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EBRDが「グリーン経済移行戦略2026-30」を採択|2030年までにグリーンファイナンス28兆円超を目指す

EBRDが「グリーン経済移行戦略2026-30」を採択|2030年までにグリーンファイナンス28兆円超を目指す

欧州復興開発銀行(EBRD)は直近の取締役会において「グリーン経済移行戦略2026-30(GET 2030)」を正式に採択しました。2030年までにグリーンファイナンスの累計額を少なくとも1,500億ユーロ(約28兆円)に引き上げるという、過去最大規模の気候資金目標が打ち出されました。先進国の政府援助が縮小傾向にある中、多国間開発銀行(MDB)への期待が高まる今、この戦略が持つ意味を読み解きます。

EBRDとは|欧州と中央アジアをつなぐ「グリーン金融」の要

EBRDは1991年に設立された国際開発金融機関で、中央・東欧、中央アジア、西バルカン、中東・北アフリカなど幅広い地域の市場経済化と持続可能な発展を支援しています。主に民間セクター向けの融資・投資を通じて、環境・経済の変革を後押しするのがその役割です。

EBRDは2006年以降、グリーンプロジェクトに対して750億ユーロを超える投資をすでに実行しています。
そして2025年も過去同様、年間事業量の半数以上をグリーン分野に投じており、各地域の旺盛な投資需要を反映しています。

今回の「GET 2030」戦略は、こうした実績を踏まえた上で次の5年間の方向性を定めるものであり、これまでで最も野心的なグリーンへのコミットメントとされています。

戦略の核心|28兆円超の資金目標と6つの重点システム

EBRDの取締役会は、2026年から2030年を対象とする「グリーン経済移行戦略」を承認しました。この戦略は、2026〜2030年の戦略・資本フレームワーク(SCF)の一部として位置づけられています。

戦略の柱となるのが、野心的な資金目標です。
EBRDは2030年までに、自己資金と民間セクターからの動員資金を合わせて、グリーンファイナンスの累計額を少なくとも1,500億ユーロに引き上げることを約束しています。
日本円にして約28兆円超に相当するこの規模は、気候変動対策に向けた開発銀行の取り組みとして、過去に例を見ない水準です。

資金投入の対象となる重点分野についても明確です。
エネルギー、工業・産業、農業・食料、輸送、都市・インフラ、金融という6つの重要システムへのインパクト最大化を目指しています。

また数値目標はさらに多岐にわたります。
年間事業量の少なくとも50%を、エネルギー・産業・農食・輸送・都市・金融システムにまたがるグリーン投資に充てることが定められています。
さらに、気候レジリエンス(気候変動への適応力強化)の要素を盛り込むプロジェクト数を50%増やし、ネイチャーポジティブ(自然に恩恵をもたらす)な成果をもたらす投資も拡大する計画です。

金融セクターへの影響も無視できません。
EBRDが融資する銀行による移行計画の採用を促進するため、2030年までにその対象を拡大するという目標も掲げているとされています。

気候変動の最前線に立つ地域への対応

GET 2030が対象とする地域は、気候変動の影響が特に深刻な場所でもあります。
この戦略は、EBRDが活動する全地域におけるグリーンファイナンスの水準を引き上げるとともに、気候緩和・適応・自然保護に強く重点を置いています。
EBRDが活動する地域におけるグリーン関連の資金需要は、2030年に向けて年間5,600億ユーロを超える水準まで拡大すると見込まれており、民間資金の動員が欠かせない課題となっています。

EBRDのオディール・ルノー=バッソ総裁は、今回の戦略について、「エネルギー、産業、農食、輸送、都市、金融という6つの経済システムにおける市場障壁を取り除き、グリーンへの移行を加速することで、クライアントの求める気候変動対策・競争力強化・エネルギー安全保障の向上に応えていく」と述べています(EBRD公式発表)。

民間資金の動員がカギ|公的支援の縮小という背景

今回の目標達成を難しくする要因のひとつが、国際的な公的援助の縮小です。
主要ドナー国の多くで援助縮小の動きが見られ、途上国での気候変動対策プロジェクトへの影響が懸念されています。こうした中、各国政府や支援団体の関心は、EBRDをはじめとするMDBや民間セクターに向かっています。
EBRDが1,500億ユーロのグリーンファイナンス動員にコミットすることは、国際的な資本市場から取り残されがちな地域において、再生可能エネルギー・低炭素産業・持続可能な農業・気候耐性インフラへの大規模な民間資金の解放につながる可能性があります。
この戦略は、多国間開発機関がプロジェクト単位の支援から、システム全体の変革を目指す方向へとシフトしていることをも示しています。新興国が将来の世界のエネルギー需要と排出増加の多くを担うと予想される中、EBRDの拡大された気候変動への取り組みは、国際的な気候目標と現実の経済投資をつなぐ架け橋としての役割をより強固なものにしています。

戦略を支える2つの柱|デジタルと民間セクターの動員

「グリーン経済移行戦略」はEBRDの5カ年開発フレームワーク全体に位置づけられており、気候変動対策は経済ガバナンスの強化、人的資本の充実と機会の平等という2つの優先課題と並ぶ柱となっています。
これらの優先課題を横断的に支えるのが、デジタル技術と民間セクターの動員という2つの実現手段です。
つまり、グリーン移行は環境目標だけを単独で追うのではなく、経済競争力の強化や市場改革とセットで推進するという設計思想が根底にあります。

EBRDは、競争力があり、レジリエントで、市場志向かつ民間主導の経済の発展を可能にしながら、エネルギー安全保障を確保しつつグリーン移行を実現するための構造と仕組みを整えています。

私たちへの示唆|グリーンファイナンスの「量と質」を問う時代

EBRDの今回の戦略は、開発銀行だけの話にとどまりません。28兆円規模の資金が、中央アジアから東欧・西バルカン・中東に至る広大な地域の脱炭素プロジェクトに向けて動こうとしています。その資金の流れが、再生可能エネルギーや農業の転換、インフラの気候耐性強化といった形で地域の人々の生活を変えていきます。

日本国内でも、グリーンファイナンスの市場は拡大の途上にあります。
環境省によれば、2024年までに国内グリーンファイナンスの市場規模は約5兆円に達した一方で、国際的にはグリーンファイナンスを取り巻く情勢に変化が見られ、市場に一巡感があるとの指摘もあります。
そうした中だからこそ、EBRDのような国際的なグリーンファイナンスの動向を理解し、日本企業や投資家が国際連携を深める意義は大きいといえます。

「お金の流れを変える」という発想は、気候変動対策の加速において今や欠かせない視点です。EBRDのGET 2030は、その具体的な一歩を示す重要な戦略として注目されています。

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