北極圏の氷河が急速に溶け始め、失われる前に過去の氷をサンプルとして保存する計画「アイスメモリー(Ice Memory)」が2023年4月4日から進行中です。計画には、イタリア、フランス、ノルウェーの研究者8人から成るチームが参加し、北極圏のノルウェー領スバルバル(Svalbard)諸島で採取した氷を南極に輸送して保存します。
アイスメモリー財団(Ice Memory Foundation)の副会長で古気候学者のカルロ・バルバンテ(Carlo Barbante)氏は、「北極の氷河は急速に溶け始めており、氷に含まれる情報が完全に失われる前に回収し、地球の気候に関する貴重なアーカイブとして未来の科学者のために保存したい」と述べています。
研究チームは、クレバスの多いホルテダールフォナ(Holtedahlfonna)氷原のキャンプに滞在し、最大125メートルの深さの「氷床コア」から直径10センチの円柱状の氷のサンプルを3週間かけて掘削しています。氷床コア内には3世紀前にまでさかのぼる化学物質が閉じ込められており、分析することで、過去の環境に関する貴重なデータを得ることができます。
採取されたサンプルのうち1セットは直ちに分析に回されます。もう1セットは海路でいったん欧州に運ばれ、その後南極大陸にある仏伊両国の共同観測基地へ移送され、マイナス50度で「氷の記憶の聖域」と呼ばれる、雪の下にある保管庫で保存されます。
この計画により、研究者は未来数十年間にわたってアーカイブの利用に関する新しいアイデアや技術を手にすることができるとしています。アイスメモリー財団は、今後、欧州アルプス(Alps)や南米アンデス(Andes)に加え、タジキスタンやヒマラヤ山脈(Himalayas)でも同様の計画を実施する予定です。