公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
LIFESTYLE

エシカル旅行とは?持続可能な観光を実践する7つの考え方

Photo by Mon Jester on Unsplash

「旅行って、楽しむだけでいいんじゃないの?」と感じる方も多いと思います。でも、訪れた先の自然が壊れていたり、地域の人たちが観光客のために住みにくくなっていたりしたら、その旅行はどこか後味が悪くなりませんか。エシカル旅行(倫理的な旅行)とは、そうした「旅の後味」に向き合うところから始まります。環境・地域文化・現地の人の生活に配慮しながら旅をする——それが持続可能な観光(サステナブルツーリズム)の考え方です。「難しそう」「制約が多そう」と思われがちですが、日常の消費行動と同じように、少し意識を変えるだけで実践できることが多くあります。この記事では、エシカル旅行の基本的な考え方から、今日から試せる具体的な行動まで整理しています。

エシカル旅行とは何か|サステナブルツーリズムとの関係

「エシカル旅行」と「サステナブルツーリズム(持続可能な観光)」は、混同されがちですが整理すると理解しやすくなります。

国連世界観光機関(UNWTO)は、持続可能な観光を「訪問者、産業、環境、受け入れ地域の現在のニーズを満たしながら、将来の世代のニーズも守る観光」と定義しています。これは主に観光業や政策サイドからの枠組みです。一方、「エシカル旅行」は旅行者個人の視点からの言葉で、旅先の環境・文化・人々の権利に敬意を払いながら旅をするという行動指針を指します。どちらも目指す方向は同じで、観光がもたらす負の影響を減らし、現地のコミュニティや自然が恩恵を受けられるようにする、という点で重なっています。

観光はSDGsのゴール12(つくる責任・つかう責任)・ゴール14(海の豊かさを守ろう)・ゴール17(パートナーシップで目標を達成しよう)などと深く結びついており、UNWTOは観光をSDGs推進の主要な産業の一つと位置づけています。旅行という消費行動が、地球規模の課題とつながっていることを知ると、旅の準備の段階から少し違った問いが生まれてきます。

「観光公害」の現実|旅行が環境に与える影響とは

「自分一人が旅行してもたいした影響はないのでは?」という疑問はもっともです。ただ、観光産業は世界全体のCO₂排出量の約8%を占めるという試算が学術誌に報告されており(Lenzen et al., 2018, Nature Climate Change)、その多くが航空機による移動に起因するとされます。個人の排出量は小さくても、行動変容が積み重なると産業全体のサービス設計が変わります。

国内で問題になっているのがオーバーツーリズムです。人気の観光地への訪問者が集中することで、ゴミの増加・渋滞・地価・物価の上昇が起き、住民の生活が圧迫される——観光庁や各地方自治体が「持続可能な観光地づくり」を政策テーマに掲げるようになった背景には、こうした具体的な課題があります。京都の一部地区や富士山の登山道で進んでいる入場料の導入・混雑規制は、その典型例として報じられています。

「観光客が来てくれるから地域が潤う」という構図は、一定の規模を超えると逆転します。訪れる側の一人として、その地域の「許容量」を意識することが、エシカル旅行の最初の問いになります。

よくある誤解を解く|エシカル旅行は「我慢の旅」ではない

エシカル旅行と聞くと、「飛行機に乗れない」「ホテルに泊まれない」「食べたいものを食べてはいけない」といった制約のイメージを持つ方が少なくありません。これは大きな誤解で、実際はそうではありません。

エシカルな選択は、「何もしない」か「完璧にする」かのどちらかではありません。たとえば、航空移動を全廃することが難しい場合でも、カーボンオフセットのプログラムに参加する、宿泊先を環境認証を取得した宿に変える、現地の市場や食堂でお金を使う——こうした一つひとつの積み重ねがエシカル旅行の実践です。すべてを変える必要はなく、「今回の旅で1つだけ変えてみる」という姿勢が出発点になります。

むしろ、地域のガイドと一緒に歩いたり、観光客向けではない食堂でローカルフードを食べたりすることは、旅の質そのものを上げることにもつながります。エシカル旅行は制約ではなく、旅の深度を変える視点と考えると近づきやすくなります。

実践編|エシカル旅行を構成する7つの考え方

では、実際にどう行動すればよいのか。旅の準備から帰宅後まで、段階に沿って整理します。

1|行き先の「混雑度」を調べてから計画する

人気スポットのオーバーツーリズムに加担しないために、訪問時期や場所を分散させることを検討してください。「みんなが行く時期」を避けてオフシーズンに訪れる、知名度の高い観光地の周辺にある小さな集落を宿泊拠点にする——こうした選択が、地域全体に観光収益を届けることにもつながります。観光庁は「分散型観光」の推進を政策的に打ち出しており、一部の地域ではオフシーズン向けの割引や体験プログラムも整備されてきています。

2|宿泊先を選ぶときに「誰が運営しているか」を見る

大手チェーンホテルと地域の小規模宿では、支払ったお金の流れ方が変わります。地元のオーナーが運営する宿泊施設や農家民宿・ゲストハウスを選ぶと、宿泊料金の多くが地域経済にとどまる可能性が高くなります。また、環境認証(たとえばグリーンキー認証、エコラベル等)を取得している施設は、省エネや廃棄物削減、地産地消の食材使用などに取り組んでいることを第三者が確認しています。予約サイトの絞り込み機能で「持続可能性」「エコ認証」を条件に加えてみるのも一つの手です。

3|移動手段のCO₂を意識し、できる範囲で代替を選ぶ

旅行中の温室効果ガス排出量は、移動手段の選択に大きく左右されます。同じ距離でも、航空機と新幹線ではCO₂排出量に大きな差があります。国内旅行では鉄道・バスの活用が有効な選択肢です。長距離の海外旅行でどうしても飛行機を使う場合には、エコノミークラスを選ぶ(座席数あたりの排出量が少ない)、直行便を使う(離着陸時の燃料消費を減らす)、主要航空会社が提供するカーボンオフセットプログラムに参加する、といった方法が知られています。完璧な「ゼロエミッション」の旅は難しいですが、少しずつ減らす選択を積み重ねることが大切です。

4|現地でお金を使う場所を選ぶ

観光地でのショッピングでも「誰が恩恵を受けるか」を考えると、選択が変わります。フェアトレード認証を取得した工芸品・食品、地元の農家が出店するファーマーズマーケット、現地の職人が作る手工芸品——こうした消費は、生産者への適正な対価の還元につながります。「安くて大量」の土産物の多くは、その地域で生産されていないことも少なくありません。少し高くても、作り手が見える商品を1つ選ぶことで、旅先の経済に直接働きかけることができます。

5|野生動物・自然環境との接し方を見直す

観光地での動物との触れ合いや記念撮影には、動物福祉の観点から問題が指摘されているケースがあります。野生動物を利用した観光コンテンツの中には、動物に過度の負担をかけているものや、違法取引につながっているものもあると国際自然保護連合(IUCN)や動物福祉団体が報告しています。旅行前に「そのアクティビティが動物や生態系に与える影響」を調べることが、エシカルな旅行者としての一歩になります。ウォッチング(観察)形式の体験は、触れ合い型と比べて動物への負担が少ないとされています。

6|現地の文化・習慣を事前に学ぶ

「知らなかったから仕方ない」では済まないこともあります。宗教的な場所でのドレスコード、写真撮影の禁止エリア、地域固有の禁忌(タブー)——これらを事前に調べることは、現地の人々への敬意の表れです。また、「観光客向けに作られた文化体験」と「本来の地域の文化・祭礼」を区別する視点も大切です。地域のガイドやコーディネーターを通じた体験は、文化の文脈を正しく理解するうえで助けになります。

7|旅先から帰っても「その地域」とつながり続ける

旅行はそこで終わりではありません。旅先で出会った地域の産品をオンラインで定期購入する、地域の課題を発信するNPOを寄付で支援する、訪れた観光地の保全活動に旅行後もSNSで関心を持ち続ける——こうした「帰宅後のつながり」こそが、エシカル旅行の本質とも言えます。一過性の訪問が関係人口に育つとき、地域にとっての観光の価値はより持続的なものになります。

「持続可能な観光」を支える認証制度を知っておく

宿泊施設や旅行会社を選ぶ際、第三者認証が判断の手助けになります。主要なものを確認しておきましょう。

国際的なものとしては、グリーンキー(Green Key)認証があります。これはデンマーク発の環境認証で、世界60か国以上のホテル・宿泊施設・キャンプ場が取得しており、エネルギー・水・廃棄物・従業員教育など複数の基準を満たした施設に与えられます。日本国内でも取得施設が増えています。

また、日本では環境省が推進する「エコツーリズム推進法」(2007年制定)に基づき、各地の自然公園や地域がエコツアーの認定・認証を行っています。屋久島・知床・小笠原などの世界自然遺産地域では、入域の許可制やガイド同行義務など具体的なルールが設けられており、これらのルールに従うこと自体がエシカルな旅行者としての行動になります。

旅行会社を選ぶ際は、「責任ある旅行(Responsible Travel)」を掲げる会社かどうかを確認するのも一つの方法です。一部のツアー会社は、売上の一部を現地の環境保全・コミュニティ支援に充てる仕組みを持っています。

「旅行者の声」から見えてくる3つのパターン

エシカル旅行に関心を持つ人たちの実際の行動を整理すると、よく見られる3つのパターンに分けることができます。

パターン1|まず宿泊先から変える

最も取り組みやすいのが宿泊先の選び直しです。「次の旅行から、地元オーナーが運営する宿に1回泊まってみる」という形で始める人が多く見られます。予約サイトの「地元の宿」「ファームステイ」「エコロッジ」などのカテゴリを使うと探しやすくなります。

パターン2|現地でのお金の使い方に意識を向ける

「土産物の半分を地元市場で買う」「チェーン店より地元の食堂を優先する」といった消費の変化を実践する人も多くいます。旅先で「誰のために払うか」を少し考えるだけで、消費先が変わってきます。

パターン3|移動手段を一部切り替える

国内旅行では、飛行機から新幹線・特急に切り替えるという選択がよく挙がります。移動時間は増えますが、「車窓から景色を楽しむことが旅の一部になった」という感想も聞かれます。CO₂削減と旅の質向上が一緒に起きる例として参考になります。

今日から試せる1アクション

これだけ読むと「何から手をつければいいかわからない」という気持ちになるかもしれません。そこで、まず1つだけ試してほしいことがあります。

次に旅行を計画するとき、宿泊先の予約前に「その施設が取得している環境認証や、地元への貢献をウェブサイトで確認する」という習慣を1回だけ試してみてください。検索するだけで構いません。「何もわからなかった」という結果でも、「この宿はグリーンキーを持っている」と気づく結果でも、それが次の旅行の見方を少しだけ変えてくれるはずです。

エシカル消費と持続可能な観光の関係についてもっと知りたい方は、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。

まとめ|エシカル旅行は「旅の問いを増やす」こと

エシカル旅行は、旅行の楽しさを否定するものではありません。「この宿は誰が運営しているのか」「この土産物は誰が作ったのか」「私の移動は環境にどう影響しているのか」という問いを旅のなかに加えることで、旅の質が変わっていきます。完璧にやる必要はなく、1つずつ変えていく姿勢が持続可能な観光への参加です。

  • 持続可能な観光(サステナブルツーリズム)とは、現在と将来の世代どちらにとっても観光地が保たれることを目指す考え方で、UNWTOが定義している
  • エシカル旅行は「我慢の旅」ではなく、宿泊先・消費先・移動手段の選択を少し変えることで始められる
  • グリーンキー認証・エコツーリズム認定など第三者認証を活用すると、宿泊施設や旅行会社の選択の判断材料になる
  • 旅先でのお金の使い方(地元市場・地域の宿・認証商品)が、現地コミュニティへの直接的な貢献につながる
  • まず1つだけ——次の旅行で宿泊先の環境認証を1回調べてみることが、エシカル旅行への最初の一歩

RELATED

PAGE TOP