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インパクト投資とは?ESG投資との違いと日本国内の取り組み事例でわかる始め方

Photo by Mitchell Luo on Unsplash

「インパクト投資という言葉を最近よく見かけるけれど、結局ESG投資と何が違うのかよくわからない」と感じたことはないでしょうか。「社会や環境のために投資する」と聞くと聞こえは良いものの、「本当にリターンは出るのか」「単なる寄付や社会貢献活動と何が違うのか」といった疑問を持つ方も多いはずです。非財務情報の開示やESG投資の取材を続けてきた立場から見ても、この言葉はここ数年で急速に広まった一方、定義があいまいなまま使われている場面が少なくありません。この記事では基本的な考え方を押さえたうえで、日本国内でこの手法に関わる機関や企業の動き、そして個人投資家が最初の一歩を踏み出す前に確認しておきたい視点を整理していきます。

インパクト投資とはどのような投資なのか

インパクト投資は、財務的なリターンを追求しながら、社会や環境に対して測定可能なプラスの効果を意図的に生み出すことを目指す投資手法だとされています。国際的な業界団体であるGIIN(Global Impact Investing Network)は、こうした投資を財務的リターンと並行して測定可能な社会的・環境的インパクトを生み出す意図を持つ投資として位置づけています。ポイントは「意図」「測定可能性」「財務的リターンの追求」という3つの要素がそろっている点で、たまたま結果的に社会に良い影響があった投資とは区別される考え方です。

ESG投資やSDGs関連投資と何が違うのか

「ESG投資と何が違うんですか」という質問は取材の場でも何度も受けてきました。よくある誤解として、ESG投資とインパクト投資を同じものとして語ってしまうケースがありますが、実際にはねらいが異なります。ESG投資は環境・社会・ガバナンスの要素を財務分析に組み込み、投資先のリスクを見極めたりリターンの持続性を高めたりすることに主眼が置かれる手法です。一方でインパクト投資は、再生可能エネルギーへのアクセス改善や金融包摂、医療格差の是正など、あらかじめ狙いを定めた社会的・環境的な成果そのものを追求し、その達成度合いを報告することまでを前提としている点が異なります。SDGsは共通言語としてどちらの文脈でも参照されますが、SDGsのゴールを掲げているだけではインパクト投資とは呼べません。

「儲からない投資」という誤解

もうひとつよく聞かれるのが「社会貢献を目的にしている以上、リターンは犠牲にしているのでは」という疑問です。実際には、案件によって市場並みのリターンを狙う設計と、社会的な優先度を重視してリターン水準を抑える設計の両方が存在するとされています。すべてのインパクト投資が寄付に近い低リターンを前提としているわけではなく、案件ごとにリターンとインパクトのバランスをどう設計しているかを確認する必要があります。

日本国内でインパクト投資を進める機関や企業の動き

日本国内でも、公的機関から民間金融機関、クラウドファンディング事業者まで、複数の担い手がそれぞれの立場からインパクト投資に関わる動きを見せています。ここでは代表的な担い手のタイプを整理してみます。

公的機関や政策金融機関の取り組み

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、巨額の資産を長期にわたり運用するユニバーサルオーナーとしての立場から、インパクト投資の可能性について調査研究を進めてきたとされています。GPIFはこれまでESGを投資プロセスに統合する方針を掲げてきましたが、受託者責任との整合性を確認しながらインパクト投資の位置づけを検討している段階にあるとされ、すぐに大規模な運用に組み込まれるものではない点には留意が必要です。また日本政策投資銀行(DBJ)などの政策金融機関は、環境格付融資や社会性評価融資を通じて、企業の非財務的な取り組みを与信条件に反映させる仕組みを続けてきました。経済産業省や一部の地方自治体では、成果連動型の社会的インパクト債(ソーシャル・インパクト・ボンド)の実証事業も行われてきたとされ、公共サービスの分野でインパクト投資的な発想を取り入れる動きが広がっています。

民間金融機関やクラウドファンディングの広がり

民間側では、地方銀行や信託銀行がサステナビリティ・リンク・ローンや社会的債券の組成に関わる例が増えているほか、クラウドファンディング事業者が個人から小口資金を集めて地域活性化や災害復興を支援するファンドを組成する動きも継続しています。ミュージックセキュリティーズのような事業者は、東日本大震災の被災地支援など地域に根差したプロジェクトに小口投資できる仕組みを長年提供してきたことで知られています。こうした複数の担い手を見ていくと、大規模な機関投資家による市場形成の動きと、個人が少額から関われる仕組みの両方が併存しているのが、日本のインパクト投資の現在地だといえそうです。

インパクト投資の効果をどうやって測定しているのか

「良いことをしていると言われても、具体的に何をどう測っているのか」という疑問はもっともです。国際的には、GIINが公開している共通指標カタログ「IRIS+」や、Impact Management Projectが整理した「何を(What)」「誰に(Who)」「どれだけ(How much)」「投資の貢献度(Contribution)」「リスク(Risk)」という5つの視点が、測定の枠組みとしてしばしば参照されます。ただし取材の中で複数の企業の非財務報告書やインパクトレポートを見比べてみると、指標の粒度や報告様式が事業者ごとにかなり異なり、単純に横並びで比較するのが難しいと感じる場面が少なくありません。これは業界全体がまだ標準化の途上にあることの裏返しでもあり、読み手側にもある程度の読み解く力が求められる分野だと感じています。

実際に測定対象となる社会課題としては、教育格差や地域間の所得格差、金融サービスへのアクセス格差といった不平等の是正に関わるテーマが選ばれることも多く、こうした課題そのものへの理解を深めておくことも、投資先の妥当性を判断するうえで役立ちます。

個人投資家が最初の一歩を踏み出す前に確認したいこと

「自分もインパクト投資を始めてみたい」と思ったとき、何から確認すればよいのか迷う方も多いはずです。ここでは実際に商品を選ぶ前に押さえておきたい3つの視点を整理します。

目論見書や運用報告書にインパクト指標の記載があるか確認する

「インパクト」や「サステナブル」といった名称がついているだけの商品と、実際に測定可能な指標を報告している商品は区別して考える必要があります。運用会社が定期的にインパクトレポートを公表しているか、具体的な数値目標や達成状況を開示しているかは、最初に確認しておきたいポイントです。

少額から試せる商品を活用する

いきなり大きな金額を投じる必要はありません。クラウドファンディング型のファンドや、ESGテーマ型の投資信託の中には少額から始められる商品もあります。まずは少額で仕組みや情報開示のスタイルを体感してみることが、判断力を養う近道になります。

リターンの前提を理解しておく

市場並みのリターンを狙う設計なのか、社会的な優先度を重視してリターン水準を抑える設計なのかは、案件によって異なります。目標とするリターン水準がどちらの前提に立っているのかを、契約前に確認しておくことが期待外れを防ぐことにつながります。

まずは今日、自分が保有している投資信託や勤務先の企業型確定拠出年金の運用商品一覧を開き、目論見書や運用報告書に「インパクト」や「非財務指標」に関する記載が1本でもあるかどうかを確かめてみてください。それだけでも、自分の資産がどんな考え方の投資に触れているのかが見えてくるはずです。

まとめ

インパクト投資は、財務的リターンと測定可能な社会的・環境的インパクトの両方を意図的に追求する投資手法です。ESG投資がリスクとリターンの分析に非財務要素を組み込む手法であるのに対し、インパクト投資は特定の社会課題の解決そのものを目的に据え、その達成度を報告する点が異なります。日本国内でも公的機関から民間金融機関、クラウドファンディング事業者まで複数の担い手がそれぞれの立場で関わりを深めています。

  • インパクト投資は「意図」「測定可能性」「財務的リターン」の3要素がそろった投資であり、ESG投資やSDGs関連の言葉だけでは同一視できない
  • 日本国内では政策金融機関・民間金融機関・クラウドファンディング事業者が、それぞれ異なる形でインパクト投資に関わっている
  • 商品を選ぶ前に、インパクト指標の開示有無とリターンの前提を必ず確認する

本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・企業公式情報をもとに作成しています。

参考文献

  • GIIN(Global Impact Investing Network)公式サイト(https://thegiin.org/)
  • 一般財団法人社会変革推進財団(SIIF・GSG国内諮問委員会事務局)公式サイト(https://www.siif.or.jp/)
  • 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)公式サイト(https://www.gpif.go.jp/)

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