衣替えのたびにクローゼットを眺めて「この服、どうしよう」と手が止まった経験はないでしょうか。サステナビリティの現場を取材してきた立場から正直に言うと、筆者自身も数年前まで、着なくなった服をなんとなく可燃ごみに出していました。「1枚くらい」という感覚が積み重なると、実は相当な量になります。この記事では服のリサイクルやリユースの選択肢を6つに整理したうえで、企業の回収サービスの違い、回収後に服がたどる実際のルート、そして服の状態別に迷わず選べる基準まで、実際に各方法を試した視点でまとめました。
クローゼットの服、その後の行方を知っていますか
環境省が公表しているサステナブルファッションに関する資料によると、家庭から手放される衣服の総量は年間で約75万トンにのぼり、そのうちの約60〜70%がごみとしてそのまま焼却・埋め立て処分されているとされています。この数字を知ったときは、正直かなり驚きました。処分される服の中には、まだ十分に着られる状態のものも少なくありません。「捨てる」という選択肢の前に、実はいくつものルートが用意されているのに、その存在や違いがあまり知られていないことが、廃棄率の高さにつながっている面もあります。
まずは「捨てる」以外にどんな選択肢があるのか、全体像から押さえていきましょう。
服の手放し方は6つのルートに整理できる
「服のリサイクル」と一口に言っても、方法はいくつかのルートに分かれています。服の状態や素材、かけられる手間によって、向いている方法は変わります。大きく分けると、以下の6つが現在の主な選択肢です。それぞれの特徴と、取材でよく聞く「やってみたら想定と違った」というポイントをあわせて紹介します。
①アパレルブランドの店頭回収ボックスに出す
もっとも手軽に試せるのが、よく利用するショッピングモールやブランド店舗に置かれた回収ボックスです。対応店舗の数は着実に増えており、詰めてボックスに入れるだけで数分で完了します。ただし店舗によって回収対象が異なる点は見落としがちです。事前に各ブランドの公式サイトで対象品目を確認しておくと、無駄足を防げます。
②自治体の資源ごみとして出す
多くの自治体では、使える状態の衣類を資源ごみとして回収し、リサイクルやリユースに活用しています。回収方法や対象品目は自治体によって異なるため、お住まいの自治体のウェブサイトやごみ出しカレンダーで確認しましょう。筆者が試したときに失敗したのは、洗っていない服をそのまま出してしまったことです。汚れや破れが目立つ衣服は、回収後の仕分けでリユース・リサイクルの対象から外れてしまうことがあります。出す前に洗濯しておくことが、仕分け後の廃棄を減らすうえで大切です。
③フリマアプリ・リサイクルショップで売る
フリマアプリの普及により、個人間の売買はリユースの手段として定着しています。ただし写真撮影や梱包、発送といった手間が多く、1着あたりの時間コストは意外とかかります。リサイクルショップでは、汚れがひどいものや在庫が過剰な服は引き取ってもらえないこともあります。一方で、重量で買い取る方式を採用する店舗も増えており、ブランドタグの有無にかかわらず持ち込める窓口が広がっています。
④寄付サービス・NPOを通じて手放す
服そのものを寄付する場合、国内外でリユースとして届けられるほか、繊維原料としてリサイクルされます。査定額を寄付する仕組みでは、衣類の価値に応じた金額が環境保護や教育支援に取り組む団体へ渡されます。専用回収キットに衣類を詰めて送ると開発途上国へ届けられ、ポリオワクチンの支援にもつながる「古着deワクチン」のような取り組みもあります。服を誰かの役に立てる形で手放したいという気持ちがある方には、特に向いている方法です。
⑤宅配回収サービスを利用する
段ボールに詰めて業者に送ると査定を受けられる宅配買取サービスも普及しています。店舗に足を運べない方や、まとまった量の服を一度に手放したい方に向いています。LINEなどから集荷を依頼できる宅配回収サービスも登場しており、衣類だけでなくファッション雑貨やホビー用品にまで対応する窓口も出てきました。
⑥地域の古着交換会・スワップイベントに参加する
自治体や商店街、学校のPTAなどが主催する古着交換会(クローズドスワップ)に参加する方法も広がりを見せています。金銭のやり取りをせず、参加者同士で服を持ち寄って交換する仕組みで、地域のコミュニティイベントとして開催されるケースが増えているとされています。フリマアプリのように梱包や発送の手間がかからず、その場で次の持ち主に手渡せる点が特徴です。開催情報は自治体広報やSNSで確認できることが多いので、近所のイベント情報を一度チェックしてみる価値があります。
主要企業の回収サービスを比較する
店頭回収ボックスと一口に言っても、運営企業によって回収対象や行き先は異なります。代表的なサービスを比較すると、次のような違いがあります。
| 企業・サービス | 回収対象 | 回収後の主な行き先 |
|---|---|---|
| ファーストリテイリング(RE.UNIQLO) | UNIQLO・GU・PLSTで販売した全商品 | 難民支援などへのリユース、固形燃料・自動車用防音材へのリサイクル、ダウン商品は服から服への再生 |
| H&M | ブランド・状態を問わない衣類全般(皮革製品を除く) | 古着として世界で再販売、リメイクや清掃用品、断熱材への再利用 |
| 無印良品 | 自社製品の衣料品・シーツ類(下着は対象外) | BRINGを通じた再資源化 |
| BRING(JEPLAN運営) | 参加企業の店舗で回収する衣類全般 | 分子レベルまで分解し再生PET樹脂などへ再生 |
| オンワード | 着られなくなった自社製品を中心とした衣類 | リサイクル糸に戻し毛布や軍手へ加工、日本赤十字を通じ被災地・途上国へ寄贈 |
BRINGのハチのマークがついた回収ボックスは、無印良品・ビームス・ザ・ノース・フェイス・スノーピークなど幅広い企業が参加し、2024年10月時点で全国3,600カ所以上に設置されているとされています。オンワードは約160万人から衣類を回収し、廃棄ゼロ(点数ベース)を実現していると発表しており、2024年にはタジキスタンの貧困世帯へ毛布を寄贈しています。JEPLANはポリエステル100%の服から再生ポリエステル繊維を繰り返し作り出す技術を持ち、繊維の水平リサイクルを担う企業として国内外から注目されています。
こうした企業の回収サービスを、日々の消費行動全体の中でどう位置づけるかを考えたい方は、エシカル消費の視点から服との付き合い方を整理した記事もあわせて参考になります。
回収ボックスに入れた服は、その後どこへ行くのか
「回収ボックスに入れれば大丈夫」と思いがちですが、取材を続けるなかで気になったのが、その先の実態です。回収された衣料品のうちリサイクルに回るのは8%程度にとどまり、その中には工業用雑巾(ウエス)や自動車の緩衝材へのダウンサイクルも含まれるため、服から服へのリサイクルの割合はさらに限られていると推定されています。つまり回収ボックスに入れた服の多くは、衣類として再生されるのではなく、工業用素材や燃料になっているのが現実です。
リサイクル前後で用途を変えない「繊維to繊維」の水平リサイクルへの期待は高まっているものの、現状では世界全体でも1%未満にとどまっているとされ、日本でも大きく変わらない水準と見られています。この現実を知ったうえで、それでも可燃ごみに出すよりはずっと良い選択だと判断するか、素材表示を見てポリエステル100%の服はケミカルリサイクル対応の回収先を選ぶと一歩踏み込むか、どちらの選択も間違いではありません。知識を持って行動することの意味は、そこにあると取材を通じて感じています。
服の状態・素材で選ぶ|迷わない出し先チェック表
服の状態や素材に合わせて出し先を変える使い分けが、無駄なく循環させるうえで近道になります。以下の表を、手放す服を分類するときの目安にしてみてください。
| 服の状態・素材 | 向いている方法 |
|---|---|
| まだ着られる・ブランド品 | フリマアプリ・リサイクルショップ |
| まだ着られる・ノーブランド | 店頭回収ボックス・寄付サービス・古着交換会 |
| 少し汚れている・ほつれあり | 洗濯後に自治体の資源ごみ |
| かなり傷んでいる | 店頭回収ボックス(素材再生目的) |
| ポリエステル100% | BRINGなどケミカルリサイクル対応の回収先 |
見落としがちなポイントとして、服を洗わないまま回収ボックスに入れてしまうケースがあります。においや汚れがひどいものは仕分けの段階で廃棄に回ることもあるため、できるだけ洗濯してから出すことをおすすめします。袋やハンガーが不要かどうかも、出し先ごとに確認しておくと安心です。
制度と企業の動き|2024年ガイドラインからこれからの数年
個人の行動だけでなく、制度や企業の取り組みも変わりつつあります。経済産業省は2024年6月に「繊維製品の環境配慮設計ガイドライン」と「繊維製品における資源循環ロードマップ」を公表し、2030年までに取り組むべき具体的な施策の方向性を示しました。設計段階からリサイクルしやすい繊維製品を増やす発想や、事業者・自治体・消費者それぞれの役割分担を明確にする狙いがあるとされています。
こうした国の方針に呼応する形で、企業側も独自の循環モデルを構築する動きを広げています。回収した服をリサイクル糸に戻して製品化する企業や、廃棄物を分子レベルまで分解して再生樹脂を作る技術を持つ企業など、回収ボックスの先の技術は着実に進歩しています。制度と企業の取り組みが両輪で進むことで、消費者が「出しやすい」「行き先がわかる」仕組みは今後さらに整備されていくと見込まれます。
衣類の廃棄を減らす発想は、サステナブルな暮らし方全体を見直すきっかけにもなります。日々の消費や暮らしの選択を広い視点で見直したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
今日からできる最初の一歩
いろいろな方法を並べてきましたが、全部やろうと思うと動けなくなります。まず次の衣替えのとき、クローゼットから着ていない服を3枚だけ取り出して、最寄りのブランド店頭の回収ボックスに入れてみてください。服の状態確認、最寄り回収場所の検索、洗濯して持参という3ステップを1回だけ試すことが、習慣の出発点になります。
まとめ|服のリサイクルは「出し先を選ぶ」ことが大切
服のリサイクル・リユースには複数のルートがあり、服の状態や素材によって最適な出し先は変わります。完璧を目指す必要はありませんが、ごみ袋に入れる前に別の選択肢があるかを一度立ち止まって考える習慣が、積み重なると大きな差になります。
- 家庭から手放される衣服の約60〜70%は現在も焼却・埋め立て処分されており、個人の行動が変化の起点になる
- 店頭回収ボックス・自治体資源ごみ・フリマアプリ・寄付・宅配回収・古着交換会の6ルートを、服の状態で使い分けるのが無駄なく循環させるコツ
- 回収ボックスに出す前に洗濯しておくことで、仕分け後に廃棄になるリスクを減らせる
- ポリエステル100%の衣類は、ケミカルリサイクル対応の回収先を選ぶと服から服への循環に近づく
- 経済産業省の2024年ガイドラインや企業の独自技術により、回収・再生の仕組みは整備されつつある
本記事はMIRASUS編集チームが環境省・経済産業省の公開資料および企業公式情報をもとに作成しています。
参考文献
- 環境省「サステナブルファッション」特設サイト(2024年)
- 経済産業省「繊維製品における資源循環ロードマップ」「繊維製品の環境配慮設計ガイドライン」(2024年6月)
- 株式会社ジェプラン(JEPLAN)BRING公式サイト(2024年10月時点の拠点数)


