公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
CSR

ダイバーシティ経営の効果はどこに出るのか|企業事例と数字で見る実態、導入でつまずくポイント

Photo by rupixen on Unsplash

「ダイバーシティ経営を進めると業績が上がるのか」という質問を、講演やワークショップの場で何度も受けてきました。環境NGOでキャンペーン設計に携わっていた10年のあいだ、多様な立場の人を巻き込むプロジェクトほど最初は会議がまとまらず、途中で心が折れかけたことも一度や二度ではありません。それでも続けてきたのは、遠回りに見える議論の先に、思いつかなかった選択肢が出てくる瞬間を何度も見てきたからです。ダイバーシティ経営の効果も、実はこれと似た構造を持っています。

ダイバーシティ経営という言葉の中身

経済産業省は、性別や年齢、国籍、キャリアなど多様な人材が持つ力を最大限に引き出し、企業の価値創造につなげる経営のあり方を「ダイバーシティ経営」と位置づけて推進してきたとされています。人材の属性を増やすこと自体が目的ではなく、増えた多様性を意思決定や商品開発に実際に反映させるところまでを含めた考え方だという点は、記事の入口として押さえておきたいところです。

ここから先で扱いたいのは、定義そのものよりも「効果はどこに、どういう形で出るのか」という部分です。制度を整えただけで終わってしまう職場と、実感を伴う変化につながる職場の違いを、企業の取り組み傾向と実践のヒントから見ていきます。

効果が見えにくいと言われる理由

ダイバーシティ経営の効果測定について相談を受けるたびに感じるのは、多くの担当者が「来月の売上」のような即効性を期待して、途中で取り組みをやめてしまうということです。実際に地域のNPOで多世代・多国籍のメンバーが混ざるプロジェクトチームの立ち上げを手伝ったとき、最初の3か月は意見の折り合いがつかず、進行スピードはむしろ落ちました。効果として見えてきたのは、そこから半年ほど経って、想定していなかったリスクに事前に気づけるようになったタイミングでした。

ダイバーシティ経営の効果は、売上高のような単一指標にすぐ反映されるものではなく、意思決定の質、リスクの見落とし防止、人材の定着といった複数の経路を通じて、時間差を伴いながら表れると理解しておくと、途中で投げ出さずに済みます。見落としがちなポイントとして、効果測定の時間軸を最初に合意しておかないと、社内で「思ったほど効果がない」という評価が早々に固まってしまうことが挙げられます。

経済産業省が示してきた推進の枠組み

経済産業省は企業のダイバーシティ経営を後押しするため、優れた取り組みを行う企業を表彰する仕組みや、経営者向けの行動指針の公表を続けてきたとされています。表彰や指針そのものが目的ではなく、他社の実践例を横展開しやすくすることで、業界全体の底上げを狙っている点が特徴です。

なでしこ銘柄とダイバーシティ関連の表彰制度

経済産業省は東京証券取引所と共同で、女性活躍推進に優れた上場企業を選定する「なでしこ銘柄」の取り組みを続けてきたと報告されています。加えて、多様な人材の活躍を経営成果に結びつけている企業を選ぶ表彰制度も設けられてきたとされ、投資家や求職者が企業の姿勢を見極める材料のひとつになっています。こうした制度は、社内でしか評価されない取り組みを外部の目にさらす効果を持つ点が実務上は大きいと感じています。

女性役員比率という数字の重み

政府はプライム市場上場企業を対象に、女性役員比率について2030年までに30%以上とする目標を掲げています(2023年6月、政府の男女共同参画推進本部が「女性版骨太の方針2023」として数値目標を決定・公表)。この数字は単なる人事の目標ではなく、取締役会の議論に多様な視点をどれだけ持ち込めるかという経営の実質を映す指標として扱われている点に注意が必要です。数字だけを追いかけて役員を増やしても、発言権や情報共有が伴わなければ、形だけのダイバーシティに終わってしまうという声も、企業の人事担当者から聞かれます。

ダイバーシティ経営を経営戦略として扱う企業の考え方について、もう少し具体的な事例を知りたい方には、こちらの記事もあわせて参考になります。

複数の企業に共通する取り組みの傾向

特定の1社だけを取り上げて成功事例として語ることには慎重でありたいと考えています。むしろ、業種や規模の異なる複数の企業の公表資料を見比べると、共通して現れる傾向がいくつか浮かび上がってきます。

意思決定の場に多様性を入れる

製造業やサービス業など複数の業界で、経営会議や新規事業の検討チームに女性や中途採用者、若手社員を意図的に加える動きが広がっているとされています。属性を混ぜること自体よりも、その場で発言できる空気を作れているかどうかで、出てくる案の幅がまったく違ってくるという点は、会議設計に関わってきた経験からも実感するところです。人数だけ揃えて発言は一部の人に偏る、という失敗は珍しくありません。

働き方の柔軟性を土台にする

時短勤務やリモートワーク、副業の容認といった働き方の選択肢を広げる制度は、ダイバーシティ経営の土台としてセットで語られることが多い施策です。制度を用意しただけで利用率が伸び悩む企業と、実際に管理職が率先して使う企業とでは、数年後の離職率や応募者の層に差が出てくると報告されています。制度の有無ではなく、使われているかどうかを確認する視点が実務では欠かせません。

効果を見極めるための3つの判断基準

取り組みを始めてから「効果が出ているのかどうか」を判断する際に、次の3つの視点で振り返ることを勧めています。数値目標だけでは見えない部分を補うための、実務者向けの整理です。

  1. 会議やプロジェクトの発言記録を振り返り、特定の属性や役職の人だけが話していないかを確認する
  2. 制度の「利用率」ではなく「管理職の利用実績」を確認し、制度が形だけになっていないかを見る
  3. 離職や休職の理由に、多様な人材が働きにくいと感じる要素が含まれていないかを人事データで確認する

この3つは、大企業の人事部でなくても、部署単位やチーム単位で今日から確認できる項目です。数字を集める前に、まず自分のチームの直近の会議で誰がどれだけ発言していたかをメモしてみることから始めてみてください。それだけでも、属性の多様性と発言の多様性が一致しているかどうかの手がかりになります。

まとめ

ダイバーシティ経営の効果は、短期の売上のようにわかりやすい形では現れにくく、意思決定の質やリスクへの気づき、人材の定着といった経路を通じて時間差を伴って表れるものだと感じています。制度を整えることと、その制度が実際に使われ、発言の場に多様性が反映されることは別の話です。今日からできる一歩として、直近のチーム会議の発言者と発言時間を書き出してみることをおすすめします。

  • ダイバーシティ経営の効果は売上に直結する即効性よりも、意思決定の質やリスク発見力、人材定着に時間差で表れやすい
  • 経済産業省は表彰制度や行動指針を通じて、企業のダイバーシティ経営を後押ししてきたとされる
  • 効果測定は制度の有無ではなく、発言の偏りや管理職の制度利用実績など「使われ方」を確認することが実践のポイント

参考文献

  • 経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」(https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/index.html)
  • 内閣府男女共同参画局「女性活躍推進法に基づく取組」(https://www.gender.go.jp/policy/suishin_law/index.html)
  • 厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/)

本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。

RELATED

PAGE TOP