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SOCIETY

社会課題に取り組む人へのインタビュー|聞き方・質問設計・活かし方

Photo by Katie Harp on Unsplash

「社会課題に取り組んでいる人に話を聞いてみたいけれど、何をどう聞けばいいのかわからない」。ゼミの課題、探究学習、就職活動、あるいは純粋な関心から、そう感じたことはないでしょうか。インタビューは、SNSや報道では見えにくい「現場のリアル」に近づける数少ない手段です。ただ、漠然と「社会課題について聞かせてください」と切り出しても、会話はなかなか深まりません。この記事では、社会課題に取り組む人へのインタビューを実りあるものにするための考え方と、具体的な質問設計の手順を整理します。

「社会課題のインタビュー」と聞いて戸惑う理由

インタビュー対象として思い浮かぶのは、NPO・NGOのスタッフ、社会起業家、企業のサステナビリティ担当者、地域で活動するコミュニティオーガナイザーなど様々です。共通しているのは、何らかの「解決したい課題」を持って動いているという点。それだけに、「何を聞けば失礼にならないか」「どこまで踏み込んでいいのか」と戸惑う方も多いはずです。

よくある誤解として、「社会課題に取り組む人は自分の活動を誇らしく思っているから、褒めれば話してくれる」というものがあります。実際には、現場で活動する人の多くは、「自分たちの課題をちゃんと理解して関わってくれる人を探している」状態であることが多いです。準備なしに「すごいですね」「感動しました」だけでは、深い話は引き出せません。

もう一つの誤解は、「難しい専門用語を覚えてから行かないといけない」というプレッシャーです。もちろん基本的な下調べは必要ですが、専門知識より大切なのは「なぜその課題に関心を持ったか」という自分自身の動機と、「相手の言葉を丁寧に受け取る姿勢」です。

インタビュー前の準備|「何を知りたいか」を先に決める

インタビューが散漫になる最大の原因は、「何を知りたいかが決まっていない」ことです。準備の段階で、次の3点を自分の言葉で書き出しておくことをおすすめします。

インタビューの目的を1行で言える状態にする

「なぜこのインタビューをするのか」を1文で表現できれば、質問設計がぐっと楽になります。「貧困問題に取り組むNPOが、なぜ食支援ではなく就労支援を選んでいるのかを理解したい」というように、対象×課題×知りたいことをセットで言語化してみましょう。

目的が曖昧なまま臨むと、「いろいろ聞いたけど何が残ったかわからない」という状態になりがちです。目的が決まれば、インタビュー後に「知りたかったことが得られたか」という自己評価もできます。

相手の活動・背景を事前に調べておく

対象者の団体のウェブサイト、過去のインタビュー記事、SNSの発信などをひと通り確認しておきます。ここで注意したいのは、「調べたことを答え合わせするためにインタビューしない」という点です。事前調査は「わからないことを見つけるため」にあります。「ウェブサイトには〇〇と書いてありましたが、実際の現場ではどうですか」という形で、既知情報を橋渡しに使うのが効果的です。

自分がその課題に感じた「引っかかり」を持ち込む

ライターや研究者でなくても、「自分はなぜこの課題に関心を持ったのか」という動機は、相手との会話を引き出す力を持っています。フェアトレードの商品を手に取ったとき、ニュースで貧困の数字を見たとき、誰かから話を聞いたとき——そういった個人的な「引っかかり」を冒頭に正直に話すと、相手も自分の原体験を開きやすくなります。

質問設計の基本|「5つの層」で聞く

社会課題に関するインタビューで使いやすい質問の構造として、「5つの層」を意識する方法があります。必ずしも順番通りに進める必要はありませんが、この5層を頭に入れておくと、話が詰まったときの立て直しにも役立ちます。

第1層|きっかけ・原体験

「なぜこの課題に取り組み始めたのですか」という問いは、多くの場合、相手が最も語りやすい入口です。動機の話は感情と結びついていることが多く、会話のトーンを柔らかくしてくれます。ただし、すでにウェブで何度も語られている「定型エピソード」になっている場合もあるので、「それ以外に、個人的に印象に残っている出来事はありましたか」と深掘りする準備もしておきましょう。

第2層|課題の定義と現状認識

「この課題の、どの部分が一番解決しにくいと感じていますか」「世の中のイメージと現場のギャップはありますか」という問いです。社会課題は、メディアが伝える「問題の表面」と、現場にいる人が感じる「構造的な根っこ」が大きく違うことがあります。この層の質問は、読者や自分自身にとっての「新しい視点」を得られる可能性が高い部分です。

第3層|活動の具体的な内容

「週にどんなことをしていますか」「一番手間がかかる作業は何ですか」のように、日常業務レベルの具体性で聞きます。抽象論だけでは記事も自分の理解も深まりません。「活動しています」という言葉の中身を、できるだけ動作レベルで教えてもらうことが大切です。

第4層|壁・失敗・葛藤

「活動を続ける中で、難しいと感じることは何ですか」「うまくいかなかった経験はありますか」という問いです。多くの人は「課題解決の美しいストーリー」を期待してインタビューに来ますが、現場では試行錯誤や後退が日常的に起きています。失敗や葛藤の話は、信頼関係ができてから自然に出てくることも多いので、焦らず後半に聞く方が無難です。相手が自発的に触れたときは、必ずフォローアップしましょう。

第5層|読者・聴衆へのメッセージ

「この課題に関心はあるけれど、何もできていない人へ一言あるとしたら?」という問いは、記事やレポートの締めくくりに使いやすく、相手自身も自分の考えを整理できる問いです。ただし、相手が「押しつけがましいメッセージ」を嫌っている場合もあるので、無理に引き出そうとする必要はありません。

インタビュー中の聞き方|よくある行き詰まりと対処法

事前に質問を用意していても、会話の流れでうまくいかない場面は必ず出てきます。よく経験する「行き詰まり」のパターンとその対処を整理しておきます。

答えが短くて深まらないと感じたら、「もう少し具体的に教えてもらえますか」「たとえば、最近のケースで言うと?」と具体例を求めましょう。抽象的な答えが続くときは、こちらが具体のレベルに引っ張っていくのが効果的です。

話が広がりすぎてまとまらない場合は、「今おっしゃった〇〇という点は、特に大切なポイントだと理解してよいですか」と確認しながら整理します。メモを取りながら要約を挟むことで、相手も話の骨格を意識しやすくなります。

センシティブな話題(差別・貧困・当事者の個人情報など)が出てきたときは、「この部分は公開前に確認させてもらえますか」と確認のタイミングを設けることを事前に合意しておくのがベストです。インタビューの冒頭で「記事にする場合は内容を事前に共有します」と伝えておくと、相手も話しやすくなります。

公開情報の傾向から見えてくるパターン|聞き手の「型」はひとつではない

社会課題に関するインタビューを行った人たちの経験談や発信を眺めていると、聞き手のスタンスはいくつかのパターンに分かれる傾向があります。

一つ目は「記録型」です。現場のリアルを残すことを目的に、なるべく相手の言葉をそのまま記録しようとするスタイルです。ジャーナリスティックな関心から始まった人や、研究や卒業論文のためにインタビューを行う学生に多く見られます。

二つ目は「対話型」です。相手との共同思考を重視し、「私はこう思うのですが、どう感じますか」と自分の見解を開示しながら進めるスタイルです。当事者との距離感を縮めたい場合や、探究学習でインタビューを活用する高校生・大学生に向いています。

三つ目は「行動起点型」です。「この話を聞いて、自分は何をするか」という問いをあらかじめ持って臨むスタイルです。就活やキャリア探索の文脈でインタビューを行う人に多く、「自分ごと化」の速度が速い反面、相手の複雑さを単純化しすぎないよう注意が必要です。

どのスタイルが正解ということはありません。ただ、「自分がどのスタンスで聞いているか」を意識しておくと、インタビュー後の振り返りや記事化の方向性が決めやすくなります。

格差や貧困など社会構造の背景を理解しておくと、インタビューで聞くべき問いの精度が上がります。

「社会課題インタビュー」を聞くだけで終わらせない

インタビューを終えたあと、「感動した」「視野が広がった」という感想だけで終わってしまうことはないでしょうか。それ自体は悪いことではありませんが、せっかく話を聞いた経験をもう一歩先につなげることができます。

一つの方法は、インタビューで得た内容を「自分ごと化する問い」に変換することです。「この課題は、私の日常のどの部分と重なっているか」「私にできる最小の関わり方は何か」を、インタビュー後24時間以内に書き出してみる——この小さな習慣が、「知ること」と「行動すること」のギャップを縮めます。

もう一つは、インタビューした内容を記事・レポート・SNS投稿などの形で外に出すことです。情報を整理して人に伝える作業は、自分の理解を深めると同時に、「この課題を知らなかった人」との接点を作ります。完璧な記事でなくても、自分が聞いたことの要約をSNSにシェアするだけでも意味があります。

今日から試せる1アクション

もしあなたが「気になっている社会課題がある」なら、まずはその課題に関わる団体の公式サイトやSNSを10分だけ読んでみてください。「面白いな」「ここはどういう意味だろう」と感じた部分をメモしておくことが、インタビューの質問設計の第一歩になります。問い合わせフォームや説明会の案内がある場合は、「話を聞かせてください」と一言送ってみることも選択肢の一つです。

まとめ|社会課題インタビューを実りあるものにする5つのポイント

社会課題に取り組む人へのインタビューは、準備と問いの設計で大きく変わります。ポイントを振り返っておきます。

  • 「何を知りたいか」を1文で言えるようにしてからインタビューに臨む
  • 事前調査は「答え合わせ」ではなく「わからないことを見つける」ために使う
  • きっかけ・現状認識・活動内容・壁・メッセージの5層で質問を設計する
  • センシティブな話題には事前に「内容確認の合意」を取っておく
  • インタビュー後は「自分ごと化する問い」に変換し、得た情報を外に出してみる

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