コクヨ株式会社
2024年度インクルーシブデザイン商品比率約20%以上を目標に
コクヨ株式会社(本社:大阪市/社長:黒田英邦)は、2023年1月より大阪本社1階にて試験稼働しておりました、ダイバーシティオフィス「HOWS PARK(ハウズ パーク)」を、2023年6月1日より本格始動します。
【背景と狙い】
コクヨでは、2024年にインクルーシブデザインが考慮された新商品構成率20%以上(シリーズベース)を目標としています。
「HOWS PARK」は、グループ全体の目標に沿ったものであり、これからの社会に求められるオフィスづくりに先駆けたチャレンジです。
【目的と推進】
「HOWS PARK」は、同社の特例子会社・コクヨKハート株式会社(本社:大阪市/社長:西林聡)の一部部門の本社内移転に伴い、将来的に両社の強みを生かして業務推進を進め、新たな価値創造を実現する場所を目指したものです。
2021年11月よりプロジェクト体制を組み、コクヨとコクヨKハートの社員が連携して計画を推進。コクヨKハートの既存オフィス見学、社員ヒアリングなどを通じて課題を抽出し、ワークショップを開催してゾーニングから家具、施設、サインデザインに至るまで設計案を検討。具体的なオフィス設計においては、ユニバーサルデザイン提案の専門家である株式会社ミライロとパートナーシップを組み、技術監修などをお願いしました。またコクヨ社内においても、ダイバーシティの理解・共感を醸成するためのエンゲージメント活動を展開。2023年1月より試験運用を行い、試行錯誤による改善を繰り返し、この度の本格稼働となりました。
【コンセプト】
「HOWS PARK」のコンセプトは「らしさが集い、未来がひらく。みんながつながる創造広場」。様々な個性”らしさ”を持った個人が集えるリアルなコミュニケーションの場ができ、対話の機会が増えることで、お互いを知ることができ、やさしさや思いやりが生まれる。そんな関係性でつながれる場所があれば、バリアを減らす未来へのアイディアが創造されていく、と考えました。
様々な図形が交錯し、ひとつのかたちを形成する「HOWS PARK」のロゴは、多様な個性や生き方を互いに認め合い、影響を与え合いながら調和して、ひらかれた未来へとつながっていくイメージを表現しています。
【コクヨのダイバーシティオフィスの未来】
コクヨは、「HOWS PARK」を通じて、障碍のある人もない人も、お互いを尊重し共感を生み、多様な個性を持つ社員が刺激し合い、成長することを実践し、インクルーシブなモノ・コトの創造プロセスを創出します。
さらにこれを知見として、コクヨのインクルーシブデザイン、ダイバーシティオフィス設計技術を広く提案・提供し、社会課題の解決に貢献していきます。
【「HOWS PARK」プロジェクトメンバーのコメント】
■井田 幸男(コクヨ株式会社 CSV本部 サステナビリティ推進室 理事)
コクヨは「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする」というパーパスのもと、マテリアリティの位置づけを「SDGsの実現のため」から「実現したい自律協働社会という社会像にむけて」と再設定しました。一番目のマテリアリティを、社会のバリアをなくし活き活きと働き学ぶ人を増やしていることに貢献していくため「社内外のWell-beingの向上」とし、商品開発のプロセスにインクルーシブデザインを取り入れ、事業の成長と障碍者との対話を通じた商品開発を目指していく事を意思決定しました。この事業運営をダイバーシティ&インクルージョン&イノベーションと名付け、社内のインクルージョンと商品開発による価値創出の同時実現を目指します。
■西林 聡(コクヨKハート株式会社 代表取締役社長)
コクヨKハートでは、大切な思いとして「つながり・共感」を掲げています。コミュニケーションをとることでつながりが生まれ、相互理解が深まることで共感し合い、それが「個々人の働きやすさ」「組織の活性化」「新たな価値創造」につながるのではと考えています。これらを具現化する場所としての「HOWS PARK」を大いに活用し、インクルーシブデザインへの参画や、社内外の多くの人との交流・協業を通じて事業領域を拡張し、障碍のある人の活躍の場を増やしていきたいです。
【「HOWS PARK」の特長】
上下移動のないよう、1フロア内に執務室、会議室、作業スペース、トイレ、パントリー、カームダウンスペース等を配置。さらに、コクヨKハートとコクヨ社員が共同作業やコミュニケーションをとれる共創エリアを設けました。
1.目にやさしいオフィス
視覚障碍者の特性として、真っ白な色は眩しさを感じることから、クリームホワイトなど優しい色合いを採用。さらにブラウンカラーと木目を入れ、目に優しく明るい印象の執務空間をデザインしました。照明器具もグレアを感じないような器具を採用しています。
2.ユニバーサルデザインの実践 トイレ/サイン/スロープ/ロッカー
多目的トイレを増設。電動車いすにも対応できる広さ、引き戸の自動扉やオストメイト、ユニバーサルシートの設置などを行いました。サインボードも新たなデザインを起こし、機能的で使用者の気持ちに配慮したものを設置しました。またスロープは、1/12勾配の十分な広さと長さ、視認性を考慮しあえて異なる床色を採用。さらに社員一人一人にロッカーを準備。ロッカーの配置と高さは、車いす使用者の方でも出し入れしやすいよう、低い位置に、上下2段の立方形状を設計しました。
3.電動車いす対応床材/車いす対応デスク
電動車いすは重量があり、タイルカーペットでは毛を巻き込んでしまうこともあるため、塩化ビニールタイルを床材に採用。また、デスクは車いすの肘部分が当たらないよう、上下昇降タイプを採用。車いす、下肢障碍者が座りやすいスペースを確保するためにデスク下のワゴンをなくし、個人ロッカーを設置することで収納スペースを確保しました。
4.視線
精神障碍者にとっては他人の視線や動きが気になる、また視覚に鋭敏な聴覚障碍者にとっては視野の範囲内に動くものを感じると集中できない、というヒアリング意見から、安心して業務に集中できる空間づくりに配慮。間仕切りを高くしたデスク、四方を囲まれた空間などを各所に用意しています。
個人が集中しやすい空間を選んで仕事ができるようにしました。
5.パトランプ
災害など万が一の警報システムも、聴覚障碍者にとって視覚的に確認できる必要があると考え、各部屋の見やすい位置、間仕切りの高いデスクからも見やすく目立つ高い位置に、「パトランプ」を設置。信号色のランプで危険の度合いを知らせるよう工夫しました。
パトランプはトイレの個室空間にも設置し、緊急時の社員の安全確保の徹底を心掛けています。
6.カームダウンエリア
精神障碍者や発達障碍者だけでなく誰でも、心を落ち着かせてパニックを防ぐ、リラックス・リフレッシュするための「カームダウンエリア」を新設。
カームダウンエリアは、多様なしつらえの4つの個室をデザインし、壁面は音と衝撃を吸収する素材を設け、車いすの方でも入りやすく、視線や音をしっかり遮断する仕組みを採用。また、各室は、①リクライニング可能、②車いすの方でも自力で移れる、③包み込まれるような空間設計、の3つをインクルーシブデザインに。照明は3500Kと暗めながらも温かみのあるダウンライトを採用しました。
カームダウンスペースは、コクヨKハート社員へのヒアリングとミライロからのアドバイスに基づき設計し、ワークショップなどを通じて実験・検証・改良を重ね実装。インクルーシブ視点からの、今後のオフィス設計の在り方を探っていく重要な空間でもあります。
7.イス・カウンターテーブルの特長
各共用エリアに設置するイスは、キャスター付きだと下肢障碍者にとって座りにくいことに配慮。また車いすの方がスライドして座れるよう、ひじ掛けのないタイプを採用。
テーブルは、健常者も障碍者も集まりやすく会話しやすい形状を探り、車いす使用者の意見を取り入れ角型ではなく円形にしました。同様に様々な人が選びやすく座りやすくするため、高さが異なる円形テーブルを複数組み合わせてひとつのカウンタースペースをつくる設計になりました。イスも様々な高さ、仕様のものを設置。多様性が見た目でわかるだけでなく、使用者にとっても快適なコミュニケーションスペースを提案します。
8.高さ検証(スイッチ&コンセント/ホワイトボード/パントリー)
現在のユニバーサル基準ではコンセントは400mm、スイッチは1000mmの高さとなっていますが、コクヨの独自検証の結果、下肢障碍者、車いす使用者双方にとって使用しやすい位置として、コンセントは500mm、スイッチは1100mmの高さを採用。
ホワイトボードも同様にコクヨKハート社員に検証いただき、床下から高さ800mm、ボード高900mm、上端1700mmがベストと判断。パントリーも高さ800mmと低めにし、下部に収納があると車いすの脚が入らず姿勢を横にしなければならないことから下部空間を空ける設計にしました。
【コクヨの障碍者雇用の歴史】
コクヨの障碍者雇用の歴史は1940年にさかのぼります。現在の本社エリアにあった今里工場に、大阪市立聾唖学校(現在の大阪府立中央聴覚支援学校)の生徒を採用したのが最初です。2003年9月に特例子会社として「コクヨKハート」が設立され、さらに2006年12月、知的・精神障碍者の雇用を目的とした「ハートランド」が設立されました。
コクヨグループにおける障碍者雇用率は、2022年6月1日で2.41%となっています。現在、ダイバーシティ&インクルージョン推進の一環として、互いの「違い」を超えて共に持続的成長を目指すための全社プロジェクトを立ち上げ、コクヨグループの業務フローにコクヨKハートの社員が参画することを、全グループを挙げて推進しています。
「HOWS PARK」の開設は、DTP部門、BPO部門を本社内に置くことで、コクヨKハート社員の働きやすい環境づくりはもちろん、本社社員、社外クリエイターとのより緊密な連携による、新たなクリエイティビティを目指します。
(https://www.kokuyo-k-heart.com/company/history.html)
コクヨグループでは障がいを持つことは「害」ではないとの考えから、「障がい者」を表現するときに「障碍者」という漢字を使用しています。「碍」という字の意味は大きな岩を前に、人が思案し悩んでいる様子を示したものだそうです。意思が通らない、妨げられているという意味の「障」と「碍」を重ねた「障碍」は、人が困難に直面しながらも立ち向かっていることを示す「challenged」を邦訳した言葉とも言えます。
■ 株式会社ミライロについて
社名 :株式会社ミライロ(https://www.mirairo.co.jp/)
設立 :2010年6月2日(創業:2009年5月28日)
代表 :垣内 俊哉(代表取締役社長)
本社 :大阪府大阪市淀川区西中島3-8-15 EPO SHINOSAKA BUILDING 8F
事業内容:
1. ユニバーサルデザイン及びユニバーサルマナーに関するリサーチ及びコンサルティング
2. ユニバーサルデザイン及びユニバーサルマナーに関する教育研修の企画、開催及び運営
3. 建築物、室内空間及び製品のユニバーサルデザイン化に伴う企画、設計、開発及び施工
4. 建築物及び地域のバリアフリーに関する各種情報の収集、提供及び販売
5. バリアフリーマップ、案内板及び各種印刷物の企画、制作及び販売
6. アプリケーション及びデータベースの企画、設計、開発、提供及び販売
7. 障害者及び高齢者を対象とする情報保障及び遠隔サポート
リリース元:https://www.kokuyo.co.jp/newsroom/news/category_other/20230601cs1.html