公式LINEアカウントでも絶賛配信中!

友だち追加
ENVIRONMENT

持続可能な農業とは|定義・具体的な農法・SDGsとのつながりをわかりやすく解説

Photo by Brunxs Monochrome on Unsplash

「持続可能な農業」という言葉を見聞きしたことはあっても、「具体的に何が違うの?」「自分には関係ない話では?」と感じている方は少なくないと思います。でも実際は、スーパーで野菜を選ぶ行動も、農業の在り方とつながっています。この記事では、持続可能な農業の意味・背景・具体的な農法・日本の政策の方向性を、疑問に答えながら整理していきます。

「持続可能な農業」ってそもそも何? 定義から押さえる

「持続可能な農業」とは、英語で “Sustainable Agriculture”(サステナブル・アグリカルチャー)と呼ばれ、環境・経済・社会の3つのバランスを保ちながら、現在の世代も将来の世代も安定した食料を得られる農業の仕組みを指します。

よくある誤解として「有機農業=持続可能な農業」というイメージがありますが、実際はやや広い概念です。有機農業は持続可能な農業の代表的な手法のひとつですが、土壌管理・水資源の利用・農業従事者の生活水準・フードロスの削減なども含めた、より総合的な考え方として捉えるのが正確です。

レインフォレスト・アライアンスは、持続可能な農業とは「長期にわたって続けられる農業」であり、土地にダメージを与えず、生産者が現在および将来にわたって適切な生活を営めるような農業を意味するとしています。

では、なぜ今この考え方が求められているのでしょうか。

現代の農業が抱える3つの深刻な問題

持続可能な農業を考えるうえで、まず現状の問題を把握しておくことが重要です。大きく3つのカテゴリに整理できます。

環境への負荷

農業に関する環境問題は多様で深刻なものが多く、農地開拓の際に森林などもともとそこにあった自然環境を破壊したり、作物の栽培に必要な水を過剰に使用することで水資源の減少を招いたり、農薬により土壌汚染や水質汚染を起こしたりといった問題があります。 加えて、化学肥料の製造には多量のエネルギーを要するため、温室効果ガスの排出源としても農業は無視できない産業となっています。

食料安全保障の不安

2050年には世界の人口が90億人を超えると予想されており、この人口に食糧を供給するためには2倍の量の水と土地が必要になる可能性がある一方で、食糧は十分に確保されていません。 気候変動による干ばつや異常気象が農業生産を直撃する頻度も増しており、単純に生産量を増やすだけでは解決できない局面に来ています。

農業従事者・地域社会の衰退

日本固有の問題として、農業従事者の高齢化・後継者不足・肥料価格の高騰があります。 肥料価格の高騰、気候変動による不安定な天候、後継者不足といった課題が農業を取り巻く環境を大きく変化させており、これらを解決する方法として持続可能な農業が注目されています。 土壌や地下水が疲弊した農地は次世代に引き継げず、地域の食料基盤そのものが揺らぎかねません。

持続可能な農業とSDGs|関わるゴールはどこ?

「SDGsと農業ってどう関係するの?」と疑問に感じる方のために、主要なゴールとのつながりを整理しましょう。

SDGs第2目標(ゴール2)は「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進すること」であると示されており、持続可能な農業は一国が取り組むべきことではなく、世界全体で目指すべき目標とされています。

それだけではありません。農業は気候変動(ゴール13)と密接に絡み合い、農薬・化学肥料の削減は責任ある消費と生産(ゴール12)にも直結します。農業従事者の公正な賃金は貧困の解消(ゴール1)や陸の豊かさ(ゴール15)とも関わります。持続可能な農業は、複数のSDGsゴールを同時に前進させる取り組みだといえます。

具体的にどんな農法があるの? 代表的な5つのアプローチ

「持続可能な農業と言っても、実際に何をするのか想像しにくい」という声をよく聞きます。ここでは、現在世界と日本で実践されている代表的なアプローチを5つ取り上げます。

有機農業(オーガニック農業)

化学合成農薬や化学肥料を使わず、堆肥や緑肥など有機物を活用して土壌の生物多様性を維持しながら作物を育てる方法です。 持続可能な農業は化学肥料や農薬への依存度を下げ、土壌の生態系を重視した「自然のメカニズムを活用した農法」であり、複数の作物を計画的に組み合わせることで病害虫への抵抗性を高め、土壌の養分バランスも保てます。 有機農業はその考えをもっとも徹底した形として位置づけられます。

輪作・混作(クロップローテーション・間作)

同じ圃場で異なる種類の作物を順番に植える「輪作」や、複数の作物を同時に栽培する「混作・間作」は、古くから行われてきた土壌管理の知恵です。特定の病害虫が蔓延しにくくなるほか、特定の作物が吸収しきってしまった栄養分を次の作物が補うかたちになり、化学肥料の投入量を減らす効果が報告されています。

アグロフォレストリー(農林複合経営)

農地に樹木を組み合わせて栽培する方法で、樹木の根が土壌侵食を防ぎ、落ち葉が有機物となり、日陰が微気候をつくるといった複合的な恩恵をもたらします。コーヒーや茶の産地では、「シェードグロウン(日陰栽培)」として知られ、フェアトレード認証と結びつく事例も多くあります。生産者の生計安定にも寄与するため、社会的持続可能性の面でも注目されています。

精密農業(スマート農業)

センサーやドローン・AI・衛星データを使って、圃場の状態をリアルタイムで把握しながら農薬・肥料・水の投入量を必要な場所に必要な量だけ調整する農業手法です。 農業先進国では機械化や無人化を通じて効率的に持続可能な農業を実現しようとしており、一方で農業途上国では資金や技術の不足が問題になっています。 日本でも農林水産省がスマート農業の普及を後押しする施策を進めています。

再生型農業(リジェネラティブ農業)

再生型農業とは、自然の豊かさを回復させ、補い、さらには強化する包括的な農場設計のことを指します。 単に「被害を減らす」だけでなく、失われた土壌の炭素を取り戻し、生物多様性を積極的に高めようとする考え方です。不耕起栽培や被覆作物(カバークロップ)の導入が代表的な手法として知られています。

日本の政策「みどりの食料システム戦略」が示す方向

「政策の話は自分には関係ない」と思われるかもしれませんが、消費者として知っておく価値があります。

農林水産省は、化学農薬・肥料の使用量を減らした栽培や有機農業など環境負荷の少ない農法への転換を促す「みどりの食料システム戦略」を2021年に策定しました。 この戦略では、2050年までに有機農業の取組面積を農地全体の25%に拡大することや、化学農薬の使用量(リスク換算)を50%低減すること、化学肥料の使用量を30%低減することなどが目標として掲げられています(農林水産省公開資料より)。

25%という目標は、2020年時点の有機農業面積が全農地の約0.5%程度にとどまっていた日本にとって、非常に高い水準です。技術的・経済的なハードルがあることは事実ですが、同戦略はこのギャップを技術革新と制度的サポートの両輪で埋めていく方針を示しています。

「有機野菜を買えば十分では?」と思った方へ

フェアトレード商品を選ぶ生活をしていると、「購買行動で農業を支援できる」という側面を実感します。一方で、よく聞くのが「オーガニック野菜を買ってれば、もうそれで十分でしょ」という感覚です。これは正しい面もありますが、少し補足が必要です。

有機認証がついた野菜を選ぶことは、確かに農薬・化学肥料の削減に貢献します。ただ、持続可能な農業の観点では、「誰が、どこで、どのような労働条件で作ったか」という社会的側面も同等に重要です。輸送に伴うCO2排出(フードマイレージ)や包装材の過剰使用なども視野に入ります。

また、有機認証を取得するためのコストが高く、認証なしで有機農法に近い栽培をしている農家も少なくありません。地元の農産物直売所で農家と直接話してみると、認証ラベルの有無だけでは見えない実践が見えてくることがあります。これは「有機認証を買わなくていい」という意味ではなく、選ぶ基準を少し多角的にする視点として持っておくと役立ちます。

消費者として今日からできること|選ぶ力を使う

生産者でなくても、消費者として持続可能な農業を後押しする行動は確実に存在します。公開情報の傾向として、食に関心を持つ読者のあいだでよく見られるのは次のようなパターンです。

  • 地元の農産物直売所やCSA(地域支援型農業)に継続的に参加することで、農家の経営を安定させる
  • フェアトレード認証や有機JAS認証のついた輸入農産物(コーヒー・チョコレート・バナナ等)を意識的に選ぶ
  • 食品ロスを減らすことで、過剰生産による農地へのプレッシャーを間接的に軽減する
  • 旬の食材を選ぶことで、ハウス栽培のエネルギー消費を下げる

今日からひとつ試すとしたら、次にコーヒーやチョコレートを買うとき、フェアトレード認証マークを確認してみることをおすすめします。日常の買い物の中で手が届きやすく、農家の生活と環境の両方を同時に支援できる行動です。

フェアトレードと持続可能な農業のつながりをより深く知りたい方は、エシカル消費の全体像を解説した記事もあわせてご覧ください。

まとめ|持続可能な農業は「農家だけの話」ではない

持続可能な農業とは、土壌・水・生態系を次世代に残しながら、農業従事者が公正な生活を営み、消費者が安全な食料を得続けられる農業の在り方です。有機農業・輪作・アグロフォレストリー・精密農業・再生型農業など、多様なアプローチが組み合わさって実現に近づくものであり、一夜で完成するものでもありません。

  • 持続可能な農業とは、環境・経済・社会の3バランスを保ちながら次世代まで続けられる農業の総称
  • 有機農業はその代表手法のひとつ。輪作・アグロフォレストリー・精密農業・再生型農業なども含まれる
  • SDGsゴール2(飢餓ゼロ)・ゴール12(責任ある消費と生産)・ゴール13(気候変動対策)と直結する
  • 農林水産省「みどりの食料システム戦略」は2050年までに有機農業面積25%等の目標を掲げている
  • 消費者にできることは、フェアトレード・有機認証商品の選択・食品ロス削減・旬の食材を選ぶこと

環境問題と食のつながりについてさらに知りたい方には、環境・エネルギー問題を包括的に解説したハブ記事もご参考にどうぞ。

RELATED

PAGE TOP