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ENVIRONMENT

エミッションとは?誰でもわかりやすくかんたん解説|日本の排出量と制度、暮らしでの選び方

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エミッションとは、英語の「emission」に由来する言葉で、「放出」「排出」を意味します。環境の分野では、工場の煙突や自動車の排気管、発電所などから大気中へ出ていく物質を指すのが一般的です。ニュースでは「ゼロエミッション」「カーボンニュートラル」といった言葉と並んで出てくるため、意味が混ざったまま読み進めている方も多いのではないでしょうか。この記事では、定義をおさえたうえで、世界と日本の排出の現状、2026年度に始まった企業向けの制度、自治体の取り組み、そして暮らしの中での選び方まで整理します。

この記事で学べること

  • エミッションが使われる3つの場面と、ゼロエミッションやカーボンニュートラルとの違い
  • 2024年に世界の排出量が過去最高となった一方、日本は2024年度に10億トンを下回った現状
  • 企業の排出量の数え方(Scope1・2・3)と、2026年度から始まった排出量取引制度
  • 家庭や買い物で「排出を減らす」ときに見るべきポイントと、言葉の使われ方への注意点
目次

エミッションが指すもの|場面によって変わる3つの意味

「エミッション」は単独で使われるよりも、文脈によって指す範囲が変わる言葉です。同じ単語でも、自動車の話なら排気ガス、気候変動の話なら温室効果ガス、資源循環の話なら廃棄物を指すことがあります。まずは3つの場面に分けて見ていきましょう。

大気汚染物質としてのエミッション

もっとも古くからある使い方で、煙突から出る煤煙や、自動車の排気ガスに含まれる物質を指します。自動車の分野で「エミッション性能」と言う場合は、走行中に出る排出ガスの少なさを意味します。ここでの関心は、人の健康や地域の空気の質にあります。

温室効果ガスとしてのエミッション

二つ目は、二酸化炭素(CO2)やメタンなど、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出です。「エミッションを減らす」という表現が脱炭素の文脈で使われるとき、多くはこの意味です。大気汚染物質と違い、少量ずつでも世界中で積み重なると気候に影響するため、国や企業ごとに排出量を数え、目標を立てて管理します。

廃棄物を出さない考え方としてのゼロエミッション

三つ目が、1994年に国連大学が提唱した「ゼロエミッション」です。国連大学の顧問だったグンター・パウリ氏が示した考え方で、ある産業から出た廃棄物や副産物を別の産業が原料として使い、全体として廃棄物をなくす資源循環型の産業社会をめざします。この意味でのゼロエミッションは、CO2の排出量を数える話とは出発点が異なります。ただし現在は、CO2の排出を実質ゼロにする意味でも広く使われるようになりました。

混同しやすい言葉との違い|ゼロエミッション・カーボンニュートラル・実質ゼロ

エミッション関連の用語は、似た響きのものが多く、記事や広告によって使い方に幅があります。違いを知っておくと、ニュースや企業の発表を落ち着いて読めます。

ゼロエミッションとカーボンニュートラルは同じではない

カーボンニュートラルは、温室効果ガスの排出量から、森林などによる吸収量や除去量を差し引いて、全体としてゼロにする考え方です。排出そのものをゼロにするわけではなく、「排出と吸収の差し引きがゼロ」という点が要です。一方、ゼロエミッション車のように「走行時に排出ガスを出さない」製品を指すときは、使う段階の排出がないことを意味します。

「排出ゼロ」と書かれていたら、どこまでの範囲かを見る

たとえば電気自動車は走行中に排気ガスを出しませんが、車をつくる工程や、充電に使う電気の発電では排出が生じる場合があります。つまり、「ゼロ」と言える範囲は、使う段階だけなのか、製造から廃棄までの全体なのかで変わります。こうした範囲の違いを確かめずに受け取ると、実態より良く見えてしまうことがあります。

日本の「実質ゼロ」目標は、吸収も含めた数字

日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を掲げています。2024年度の日本の吸収源対策による吸収量は約5,230万トンと報告されており、排出量から吸収量を引いた「排出・吸収量」で目標の進み具合を測ります。排出を減らす努力と、吸収を増やす努力は別のものとして並行して進める必要があります。

数字で見るエミッションの現状|世界は過去最高、日本は初めて10億トン割れ

「減らす時代」と言われても、実際にどれくらい減っているのかは意外と知られていません。世界と日本の最新の数字を並べてみると、状況の違いが見えてきます。

世界の排出量は2024年に過去最高を更新

国連環境計画(UNEP)の「排出ギャップ報告書2025」によると、2024年の世界の温室効果ガス排出量はCO2換算で577億トンとなり、前年から2.3%増えて過去最高を記録しました。各国が提出した削減目標をすべて実行しても、今世紀中の気温上昇は2.3〜2.5℃と見込まれ、現行の政策のままでは2.8℃と予測されています。1.5℃の道筋に沿うには、2035年までに排出量をおよそ55%減らす必要があるとも示されています。基準年などの詳細は報告書本文で確認できます。

日本は2024年度に初めて10億トンを下回った

環境省が2026年4月に公表した確報値では、2024年度の日本の温室効果ガス排出・吸収量は約9億9,400万トン(CO2換算)でした。前年度比で1.9%減、2013年度比では28.7%減で、2013年度以降の最低値であり、初めて10億トンの大台を下回りました。減少の主な要因として、製造業の生産量の減少によるエネルギー消費量の減少と、再生可能エネルギーと原子力を合わせた電源構成が3割を超えるなどの電力の脱炭素化が挙げられています。

「減った理由」を分けて読む

ここで注意したいのは、排出量が減った理由には性質の異なるものが混ざっている点です。電力の脱炭素化は仕組みとして継続的な削減につながりますが、生産量の減少による削減は景気の回復とともに戻る可能性があります。数字が下がったという事実と、その削減が定着するかどうかは、別々に見ておく必要があります。

企業のエミッションの数え方|Scope1・2・3と排出量取引制度

企業の発表に出てくる「排出量」は、どこまでを数えたものなのかで意味が大きく変わります。国際的に使われているのが、Scope(スコープ)という区分です。

サプライチェーン排出量は3つに分けて数える

環境省は、原材料の調達から製造、物流、販売、廃棄までの一連の流れ全体から出る温室効果ガスを「サプライチェーン排出量」と呼び、次の3つの合計として示しています。

  • Scope1は、事業者自らによる直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
  • Scope2は、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  • Scope3は、Scope1・2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

Scope3は国際的な基準で15のカテゴリに分けられ、購入した製品、輸送、出張、通勤、販売した製品の使用や廃棄などが含まれます。自社の工場だけを見ていては全体像がつかめず、取引先の排出も視野に入れる必要があるのが、この考え方の特徴です。

2026年度から、大規模排出事業者に義務が生じた

日本では、GX推進法に基づく排出量取引制度(GX-ETS)が2026年度から本格的に始まりました。2023〜2025年度の第1フェーズは企業の自主参加でしたが、2026年度からの第2フェーズでは、CO2の直接排出量(Scope1)が過去3年度の平均で年10万トン以上の事業者が対象となります。対象はエネルギー、発電、産業、運輸などの300〜400社程度、国内排出量の約6割に当たると民間のシンクタンクは解説しています。参加事業者は、排出量に見合う排出枠を保有する必要があり、枠は当面、原則無償で割り当てられます。2033年度からは発電部門を対象に、有償のオークションが段階的に導入される計画とされています。

対象外の会社にも関係する理由

直接の対象は大規模な事業者に限られますが、Scope3に取引先の排出が含まれる以上、大手企業が算定を進めれば、部品や原材料を納める企業にも排出データの提供が求められる場面が出てきます。環境省は、取引先から得た実測に近いデータ(1次データ)を活用して、削減努力が数字に反映されるようにする算定ガイドも2025年3月に公表しています。自社の排出量を把握しておくことが、取引の継続にも関わる時代に入りつつあります。

自治体の実践|東京都のゼロエミッション東京と、広がるゼロカーボンシティ

エミッションの削減は、国や企業だけでなく、地域ごとに計画と目標を持って進められています。

東京都は2035年に2000年比60%以上の削減をめざす

東京都は2050年に「ゼロエミッション東京」の実現を掲げ、「ゼロエミッション東京戦略 Beyond カーボンハーフ」のもとで取り組みを進めています。目標は、都内の温室効果ガス排出量を2000年比で2030年に50%削減、2035年に60%以上削減することです。2026年10月1日には、令和8年度の「ゼロエミッション地区創出プロジェクト」の選定結果も公表されており、地区単位での脱炭素の実践が続いています。

全国では1,200を超える自治体が「2050年実質ゼロ」を表明

環境省は、2050年までにCO2の排出を実質ゼロにすることをめざす自治体を「ゼロカーボンシティ」として集約しています。2026年3月31日時点の一覧では、東京都・京都市・横浜市をはじめ1,213の自治体(46都道府県、671市、22特別区、411町、63村)が表明していると報告されています。

表明と実行のあいだにある差

ただし、表明した自治体の数が増えることと、実際に排出が減ることは別の話です。自治体の規模や産業構造によって、減らせる量も手段も違います。住んでいる地域の自治体が、どんな計画と目標年を持っているのか、公式サイトで一度見てみると、自分の暮らしとのつながりが見えやすくなります。

私たちにできること|暮らしと買い物で排出を見る視点

排出を減らす行動は、大きな決断だけではありません。暮らしの中で、排出が生じやすい場面に目を向けるところから始められます。

電気・移動・食の3つを見直す

家庭からの排出は、おもに電気やガスの使用、移動手段、食の選択と廃棄から生じます。これから暖房を使い始める時期は、設定温度の見直しや、窓まわりの断熱を足すことが電気やガスの使用量に直接響きます。移動では、近距離なら公共交通機関や徒歩を選ぶ、食では食べ残しや買いすぎを減らすといった、すぐ試せる選択があります。

企業を選ぶときは「範囲」と「根拠」を見る

買い物で企業を応援したいときは、「環境にやさしい」という言葉だけで判断せず、次の点を見ると確かめやすくなります。

  • 排出量をScope1・2だけでなくScope3まで開示しているか
  • 削減目標に基準年と目標年が示されているか
  • 「排出ゼロ」の表記が、製造から廃棄までなのか一部の工程だけなのか
  • 第三者による検証や認証を受けているか

根拠が示されていない表現は、環境への配慮を実際以上に見せるグリーンウォッシュにつながる場合があります。逆に、範囲や限界まで正直に説明している企業は、信頼しやすい目安になります。

「個人の行動では変わらない」への向き合い方

家庭部門の排出は、国全体の排出のごく一部だと言われることがあります。だからといって、個人の選択に意味がないわけではありません。企業は消費者が何を選ぶかを見て商品を設計しますし、投票や地域の計画づくりへの参加を通じて、自治体の方針に影響を与える道もあります。ひとりで抱え込まず、できる範囲で選択を重ねていくことが現実的です。

まとめ

エミッションは「排出」を意味する言葉で、大気汚染物質、温室効果ガス、廃棄物という3つの場面で使い分けられます。ゼロエミッションとカーボンニュートラルは似ていますが、前者は「出さない」ことに、後者は「排出と吸収の差し引き」に重心があります。言葉の範囲を確かめることが、ニュースや広告を正しく読む第一歩です。

世界の排出量は2024年に過去最高を更新した一方、日本は2024年度に約9億9,400万トンと初めて10億トンを下回りました。ただし、減った理由には生産量の減少も含まれるため、削減が定着するかは今後の動きを見る必要があります。企業には2026年度から排出量取引制度が始まり、自治体も東京都をはじめ1,200を超える地域が2050年の実質ゼロを表明しています。

今日からできることは、大きくなくて構いません。これから暖房を使う時期に電気の使い方を見直す、買い物のときに「ゼロ」という表記の範囲を確かめる。まず1つだけ、試してみてください。

  • エミッションは「排出」の意味で、大気汚染物質・温室効果ガス・廃棄物の3つの場面で使われる
  • 2024年の世界の排出量は577億トン(CO2換算)で過去最高、日本の2024年度は約9億9,400万トンで初の10億トン割れ
  • 企業の排出はScope1・2・3で数え、2026年度から年10万トン以上のCO2を直接排出する事業者に排出量取引制度が適用される
  • 「排出ゼロ」の表記は、範囲と根拠を確かめてから受け取る

参考文献

  • 記事を書いたライター
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