「持続可能な消費と生産」と聞くと、国や企業が取り組む大きな話で、自分の買い物とは縁遠いと感じる方も多いのではないでしょうか。実際には、スーパーで何を選ぶか、服をどれくらいの頻度で買い替えるかといった日々の判断の積み重ねが、このテーマの土台になっています。筆者はフェアトレード商品の選び方を発信する立場で消費者からの質問を受けることが多いのですが、「高い認証商品を買えば十分なのか」「結局は我慢が必要なのか」といった疑問を持つ方が少なくありません。この記事では、そうした疑問に一つずつ答えながら、日本の現状と暮らしの中でできる選択肢を整理していきます。
「自分には関係ない」と思われがちな理由
持続可能な消費と生産は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標12にあたる考え方で、限られた資源を効率よく使い、廃棄を減らしながら生産と消費のバランスを取ることを指すとされています。ターゲットの一つである12.3では、2030年までに小売・消費段階の一人当たり食料廃棄を半減させ、生産・サプライチェーンでの食料損失を減らす方向性が示されています。
ここで「結局は企業や行政の課題で、個人の買い物とは別の話では」と感じる方もいるはずです。しかし食料廃棄の半分近くは家庭からも発生しているとされ、個々の購入量や保存の工夫が積み上がって統計に反映される構造になっています。つまり、消費側の判断は生産側の計画にも影響を及ぼす関係にあり、どちらか一方だけの問題として切り分けられるものではありません。
この連関を意識すると、「何を選ぶか」だけでなく「どれだけ選ぶか」「どう使い切るか」まで含めて考える必要があることが見えてきます。次の章では、日本の具体的な現状をもう少し掘り下げます。
日本の現状はどう評価されているのか
食品ロスの数字と削減目標をめぐる疑問
日本では食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)が2019年に施行され、家庭系と事業系を合わせた食品ロス量を2030年度までに2000年度比でおおむね半減させる目標が掲げられているとされています〔具体的な年次推計値は年度ごとに改定されるため要確認〕。「法律ができたなら、もう解決に向かっているのでは」と思われるかもしれませんが、目標年の2030年まではまだ時間があり、家庭からの発生量を継続的に減らせるかどうかが鍵になると指摘されています。
ここでよくある誤解として、「食品ロス対策は小売店の値引きや規格外品の扱いだけの問題」という捉え方があります。実際には、家庭での買いすぎや作りすぎ、賞味期限と消費期限の混同による廃棄も大きな割合を占めるとされており、店頭の工夫だけでは解決しきれない部分が残っています。
「もったいない」の発信力と実態のギャップ
日本語の「もったいない」は、ケニア出身で2004年にノーベル平和賞を受賞したワンガリ・マータイ氏が国際会議で紹介したことをきっかけに、資源を大切にする概念として世界的に知られるようになったとされています。この言葉が海外で評価される一方で、国内の廃棄実態と「もったいない」という感覚が必ずしも一致していない場面があるのも事実です。「日本人は昔から物を大切にしてきたはずなのに、なぜ食品ロスが減らないのか」と疑問を持つ方もいますが、単身世帯の増加や個包装文化の広がりなど、生活様式の変化が廃棄のしやすさに影響している面も指摘されています。言葉としての認知度の高さと、実際の行動変容は分けて考える必要があるといえるでしょう。
企業はどのような選択肢を増やしているのか
小売・流通の資源循環の取り組み
「企業の取り組みと言われても、自分の買い物にどう関係するのか分かりにくい」という声もよく聞きます。実際には、小売や流通の現場での工夫が、店頭に並ぶ商品の選択肢そのものを変えてきています。たとえば大手小売では、プラスチック包装の削減や食品廃棄物の飼料・肥料化、賞味期限表示の年月表示化による納品期限の緩和といった対応が進められてきたと報告されています。生活協同組合や一部のスーパーでは、規格外野菜の販売や量り売りコーナーの設置など、消費者が廃棄の少ない選び方をしやすくする売り場づくりも広がっています。
こうした変化は一斉に起きたわけではなく、店舗や業態によって導入の濃淡があります。読者としては「この店は特別な取り組みをしているはず」と一律に期待するのではなく、売り場の表示や商品説明を見比べる習慣を持つことが、選択の幅を広げる近道になります。
フェアトレード認証を導入する企業の広がり
フェアトレードは開発途上国の生産者に適正な対価と労働環境を保証する仕組みで、国際フェアトレード認証ラベルは日本では特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパンが運用しているとされています。コーヒーやチョコレート、コットン製品を中心に、複数の食品メーカーやアパレル企業が認証原料を一部の商品ラインに採用する動きが続いてきました。また国内の自治体では、熊本市がアジアで初めてフェアトレードタウンに認定されたとされ〔認定年は資料により表記が異なるため要確認〕、その後も複数の都市が同様の認定を目指す動きを見せています。
「フェアトレード商品はまだ一部の意識が高い人向けの特別な棚にしかない」と感じる方もいますが、認証マークは年々、コンビニエンスストアや大手スーパーの定番商品にも使われるようになってきており、特別な店に行かなくても選べる機会が増えているのが実情です。
認証マークは価格が高いだけなのか
認証マークの違いをどう見分けるか
フェアトレード商品の選び方を発信していると、「結局どの認証マークを見ればいいのか分からない」という相談を受けることがよくあります。国際フェアトレード認証は生産者の適正な対価と労働条件に重点を置いた制度で、環境面に特化したMSC(持続可能な漁業)やFSC(適切に管理された森林資源)の認証とは着目点が異なります。どちらが優れているというより、「生産者の生活を支える視点」と「資源や生態系を守る視点」のどちらを重視したいかで、見るべきマークが変わってくると捉えると選びやすくなります。筆者自身、買い物のたびにすべての認証を完璧に確認しているわけではなく、普段使う商品のうち1つか2つだけ認証付きに置き換えるところから始めるのが現実的だと感じています。
価格だけで判断しない視点
「フェアトレード商品は割高だから続けられない」と不安に思う方も多いはずです。実際に非認証品と比べて価格差がある商品は存在しますが、すべての認証商品が高額というわけではなく、プライベートブランドで認証原料を使った手頃な価格帯の商品も増えてきています。価格だけで一律に判断するのではなく、普段から繰り返し購入する定番品の中に認証商品があるかどうかを確認する方が、無理なく続けやすい選び方だといえます。
今日からできる選び方と小さな実践
ここまでの内容を踏まえると、「結局、何から始めればいいのか」という疑問が残るかもしれません。大がかりな生活改善をいきなり目指す必要はなく、次のような小さな確認から始めることができます。
- 買い物前に冷蔵庫・パントリーの在庫を確認し、重複購入を減らす
- 賞味期限と消費期限の違いを意識し、期限が近い商品から手に取る「手前取り」を試す
- 普段使うコーヒーやチョコレートのうち1品目を認証マーク付きに置き換えてみる
- 衣類は購入前に着用頻度を想像し、セール品でも必要量だけを選ぶ
このうち、まず今日から試せる1アクションとして取り組みやすいのは、次に買い物に行くときに普段のコーヒーかチョコレートを1つだけ国際フェアトレード認証マーク付きの商品に置き換えてみることです。価格差を実際に確認したうえで、続けられそうかどうかを自分の基準で判断してみてください。
まとめ
持続可能な消費と生産は、国連のSDGs目標12として掲げられている大きな枠組みですが、実際の中身は食品ロスの削減や資源循環、生産者への適正な対価の支払いといった、日々の買い物と地続きの要素で構成されています。日本では食品ロス削減推進法のような制度や、小売・流通の売り場での工夫、フェアトレード認証を取り入れる企業の広がりが少しずつ選択肢を増やしてきました。一方で、家庭からの廃棄や単身世帯の生活様式など、制度だけでは解決しきれない課題も残っています。
認証マークについても、国際フェアトレード認証とMSCやFSCのような環境系認証では重視する軸が異なるため、「高いか安いか」だけで判断するのではなく、自分がどの視点を大事にしたいかを基準に選ぶと続けやすくなります。完璧を目指す必要はなく、普段の買い物の中で1品目から置き換えていく姿勢が、無理のない一歩になります。
- 持続可能な消費と生産はSDGs目標12にあたり、食料廃棄の半減などの具体目標が示されている
- 日本では食品ロス削減推進法や企業の資源循環施策が選択肢を広げてきた
- フェアトレード認証とMSC・FSCなど環境系認証は重視する視点が異なる
- 価格だけで判断せず、普段使う商品の1品目から認証商品に置き換えるのが現実的な一歩になる
参考文献
- United Nations「Goal 12: Ensure sustainable consumption and production patterns」
- 農林水産省「食品ロス削減の取組」
- 環境省「食品ロスポータルサイト」
- 特定非営利活動法人フェアトレード・ラベル・ジャパン公式サイト


