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SOCIETY

シニア雇用の日本の現状を数字で読む|働く高齢者943万人、70歳就業確保は34.8%

Photo by 2H Media on Unsplash

日本の65歳以上の就業者は943万人に達し、22年連続で増えて過去最多を更新しました。総務省統計局が令和8年(2026年)の敬老の日に合わせて公表した統計の数字です。一方で、企業側の制度整備には温度差があります。厚生労働省の令和7年の報告では、65歳までの雇用確保措置を実施した企業が99.9%なのに対し、70歳までの就業確保措置は34.8%でした。

この記事では、総務省と厚生労働省の公表資料をもとに、日本のシニア雇用が今どこまで進んでいるのかを整理します。あわせて、2025年と2026年に動いた給付金と年金の制度変更が、働く側の手取りにどう関わるのかも確認します。

この記事で学べること

  • 65歳以上の就業者数と、就業者全体に占める割合の最新値
  • 企業の65歳・70歳までの雇用確保が、どこまで進んでいるか
  • 高年齢雇用継続給付と在職老齢年金の変更点と、手取りへの影響
  • 数字から見えるシニア雇用の分かれ目と、今日できる最初の一歩

働く高齢者は943万人|総務省統計で見る日本のシニア就業

日本のシニア雇用を考えるうえで、まず押さえたいのが働いている人の規模です。総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」(令和8年)によると、65歳以上の人口は3,624万人で、総人口に占める割合は29.6%と過去最高でした。この割合は、比較可能な201の国・地域の中でも最も高い水準にあります。

その中で働いている人の数を見ると、65歳以上の就業者は943万人で、22年連続の増加です。就業者総数に占める割合は13.8%で、これも過去最高でした。働く人の約7人に1人が65歳以上という計算になります。

就業者数と割合は、どちらも過去最高を更新

前年の令和7年版では、65歳以上の就業者は930万人、就業者総数に占める割合は13.7%でした。1年で13万人増え、割合も0.1ポイント上がっています。65歳以上の年齢階級別の就業率も、いずれの階級で過去最高と報告されています。

高齢者人口そのものは前年から2万人の増加にとどまります。それでも就業者数が伸びているのは、人口が増えたからではなく、働く人の比率が上がっていることを示しています。

非正規が76.1%という現実もある

数字のもう一つの側面が雇用形態です。同じ統計では、65歳以上の役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は76.1%でした。働く高齢者の多くが、パートや嘱託など、非正規の形で働いていることになります。

この数字は、働き方の自由度の高さとして読むこともできますし、処遇の不安定さとして読むこともできます。どちらが当てはまるかは個人によって異なり、統計だけでは判断できません。ただ、「シニアが増えて働いている」という事実と、「どんな条件で働いているか」は別の問いだと分けて考える必要があります。

企業の対応は進んだのか|高年齢者雇用状況等報告の読み方

次に、雇う側の企業がどこまで制度を整えているかを見ます。厚生労働省が令和7年12月19日に公表した「高年齢者雇用状況等報告」は、従業員21人以上の企業237,739社(中小企業220,466社、大企業17,273社)の令和7年6月1日時点の状況をまとめたものです。

65歳までの雇用確保はほぼ全社で実施

65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は99.9%で、前年から変化はありません。2025年4月に、継続雇用制度の対象者を限定できる経過措置が終わったこともあり、65歳までは希望すれば働ける環境がほぼ整ったといえます。

70歳までの就業確保措置は34.8%、大企業のほうが低い

70歳までの就業確保措置は、2021年4月から企業の努力義務になっています。実施済みの企業は34.8%で、前年から2.9ポイント増えました。規模別に見ると、中小企業が35.2%(2.8ポイント増)、大企業が29.5%(4.0ポイント増)です。

大企業のほうが実施率は低い一方で、伸び幅は大きくなっています。大企業の低さの背景に何があるのかは、この調査の数字だけでは断定できません。人事制度や賃金体系が複雑で、見直しに時間がかかっている可能性はありますが、確認できた事実ではない点に注意が必要です。

継続雇用は減り、定年引上げが増えている

65歳までの措置の中身にも変化があります。継続雇用制度の導入で対応している企業は65.1%で2.3ポイント減り、定年の引上げで対応している企業は31.0%で2.3ポイント増えました。65歳以上を定年とする企業も34.9%(2.3ポイント増)です。

継続雇用では、60歳でいったん定年を迎え、その後は嘱託などで再雇用されるのが一般的でした。定年そのものを延ばす企業が増えていることは、60歳以降も正社員のまま働ける道が広がりつつあることを示しています。

制度改正でシニアの手取りはどう動くか

雇用の入口が整っても、働いた結果として手元に残るお金が変わらなければ、働き続ける動機は弱まります。ここ2年で、シニアの収入に直結する制度が2つ動きました。

高年齢雇用継続給付は、最大15%から10%へ縮小

高年齢雇用継続給付は、60歳以降に賃金が下がった人に、雇用保険から給付する制度です。2025年4月1日以降に60歳になった人から、賃金に対する最大の支給率が15%から10%に引き下げられました。

たとえば、60歳到達時の賃金が月30万円で、60歳以降の賃金が月18万円に下がった場合、支給額は従来の2万7,000円から1万8,000円になります。2025年3月31日以前に60歳に達した人は、従来の支給率が引き続き適用されます。

この変更は、賃金が下がった分を給付で補うという前提が弱まったことを意味します。給付に頼る設計ではなく、企業が60歳以降の賃金そのものをどう決めるかが、これまで以上に問われます。

在職老齢年金の基準額は、51万円から62万円へ

在職老齢年金は、働きながら老齢厚生年金を受け取る人の年金が、賃金との合計額に応じて減る仕組みです。日本年金機構によると、2026年4月から、年金が減額される基準額が月51万円から62万円に引き上げられました。

賃金と年金月額の合計が62万円を超えた場合に、超えた額の半分が支給停止の対象になります。これまで年金が減ることを気にして就業時間を抑えていた人にとって、働く量を調整する理由は小さくなりました。厚生労働省は、働き続けることを希望する高齢者の活躍を後押しする趣旨だと説明しています。

数字を並べて見える、シニア雇用の3つの分かれ目

ここまでの公表資料を並べてみると、日本のシニア雇用には、数字の上では前進していても、個人にとっての意味が分かれる点がいくつかあります。以下は公開されている統計や制度の内容から、読み取れる範囲で整理した見方です。

1つ目の分かれ目は、会社の制度が「65歳まで」で止まっているか、「70歳まで」届いているかです。99.9%と34.8%という差は、65歳以降の働き方を会社に任せて待つだけでは、選択肢が見えにくい可能性を示しています。

2つ目は、同じ職場で働き続けるか、雇用形態が切り替わるかです。非正規が76.1%という数字と、継続雇用制度の導入が65.1%という数字は、60歳や65歳を境に雇用形態や賃金が変わる人が多いことを想像させます。これは一般論としての読み取りであり、個々の企業の実態は就業規則を見ないと分かりません。

3つ目は、収入を給付や年金で補うのか、賃金で確保するのかです。高年齢雇用継続給付が縮小し、在職老齢年金の基準額が上がったことで、国の制度は「給付で下支え」から「年金を減らさず長く働ける環境づくり」へと、軸足をやや移したように見えます。

今日からできる最初の一歩

制度の数字は分かっても、自分や家族の職場がどこに当てはまるかは、調べなければ分かりません。まず1つだけ、勤務先の就業規則にある「定年」と「継続雇用」の条文を開いてみてください。確認するのは次の3点です。

  1. 定年は何歳か、定年後の雇用は再雇用か、定年の引上げか
  2. 65歳を過ぎても働ける制度があるか(70歳までの就業確保措置)
  3. 60歳以降の賃金は、どのような基準で決まるか

就業規則が見つからない場合は、人事や総務の担当者に「60歳以降の働き方の制度を知りたい」と尋ねる形でも構いません。これは、まだ迷っている段階でも取れる行動で、答えを決める必要もありません。親や身近なシニアの働き方を考えるときも、同じ3点が手がかりになります。

まとめ

日本のシニア雇用は、働く人の数、企業の65歳までの制度整備、年金や給付の制度変更のいずれも、前に進んでいます。65歳以上の就業者は943万人で過去最多、就業者に占める割合は13.8%に上り、65歳までの雇用確保措置は99.9%の企業が実施済みです。

一方で、70歳までの就業確保措置は34.8%にとどまり、働く高齢者の非正規割合は76.1%です。数字が示すのは、働ける環境が整ってきた事実と、どのような条件で働くかには大きな幅があるという事実の両方です。

制度の変更は、働く人の手取りや働き方の選択に直接かかわります。勤務先の制度を一度確認してみるだけでも、60歳以降や65歳以降の見通しは具体的になります。

  • 65歳以上の就業者は943万人で22年連続増加、就業者全体の13.8%
  • 65歳までの雇用確保は99.9%、70歳までの就業確保措置は34.8%
  • 高年齢雇用継続給付は最大10%に縮小、在職老齢年金の基準額は62万円に上昇
  • まず就業規則の「定年」「継続雇用」の条文を確認することが最初の一歩

参考文献

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