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SOCIETY

デジタルデバイド対策の進め方|日本の支援制度と身近な一歩

Photo by Avel Chuklanov on Unsplash

デジタルデバイドとは、インターネットやスマートフォンを使える人と、使うのが難しい人とのあいだに生まれる情報格差のことです。ただ、この言葉を知っていることと、身近な人の「困った」に応えられることは別の話だと私は考えています。市民参加の場づくりに関わってきた中で、制度や機器が整っていても、最初の一歩を踏み出せる場所がなければ人は集まらない、という場面を何度も見てきました。

この記事では、日本の統計で格差がどこに表れているかを確認します。そのうえで、国と自治体が用意している支援の仕組みを整理し、対策が届きにくくなる場面と、今日からできる行動を紹介します。

この記事で学べること

  • 日本でデジタルデバイドが年齢や暮らしの条件によってどう表れているか
  • 携帯ショップや公民館で受けられる講習会と、デジタル推進委員の仕組み
  • 支援が必要な人に届かなくなる3つのつまずき
  • 身近な人と地域の講座をつなぐ、今日からの1アクション

日本のデジタルデバイドは、いまどこに表れているのか

総務省の令和7年版情報通信白書によると、2024年の個人のインターネット利用率は85.6%です。端末別では、スマートフォンが74.4%、パソコンが46.8%で、スマートフォンが主流になっています。数字だけを見ると、広く普及したように見えます。

ただ、平均の裏側には、使いにくさを抱えたまま取り残されている人がいます。ここでは年齢、年齢以外の条件、そして「使わない」と「使えない」の違いの3つに分けて見ていきます。

年齢で見ると、70代から差が開く

白書では、13歳から69歳までの各年齢階層でインターネット利用率が9割を超える一方、70歳以降は年齢が上がるほど利用率が下がる傾向にあるとされています。スマートフォンの利用割合も、60代は2011年の2.5%から2024年には78.8%へ、70代は0.7%から53.0%へと伸びています。伸びてはいますが、60代と70代のあいだには開きが残っています。

つまり、高齢者全体をひとまとめにして「スマホが苦手な世代」と捉えると、実態からずれます。同じ高齢者でも、年齢や暮らし方によって必要な支援は変わります。

年齢以外にも格差を生む条件がある

デジタルデバイドは年齢だけの問題ではありません。端末や通信費を負担できるかという所得の条件、光回線や携帯電話の電波が届くかという地域の条件、画面の文字が読みにくい、操作が難しいといった身体的な条件が重なります。日本語での案内が読み取りにくい人にも、同じ壁があります。

支援を考えるときは、「誰が苦手か」ではなく「どの条件が壁になっているか」から入るほうが、打つ手を具体的にできます。

「使わない」と「使えない」は別のこと

白書がまとめるインターネットを使わない理由には、必要性を感じないことに加えて、ウイルスなどへの不安や、必要な知識・技術が足りないことも挙がっています。使わないと決めている人もいれば、不安や知識不足から踏み出せずにいる人もいます。

前者の選択は尊重されるべきです。後者には、安心して試せる場が必要です。対策の入口は、この2つを混ぜないことにあります。

国と自治体が用意している支援の仕組み

日本では、スマートフォンの使い方を身近な場所で学べる仕組みが、国の事業と自治体の取り組みの両方で用意されています。ここでは代表的な3つを紹介します。住んでいる地域によって開催状況は異なるため、実際に使うときは最新の案内を確認してください。

デジタル活用支援推進事業|携帯ショップや公民館で開かれる講習会

総務省のデジタル活用支援推進事業は、高齢者などがスマートフォンを使ったオンライン行政手続きなどに不安を感じないよう、助言や相談を行う講習会を身近な場所で開く取り組みです。令和3年度から始まり、令和3〜7年度の5年間での実施が想定されています。

実施の形は大きく2つあります。ひとつは全国の携帯ショップで開かれる「全国展開型」で、実施団体はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルです。もうひとつは、地元のICT企業やNPO法人が自治体などと連携する「地域連携型」です。講座は「電源の入れ方・ボタン操作を知ろう」「電話・カメラを使おう」から、「マイナポータルを活用しよう」「オンライン診療を使ってみよう」「ハザードマップで災害のリスクを確認しよう」まで、基本から実生活に近い内容まで幅があります。参加の申し込みは、各実施主体への問い合わせが基本です。

デジタル推進委員|教える側を地域に増やす仕組み

デジタル庁のデジタル推進委員は、2022年度に始まった取り組みです。デジタル機器やサービスに不慣れな人を、講習会などで支えます。教える内容は、マイナンバーカードやマイナポータルの使い方、各地で実装されているデジタルサービスの使い方、デジタル機器・サービスの使い方の3つです。

デジタル庁は、5万人を超える人が委員として活動している(2024年3月末時点)としています。応募は、募集要項に示された団体に所属する人が応募フォームから行う形のほか、国や自治体の事業で活動する人に個別に案内される形があります。「教える人を増やす」ことも、デジタルデバイド対策の大事な柱です。

自治体の講座は国の事業の年度を越えて続いている

総務省のデジタル活用支援推進事業は令和7年度までと位置づけられています。一方で、自治体の講座は令和8年度も続いている例があります。たとえば北九州市は、令和8年4月から令和9年2月にかけて、市内の市民センター40か所でシニア層を中心にデジタル活用講座を実施するとしています。兵庫県も、県・市町・携帯電話事業者が連携する市町主催のスマホ講習会について、令和8年度上期の開催一覧を2026年5月に更新しています。

国の事業の枠組みが変わっても、地域の講座がなくなるとは限りません。探すときは、国の制度名ではなく、住んでいる自治体名で最新の案内を確認するのが確実です。

対策がうまく届かないとき、よく見られる3つのつまずき

講座や制度があることと、必要な人に届くことは別の問題です。ここでは、自治体や支援団体の公開されている案内や、市民参加の場づくりでよく見られる傾向をもとに、つまずきやすい点を3つにまとめます。調査に基づく統計ではなく、私の見方です。

案内がデジタルの中だけに閉じている

スマートフォンが苦手な人に届けたい講座の申し込みが、ウェブフォームやQRコードだけ、ということがあります。これでは、最も必要としている人が最初の入口で止まってしまいます。紙の広報紙、電話、窓口といった複数の入口を残すことが、対策として効きます。

教える人が善意で全部やってしまう

家族や周りの人が、設定や手続きを代わりに済ませてしまうこともよくあります。その場は助かりますが、本人は次に困ったときにまた頼むしかありません。もちろん、期限のある手続きなどは代行が必要な場面もあります。そうでないときは、本人が画面に触れ、手順を自分の言葉でメモに残せるよう、隣で見守る形が長く役立ちます。

「使えない人」を課題として語ってしまう

デジタルデバイドの話をすると、苦手な人を「遅れている人」のように語ってしまう危うさがあります。苦手は能力の問題ではなく、学ぶ機会や安心して聞ける相手がいたかどうかの問題であることが多いはずです。使わない選択をしている人もいます。対策には、デジタル化を押し付けることではなく、紙や窓口といった手段を選べる状態を保つことも含まれます。

情報へのアクセスの差は、所得や地域などの格差とも重なり合っています。社会全体の格差を広い視点から整理した記事もあわせて読むと、デジタルデバイドを位置づけやすくなります。

今日から試せる1アクション|身近な人に「困っていること」を1つだけ聞く

最初の一歩は、機器の買い替えや大きな支援ではありません。家族、近所の人、職場の先輩など、スマートフォンに不安がありそうな人に、「今、使っていて困っていることはある?」と1つだけ聞いてみることです。秋は年末年始の帰省や集まりを前に、顔を合わせる機会が増える時期でもあります。

聞くときは、教えようとしないのがコツです。「どうやるの?」と聞かれる前に説明を始めると、相手は「迷惑をかけた」と感じて、次から聞きにくくなります。まず困りごとを聞き、答えはすぐ出さずに、一緒に調べる姿勢でいてください。

困りごとが分かったら、次の手順で動いてみてください。

  1. 相手が住む自治体名と「スマホ教室」「デジタル活用講座」を組み合わせて検索するか、広報紙で開催情報を探す
  2. 開催日と場所を伝え、行ってみたいか相手の意向を聞く
  3. 希望があれば、初回だけ一緒に会場へ行き、その後は本人に任せる

ここで大切なのは、「行くかどうか」を相手が決めることです。使わないと決めている人には、無理に勧めず、紙や窓口を選べるように手伝うことも立派な支援です。教える側に関心が出てきた人は、デジタル庁のデジタル推進委員の案内を見ておくと、次の選択肢が広がります。

まとめ

日本のインターネット利用は広がっていますが、70歳以降を中心に差が残り、所得や地域、身体的な条件も重なっています。「使わない」人と「使えない」人を分けて考えることが、対策の出発点です。

国のデジタル活用支援推進事業は携帯ショップや公民館で講習会を開き、デジタル推進委員は教える側を増やしてきました。自治体の講座は令和8年度も続いている例があります。ただ、案内がデジタルに閉じている、代わりにやってしまう、苦手な人を課題として語ってしまう、といったつまずきがあると、支援は届きにくくなります。まず身近な人の困りごとを1つ聞くところから始めてみてください。

  • 2024年のインターネット利用率は85.6%、70歳以降は年齢が上がるほど利用率が下がる傾向にある
  • 使わない人と使えない人を分けて考え、壁になっている条件から対策を選ぶ
  • 携帯ショップや公民館の講習会、デジタル推進委員、自治体の講座など、学べる場がある
  • 案内は紙や窓口でも届け、代わりにやらず本人が触れる機会をつくる
  • まず身近な人に困りごとを1つ聞き、地域の講座を一緒に探す

参考文献

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