衣替えのたびにクローゼットを眺めて「この服、どうしよう」と手が止まった経験は、多くの方にあるのではないでしょうか。サステナビリティの現場を取材してきた立場から正直に言うと、私自身も数年前まで、着なくなった服をなんとなく可燃ごみに出していました。「1枚くらい」という感覚が積み重なると、実は相当な量になります。 環境省が2024年に作成したデータによると、家庭から手放される衣服の総量は年間で約75万トン、そのうちの約60〜70%がごみとしてそのまま廃棄されています。 この数字を知ったときは、正直かなり驚きました。この記事では、服のリサイクルや手放し方の選択肢を、実際に各方法を試してみた視点から整理してお伝えします。
「捨てる」以外の選択肢が、これだけある
「服のリサイクル」と一口に言っても、その方法はいくつかのルートに分かれています。状態・素材・手間の許容度によって、自分に合った方法は変わります。まずは大まかな全体像を把握しておくと、選びやすくなります。
主な手放し方の5ルート
大きく分けると、以下の5つが現在の主な選択肢です。
- アパレルブランドの店頭回収ボックスに出す
- 自治体の資源ごみとして出す
- フリマアプリ・リサイクルショップで売る(リユース)
- NPOや寄付サービスを通じて寄付する
- 宅配回収サービスを利用する
それぞれに「向いている服の状態」と「手間のかかり方」があります。以下で一つひとつ見ていきます。
ルート別|服のリサイクル・リユースの具体的な方法
ここからは各ルートの特徴と注意点を整理します。取材でよく聞く「やってみたら想定と違った」というポイントも交えながら紹介します。
①アパレルブランドの店頭回収ボックス
もっとも手軽に試せるのが、よく利用するショッピングモールやブランドの店頭に置かれた回収ボックスです。近年、対応店舗の数は着実に増えています。
代表的な例を挙げると、ファーストリテイリング(ユニクロ・GU)では「RE.UNIQLO」という取り組みで、UNIQLO・GU・PLST で販売した全商品をリユース・リサイクルする活動を展開しています。店舗で回収した衣服を難民などに届けてリユースし、リユースできないものは固形燃料や自動車用の防音材へとリサイクルしています。さらに回収後のダウン商品からダウン・フェザーを取り出し、新たなダウンを作る “服から服へのリサイクル” にも取り組んでいます。
H&Mでは2013年から古着回収サービスを実施しており、ブランドや状態を問わず不要な衣類や布地を店舗に持ち込むことができます。まだ着用できる衣類は古着として世界で販売され、着用できなくなった衣類はリメイクや清掃用品などに再利用、あるいは断熱材の製造などに使われます。 回収時にはデジタルクーポンの特典もあります。
また、BRINGのハチのマークの回収ボックスは、無印良品・ビームス・ノースフェイス・スノーピーク・オッシュマンズなど幅広い企業が参加しており、全国に3,600カ所以上設置されています(2024年10月時点)。 取材で実際に利用してみたところ、袋に詰めてボックスに入れるだけで5分もかかりませんでした。ただし、店舗によって回収対象が異なる点は見落としがちです。 たとえば無印良品では自社製品の衣料品やシーツ類が対象ですが、下着は回収対象外です。一方、H&Mではブランドや状態を問わず衣類全般が回収対象です(皮革製品は除く)。 事前に各ブランドの公式サイトで確認しておくと無駄足を防げます。
②自治体の資源ごみとして出す
多くの自治体では、使える状態の衣類を「資源ごみ」として回収し、リサイクルやリユースに活用しています。ただし、回収方法や対象品目は自治体によって異なるため、お住まいの自治体のウェブサイトやごみ出しカレンダーで確認しましょう。
私が試したときに失敗したのは、「洗っていない服をそのまま出してしまった」こと。自治体の資源回収では、汚れた状態のものは回収後の仕分けで弾かれてしまうケースがあります。 汚れや破れなどが目立つ衣服は、リユース・リサイクルできない場合もあります。 出す前に洗濯しておくことが、回収後の無駄を減らすうえで大切です。
③フリマアプリ・リサイクルショップで売る
フリマアプリの流行により、個人間での売買も活発になり、「リユース」は身近で手軽な活用方法として定着しています。 ただし、フリマアプリは写真撮影・梱包・発送と手間が多く、1着あたりの時間コストは意外と高くつきます。
リサイクルショップでは、汚れがひどいものや在庫が過剰に余っている服は引き取ってもらえない可能性があるため注意が必要です。リサイクルショップで引き取られた服は、お店で再販売されるだけでなく、海外の支援団体を通じて服を必要とする人々に届けられることもあります。
子ども服などブランドタグが少ない衣類は、従来の査定では弾かれがちでした。ただ最近では、重量で買い取る方式を採用したショップも増えており、状態の良し悪しに関わらず幅広く持ち込める選択肢になっています。
④寄付サービス・NPOを通じて手放す
服そのものを寄付する場合、リユースとして国内外の人々に直接届けられるほか、繊維原料としてリサイクルされます。服の査定額を寄付する方法では、衣類の価値に応じた金額が環境保護や教育支援といった社会課題に取り組む団体宛てに寄付されます。
「古着deワクチン」は専用回収キットを購入して衣類を詰めて送ると、カンボジアなど開発途上国に届けられるほか、ポリオワクチンの寄付にもつながる取り組みです。服を「誰かの役に立てる形で手放したい」という気持ちがある方には、特に向いている方法だと思います。
⑤宅配回収サービスを利用する
段ボールに詰めて業者に送ることで査定を受けられる「宅配買取サービス」も普及しています。 店舗に足を運べない方や、まとまった量の服を一度に処分したい方に向いています。また、PASSSOでは LINEから集荷を依頼して宅配で不要品のリサイクルが可能な「宅配パスト」のサービスも行われており、衣類のほかファッション雑貨やホビー用品にも対応しています。
回収ボックスに入れた服は、その後どこへ行くのか
「回収ボックスに入れれば大丈夫」と思いがちですが、取材を続けるなかで気になったのが「その先」の実態です。
リサイクルに回るのはわずか8%程度であり、その中には工業用雑巾(ウエス)や車などの緩衝材へのダウンサイクルも含まれるため、「服から服へ」のリサイクルの割合は極めて低いことが推定されます。 つまり、回収ボックスに入れた服のほとんどは「衣類として再生される」わけではなく、工業用素材や燃料になっているのが現実です。
「繊維to繊維」と呼ばれる水平リサイクル(リサイクル前後で用途を変えない方法)への期待が高まっているものの、現状では世界全体でも1%未満にとどまっています。 これは日本でも大きく変わらない水準とされています。
この現実を知ったうえで、「それでも可燃ごみよりはずっとマシ」と判断するか、「素材表示を見てポリエステル100%の服はケミカルリサイクル対応の回収先を選ぶ」と一歩踏み込むか——どちらの選択も間違いではありません。知識を持って行動することの意味は、そこにあると取材を通じて感じています。
【編集部まとめ】服の状態別|向いている手放し方
編集部で複数の読者の声や公開情報を整理したところ、「状態に合わせて出し先を変える」という使い分けが、無駄なく循環させるうえで一番の近道になるという傾向が見えました。以下に服の状態別の目安を示します。
| 服の状態 | 向いている方法 |
|---|---|
| まだ着られる・ブランド品 | フリマアプリ・リサイクルショップ |
| まだ着られる・ノーブランド | 店頭回収ボックス・寄付サービス |
| 少し汚れている・ほつれあり | 洗濯後に自治体の資源ごみ |
| かなり傷んでいる | 店頭回収ボックス(素材再生目的) |
| ポリエステル100% | BRINGなどケミカルリサイクル対応の回収先 |
見落としがちなポイントとして、「服を洗わないまま回収ボックスに入れる」というケースがあります。においや汚れがひどいものは、仕分けの段階で廃棄に回ることもあるため、できるだけ洗濯してから出すことをおすすめします。また、袋やハンガーが不要かどうかも、出し先ごとに確認する習慣をつけると安心です。
日本・企業の取り組みと、制度面の動き
個人の行動だけでなく、制度や企業の取り組みも変わりつつあります。 経産省は2024年6月に「繊維製品の環境配慮設計ガイドライン」と「繊維製品における資源循環ロードマップ」を発表し、2030年までに取り組むべき具体的な施策を示しています。
企業側でも独自の循環モデルを構築する動きが広がっています。 オンワードでは、着られない服をリサイクル糸に戻して毛布や軍手に加工し、日本赤十字の協力のもと途上国や被災地に送っており、2024年はタジキスタンの貧困世帯へ毛布を寄贈しています。今までに約160万人から回収し、廃棄はゼロ(点数ベース)を実現しています。
また、ケミカルリサイクルの分野では、BRINGを運営するJPLANが廃棄物を分子レベルまで分解して再生PET樹脂を作る技術を持ち、「ポリエステル100%の服から再生ポリエステル繊維を何度でも」作り出す循環企業として世界的にも注目されています。 回収ボックスの先の技術も、確実に進歩しています。
エシカル消費の観点から服のリサイクルを捉え直したい方には、こちらも参考にしてみてください。
[post_link id=”8257″]
今日から試せる1アクション
いろいろな方法を並べてきましたが、「全部やろう」と思うと動けなくなります。まず次の衣替えのとき、クローゼットから「着ていない服を3枚だけ」取り出して、最寄りのブランド店頭の回収ボックスに入れてみてください。服の状態確認→最寄り回収場所の検索→洗濯して持参、というこの3ステップを1回だけ試してみることが、習慣の出発点になります。
環境への取り組みをもっと広い視点で学びたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。
まとめ|服のリサイクル、大切なのは「出し先を選ぶ」こと
服のリサイクル・リユースには複数のルートがあり、服の状態や素材によって最適な出し先は変わります。完璧を目指す必要はありませんが、ごみ袋に入れる前に「別の選択肢があるか」を一度立ち止まって考える習慣が、積み重なると大きな差になります。
- 家庭から手放される衣服の約60〜70%は現在も焼却・埋め立て処分されており、個人の行動が変化の起点になる
- 店頭回収ボックス・自治体資源ごみ・フリマアプリ・寄付・宅配回収の5ルートを、服の状態で使い分けるのが無駄なく循環させるコツ
- 回収ボックスに出す前に洗濯しておくことで、仕分け後に廃棄になるリスクを減らせる
- ポリエステル100%の衣類は、ケミカルリサイクル対応の回収先を選ぶと「服から服へ」の循環に近づく
- 経産省の2024年ガイドラインや企業の取り組みにより、回収・再生の仕組みは整備されつつある

