しており、カジュアルなデニムの風合いが楽しめることから名刺に使われることが多くあります。デニムの混合量は企業によって異なり、例えば、紙誠株式会社が企画・製造するデニムペーパーは、デニムの端材が30%混合されています。
ZERO CO2 PAPER(脱炭素系)
「kome-kami」と同様に、株式会社ペーパルが製造している脱酸素系の紙素材が「ZERO CO2 PAPER」です。
株式会社ペーパルでは、CO2排出量削減に目的とした森林保全活動に取り組む地域の活動をサポートしており、その地域の資源を活用することで得られた価値をクレジットとして保有しています。「ZERO CO2 PAPER」の費用にはクレジットが含まれており、購入によってCO2削減に対する貢献が可能です。
また、「ZERO CO2 PAPER」の存在を通して、森林保全活動を周知している点も森林保全活動やCO2削減のサポートにつながっています。
グラフィーCoC(脱炭素系)
平和紙業株式会社の製品であるグラフィーCoCも脱炭素系の紙素材です。
「クリスタルホワイト」「ホワイト」「ナチュラルGS」「パールホワイトGS」の4色があり、このうちナチュラルGSとパールホワイトGSは改正グリーン購入法適合製品です。
まとめ
地球温暖化が加速する中で「紙」の業界でもサステナブルな製法が注目されるようになりました。意識的にサステナブルな紙素材を選ぶことで、結果的にCO2削減やフードロスなどに貢献できます。
まずは、どのような取り組みがなされているかを知ることが大切です。今回ご紹介した紙素材を参考に、少しずつ生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。