コクヨ株式会社(以下、コクヨ)は、文具・家具・オフィス通販などを通じて「働く・学ぶ・暮らす」の領域で事業を展開する会社です。小学校で使用済みノートを回収し、もう一度ノートに生まれ変わらせる「つなげるーぱ!」、オフィスの使用済みクリヤーホルダーをオフィス用品や椅子の部材などに再生する「カウネット Loopla(ループラ)」、レンズの包装紙をノートの表紙の一部にする「Zoff x Campus」。資源を回収して終わりにせず、もう一度商品として世に出す3つの取り組みについて、サステナビリティ推進室の粕谷様と、各取り組みを担当する尾崎様、小川様、青山様にMIRASUS編集部がお話を聞きました。
<プロフィール> コクヨ株式会社
CSV本部 サステナビリティ推進室 企画ユニット
粕谷 高太郎 様 コクヨ株式会社
グローバルステーショナリー事業本部 事業戦略室 サステナブル推進タスクフォース
尾崎 圭以子 様 株式会社カウネット
CXデザイン本部 広報・サステナビリティ推進部 サステナビリティ推進グループ
小川 薫 様 コクヨ株式会社
グローバルワークプレイス事業本部 ものづくり開発本部 シーティング開発部
青山 友海 様
「サステナブル経営」は根幹の考え方
──コクヨが長期ビジョンで掲げる「自律協働社会」とは何か、サステナビリティは経営でどのような位置づけかを教えてください。
粕谷様:コクヨが目指している「自律協働社会」とは、自律した個人がお互いを認め合い、協働を通じて新しい価値が生まれていく社会です。私たちは、自律協働社会を実現することで、あらゆる社会課題が解決されてゆくと信じています。サステナブル経営は、この自律協働社会を実現するための根幹と位置付けています。地球環境や社会は事業活動の基盤であり、大切な資本です。事業基盤にある重要課題(マテリアリティ)を解決しながら、社会を自律協働型に変えることで、コクヨが直接、また、お客様を通じて間接的に、地球と社会を良くしていくことを目指しています。

──ロジックモデルやインパクトの定量化についても教えてください。
粕谷様:コクヨが生み出す社会価値を「社会課題を解決し続ける、自律協働社会を実現すること」と定義しています。ロジックモデルとは、私たちの事業活動がどのように自律協働社会につながっているのかを整理した、いわば「自律協働社会への地図」のような位置づけです。社会価値の創出は、実感を持ちづらい側面があるため、創出した社会価値の大きさを金額に換算する取り組みも行っています。2025年はファニチャー事業においてインパクトの定量化に挑戦しました。
──マテリアリティはどう特定したのでしょうか。推進の体制についても教えてください。
粕谷様:弊社では、ダイナミックマテリアリティの考え方に基づいて、定期的にマテリアリティの見直しを行っています。この特定は、自律協働社会を実現するにあたって解決するべき経営課題を洗い出し、「社会性」と「経済性」の2軸でプロットしたうえで、それらをまとめ上げる形でおこないました。特定したマテリアリティについて、コクヨとしてどのような状態を目指すのか、事業のメンバーと対話しながら決定しています。マテリアリティの解決は、サステナビリティ推進室だけが担うわけではありません。各マテリアリティ毎に、事業やグループ会社が横断したグループを組み、事業活動の中でその解決を目指しています。
──マテリアリティの解決に向けて、事業の現場ではどのような取り組みが進んでいるのでしょうか。資源循環のコンセプト「SUTENAI CIRCLE」についても教えてください。
粕谷様:コクヨでは、資源循環のコンセプトとして、「SUTENAI CIRCLE(ステナイサークル)」を掲げています。モノを作るときや使うとき、手放すときなど、それぞれのシーンでできることを考え、循環の輪をとじることで「捨てない社会」の実現を目指しています。資源の循環は、私たちのようにモノを作る企業だけでは実現できません。多くのパートナーやユーザーの皆さんと一緒に循環を生み出していく必要があります。今回ご紹介する「つなげるーぱ!」や「カウネット Loopla」は、まさにこういったお客様とともに循環を創っていく取り組みの1つです。

使い終わったノートも包装紙も、新しいノートの表紙へ。つなげるーぱ!とZoff x Campus
──2023年10月に始まった「つなげるーぱ!」は、小学校で使用済みノートを回収して新しいノートの表紙に再生する体験型環境学習プログラムです。企画の背景と、教材で大切にしていることを教えてください。
尾崎様:当社の調べで、小学生が1年に使うノートが約4,360万冊で、使い終わったノートの約4割が燃やすごみとして捨てられていることが分かりました。キャンパスノートを累計38億冊以上お届けしてきたコクヨだからこそ、ノートの使い終わった後の循環までを実現できたらと考えました。でも循環はコクヨだけでは実現できません。そこでこの企画に至りました。小学生を対象にしたのは、ノートが、子どもたちが人生で初めて所有する消耗品の1つだからです。教科書で知識として学ぶだけでなく、体験を通して自分ごとにしてもらうために、プログラムでは「知る」「考える」「行動する」の3ステップを大事にしています。なぜリサイクルが大事なのか、資源循環と地球環境保護の関係を学び、使い終えたノートが新しいノートの表紙に生まれ変わる過程を知る体験を通じて、ノートに限らず、ものをどう選び、使い終えたらどう手放すかを、自分で考える力を育むことを目指しています。

──回収量は2023年度の2,064kgから2025年度には4,099kgへ増え、2026年3月からは全国の文具ストア25店舗への回収ボックスの設置も始まりました。広がりの要因と反響を教えてください。
尾崎様:当初よりお客様から「個人でも参加したい」というお声をいただいており、この取り組みに共感してくださった地域の文具店に回収ボックスを設置していただくことが叶いました。
当社オフィスに併設のTHE CAMPUS SHOPでは、「リサイクルしてもらえるなら」と40冊ほどのノートを持ってきてくれた学生さんがいて、想いのつまったノートを手放す気持ちに触れ胸が熱くなりました。また、ある文具店では近隣の図書館でワークショップを開催してくれたり、つなげるーぱ!参加校では、小学生が高校生の前でプレゼンをするなど、新しい広がりが生まれていることを実感しています。

──「Zoff x Campus」は、店舗で役目を終えたレンズの包装紙をノートの表紙の一部にアップサイクルする取り組みです。協業の経緯と工夫を教えてください。
尾崎様:Zoff様の店舗でレンズを加工する際にレンズ包装紙がどうしても廃棄されてしまうという課題を伺ったのがきっかけでした。Zoff様の課題は、パートナーと一緒に捨てない社会を作るという「SUTENAI CIRCLE」の考え方とも重なりました。開発では、包装紙にレンズを守るためについている不織布を機械では分別できず、一枚一枚手作業で外すのに苦労しました。デザインでは、包装紙に印刷されたZoff様のロゴのブルーが所々に残る再生紙ならではの風合いを活かすため着色は最低限にし、Zoff様のアイコンであるハスキー犬を大胆に配置しました。つなげるーぱ!のノートも同じで、表紙に回収したノートの様々な色の紙片が入り、1冊1冊表情が異なるのが特長です。
──配布対象を学生に絞り、目の健康に関するコンテンツも掲載しています。その狙いと反響を教えてください。
尾崎様:配布対象を学生に絞ったのは、キャンパスブランドも、Zoff様も、勉強に励む学生の毎日を支えたいという共通の想いがあったからです。長時間勉強する学生の目の健康は重要な課題です。そこでアイケア体操や視力測定コンテンツを取り入れ、楽しく目を休められるノートに仕上げました。2026年2月の新学期を前にした時期に、Zoff様の店舗で商品を購入した学生に配布したところ、すぐに配布終了になったと聞いています。
オフィスの使用済みクリヤーホルダーを椅子の部材に。Looplaで閉じる循環の輪
──「カウネット Loopla」は、オフィスで使い終えたクリヤーホルダーを回収し、新しいプラスチック製品に再生するサービスです。プラスチックに着目した理由と経緯を教えてください。
小川様:「カウネット Loopla(ループラ)」は、グループ会社のカウネットが2023年から提供を開始したサービスです。紙の回収サービスの「カウネット Loopa(ルーパ)」は同じ年の1月から開始しています。オフィスから出るプラスチックごみの多くは燃やされるか埋め立てられています。複合素材の製品はリサイクルしにくい一方、単一の物性であればリサイクル可能です。コクヨやカウネットでも多く販売しているクリヤーホルダーはほとんどがPP(ポリプロピレン)製の単一素材なのでリサイクルでき、カウネットの流通を活かして回収する仕組みも作れると考えました。

──回収から製品化までをつなげるために、社内でどのように連携しているのでしょうか。
小川様:カウネットの社内にはサステナビリティに関するタスクがいくつかあり、その1つが循環サービスの企画を担っています。物流、商品開発、私たちサステナビリティ活動を推進するメンバーが入って、課題を解決しながらサービスを組み立てています。サービスを実際に運用するためには物流やカスタマーセンターの協力も欠かせません。回収したクリヤーホルダーを再生原料にしてカウネットのPB(プライベートブランド)商品を作り、お客様にもう一度買っていただくことで循環の輪がつながるので、何を商品にできるかを考える開発のメンバーまで一緒に考えています。
──仕組みを回すうえでうまくいった点と難しい点、「カウネット Loopla Holder」「カウネット Loopla Pro」について教えてください。
小川様:うまくいっている点は、商品をお届けした帰りの便で回収するスキームを活用しているため、利用者に費用負担がなくご好評をいただいていることです。難しい点は持ち帰った後になります。回収したクリヤーホルダーはシールが貼られていたりPET製が混ざっていたりするので、品質を保つための仕分け作業に手間がかかります。今はクリヤーホルダーのみを「カウネット Loopla Holder」として運用しています。「カウネット Loopla Pro」はまだ提供を始めていませんが、特定のお客様のクリヤーホルダーからそのお客様向けの商品を作り、環境活動のアピールに使っていただくサービスとして構想しています。
──回収したプラスチックは椅子の部材にも採用されています。製品化のプロセスと難しかった点を教えてください。
青山様:文具は1つあたりの樹脂の使用量が少なく、クリヤーホルダーの回収・再生によって精製されたせっかくの再生樹脂ペレットを、文具だけでは使いきれないという課題がありました。そこで家具事業に声がかかりました。一般的なタスクチェアーでは、全体で5キロほどの樹脂を使っていて、使用量を一気に増やせます。コクヨは20年以上前から再生樹脂を活用してきたので、再生樹脂をタスクチェアーの部材に活用するノウハウが多くあります。一方で、取り組みを進めるうえで難しかったのは、安定供給とコストの2点です。1つ目は安定供給についてです。現在Looplaを採用している部品には毎年6トン以上の材料を使うので、安定して調達できなければ、使用する材料も製品の設計も見直さざるを得なくなってしまいます。2つ目はコストです。Looplaの再生材には回収の対価や静脈物流の費用が上乗せされるため、一般的な再生PPよりも割高なのが現実です。100グラムあたり数円の差であっても製品の最終価格に影響してしまいます。そのため、他の部分でのコストダウンと合わせて採用を検討しています。今もサステナビリティ推進室の企画を通じてLooplaの担当者と連携しながら、使用量をさらに増やすための話し合いを続けています。

──「回収して終わり」ではなく、商品としてもう一度世に出すことにどのような意味があるとお考えですか。
青山様:この意味は大きいと思います。オフィス家具は単なる什器ではなく、経営者から投資対象としての認知が広まり、お客様にどのように差異化された付加価値を届けるかが問われています。サステナビリティは、お客様にプラスとして受け取っていただける価値になってきています。「FABRE」と「COODE」の2シリーズをサステナブルにリニューアルしたとき、椅子のLoopla樹脂と同時に採用したのが、張り地の「カミカラ」です。キャンパスノートの製造時に出る紙の切れ端とマニラ麻から作った紙糸に、ポリエステルを合わせています。「この張り地にすると少し価格が高くなります」とお伝えしても、「それでかまいません」とおっしゃってくださるお客様が多くいらっしゃいます。作って、回収して、もう一度作り直せる閉じた循環だからこその価値を届けられていると思います。

──最後に、読者へメッセージをお願いします。循環の取り組みを続けるうえでの難しさや、読者が身近にできることもあわせて教えてください。
粕谷様:同じ地球に住む一人として、社会や地球で何が起きているのかに関心を持ち、自分にできることを探してほしいです。一人でも一社でも、できることは少なくても、みんなが少しずつ変わることには大きなインパクトがあります。自分だったら何ができるかを、考え続けてほしいと思います。
尾崎様:取り組みを商品にしたときに価格にどう反映し、どうすれば多く売れるのかという経済価値と社会価値の両輪は難しいテーマで、試行錯誤が続いています。もう一つ伝えたいのは、自分の行動と環境とのつながりです。ごみが増えることで温暖化が進むという話は、大雨や洪水など気候変動という形で身近に現れています。自分の行動でそうした災害を防げるかもしれないというつながりを伝えていきたいです。
小川様:リサイクルは一人ひとりだとインパクトを実感しにくいものです。レジ袋も時間はかかりましたが、みんながマイバッグを持つようになって大きな流れになりました。捨てるときに「これはどうなるんだろう」と少し考える人が増えると、新しいアイデアがきっと生まれてくると思います。
青山様:コクヨがグローバル展開を進める中で、再生やごみを減らす意識がまだ日本ほど浸透されていない地域への展開も視野に入っており、今後はさらにハードルが上がっていくと感じています。コクヨのものづくりは、大切に使ってもらえるように思いを込めた、愛されるものづくりです。サステナブルであることは、循環させるだけではなく、いかに長く使って愛してもらえるかも大切です。読者の皆さんには、まず自分が使うものや作るものから、大事にできるものを選び、大事に使ってほしいと思います。
──今回はお話を聞かせていただきありがとうございました。
▼ コクヨ株式会社のページはこちら
ホームページ:https://www.kokuyo.com/
サステナビリティ:https://www.kokuyo.com/sustainability/

