ファストファッションの代名詞とも呼ばれてきたユニクロ(UNIQLO)が、環境・社会・人権にわたるサステナビリティへの取り組みを年々深化させています。服を「大量につくり、大量に捨てる」産業構造を問い直し、素材の倫理的調達から製品回収・リサイクルまでを一貫してカバーする「RE.UNIQLO」の仕組みは、消費者が日常の買い物を通じて参加できる数少ない取り組みの一つです。この記事では、ユニクロを展開するファーストリテイリングの公開資料をもとに、最新の活動内容と私たちが実際にできる行動を整理します。
ファッション産業の環境問題とユニクロの立ち位置
アパレル産業は世界の温室効果ガス排出量の約8〜10%を占めるとされ、航空・海運を合わせた排出量に匹敵するとも指摘されています(国連環境計画〈UNEP〉推計)。さらに衣類の廃棄問題も深刻で、日本国内だけでも年間約50万トン(環境省「衣服の生産・廃棄に関する実態調査」参考値)の衣類が廃棄されていると報告されています。
こうした背景のなか、ユニクロを展開するファーストリテイリングは「服のチカラを、社会のチカラに。」をサステナビリティビジョンに掲げ、2023年度サステナビリティレポートでは2030年に向けた具体的な数値目標を公表しています。店舗数が国内外合わせて3,600店を超える規模(2024年8月末時点)を持つ企業だからこそ、その一歩は産業全体への影響力を持ちます。
「RE.UNIQLO」とは何か|回収から再生までの仕組み
ユニクロのサステナビリティ活動の中心にあるのが「RE.UNIQLO」プログラムです。「Reduce(削減)」「Reuse(再使用)」「Recycle(再生利用)」「Remake(再製品化)」の4つのRを軸に、製品ライフサイクル全体でのロス削減をめざしています。
国内の全ユニクロ店舗にはリサイクルボックスが常設されており、ユニクロおよびジーユー(GU)で購入した全商品を対象として回収しています。回収された衣類は状態に応じて選別され、①難民・被災者支援のためのリユース、②ダウン製品のリサイクル(中材の再使用)、③固形燃料や断熱材への再資源化、という3つの流れに振り分けられます。ファーストリテイリングの公開情報によると、2022年度の累計回収枚数はグローバルで約6,200万枚に達しています。
ダウンリサイクルの仕組み
ダウンジャケットやダウンベストなどのダウン製品は、RE.UNIQLO専用の回収ボックスに持ち込むと、羽毛(ダウン・フェザー)を取り出して洗浄・再処理し、新たなダウン製品の中材として再利用されます。化学繊維と異なりダウンは繰り返し再生しやすい素材であり、この仕組みによって新規ダウンの調達量を抑えることにつながっています。
難民・被災地へのリユース
まだ着られる状態の衣類はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)などを通じて世界各地の難民キャンプや被災地に届けられます。2001年の活動開始以来、累計で約4,800万枚以上が届けられたとされており(ファーストリテイリング公表値)、衣類の「寿命を延ばす」だけでなく、社会的な支援にもつながる循環の仕組みです。
素材調達の倫理基準|コットン・ウール・セルロース繊維への対応
服のサステナビリティは着用・廃棄の段階だけでなく、原材料の調達段階から問われます。ユニクロは主要素材ごとに調達基準を定め、国際認証の取得や認証農場からの仕入れ拡大を進めています。
コットン(綿)
コットンは世界で最も多く使われる天然繊維の一つですが、その栽培には大量の水と農薬が使われることが知られています。ユニクロはBCI(ベター・コットン・イニシアチブ)への参加を通じて、水使用量や農薬の削減、農家の労働環境改善に取り組むコットンの調達拡大を進めています。BCIコットンは「農家の行動変容」を重視した仕組みで、農業実習の支援を通じて持続可能な農法の普及をめざしています。
メリノウール・カシミア
動物性繊維については、動物福祉の観点から「ライブ・プラッキング(生きたまま羽毛を引き抜く行為)」や「マールジング(羊の皮膚を折り畳んで縫合し過剰な発汗を促す手術)」を禁じたサプライヤーのみと取引することを方針として定めています。メリノウールはRWS(レスポンシブル・ウール・スタンダード)認証のある牧場からの調達を拡大しており、カシミアについても主要生産地モンゴルの牧草地保全を支援するプログラムへの参画を進めています。
セルロース系繊維(レーヨン・テンセル等)
森林由来の繊維については、FSC(森林管理協議会)認証を持つ木材パルプやPEFC認証材からの調達を優先しています。違法伐採や貴重な生態系破壊につながる原料調達を排除する方針を取引基準に明記しており、透明性の確保が課題となっているセルロース繊維業界への働きかけを継続しています。
2030年に向けた環境目標|数字で見るコミットメント
ファーストリテイリングは2023年度サステナビリティレポートおよび公式サイトで、2030年を期限とする複数の数値目標を示しています。主要な目標を以下に整理します。
- 自社の事業活動(スコープ1・2)における温室効果ガス排出量を2030年度末までに2019年度比で90%削減
- サプライチェーン全体(スコープ3)の排出量を同期間に20%削減
- 使用する素材の50%以上を再生素材・オーガニック素材・BCI認証素材などサステナブル素材に切り替える
- 製品の製造工程で排出される廃棄物の埋立処分ゼロを目指す
これらの目標はSBT(Science Based Targets)イニシアチブの認定申請と連動しており、パリ協定が求める1.5°C目標に整合した削減経路の設定が求められています。企業が公表する目標と実績の差(いわゆる「コミットメントギャップ」)の検証が第三者機関によって継続されている点は、消費者として注目しておきたいポイントです。
また2025年度以降、日本の大企業にはサステナビリティ関連情報の有価証券報告書への記載が義務化されました。ファーストリテイリングは東証プライム上場企業として開示義務の対象となり、開示内容の比較可能性・信頼性はこれまでより高まることが期待されています。
「届けよう、服のチカラ」プロジェクト|学校と社会課題をつなぐ
ユニクロが2013年に開始した「”届けよう、服のチカラ”プロジェクト」は、全国の小・中・高校と連携し、学生が主体となって不要な子ども服を回収し、難民の子どもたちに届ける教育型の活動です。
プロジェクトでは単に服を集めるだけでなく、ユニクロ社員が学校を訪問してサステナビリティや難民問題をテーマにした出張授業を実施するのが特徴です。ファーストリテイリングの公表によると、2013年の開始から2023年度末までに延べ約3,900校・約140万人以上の児童・生徒が参加し、累計約1,960万枚の子ども服を回収したとされています。
回収した衣類はUNHCRを通じてアジア・アフリカなどの難民キャンプへ届けられます。服の回収・仕分け・発送という一連の作業を学生自身が担うことで、難民問題やサプライチェーンの課題を「自分ごと」として考えるきっかけになっています。学校への参加申し込みはユニクロの公式サイトから確認できます。

豊島でのボランティア活動|産業公害の歴史と向き合う
ユニクロ・ジーユーの従業員は毎年、香川県の豊島(てしま)でボランティア活動に参加しています。豊島は1990年代に産業廃棄物の不法投棄問題(「豊島事件」)が国内最大規模の産廃問題として注目された島です。長年にわたる住民運動と行政交渉の末に廃棄物の撤去・無害化処理が進められてきた歴史があります。
ファーストリテイリングは豊島の自然環境の再生支援や環境教育活動に継続して関わっており、社員が現地で清掃・植栽・環境学習に参加することで、産業が環境に与える負の遺産を学ぶ機会としています。「瀬戸内オリーブ基金」への募金活動もこの流れのなかに位置づけられており、各店舗のレジ付近で受け付けています。
私たちが今日からできること|RE.UNIQLOへの参加方法
ユニクロのサステナビリティ活動は、消費者が主体的に関わることを前提として設計されています。以下の4つのアクションは今日からでも実践できます。
不要になった衣類を店頭のリサイクルボックスへ
ユニクロ・GUの全商品が対象です。衣類の状態に関わらず受け付けており、回収後は難民支援・ダウン再生・資源化のいずれかのルートで活用されます。「ゴミとして捨てる前に一度立ち寄る」という習慣が、年間数十万枚規模の衣類廃棄の回避につながっています。
オンライン購入は店舗・コンビニ受け取りを選ぶ
ユニクロのオンラインストアで購入する際、自宅配送ではなく店舗やコンビニでの受け取りを選択すると、個別配送に使われる段ボール箱の削減と、再配達によるCO₂排出を抑えることができます。国土交通省の推計では、再配達は国内宅配便全体の約11〜12%(2023年度)に及んでいます。1回で受け取る選択の積み重ねが、排出量削減の実質的な一歩になります。
再生素材を使った製品を意識して選ぶ
ユニクロではペットボトルを再生したリサイクルポリエステルを使った製品を複数展開しています。フリース素材にはリサイクルポリエステルの使用比率を高める取り組みが進んでおり、購入時にタグや商品説明を確認して素材の由来を意識することが、サステナブルな消費行動の実践になります。
瀬戸内オリーブ基金へ募金する
各店舗のレジ横などに設置された募金箱から、豊島の自然再生支援に寄付することができます。金額に関わらず、1回の行動が「企業の取り組みを社会が後押しする」意思表示になります。

ユニクロの取り組みを見極める|グリーンウォッシングに騙されないために
ユニクロの取り組みを正当に評価するためには、公表している目標と実績の両方を追うことが重要です。企業が個別の製品への再生素材の使用をアピールしながら、全体の生産量が増加し続けるのであれば、排出量の絶対値は下がらない可能性があります。
チェックすべきポイントは2つあります。一つは「原単位あたりの削減」(製品1枚当たりの排出量)ではなく、「絶対量の削減」(全体の排出量)が改善しているかどうか。もう一つは、第三者機関による数値の検証(アシュアランス)がなされているかどうかです。ファーストリテイリングのサステナビリティレポートには第三者保証意見が付されており、数値の信頼性を確認する手がかりになります。

まとめ|ユニクロを入口に、サステナブルな消費を考える
ユニクロのサステナビリティ活動は、素材調達・製造・販売・回収・再生という衣類のライフサイクル全体をカバーしようとする点で、国内アパレル企業のなかでも取り組みの体系が整っているといえます。同時に、2030年目標の達成状況や開示の透明性については、毎年のサステナビリティレポートで継続して確認していく姿勢が求められます。
消費者としてできることは、情報を受け取るだけでなく、RE.UNIQLOへの参加や受け取り方法の工夫など具体的な行動と組み合わせることです。まず1つ、次にユニクロ店舗に行ったときにリサイクルボックスへ衣類を1枚持参することから始めてみてください。
- ユニクロ・GU全商品が店頭リサイクルボックスの対象。状態を問わず持ち込める
- 回収された衣類は難民支援・ダウン再生・資源化の3ルートで活用される
- コットンはBCI、メリノウールはRWSなど主要素材ごとに国際認証基準への対応を拡大中
- 2030年目標としてスコープ1・2の温室効果ガスを2019年度比90%削減を掲げている
- 「絶対量の削減」と「原単位削減」を区別して読むことが、グリーンウォッシングを見抜く第一歩

