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カーシェアは本当に環境にいいの?CO2削減から駐車場問題まで3つのメリットを検証

Photo by Kate Trysh on Unsplash

「カーシェアは環境にいい」という話を聞いたことがあると思います。でも、「具体的にどのくらい違うの?」「自分が使うと本当に意味があるの?」と疑問を感じたまま、なんとなく流していた方は多いのではないでしょうか。取材を通じてサステナビリティの現場を見てきた立場から正直に言うと、カーシェアの環境効果は「気分の問題」ではなく、数字で説明できる部分があります。一方で、使い方によっては期待ほどの効果が出ないケースもある。そのどちらも、この記事で整理していきます。

「カーシェアが環境にいい」は本当か?まず仕組みから確認する

カーシェアの環境メリットを語るとき、「車を共有するから台数が減る」という説明がよく使われます。でも、「それって実感できる話?」と感じる方もいるはずです。

環境負荷という観点から自動車を見ると、CO2排出は走行中だけでなく、車両の製造・廃棄のプロセスにも存在します。1台の乗用車を作るには、鉄・アルミ・各種レアメタルが使われ、その製造工程でも相当量のCO2が排出されます。カーシェアが「環境負荷の削減」に直結する主な経路は、この製造台数の削減です。1台の車を多くの人がシェアすれば、社会全体の保有台数が減り、製造・廃棄に伴うCO2と資源消費が抑えられます。

日本政府もこの点を評価しており、2016年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」には、地球温暖化抑制策としてカーシェアリングの普及促進が明記されています。

政策文書に盛り込まれるほど、環境面での期待値は公式に認められていると言えます。

メリット1|車両台数の削減がもたらすCO2削減効果

「でも自分1人がカーシェアを使っても焼け石に水では?」と思う方へ。個人レベルでの体感は薄くても、社会全体への波及効果を試算した研究があります。

環境省が公表している「地方公共団体実行計画(区域施策編)策定・実施マニュアル(算定手法編)」(令和4年3月)の算定手法をもとにした試算によると、2030年に新車販売台数の1%がシェアカーになる通常シナリオでも、将来(2050年)のライフサイクルCO2排出量が16〜25%削減されると推計されています。さらに、2030年に新車販売台数の3%がシェアカーになる高普及シナリオでは、その削減幅は48〜75%に拡大するとされます。

削減の主な要因は2点です。1つは乗用車の保有台数が減ることによる年間走行距離の社会的減少、もう1つは車両更新頻度が上がることでCO2排出量の少ない最新車両の普及が早まる効果です。 カーシェア車両は多くの会員によって利用されるため、一般的に個人所有の車両と比べて年間走行距離が長くなります。そのため車両寿命が短くなり更新頻度が高くなりますが、更新頻度が高くなる分、CO2排出量が少なく環境性能の高い最新車両の割合が増えるため、CO2排出量の削減につながります。

メリット2|EVとの組み合わせで「使うたびに電動化」が加速する

「電気自動車(EV)は高くて個人では手が出しにくい」という声をよく聞きます。カーシェアはその入口を下げる役割を担っています。

カーシェアリングの普及により自動車保有者が減り、製造台数の削減に貢献できます。 さらに、日本国内でも主要なカーシェア事業者がEVの導入を進めています。パーク24が運営する「タイムズカー」はEVの順次投入を公表しており、ユーザーがカーシェアを通じてEVを日常的に体験できる機会を増やしています。EVは購入・維持コストの問題から個人保有のハードルが高い一方、シェア車両として多数の人が利用することで、製造時のCO2コストを走行距離で回収しやすくなります。

取材を通じて見えてきた傾向として、「初めてEVに乗ったのはカーシェアで、走行時の静かさと加速感が想像以上だった」という声が複数ありました。購入前の体験機会としても、カーシェアはEV普及の実質的な足場になっています。

メリット3|駐車場が減れば都市の「熱と空気」も変わる

CO2以外の環境メリットは見落とされがちです。「駐車場と環境ってどう関係するの?」と疑問に思う方も多いかもしれません。

都市部では、駐車場のアスファルト面積が広大です。アスファルトは熱を吸収・蓄積しやすく、ヒートアイランド現象を悪化させる要因の一つとされています。カーシェアの普及により保有台数が減れば、駐車スペースの需要も下がり、その土地を緑化や透水性舗装に転用できる可能性が生まれます。欧州の複数都市ではカーシェアとパークレット(小広場化)を組み合わせた都市計画が実施されており、気温低減効果が報告されています。

また、保有車がなければ「せっかく持っているから乗ろう」という心理的誘引がなくなります。「クルマを借りる手続きが面倒なぶん、近距離は自転車や電車で済ませるようになった」という声も聞かれます。これは走行距離の自然な抑制につながり、CO2削減に間接的に効いてきます。

「環境にいい」を過信しないために知っておきたいこと

ここまで環境メリットを述べてきましたが、「じゃあカーシェアさえ使えばOK?」と早合点するのは避けたいと思います。

カーシェアの環境メリットは、「マイカーを手放す、あるいは取得しない」行動と組み合わさって初めて最大化されます。 複数の先行研究において、カーシェアリングサービスの普及は社会における車両台数の削減とそれに伴うCO2排出量の削減および希少資源の使用抑制に貢献するとされています。 ただし、カーシェアを追加の移動手段として使うだけでは、走行距離が増えてCO2も増えるという結果になりかねません。「既存のマイカーを処分してカーシェアに切り替える」という意思決定があってこそ、社会全体の車両台数削減という効果が生まれます。

また、充電インフラが十分でない地域でのEV導入は、化石燃料由来の電力に依存するリスクもあります。カーシェアのEV化が環境効果を発揮するかどうかは、電力供給の再エネ比率にも左右されます。こうした文脈をふまえると、「カーシェア=無条件に環境にいい」という断言は少し保留が必要です。

それでも、都市部でマイカーを持ちながらカーシェアも使う現状から「マイカーなし+カーシェア」へ段階的に移行する流れが広がれば、環境負荷の削減効果は数字として現れてくるはずです。

読者から寄せられやすい疑問に答える|よくある「でも〇〇じゃないの?」

カーシェアと環境について話していると、「でも結局ガソリン車を使うんでしょ?」「地方では使えないんじゃないの?」という声が出てきます。こうした疑問も含めて整理します。

Q. ガソリン車のカーシェアなら環境効果は薄いのでは?

走行中のCO2排出量だけを見れば、ガソリン車のカーシェアと個人所有のガソリン車に大きな差はありません。環境効果が出るのは、前述のとおり「1台の車をシェアすることで社会全体の保有台数が減る」という構造変化によるものです。ガソリン車であっても、製造・廃棄に伴う資源消費と環境負荷は削減できます。また、カーシェア事業者がEV・ハイブリッド車の比率を高めていけば、ガソリン車中心のフリートより段階的に環境性能は改善されます。

Q. 田舎に住んでいるとカーシェアは使えないのでは?

現状、カーシェアのステーション密度は都市部に集中しています。地方では自家用車なしでの生活が難しいエリアが多く、「カーシェアが環境にいい」という話は都市部の文脈に偏っている、という指摘は正当です。地方でのモビリティと環境のあり方は、カーシェアとは別の議論が必要で、ライドシェアや乗り合いバスの最適化といった異なるアプローチが求められます。

Q. 自転車・公共交通のほうがカーシェアより環境にいいのでは?

移動手段としてのCO2排出量は、徒歩・自転車・電車がカーシェアより低いのは事実です。カーシェアが有効なのは「車が必要な場面」に限られます。日常のちょっとした移動に車を使うのではなく、荷物の多い引越しや郊外の病院受診など、車が最適な場面だけカーシェアを選ぶというメリハリある使い方が、最も環境に配慮した選択になります。

今日から試せること|まず1回、マイカーの代わりにカーシェアを使ってみる

カーシェアの環境メリットを実感するための最初の一歩は、「マイカーで行こうと思っていた用事を、1回だけカーシェアに置き換えてみること」です。月1〜2回程度の利用であれば、維持費・駐車場代のかかるマイカーより明らかに経済的で、「なくてもなんとかなった」という気づきが次の行動変容につながることがあります。

タイムズカー・カレコなど複数の事業者が月額基本料不要のプランを提供しているため、使い始めのハードルは以前より下がっています。まずアプリを1つダウンロードして、近隣のステーションを確認するだけでも構いません。それが最小の行動です。

エシカルな消費・移動全般の視点を深めたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。

まとめ|カーシェアの環境メリット、5点で整理する

カーシェアと環境の関係は「なんとなくエコ」ではなく、車両台数削減・EV普及加速・都市環境の改善という複数の経路から説明できます。ただし、マイカーを持ちながら追加で使う形では効果が薄く、「持たない選択」と組み合わさるほど効果が大きくなります。

  • カーシェアの環境効果の核心は「走行中のCO2」ではなく「保有台数削減による製造・廃棄コストの圧縮」にある
  • 日本政府の「地球温暖化対策計画」(2016年閣議決定)にカーシェア普及促進が明記されており、政策的根拠がある
  • EVとの組み合わせ・都市の駐車場削減という間接効果も、中長期的には無視できない
  • 「マイカーをやめてカーシェアに移行する」行動変容があって初めて環境メリットが最大化される
  • まず1回、マイカーの代わりにカーシェアを使ってみることが変化の起点になる

参考文献

  • 環境省「地方公共団体実行計画(区域施策編)策定・実施マニュアル(算定手法編)」令和4年3月(カーシェアリング普及によるCO2削減試算の算定手法として引用)
  • パーク24株式会社「社会全体のCO2削減への貢献」サステナビリティサイト(https://www.park24.co.jp/sustainability/environment/co2-reduction.html)
  • 自然電力株式会社「世界的に広がるカーシェアリング―CO2削減効果と脱炭素化に向けた事業者の取り組み」(2023年4月、https://shizen-hatch.net/2023/04/28/car-sharing/)

この記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。(執筆メンバー: https://mirasus.jp/members/ )

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