「孤独を感じる人は日本で約4割」と聞くと、「自分のまわりはそこまでではない」と思う方もいれば、「やはりそうか」と受け止める方もいるはずです。孤独は個人の性格の問題だと思われがちですが、日本政府は2021年から毎年、全国規模の調査で実態を測り、法律まで整えて社会の課題として扱うようになりました。
ここで言葉を整理しておきます。孤独は「ひとりぼっちだと感じる主観的な気持ち」を指します。孤立は「家族や友人、地域との接点が少ない客観的な状態」を指します。両者は重なることもありますが、イコールではありません。この記事では、最新のデータでこの2つがそれぞれどう表れているかを確認し、読者の方が今日からとれる行動までつなげます。
日本で孤独を感じている人は、どれくらいいるのか
「約4割」という数字は本当なのか、どんな調査なのかを疑う方もいるでしょう。数字の定義を確認する癖は、企業の開示資料を読むときと同じで、孤独の統計でも欠かせません。ここでは内閣府の全国調査をもとに、割合と内訳を確認します。
孤独感が「ある」と答えた人は37.7%
内閣府は「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」を2021年から毎年実施しています。2026年4月14日に公表された令和7年(2025年)調査は5回目の結果で、16歳以上の2万人を対象としたインターネット調査です。
孤独感が「しばしばある・常にある」と答えた人は4.5%で、前年より0.2ポイント増えました。「時々ある」は13.7%、「たまにある」は19.5%で、3つを合わせると37.7%になります。「約4割」はこの合計を指した表現です。
注意したいのは、37.7%の大半が「たまにある」「時々ある」の層だという点です。多くの人が一時的に感じる孤独と、慢性的につらい孤独は分けて考える必要があります。一方で、インターネット調査には回答者の層が偏る可能性が一般にあるため、数字は目安として受け止めるのが誠実です。
年代と性別でみると、現役世代と男性で高い
「孤独は高齢者の問題」と思っている方も多いかもしれませんが、データは少し違う姿を示しています。「しばしばある・常にある」と答えた人の割合は、報道された調査結果によると、20代が5.5%、30代が6.1%、40代が5.1%、50代が5.7%でした。30代から50代にかけて高めに出ています。
性別では、男性が5.3%、女性が3.7%でした。仕事や子育てで忙しい世代ほど、人と話す時間があっても「本音を話せる相手がいない」と感じやすい可能性があります。ただし、これは調査結果からの推測で、理由まで断定できるものではありません。
孤独と孤立は同じ意味なのか
「孤独」と「孤立」を同じ意味で使う記事も少なくありません。しかし、支援の考え方が違ってくるため、区別して読んでおく必要があります。
「孤独」は気持ち、「孤立」は状態
孤独は、人に囲まれていても感じることがあります。逆に、ひとり暮らしで人と会う機会が少なくても、孤独を感じない人もいます。孤独は本人の気持ちで測り、孤立は人と会う頻度や相談相手の有無といった状態で測ります。
同じ全国調査では、家族や友人と直接会って話すことが「全くない」と答えた人が1割程度いると、2026年4月の大臣記者会見で述べられています。孤独感がある人の割合に比べると少ないものの、接点がほとんどない層が一定数いることがわかります。
孤立死2万2千人の数字をどう読むか
孤立が最も深刻な形で表れるのが、孤立死です。内閣府は2026年4月、2025年の孤立死の推計を2万2222人と公表しました。前年より366人増えています。
ここでの「孤立死」には定義があります。自宅で亡くなった1人暮らしの人のうち、死後8日以上が経過して発見されたケースを、生前に社会的に孤立していたと強く推認されるとして集計したものです。自殺も含まれています。年齢別では65歳以上が1万5911人で全体の約7割を占め、最多は75〜79歳の4329人でした。男性が約8割で、すべての年齢層で男性が女性を上回っています。
「1人で亡くなること」自体が問題なのではなく、長く誰にも気づかれなかったことが問題だとされている点が重要です。この数字は、見守りや声かけの網の目がどこで粗くなっているかを示すものとして読めます。
数字を並べると見えてくる3つの読み方
ここまでの数字は、別々の調査や推計です。並べて読むと、個々の数字だけでは見えない傾向が浮かびます。以下は公表された数値を突き合わせた筆者の読み解きであり、統計上の因果を示すものではありません。
読み方1 孤独感の山と孤立死の山は、別の世代にある
孤独感が高めに出るのは30〜50代です。一方、孤立死の数が多いのは70代後半の男性です。同じ「孤独・孤立」でも、悩みを感じている世代と、最悪の結果が起きやすい世代が違うということです。
そのため、対策も2段構えで考える必要があります。現役世代には「話せる相手がいない」という気持ちの孤独に、高齢世代には「気づかれない」という状態の孤立に、それぞれ目を向ける必要があるでしょう。
読み方2 男性が、感情と結果の両面で目立つ
孤独感の高さは男性が5.3%、女性が3.7%で、孤立死も男性が約8割です。ただし孤立死は「1人暮らしで、発見が遅れた人」の数であり、男女の1人暮らしの人数も違うため、単純には比べられません。それでも、男性ほど悩みを人に話しにくい、あるいは地域とのつながりが仕事に偏りやすいといった可能性が指摘されています。この点は今後の調査で確かめる余地があります。
読み方3 「誰かと食べる」ことが一つの目安になる
令和7年調査では、新たに食事の習慣との関係が調べられました。誰かと一緒に食事をする機会が「ほとんどない」と答えた人のうち、孤独感が「ある」と答えた人は60.8%でした。全体の37.7%と比べると、大きな差があります。
ただし、孤独だから誰かと食べなくなったのか、食べないから孤独になったのかは、この調査だけではわかりません。それでも「共食」は、日常のなかで確認しやすく、自分で変えやすい行動の一つです。
国や社会はどう動いているのか
孤独の問題は、社会全体で取り組む方向に変わってきました。日本では、2024年4月1日に孤独・孤立対策推進法が施行されました。首相を本部長とし全閣僚が加わる推進本部が置かれ、2024年6月11日には重点計画が決定されています。
世界でも動きがあります。WHO(世界保健機関)は2025年6月30日に社会的つながり委員会の報告書を公表し、孤独や社会的孤立が年間87万1000人以上の死亡に関連していると示しました。世界の6人に1人が孤独の影響を受けているとされています。ただし、調査の定義や方法が国ごとに異なるため、日本の37.7%と世界の数字を単純に比べることはできません。
身近な取り組みとして、内閣府は5月を「孤独・孤立対策強化月間」としています。孤独・孤立の知識を身につけ、身の回りの人に関心をもって、できる範囲で困っている人を支援機関につなぐ「つながりサポーター」の養成講座も各地に広がっています。特別な資格は不要で、誰でも参加できます。
今日から試せる1アクション
「何かしなければ」と思っても、大きな行動は続きません。まずは日常に組み込める、小さな行動から始めてみましょう。
今週中に、誰かと1食だけ一緒に食べる
先ほどの共食のデータを踏まえ、今週中に誰かと1食だけ一緒に食べる予定を入れてみてください。相手は家族でも、友人でも、同僚でも構いません。外食でなくても、お茶を飲みながら一緒にお弁当を食べるだけで十分です。
予定を立てるのが難しければ、オンラインで食事の時間を合わせる方法もあります。大切なのは、頻度や形式よりも「誰かと時間を共有する」感覚を、生活のなかに少しずつ取り戻すことです。
つらさが続くときは、相談窓口を頼ってください
孤独感が強く、食事どころではないというときは、相談窓口を使ってください。内閣府の「孤独・孤立相談ダイヤル#9999」は電話、メール、チャットで相談できますが、実施期間が限られる回があるため、最新の日程は内閣府の公式ページで確認してください。
常設の窓口としては、社会的包摂サポートセンターの「よりそいホットライン」(0120-279-338)があります。フリーダイヤルで、電話のほか、チャットやSNSでも相談できます。暮らしの困りごとから「死にたいほどつらい」気持ちまで、分野別に窓口が分かれていますので、受付時間は公式サイトで確認してください。
まとめ
日本で孤独感があると答えた人は37.7%で、そのうち慢性的に感じている人は4.5%でした。30〜50代と男性で高めに出ています。一方、孤立が最悪の形で表れる孤立死は、2025年に推計2万2222人で、70代後半の男性に多くみられます。孤独感の山と孤立死の山は別の世代にあるため、世代ごとに対策を考える必要があります。
国は法律と重点計画で対策を進めていますが、私たちができる行動は、もっと身近なところにもあります。共食のデータが示すように、誰かと過ごす時間が孤独感と関わっている可能性があります。10月の秋の行楽シーズンは、人と会う予定を立てやすい時期です。まず1食だけ、誰かと一緒に食べてみてください。
- 孤独感が「ある」人は37.7%で、30〜50代と男性で高めに出ている
- 孤独は気持ち、孤立は状態を指し、支援の考え方も異なる
- 孤立死は2025年に推計2万2222人で、65歳以上が約7割、男性が約8割を占める
- 共食がほとんどない人では孤独感が「ある」が60.8%で、ただし因果は断定できない
- つらさが続くときは、よりそいホットラインなどの相談窓口を頼れる
参考文献
- 内閣府 孤独・孤立対策推進室「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査 令和7年調査結果のポイント」(2026年)
- 熊本日日新聞「孤独感「ある」37%、25年 誰かと食事の頻度、関連も調査」(2026年)
- 熊本日日新聞「「孤立死」2万2千人 25年政府推計、対策急ぐ」(2026年)
- WHO「Social connection linked to improved health and reduced risk of early death」(2025年)
- 内閣府「孤独・孤立対策強化月間について」(2026年)

