環境配慮契約法は、国や独立行政法人等に温室効果ガスの排出を減らす契約を結ぶことを義務づけた法律で、民間企業に直接の義務はありません。ただし、公共調達に参加する企業や、自治体から業務を受託する企業は、入札で環境面の評価を受けます。2026年3月13日には基本方針が閣議決定で改定され、電気の契約に総合評価落札方式が導入されました。この記事では、法律の仕組みと2026年改定の中身を、環境省などの公開資料をもとに企業の立場から整理します。
環境配慮契約法の対象は誰か|企業に直接の義務はあるのか
環境配慮契約法の正式名称は「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律」です。環境省の資料によると、2007年(平成19年)に制定され、同年11月22日に基本方針が閣議決定されました。環境省は、公共機関が価格に加えて環境性能を含めて総合的に評価する仕組みで、経済・社会全体を環境配慮型に変えていくことを目的としています。
名称に「国等」と入っているとおり、規制の宛先は企業ではなく公共側です。企業に求められるのは、公共側が示した環境要件を満たして入札に参加することです。
義務を負うのは国と独立行政法人等
国の機関と独立行政法人等は、基本方針に従って環境配慮契約を結ぶ義務を負います。電気を買うとき、自動車を借りるとき、建物を設計するときなど、契約のたびに価格だけでなく温室効果ガスの排出削減への配慮を評価に入れる必要があります。
地方公共団体は努力義務
地方公共団体には、環境配慮契約を推進する努力義務が課されています。環境省は、自治体が導入しやすいよう導入マニュアルや支援ガイドラインを用意しています。
この点は企業にとって実務上の意味があります。国の機関だけでなく、取引先の自治体でも同じ考え方の入札条件が使われる場面が増えるからです。自治体ごとに運用の濃さは異なるため、自社が参加する入札の公告を読んで確かめるのが確実です。
民間企業は供給側として関わる
民間企業は、公共機関に電気、自動車、設計、廃棄物処理といったサービスを売る供給側に当たります。環境省は、供給側の企業に環境負荷の少ない製品やサービスの提供を促し、市場全体の環境配慮を進めることを狙いとしています。
したがって、公共入札と関係のない企業が法律違反に問われることはありません。一方で、公共調達で評価される基準は、自社の調達基準や取引先からの要請を考える際の参考になります。
企業が関わる契約類型と場面
環境省は、電気、自動車、船舶、ESCO(省エネルギー改修事業)、建築、産業廃棄物処理を主要な契約類型として位置づけています。企業の関わりが最も大きいのは電気の供給契約で、次いで自動車や建築物の設計などの分野があります。
電気の供給契約|小売電気事業者の入札参加要件になる
電気の契約では、電気事業者の二酸化炭素排出係数や環境負荷低減の取組状況を評価します。従来は「裾切り方式」が使われてきました。排出係数などで入札参加資格の基準を設け、基準を満たした事業者の中から価格で落札者を決める方式です。
自治体の運用例を見ると、排出係数、未利用エネルギーの活用状況、再生可能エネルギーの導入状況に配点し、合計70点以上の事業者に参加資格を与えるものがあります。基準を満たせない小売電気事業者は、価格が安くても入札に参加できません。
電気以外の分野|環境性能が評価項目に入る
自動車の賃貸借では車両の環境性能が、建築物の設計では省エネルギー性能が、産業廃棄物処理では処理業者の環境面の取組が評価に入ります。公共機関から業務を受ける企業は、価格の見積もりに加えて、環境面の実績を説明できる状態にしておく必要があります。
具体的な評価項目や基準値は契約類型ごと、年度ごとに見直されます。応札する企業は、最新年度の基本方針と解説資料を確認してください。
2026年3月の基本方針改定で変わったこと
政府は2026年3月13日、環境配慮契約法の基本方針の変更を閣議決定しました。環境省は「電気の供給を受ける契約について総合評価落札方式の導入等を行った」と説明しています。企業の入札対応に最も影響する改定は、この電気の契約方式の見直しです。
裾切り方式から総合評価落札方式へ
裾切り方式は、基準を満たすかどうかの二択で参加資格を決めます。これに対して総合評価落札方式では、価格に加えて環境面の取組を点数化し、総合点で落札者を決めます。
評価項目には、温室効果ガスの排出係数、再生可能エネルギーの導入状況、未利用エネルギーの活用、追加性のある再エネの導入、地域での持続的な再エネ創出への取組、電源構成や排出係数の開示状況などが含まれます。導入時期については、2025年度の電力専門委員会で2027年度からの導入案が示されたと報じられています。具体的な配点やしきい値は、環境省の最新資料で確認する必要があります。
地域共生と追加性が評価対象になった
今回の改定では、地域との共生が図られていない発電施設で発電された電気の調達を避ける旨が、基本方針に規定されました。総合評価落札方式では、地域共生型の再エネや追加性のある再エネを調達する小売電気事業者が加点評価されます。
追加性とは、その調達によって新たに再エネの発電設備が増える効果を指します。排出係数が低いだけでなく、電気の中身と調達の経緯まで説明できるかが問われる設計になりました。
相談窓口と説明会が用意されている
環境省は、2026年4月13日から2027年3月31日まで、環境配慮契約法に関する相談窓口を設置します。また、2026年6月18日には基本方針説明会をウェブで開催しました。対象は国の機関、独立行政法人等、地方公共団体等に加えて事業者等も含まれ、録画は環境省のYouTubeチャンネルに掲載される予定とされています。事業者が直接参照できる一次情報が整っている点は、対応を始める際の助けになります。
立場別に見る企業の確認ポイント|3つのパターン
ここからは、公開情報をもとに、企業の立場を3つのパターンに整理します。調査にもとづく統計ではなく、法律の仕組みから導いた整理です。自社がどこに当たるかを見極めると、確認すべき資料が絞れます。
公共入札に参加する供給側の企業
小売電気事業者、自動車リース事業者、ESCO事業者、設計事務所、産業廃棄物処理業者がこのパターンに当たります。最優先で確認すべきなのは、応札したい契約類型の最新の基本方針と解説資料です。
とくに電気の小売では、排出係数だけでなく、再エネの調達の中身や情報開示まで評価される方向です。電源構成を開示できる体制を整えておくと、新しい評価方式に対応しやすくなります。
自治体と取引する、または業務を受託する企業
直接の供給側ではなくても、自治体の施設管理や運営を受託している企業は、環境配慮の要件が仕様書に入る可能性があります。自治体は努力義務の立場にあり、要件の入れ方は一律ではありません。
次回の入札公告や仕様書で、環境配慮に関する記載がどの程度あるかを読んでおくと、対応の見通しが立ちます。
公共入札と関係のない企業
法的な義務はありません。ただ、公共調達が環境配慮や資源効率の高い事業者を選ぶ仕組みを強めていることは、企業の技術選択に影響する需要側の政策として指摘されています。
自社の電力調達や車両調達の基準を見直すときに、国が使う評価項目を参考にするのは一つの方法です。排出係数、再エネの調達の中身、開示の有無といった物差しは、民間の調達にも転用できます。
今日から試せる1アクション
最初の一歩は、自社が関わる契約類型に絞って、環境省の「グリーン契約(環境配慮契約)」のページから基本方針と解説資料を1つだけ開くことです。供給側の企業なら応札したい契約類型の資料を、そうでない企業なら電気の契約の資料を選んでください。
資料の中で、評価項目の一覧と配点の表を探します。全文を読み込む必要はありません。自社が今すぐ答えられる項目と、答えられない項目に印をつけるだけで、対応の優先順位が見えてきます。
その次の段階として、取引先の自治体の入札情報を1件開き、環境配慮に関する記載の有無を確認してみてください。公共側がどこまで要件を求めているかを実物で見ておくと、法律の説明が具体的に理解できます。
まとめ
環境配慮契約法で義務を負うのは国と独立行政法人等で、地方公共団体は努力義務です。民間企業に直接の義務はありません。ただし、公共機関に電気、自動車、建築物の設計、産業廃棄物処理などを提供する企業は、入札で環境面の評価を受けます。
2026年3月13日の基本方針改定では、電気の契約に総合評価落札方式が導入され、地域共生が図られていない発電施設の電気の調達を避ける旨も明記されました。排出係数の低さだけでなく、再エネの中身や情報開示まで評価される方向に進んでいます。自社が供給側か、受託側か、公共入札と無縁かを見極め、確認する資料を絞ることが、対応の出発点になります。
- 環境配慮契約法の義務の宛先は、国と独立行政法人等で、地方公共団体は努力義務
- 民間企業は供給側として入札で環境面の評価を受ける
- 2026年3月の改定で、電気の契約は総合評価落札方式になった
- 評価は排出係数に加え、再エネの追加性や地域共生、情報開示まで広がる
- まず環境省の基本方針と解説資料から、自社に関わる契約類型を1つ読む
参考文献
- 環境省「グリーン契約(環境配慮契約)について」(環境省)
- 環境省「令和8年度「環境配慮契約法」基本方針説明会の開催について」(2026年)
- Circular Economy Hub「環境配慮契約法改定、電力調達で評価軸に変化。循環経済移行に向けた示唆は?」(2026年)
- スマートジャパン「政府機関による電力の環境配慮契約 2027年度から「総合評価落札方式」を導入へ」(2025年)

